新 必殺仕事人
(1981年・TVシリーズ・全55話・カラー)
 出演 藤田まこと/中条きよし/鮎川いずみ/三田村邦彦/菅井きん/白木万理/山田五十鈴 他
新 必殺仕事人を生んだ1981年

  『新 必殺仕事人』は1981年5月8日(金)にスタートした。それでは1981年とは一体どういう年だったのか……その時代背景をプレイバックすることで、本作が生まれた時代の風を感じてみよう。
 まず政治・経済面では、2月23日にローマ法皇が初来日。3月20日は神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア'81)が開催され、1600万人が来訪した。4月1日より郵便料金が値上げされ、ハガキ1枚が40円となった(それ以前は20円)。5月25日、“障害に関する用語の整理のための医師法等の一部を改正する法律案”が成立し、所謂“差別用語”として排斥される動きが生まれた。7月29日にはイギリスのチャールズ(・ウィンザー)皇太子がダイアナ(・フランセス・スペンサー元)妃と結婚。このときは誰もが後年の一大スキャンダルなど予想だにしなかった。電電公社(現・NTT)がテレホンカードを公開したのが8月5日。10月6日にはエジプトのサダト大統領がイスラム原理主義運動集団によって暗殺された。
 11月28日にはロッキード事件の裁判にて、田中角栄元首相の元秘書・榎本三恵子が供述を一転。首相が賄賂を受け取っていたと証言し、政界に衝撃を与えた。榎本が自身をハチに例えて語った言葉から“ハチの一刺し”が流行語となる。12月15日には、同年10月16日に北海道・夕張炭坑内で発生した坑内火災により死者93名を出した坑内火災事故の煽りで、炭坑経営社の北炭夕張炭坑が倒産。かつては黒いダイヤと呼ばれ、本邦エネルギーの代表選手だった“石炭”時代の終わりを暗示していた。
 科学面では4月12日、アメリカのNASAがスペースシャトル・コロンビア号の初飛行に成功。本格的宇宙時代の幕開けを告げた。10月19日には京都大学理工学部の福井謙一教授が“フロンティア電子理論”によって日本人初のノーベル化学賞を受賞。11月13日には沖縄で発見された新種の鳥がヤンバルクイナと命名された。
 事件・犯罪面では6月15日、フランス・パリでオランダ人女子大生を殺害。遺体の一部を食べたとして日本人留学生・佐川一政が仏警察に逮捕されるも、心神喪失状態での犯行と診断され、不起訴処分に。
 6月17日には覚醒剤中毒症の川俣軍司が東京都江東区の商店街で親子連れ3人と女性ひとりを殺害、二人に重傷を負わせた“東京深川白昼通り魔殺人事件”が発生。世間を震撼とさせた。9月8日、大阪府の三和銀行茨木支店で女子銀行員が1億3000万円を横領。逃亡先のフィリピンで逮捕された。この事件は通称・オンライン詐欺事件と呼ばれ、コンピュータ時代の新たな犯罪の登場を予見させた。
 文化・風俗・産業面では、ロッテの雪見だいふく(10月5日)、赤城乳業のガリガリ君(発売日不明)、日本コカ・コーラのリアル・ゴールド(10月2日)が発売されたのがこの年。(サンスター→アース製薬の)歯磨き粉・アクアフレッシュ(発売日不明)、(ユニ・チャームの)紙おむつのムーニー(発売日不明)もこの年に新発売。
 テレビ史的トピックスは、東京12チャンネルが現在のテレビ東京に改名したのが10月1日。『宇宙戦艦ヤマト』に端を発する一大アニメブームが『機動戦士ガンダム』の大ヒットでさらに加速。テレビの世界からは実写・特撮ヒーローものが完全にアニメに駆逐され、『ウルトラマン80』が3月25日に、『仮面ライダースーパー1』が9月26日に終了。一時期『太陽戦隊サンバルカン』(2月7日スタート)と『ロボット8ちゃん』(10月4日スタート)の2本という危機的状況に瀕していた年でもあった。映画の大ヒット作は『エレファント・マン』(5月9日公開)、『レイダース/失われたアーク<<聖櫃>>』(12月5日公開)、『連合艦隊』(8月8日公開)、『ねらわれた学園』(7月11日公開)など。歌謡曲では、寺尾聰の「ルビーの指輪」が特大ヒット。TBS系のランキング歌番組『ザ ベストテン』で12週連続第1位の快挙を達成している。
 流行語は、えぐい、クリスタル族、なめねこ、ノーパン喫茶、“なんちゅうか、ほんちゅうか”、“ハエハエ、カカカ、キンチョール”、窓際のトットちゃん、“んちゃ!”などなど。“クリスタル族”は、今や新党日本代表として有名な政治家/作家・田中康夫氏のデビュー作『なんとなく、クリスタル』の大ヒットから。なめねこは、猫に不良学生(当時はツッパリと呼称)のコスプレをさせた写真がバカ売れしたことから。“なんちゅうか〜”、“ハエハエ、カカカ〜”は共に評判を呼んだTV-CMから。『窓際のトットちゃん』は女優・タレント・司会者・作家等々マルチに活躍する黒柳徹子の大ベストセラーエッセイ。“んちゃ!”は、同年テレビアニメ化されて大ヒットした『Dr.スランプ アラレちゃん』(原作・鳥山明)の決めゼリフだ。
 こうして俯瞰して見ると、凄惨な事件や衝撃度の高い政治・社会的問題もある中、全体的・平均的には比較的明るいニュースが多かった印象を受ける。それは来るべきバブル経済のプロローグともいうべき予兆を呈していた。そんな時代の趨勢を受けつつ……というよりは、そんな時代に波乗りした『新 必殺仕事人』以降の『必殺』シリーズは、バブルの追い風を受けるかの如く大ヒットした。それを証明するかのように、バブル崩壊と共に『必殺』シリーズも表舞台から姿を消すこととなる。
 時代と切っても切り離せない存在……それが『必殺』シリーズなのだ。
 なお、最後にひとつ。この年、流行したTV-CMのひとつに国鉄(現・JR)の「フルムーン(夫婦グリーンパス)」キャンペーンがあった。高峰三枝子の入浴シーンが話題になったこのCMは……そう、『必殺渡し人』(81年)の元ネタである。

(岩佐陽一)

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