土佐藩士の娘・苗(田中美里)は、幼いころ、絵師(田中邦衛)が奏でる一絃琴の音色に感動。いつか自ら演奏してみたいと願っていた。しかし、当時、一絃琴は、男しか習わないもの。どこか影のある名手・大友流月(三田村邦彦)に弟子入りしようとするものの、相手にされない。見た目より強い意志の持ち主であった苗は、粘りに粘ってついに師の教えを受けることに。やがて土佐も時代の激動に巻き込まれる。大きな変化や愛する人々との別れを乗り越えて、ひたすら一絃琴への情熱を持ち続ける苗。その実力は周囲も認めるところとなるが…。
原作は、土佐を舞台にした強い女を描かせたら右に出るものはいない宮尾登美子の直木賞受賞作。封建的な土地柄の中で、自分の意思を貫く強さと、女として妻として生きる運命と向き合うまじめさが、苗からひしひしと伝わってくる。まさに時代劇ロマン。武家の女が自立するなど考えられない時代に、苗をあたたかく見守った祖母(香川京子)の美しさ、自由でのびのびとしたおじ(伊原剛志)夫婦の存在も光っている。師匠役の三田村邦彦は、新人時代に出演した「壬生の恋歌」のプロデューサーが本作の担当で、直接出演を依頼されたという。ふだんのお茶目さや「必殺」とはまったく違う厳しい師匠の演技にも注目。
( 書き下ろし ) |