ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年03月26日

「風」  「新選組!」でも活躍、栗塚旭の大活躍&土田早苗のデビュー作。実相寺昭雄監督も。

(かぜ) 1967年

掲載2004年03月26日

栗塚旭といえば、かの名作「新選組血風録」「燃えよ剣」など、希代の「土方歳三俳優」として有名だ。現在放送中の大河ドラマ「新選組!」でも土方の兄で盲目の為次郎を熱演。ファンを喜ばせている。
 「風」は、彼のもうひとつの代表作である。どこか謎めいた若き剣豪・風の新十郎(栗塚)は、彼にひそかに思いを寄せる女忍者かがり(土田早苗)とともに数々の難事件を解決。「それは…おぬしの考えではあるまい」など、独自の低音栗塚ボイスで、名推理を見せたかと思えば、時には、高いところから「エイッ」と飛び下りながら剣をふるうといった土方とは一味違うアクションも披露。時代劇デビューとなった土田早苗のフレッシュなお色気もなかなかだった。番組的な背景としては、当時NET系で人気となった栗塚を初めてTBSに招いて制作されたシリーズで、監督は巨匠・松田定次、ウルトラマンシリーズの実相寺昭雄、飯島敏宏、冬木透などが担当。ウルトラつながりの小林昭二も、新十郎と係わる同心役で顔を見せている。
 私は京都にて栗塚さんご本人にお会いした際、この番組のことも伺ったが、やはり、ウルトラ系の凝った撮影方法(女優のアップや高さを使ったアクションなど)は新鮮だったという。20パーセント以上の高視聴率の理由は、ぜひ、画面で確認を。

掲載2004年02月20日

「京極夏彦原作『怪』四部作一挙放送」祝!直木賞受賞&新作「嗤う伊右衛門」大ヒット。悪をお仕置き「怪」は見逃せない!

(きょうごくなつひこげんさく かい よんぶさくいっきょほうそう) 2000年

掲載2004年02月20日

 もともとは角川書店の季刊誌「怪」に連載された「巷談百物語」を、原作者・京極夏彦自ら脚本化、時に出演もしたという人気時代劇。今回はディレクターズカット版だ。
 魔除けの御札売りの御行の又市(田辺誠一)は、人形遣いのおぎん(遠山景織子)、戯作者・山岡百介(佐野史郎)らと、怪事件の裏を暴き、悪を懲らしめていく。
 「七人みさき」は、崇りによって、二年おきに七人の娘が惨殺されるという町で、真犯人を追い詰める。「御隠だぬき」は、女子供まで手にかける残忍な辻斬りと対決。大暴れの宮下順子と、孫を殺された悲しみを見せるベテラン奥村公延、実はたぬき?と飄々とした味を見せる谷啓など、油断ならないキャスティング。「赤面ゑびす」は、ハイテンションの本田博太郎の演技に注目。「福神ながし」は、船越英一郎の怪演がみもの。各作品に「必殺シリーズ」おなじみの出演者や、大沢在昌、宮部みゆき、水木しげる、荒俣宏などがちょんまげ出演しているのも要チェック!
 番組後の京極先生独占インタビューは、なんとペリーが担当。しかも、撮影場所は先生の書斎にて!膨大な資料と妖怪オブジェ、そして大画面には、常に時代劇がオンエア中。映像コレクションもかなりディープ。さすが時代劇好きを自認する先生である。京極ワールドいっぱいの映像をお楽しみに。

