直参旗本・早乙女主水介は、剣は諸羽流青眼崩し、体術に軍学までマスター武芸者だが、太平の世では無役の身。よって、自ら「退屈男」と名乗り、町をプラプラ。事件となると、「退屈の虫が騒いだ!」とばかりに走りだし、悪人たちを追い詰める。「ブアッハッハッハ」と高笑いする退屈男が指すのは、額にくっきりついた三日月形の“天下御免の向こう傷”。実は将軍様のピンチを救った時にできた傷で、これがあれば、どこへでも出入り自由、世直し自由なのだ。暇でいいところのお坊ちゃんとなると、今も昔も趣味はファッションとなるようで、この退屈男もかなりの衣装道楽。それも派手柄が好みらしく、「密かに探索」ったって、目立ちすぎ!美人の妹・菊路(柏木由起子)はそんな兄を慕っているが、なんと自分の恋人・霧島京弥(片岡仁左衛門)までもが兄とともに世直しに行ってしまう。
色っぽいおねえさんに「退屈のおとのさまぁ〜」と迫られてもサラリとかわすあたり、かなりの貫禄だが、当時、英樹は二十代半ば。それでも「派手な衣服が似合う」「額が広くて傷がくっきり見える」「豪快さがある」と「退屈男の三条件」をしっかり満たした役者であった。ちょくちょく出てくる藤原釜足や艶っぽい水野久美の存在感、颯爽とした仁左衛門もいい。まさに痛快時代劇。
( 書き下ろし ) |