ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2003年11月07日

「十七人の忍者」アクション忍者ものの頭領といえば、この人タランティーノ監督もほれる男・千葉真一。

(じゅうしちにんのにんじゃ) 1983年

掲載2003年11月07日

 やっと徳川の治世が安定したかに見えたころ。早々と次期将軍の座を巡る争いが、静かに進行していた。
 その陰謀を中心が、駿河藩国家老の今村図書(神山繁)。家光を追い落とし、その実弟・駿河大納言忠長を三代将軍の座にすえ、自らの力をも強大なものにしようとしていた。
 駿河の動きを察知した老中・阿部豊後守(西村晃)は、彼らの息の根を止めるために必要な動かぬ証拠、連判状が駿河城にあることをつかむ。豊後守が、密かに、しかも確実に連判状を持ち出せる者として選んだのは、伊賀三ノ組組頭・甚伍左(千葉真一)。彼らは、駿河城で迎え撃つ、才賀孫九郎(夏八木勲)率いる根来忍者との死闘を繰り広げる。
 神山VS西村、千葉VS夏八木、伊賀VS根来。いろいろな好敵手の構図が見えるだけでも楽しみなのに、そこに忍者たちの秘術が繰り広げられるんだから、忍者アクション好きにはこたえられない展開に。「影の軍団」シリーズでいい味を出していた長門勇の顔も見え、ますます楽しい。
 「影の軍団」シリーズの新作映画や話題のタランティーノ監督作品「キル・ビル」でも、さえた演技を見せる千葉真一。「キイハンター」「影の軍団」に続く(「仁義なき戦い」も入れたいが)、第三次千葉ちゃんブームも近い!その魅力あふれる長編だ。

掲載2003年09月26日

「總篇 佐々木小次郎」美剣士小次郎の側から描かれた剣術人生。宮本武蔵は、三船敏郎で、大迫力の対決!

(そうへん ささきこじろう) 1951年

掲載2003年09月26日

 「宮本武蔵」の物語や心理は、よく知られているが、その宿命のライバル「佐々木小次郎」の真実の姿はなかなか伝わってこない。その難題に挑戦したのが、作家・村上元三。新聞に連載された小説は大きな反響を呼び、名監督・稲垣浩によって映画化された。今回は、三部作を一本にまとめてテレビ初放送。
いかに、小次郎は、秘剣つばめ返しを編み出したのか?
 徳川初期。まだ豊臣の残党も残る不穏な時期に剣だけで天下を狙う、とんでもない命知らずが次々登場した。その中のひとりが無名の剣士・佐々木小次郎。なんたって、小次郎は姿がいい。愛する女を故郷の越後に置いて旅に出るが、女たちが向こうからすり寄ってくるようないい男だから、いつも身辺は華やかだ。歌舞伎の元祖とも言われる、当代きってのいい女・出雲の阿国たちとも知り合う。そして、阿国の愛弟子まんの舞をヒントに、つばめ返しを会得する。キザでナルシストに描かれがちな小次郎だが、喜怒哀楽のある若者として描かれているのが面白い。
 キャストは、小次郎に大谷友右衛門(後に中村雀右衛門)、武蔵に野性味たっぷりの三船敏郎、ほかに藤原釜足、杉寛、田崎潤、森繁久弥、後に初代水戸黄門になる東野英治郎も出演。美剣士VS野生派の死闘も違う角度から描かれ、興味深い。

掲載2003年08月15日

「座頭市祭り」ご存じ、盲目の居合の達人・市の旅姿。中でも特に味の濃い勝新太郎の監督・主演特集!

(ざとういちまつり) 