掲載2004年01月23日

「鯉名の銀平 雪の渡り鳥」長谷川伸の名作を大川橋蔵が熱演!「銭形平次」とはひと味違う股旅人情時代劇。

(こいなのぎんぺい ゆきのわたりどり) 1983年

掲載2004年01月23日

 よかれと思ってしたことが、かえって仇に…長谷川伸得意の義理と人情、男の気っぷの世界を、大川橋蔵がたっぷりと見せる。
 伊豆は下田の一本木な鯉名の銀平(橋蔵)は、大鍋の島太郎親分(川浪公次郎)からも信頼される一家の柱。銀平は、漁場の横取りをたくらむ帆立一家との対決でも大活躍。一方で、恋仲のお市(坂口良子)とは、つらい別れが待っていた。お市の父・五兵ヱ(織本順吉)は、娘を銀平よりも、大鍋の弟分・卯之吉(近藤正臣)と一緒にさせて、かたぎの漁師にと願っていたからだ。すべてを飲み込んだ銀平は、卯之吉にお市を託してわらじを履く。しかし、旅先で聞いた話では、島太郎は殺され、縄張りも帆立一家に乗っ取られたという。親分の敵討ちをと下田に走った銀平が知った衝撃の真実とは…。橋蔵・正臣の間にあって、坂口良子が娘から女へ、愛ゆえの悲しみを見せる。出演は、ほかに左時枝、桜木健一、片桐竜次、小松方正など。
 大川橋蔵は、現代的なスピード感ある演技より、古典的時代劇の味をうまく見せるタイプで、昔気質の銀平がよく似合う。テレビで初めて渡世人「沓掛時次郎」を演ずることになった時、「庶民の味方の平次をやってる人間がやくざをやっていいのか」と悩んだというほど、仕事に対して真摯に取り組んだ主役。平次とはひと味違う魅力を見せる。

掲載2003年12月26日

「奇兵隊」志半ばに散る者、生き残って新しい世で光る者。剃髪&減量した松平健の幕末青春劇。

(きへいたい) 1989年

掲載2003年12月26日

 黒船来航で大騒ぎの江戸末期。開国だ、尊皇攘夷だと幕府をゆさぶる動きが活発化する中、長州藩士・高杉晋作(松平健)は、幕府の軍艦で上海を視察。ヨーロッパ列強に支配され、植民地のようになった状況にショックを受けた高杉は、「国を守らねば」と決意する。しかし肝心の日本国内では、尊皇攘夷を唱える志士たちと新選組が殺しあい、薩摩と長州の関係も悪化。あげく、長州征伐まで実施されてしまう。
 踏んだり蹴ったりの中、歯を食いしばって耐えた高杉は、桂小五郎(中村雅俊)、村田蔵六(片岡鶴太郎)、伊藤博文(堤大二郎)、久坂玄瑞(永島敏行)ら、藩内の優秀な人物たちと、日本の近代化に尽力する。そのひとつが、「奇兵隊」だった。士農工商の身分を取っ払った画期的な軍隊は大活躍するものの、高杉は病に倒れる・・・。
 グラグラ幕府から、いかに外国に付け入るスキを与えず、維新に至ったか?最近人気の「新選組」とは違う角度で、幕末を見られる。飄々と動乱を生き抜く桂(中村雅俊好演!)らに比べ、病でどんどんやつれていく高杉の悲しさよ。さだまさしの主題歌「冬の蝉」も涙を誘う。ハイライトシーンでは1500万円かけて製作した「蛤御門」を一気に爆破。出家シーンでは剃髪し、病気役のためには大減量した松平健の迫力演技にも注目。

掲載2003年10月03日

「御家人斬九郎」祭りDVDじゃ見られない!豪快な殺陣と独特のユーモアのある人気作、50話一気に放送。

(ごけにんざんくろう) 1995〜2001年

掲載2003年10月03日

 剣の達人だが、堅苦しい生活が苦手な松平残九郎。通称・斬九郎(渡辺謙)。家柄はいいが、御家人としては最下級。超貧乏なのに美食好きの猛母・麻佐女(岸田今日子)に「八百善で食したい」などとわがままを言われ、仕方なく禁じられた副業をする。その副業は、罪人の斬首。そんな斬九郎のところには、なぜか、事件が舞い込んでくる・・・。
 かの「眠狂四郎」の作者・柴田錬三郎が、晩年、最も力を入れた作品と言われる。「狂四郎」は、本人が妖気を漂わせ、女関係も好き嫌い問わず手を出したりするニヒリストだった。一方、斬九郎は体はでっかいが、女心をつかむのは下手なやつ。ヤバい副業をしているものの、堂々と日の当たる場所を歩く、度胸と明るさを待ち合わせている。原作のタイトルも「男ってえ奴はこんなもんさ」「二兎を追ったら二兎をとるさ」「正義の味方にだってなるぜ」「女の嫉妬はこうして斬るのさ」など、イカしている。(新潮文庫より)相思相愛?の芸者・蔦吉(若村真由美)、薙刀を振り回し、鼓をズポポン!と打ち鳴らす母、おっとりしているがじーっと斬九郎を観察している許嫁など、どうも女難は避けられない斬九郎。がらりと厳しい顔で悪人たちに立ち向かう姿は、やっぱり文句なくカッコいい!DVDにもなっていないシリーズなので、一気に50話、楽しみましょう。