掲載2003年08月15日

 酒と博打に女も好きで、どこか愛嬌のある盲目の「市」は、実は街道筋では恐れられる居合の達人。弱い者いじめをする相手には、容赦なく仕込み杖を抜く・・・。そのすべてに主演したのが、ご存じ、勝新太郎。今回は、勝自身が監督したテレビシリーズ21作品を厳選。なんといっても、子母澤寛の短編からヒントを得て、自らキャラクター作りをした主人公だけに、監督した作品の中では、勝のアイデア炸裂。味の濃さは折り紙つきだ。
 私は以前、このテレビシリーズに出演した片岡鶴太郎ご本人に撮影の様子を聞いた。
 本番中、盲目の役で目を閉じているはずの監督(勝)は、突如目をあけ、「ここはこう演技するんだ!」と、声を出す。いったい、どう見ていたのか・・・・謎だった。また、市が神経を集中し、耳を動かすシーン。耳は目立たない針金で操作されるが、その加減はとても難しかったという。確かに動きは微妙だ・・・。
 数々の伝説を残した名シリーズ。どれも心に残るが、植木等と共演し、どこかひょうきんな味を出した「二人座頭市」、悲しい節回しが耳に残る、浅丘ルリ子共演「心中あいや節」、兄・若山富三郎との共演作「旅人の詩」など、見逃せない作品が続く。ちなみにまもなく公開される北野監督の「座頭市」は、勝シリーズとはまったく異なる新しいテイスト。見比べるのもおすすめ。

掲載2003年07月25日

七衛門の首 極限状態なのに、なぜか笑える!ヤングシナリオ大賞特別賞脚本をナンチャン主演で。

(しちえもんのくび) 1993年

掲載2003年07月25日

 戦国時代。三輪軍の総大将・三輪正則(火野正平)は、ついに禿(かむろ)軍の城を落とした。勝利の喜びも束の間、肝心の禿の主・禿七衛門の首がないにの気づく。
 その混乱の中、引き上げる三輪軍の兵に混じって、禿の残兵・孫(南原清隆)が重い足を引きずっている。負け戦も情けないが、もともと百姓で戦なんかに行きたくなかった孫だが、とうとう三輪軍に捕まってしまう。
しかし、孫は、落ちこぼれ侍(石橋蓮司)と組んで、「七衛門の首」を使って、したたかに生き延びる術を考える・・・。
 戦国ものらしい荒涼とした場面もあるが、どこかユーモラスで、風刺的でもある。脚本は、フジテレビのヤングシナリオ大賞で特別賞を受賞した作品。その作家、早野清治はかつて黒澤明監督の「乱」で、助監督を務めた人でもあるという。さすがに戦国にうごめく人間の描写がうまい。
 特筆すべきは、主演の南原清隆の熱演。時代劇出演は本人の希望であったという。その後、バラエティでは落ち武者風ゲームなどもやってるし、意外に時代劇好きだったのか・・・。
 カッコよくやっつけるだけじゃなく、ユーモアセンスのあるヒーローは時代劇に不可欠。再びの出演を望みたい。
 一時間に悲劇も喜劇、笑いも皮肉も込められた濃い内容。短編の面白さはここにある。

掲載2003年07月04日

「参上!天空剣士」目黒祐樹自らデザインの衣装にもシビれる。ペリーも感動の天空剣士様のすごい技!

(さんじょう!てんくうけんし) 1990年

掲載2003年07月04日

 長屋住まいの桔梗月太郎は、一見、気のいい傘張り浪人。しかし、事件と聞くと、白頭巾の「天空剣士」に大変身。悪と戦う正義の人なのだ。
 原作は北園孝吉の「江戸の陰法師」。
 浪人が実は正義の味方、というのはよくあるが、特筆すべきは、天空剣士のスタイル。白い袴に銀の陣羽織という衣装だけでも目立つのに、白い頭巾の額には、くっきり「月」のマークがペッタリ。口元も白布で覆われて、かすかに「涼しい瞳」だけがのぞいている。この人はいったい?と思えば、目黒祐樹その人だった!
 なんと、このスタイルは、目黒祐樹自身のデザイン。撮影現場である京都への新幹線の中でひらめいたという。さすがキラッと光っている。さらに長屋では三枚目、剣士ではバリバリの二枚目、というきっちりした役作りも本人が意識して作っていたとか。主役としての意欲があふれているってことですね。
 天空剣士が手をかざせば、ボワーッと月のパワーが光輝く。どんな悪にも屈しない正義の味方は、まさに娯楽時代劇の王道。しかも、どんな難事件も30分で解決してしまう腕のよさ。ちなみに制作コンセプトは「バットマンの時代劇版」。コンセプトもすごいが、スタイルもすごい。ペリーも感動の天空剣士。ぜひ、月曜深夜のお楽しみに!