掲載2003年08月08日

「怪談一つ目小僧」地蔵、化け猫にご存じ、お岩さままで。真夏の夜は、やっぱりコレでしょの怪談特集。

(かいだんひとつめこぞう) 1959年

掲載2003年08月08日

 「怪談一つ目地蔵」は、水芸師の美人太夫をめぐる因縁話。少年時代、自分が斬った盗人の娘とも知らず、水芸の竹本小浪太夫(千原しのぶ)と恋仲の京之介(若山富三郎)。
 金に困った京之介は、死んだ盗人の元相棒の娘(花園ひろみ)に乗り換える。邪魔者とされた太夫は、かつて自分が捨てられていた一つ目地蔵の近くの古池に突き落とされて殺される。以後、夜な夜な太夫の幽霊が・・・。悪役・若山富三郎の恐怖の表情を見ていると、やっぱり怪談には濃いめの顔だちが必須条件だとわかるはず。幽霊と水の組み合わせは絶妙で、さらに目がピカーッと光る地蔵は、怖いというより懐かしい忍術のようでもある。
 またご存じ「四谷怪談」は、仲代達矢・岡田茉莉子ほか、豪華キャストでお届け。妻お岩(岡田)の父を殺害してまで離縁を拒否した民谷伊右衛門(仲代)だが、美女お梅(大空真弓)と結婚し、さらに出世まで約束するという男(小沢栄太郎)の誘いに乗って、岩を殺害してしまう。その祝言の夜、恐ろしいできごとが・・・。「私を見捨てるつもりかえ?」と振り向く茉莉子の怖いこと!そしてそれに驚く仲代のリアクションもまた怖い!
 このほか、有名な化け猫騒動を描く「怪談 鍋島の猫(鍋島怪猫傳)」、怪談映画の巨匠・中川信夫の「怪談かさねが渕」など、名作が連発。部屋を暗くしてお楽しみください!

掲載2003年08月01日

「風」栗塚旭の隠れ名作!ウルトラシリーズでおなじみの実相寺昭雄らのスタッフも名人揃い。

(かぜ) 1967年

掲載2003年08月01日

 剣の腕は一流で、しかもニヒルないい男。風の新十郎(栗塚旭)は、どこかつかみどころのない風来坊のようだが、悪い奴は容赦しない。ひそかに彼を思うくノ一かがり(土田早苗)とともに、世の中の悪と戦うのだ。
 そんな彼らに関わりを持つのが、天文学者の福内鬼外先生(志村喬・こんなお茶目な名前の人物をこの人がやってたのが愉快)と、孫娘の早苗(東山明美)など。
 黒の着流しを着せたら、天下一品の栗塚旭。和製ルパンと呼ばれるほど、イカす男である。しかも、事件の展開は通常の時代劇とはひと味違う。密室事件や本格推理もの、冒険、秘密、特撮も駆使。もちろん、栗塚得意の立ち回りアクションも含め、斬新でスピーディ。
 実はその演出陣は時代劇映画の松田定次はじめ、ウルトラシリーズで知られる実相寺昭雄、飯島敏宏など、こだわりの面々なのだ。ちなみに、新十郎のしっぽをつかまえようと躍起になる同心・相川左近に、初代「ウルトラマン」で科学特捜査隊のムラマツキャップこと小林昭二が扮している。
 放映当時、TBSが投じた破格の制作費と、人気番組「銭形平次」と真っ向勝負の時間帯で視聴率20パーセント強の記録で話題になった伝説の名作。29日と8月3日の最終回には、先日亡くなった小松方正がゲスト出演。ぜひ、お見逃しなく!