掲載2003年06月27日

「清水次郎長物語」松平健の貴重な親分姿!役所広司、西岡徳馬の男気もカッコいい。石松にも注目。

(しみずのじろちょうものがたり) 1995年

掲載2003年06月27日

 松平健というと、どうしても「上様」の印象が強いが、今回はビシッと精悍な次郎長親分に。そういえば、「暴れん坊将軍」の中でも、渡り鳥姿に変装する回があった。結構、健さん、お気に入りのスタイルかも?
 ストーリーは、清水港に一家をかまえた次郎長が、お尋ね者になってしまう。仕方なく草鞋をはいた一家は、腹黒い保下田久六(渡辺哲)に裏切られて、あやうく捕縛されそうに。その難儀を救ったのが、小川の勝五郎(役所広司)だ。所持金も減り、困った一家を助ける深見の長兵衛(西岡徳馬)夫婦。しかし、長兵衛は殺され、次郎長は仇討ちに立ち上がる。
 堤大二郎、田中実、沖田浩之、林与一、寺尾聰、火野正平などキャストは豪華。子分の中では少々おっちょこちょいだが、愛嬌のある森の石松に、元アイドル諸星和己が扮しているのも注目したい。石松は、親分の代参を言いつかって、大喜びの道中で非業の最期をとげる。石松のため、強敵・黒駒の勝蔵(石橋蓮司)との対決がせまる。
 博徒ながら、個性豊かな子分に慕われる次郎長親分。いつも姿勢が正しい親分が、ふと軽口をたたいたり、笑顔を見せる瞬間がいい。(素顔の健さんに近い印象です)
 次郎長モノを見たことのない女性にもお勧めの長編。

掲載2003年06月13日

「SAMURAI DEEPER KYO」軟派青年が世にも恐ろしい「鬼」を内在 真田幸村、猿飛サスケも大暴れの最新アニメ

(さむらい でぃーぱー きょー) 2002年

掲載2003年06月13日

 関が原の戦いから4年。ただでさえ政治は不安定、治安は最悪のご時世になんと、巨大な隕石が落下した。
 そのころ、のんきな薬売りの壬生京四郎は、具合の悪そうな美女・椎名ゆやを介抱しようとする。ゆやの胸元にすっかり魅せられた京四郎がデレーッとなった瞬間、ゆやの手には拳銃が。しかも、そこには恐ろしい化け物(クリーチャー)まで登場。
 「そのおっぱいは渡さない!」と大いに不純な動機で怒りを爆発させた京四郎の目は、真っ赤。実は本人も知らないうちに京四郎の中には、鬼のような真紅の眼を持つ、とてつもない剣豪・鬼眼の狂が存在したのである。
 原作は今も「少年マガジン」で連載中の人気作品。主人公やクリーチャーなどのキャラクター、必殺技、スピード感あふれる展開は、まさにアニメならではの自由さだ。
 さらに真田幸村、猿飛サスケ、出雲阿国ら時代劇に欠かせないキャラクターも続々登場。それがみんな顔ほっそりの美形なのだ!
 私もいろんな「真田幸村」を見てきたが、たいていごつい戦国武将タイプなので、こんなに若くてアゴの細い幸村は初めてである。女性ファンは黙ってないでしょう。
 21世紀の時代劇アニメって、こういうものなのだと実感できるはず。続きが気になる。