掲載2003年07月18日

子連れ狼 第一シリーズ 萬屋錦之介が劇画の世界を体現して大ブームに!バーブ佐竹の主題歌も切ない名作。

(こづれおおかみ だいいちしりーず) 1973年

掲載2003年07月18日

 「公儀介錯人」の地位をねらう柳生一族の卑劣な陰謀によって、一家を惨殺された拝一刀。徳川に楯突く反逆人の汚名まで着せられた一刀は、妻の機転でただひとり襲撃を免れた一子大五郎を連れて、諸国を歩く。その仕事は、「一殺五百両」の刺客。その目的は、柳生一族への復讐だった。
 大五郎を箱車に乗せて、ゴロゴロと道を行く一刀の姿は、このドラマならでは。小池一雄と小島剛夕原作の劇画の世界を、名優・萬屋錦之介が体現。眉毛を塗りつぶし、常に険しい顔で、錦之介の新しい魅力となった。
 主人公が非情な刺客、それも子連れ、という斬新な設定と、出るわ出るわ、個性的な柳生の刺客たち。剣の名門「柳生」に「裏柳生」なる恐ろしい一団がいるというのも、興味深い。それを迎え撃つ一刀も、箱車に手槍、手裏剣、機関銃(?)など、奇抜な仕掛けをして撃退する。こんな時代劇、見たこともなかった。第一話の太地喜和子はじめ、石橋蓮司、名古屋章、江守徹ら、タダ者でないゲストが続く。彼らは善か悪か?一刀に仕事を依頼する面々も一筋縄ではいかない者ばかり。一刀親子は、信じる者は自分だけ。冥府魔道の裏街道をゴロゴロと突き進む。
 小池一雄作詞、渡辺岳夫作曲の主題歌「ててご橋」も隠れ名曲として味わい深い。バーブ佐竹の声にシビれます!

掲載2003年05月09日

「五人の野武士」合戦シーンは映画と同時撮影!三船敏郎とすごいやつらが大集合した、伝説の名番組。

(ごにんののぶし) 1968

掲載2003年05月09日

 戦国の世は力次第で誰でも一国一城の主になるチャンス!そんな時代の風を受け、五人の野武士がそれぞれの野心を胸に旅に出る。リーダー格は、剣豪・船山次郎義景(三船敏郎)だが、五人がひとまとまりになるということは、ほとんどない。旅先でさまざまな事件とぶつかりながら、反骨精神いっぱいの五人の野武士が自由に生きていくのだ。
 まず、注目したいのは、迫力の合戦シーン。実はこれは、三船敏郎主演で69年に公開された「風林火山」(当チャンネルで17日他放送)で撮影されたもの。映画の予算をしっかり活用。これでテレビ番組としては並外れた迫力シーンが可能になったというわけ。
 また、出演者も三船以下、宝田明、中山仁、高橋俊行、松山省二、人見明、高橋幸治の姿も!この時期(68年)の田村正和はまだまだお坊ちゃんな感じであった。
 脚本に岡本喜八、宮川一郎、監督に内出好吉、萩原遼、監修には「無法松の一生」でヴェネチア映画祭グランプリ、「風林火山」の監督でもあった稲垣浩、殺陣師には次々の黒澤作品で三船敏郎に名シーンを創りあげた久世竜。メンバーを聞いただけでもわくわくする。三船敏郎のテレビ初主演作にして、なかなか見られなかった伝説のテレビシリーズ。じっくり堪能したい。

掲載2003年02月07日

「くの一忍法帖 柳生外伝江戸花地獄篇」Vシネマ界では超有名の小沢仁志が監督&主演。漫画家・寺沢武一ファンも要チェック!

(くのいちにんぽうちょう やぎゅうがいでんえどばなじごくへん) 1988年

掲載2003年02月07日

 領内の美女狩りが趣味というマッドな殿様、会津四十万石藩主・加藤明成。彼を助けるのが、妖しい忍術を使う暗殺集団“会津七本槍”であった。なんとか悪徳藩主を思い止まらせようとした善人家老・堀主水一族は、彼らによって惨殺され、七人の女たちだけが生き残る。彼女たちは、体に流れる「忍びの血」により、くの一として、凶悪集団との戦いに挑む・・・というのが、本作「江戸花地獄篇」のあらすじ。後篇にあたる「会津雪地獄篇」(16日放送)では、柳生十兵衛の助けを借りて、七本槍の三人を倒したくの一たちが、残る面々とマッド・加藤を追って、会津に潜入。死闘を繰り広げる。
 時代劇でくの一モノといえば、自動的にセクシー系と判断してよいほど、その筋の定番ではあるが、ここに登場するくの一たちは文句なしの美女揃い。大きな瞳が印象的な森山祐子、大胆なアクションも厭わぬ白島靖代・・・彼女たちにからむのが田口トモロヲ、麿赤児、片桐竜次と怪優軍団というのも見逃せない。
 また、主演と監督がVシネマ界でブイブイ言わせる小沢仁志で、さらに「コブラ」で人気の漫画家・寺沢武一がスーパーバイザーで参加。出演者の味は濃いわ、SFXはすごいわ、お色気ムンムンだわで、あっという間の80分!山田風太郎は偉大だ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。