掲載2003年05月02日

「新必殺仕置人」最終回!あまりに壮絶なラストに男泣きしたファンも数知れず。念仏の鉄に花束を。

(しんひっさつしおきにん) 1977

掲載2003年05月02日

「のさばる悪をなんとする 天の裁きは待ってはおれぬ この世の正義もあてにはならぬ闇に裁いて仕置きする 南無阿弥陀仏」
 名ナレーター芥川隆行の語りで始まる、新必殺仕置人。ご存じ“必殺シリーズの顔”中村主水(藤田まこと)と、必殺骨はずしの技を持つ念仏の鉄(山崎努)、手製の竹鉄砲で相手を仕留める巳代松(中村嘉葎)、情報屋の正八(火野正平)、スリのおてい(中尾ミエ)。メンバーの顔ぶれの充実度は、必殺シリーズ屈指の高さ。さらに、仕置きの依頼を「寅の会」という闇組織で仕切る設定の緊張感。本作がシリーズ史上最高傑作といわれる理由もよくわかる。
 寅の会のボス・虎を演じる藤村富美男が元阪神タイガースの名バッターだったりするのも、特に関西で人気の高い必殺ならではのユニークな人選だったはず。私が特に気になったのが、冷たい無表情が不気味な死神(河原崎健三)。虎の養子である死神には、遥か異国の出身という秘密があったのだ。
 いろんな要素がギュッとつまった番組の最終回がいよいよ目の前。佐藤慶、清水鉱治と最強の敵を前に、手を焼かれ絶対絶命の鉄が彼らしいラストを見せる。
 どんなに冷たい終わりでも、そこに立ち続ける中村主水。やっぱりこの男が一番すごいんだ・・・。ラストまで目が離せない!

掲載2003年03月21日

「新必殺仕置人」必殺シリーズ中、最もファンの多い作品のひとつ。「寅の会」で仕置の競り落とし!

(しんひっさつしおきにん) 1977

掲載2003年03月21日

 ご存じ「必殺の顔」ともいえる中村主水(藤田まこと)は、定町廻り同心として、裏稼業からは遠ざかっていた。当時の仕置人たちは、大元締めの虎(元阪神タイガースのスラッガー・藤村富美男)率いる「寅の会」に所属。厳しい掟の下、殺しの仕事を句会を装った会合で競り落としていた。
 主水とは離れ、仕置きを続けていた念仏の鉄(山崎努)は、ある時、仕置きの標的として「中村主水」の名前が詠み上げられ、動揺する・・・。再び仕置きの世界に戻る主水の仲間は、指で相手の骨を折ってしまう「骨はずし」の鉄と、手製の鉄砲(ただし、撃つたびに自分も吹き飛ぶ)を扱う巳代松(中村嘉葎雄)、情報屋の正八(火野正平)、女スリのおてい(中尾ミエ)。
 毎回、句会で殺しを競る時の緊迫感。されに無口無表情で、ただでされ凄味のある虎がいざとなるとバットで(!)仕置きする恐ろしい。その虎の付き人で、これまた無表情な死神(河原崎健三)の存在感。登場人物のキャラクター設定は実に巧みだ。また、ゲストの岸田森、菅貫太郎、嵐寛寿郎、藤原釜足ら、今はなき名優、テレサ野田、緑魔子、村地弘美ら女優陣の顔ぶれも充実。
 予定調和を一切排した最終回の非常さは、今も語り継がれるほど。どうかお見逃しなく。

掲載2003年02月14日

「杉良太郎『新五捕物帳』祭り」流し目光線にもうメロメロ!だんだん“はだけていく”杉サマ進化にもご注目。

(すぎりょうたろう「しんごとりものちょう」まつり) 1977〜1982年

掲載2003年02月14日

 岡っ引きの新五は、ふだんは周囲のみんなから「新さん」と慕われる兄貴分。しかし、いったん悪に立ち向かう時、それがどんな権力相手でも、上司に止められても死に物狂いでぶつかっていく。熱い男だ。その背景には、悪人に父を殺され、孤児として育った、新五の辛い過去があった・・・・。
 77年から五年にわたり、20パーセント強という高視聴率をキープした杉良太郎の代表作。そのヒットの理由の第一は、やはり杉サマの魅力。事件がない時のお茶目な表情と、悪人を前にした野性味あふれる顔、ふと流してみせる目に漂う男の色気で、女性ファンをがっちりとらえた。
 さらに立ち回りも本格的で、「大東流合気道」を使う新五の設定の通り、杉サマは、悪人を投げるわ飛ばすわ。「ホントに投げてるよ!」と思わず言いたくなる、リアルな捕物場面の連続だ。
 時代劇スターの地位を確立し、余裕が出てきた杉サマがだんだん着流しの前をはだけ、おとなの貫禄を漂わせる「進化の過程」にもご注目。自らを「黒豹」と言い切る主題歌、「江戸の黒豹」も歌いこなせるのは、やっぱりこの人しかないでしょう。辰巳柳太郎、東八郎、范文雀ら、名優との共演も多いので、お見逃しなく。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。