ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2002年01月03日

監督「岡本喜八」時代劇大全集 新作「助太刀屋助六」でも大暴れ!アクションとユーモアのあふれる時代劇に注目。

(かんとく「おかもときはち」じだいげきだいぜんしゅう) 

掲載2002年01月03日

現在の日本の映画監督の中で、もっともユーモアにあふれ、アクションと洒落のわかる作風の人、それが岡本喜八監督だ。
監督は58年第一回監督作品「結婚のすべて」を発表、続く「独立愚連隊」(59年)で人気を博し、やがて独特な味の時代劇も作り上げていく。
今回は、加山雄三が逃亡忍者に扮して、最新兵器の争奪戦に巻き込まれるアクション作品「戦国野郎」(そもそも“戦国に“野郎”をつけちゃうこのセンスがナイス。もちろん脚本は監督)、三船敏郎が“桜田門外の変”に係わった無名の浪人に扮した「侍」(脚本は橋本忍)、妖刀を操り殺人を繰り返す剣豪・机龍之介(怖い顔の仲代達矢)の狂気を描き、アメリカ公開時にも話題となった「大菩薩峠」、座頭市シリーズ最高の観客動員数を記録した「座頭市と用心棒」(用心棒は三船敏郎)、そして、幕末、領内に流れ着いた三人の黒人とともに夜な夜なジャムセッションを繰り広げる音楽好きの殿様(古谷一行)の奇想天外な物語「ジャズ大名」(原作・筒井康隆、音楽・山下洋輔)など、オカモトテイストいっぱいの作品が大集合。
立ち回りや人情など、時代劇本来の面白さと「こんなこともできたか」と新しい可能性を感じさせる作品の数々。たっぷり楽しみたい。

掲載2001年12月15日

「剣客商売」若き加藤剛と山形勲が剣客親子に。池波正太郎ファンにはたまらないシリーズ

(けんかくしょうばい) 

掲載2001年12月15日

娘よりも若い女房をもらい、気楽に生きる老剣客・秋山小兵衛(山形勲)と、剣ひとすじ、まじめ一本やりの息子大治郎(加藤剛)。太平の世に、剣をしていかに生きるか。世を知り尽くした小兵衛と、不器用な大治郎は、さまざまな事件に巻き込まれる。時には剣にまつわる恨みもあり、時には男と女の情愛が事件のカギともなる。一対一の真剣勝負もあれば、多勢での闇討ち、弓矢などを使った卑怯な相手にも、ひるまず戦いを挑む親子のすがすがしい活躍ぶりがいい。そして、父親と女房の仲のよさに赤面するなど、大治郎のウブなところには、思わず笑いがこみあげる。大治郎は「まじめ」な加藤剛にぴったりで、原作者の池波正太郎も認める存在だったという。(ちなみにこの役を演じている時に誕生した加藤家の長男は「大治郎」と名付けられ、11月公開の新作映画「伊能忠敬」では親子の役で共演している)
今回放送される中には、池波作品の「にっぽん怪盗伝」の中の「市松小僧始末」を脚色した「男まさり」も入っており、この同じ原作は「鬼平犯科帳」でもとりあげられている。見比べるのも一興。
大治郎の一本気もいいが、原作よりも貫禄がある感じの小兵衛・山形勲の笑顔が心に残る。見応えのあるシリーズ。

掲載2001年10月12日

「剣」映画と対等のスタッフ、キャスト。ペリーも号泣の傑作オムニバス。

(けん) 1967

掲載2001年10月12日

「俺は名刀だ 少なくとも自分ではそう思っている しかし銘がない そのためか常に持人定まらず よく切れる故をもって持人さらに定まらず」 小沢栄太郎の名セリフで始まる異色のオムニバスシリーズ。主人公は「俺」こと一本の刀だ。その切れることといったら、触れただけで大木の幹がまっぷたつという具合。が、銘がないために有名無名さまざまな人の手に渡ることになる。切れすぎる刀を手にした人間の欲望と悲喜劇...。
 まず脚本陣がすごい。黒澤映画を支えた橋本忍、菊島隆三、小國英雄、井手雅人。当時まだ新鋭だった早坂暁、国弘威雄、野上龍雄らも執筆。監督も工藤栄一、篠田正浩、渡辺裕介、小野田嘉幹らが勢ぞろい。キャストも田村高廣、山崎努、平幹二朗、加藤剛、島田正吾、辰巳柳太郎、フランキー堺など主役級から志村喬、藤原鎌足を脇に持ってくるぜいたくさ。制作費は映画並み、仕上がりと人気は映画以上!?と伝説を作った。
 ストーリーを少し紹介すると、第一話では天下一の剣豪(丹波哲郎)が地道に修行しているのに、そのニセ者がちやほやされて大金を得ているという皮肉、第二話では、一攫千金を夢見たギラギラ野武士(三國連太郎)と百姓(緒形拳)のユーモアと悲劇。モノクロ画面(制作は67年)を見ながら、思わず泣ける名演技の数々。お見逃しなく!

掲載2001年10月05日

着ながし奉行 曲者俳優大集合。岡本喜八監督の痛快編

(きながしぶぎょう) 1981

掲載2001年10月05日

 政治腐敗で町奉行が一年のうちに三回も変わった西尾藩。今も昔も構造改革は大変ということだが、江戸の領主は「こういう時こそ、変わり者リーダーを」と、どこかの国のような発想から、「着ながし奉行」の異名を持つ、望月小平太を町奉行として抜擢する。
が、この新奉行。さすが「裃&袴拒否」の「着ながし奉行」だけあって仕事ぶりも型破り。第一、全然役所に出てこない。どうやら悪の巣窟、通称“壕外”に乗り込んでいるらしい。抜け荷、売春、人殺し、なんでもありの壕外の大掃除はできるのか、その黒幕は誰なのか...。
 ふだん低い声で重厚なイメージの仲代達矢が男気あふれるモテモテ町奉行を熱演。ただカッコいいヒーローの活躍話ではなく、とぼけたユーモアも感じさせる演出、最後の粋などんでん返しには、さすが岡本喜八監督、と拍手を送りたくなるようなテンポのよさ。
 配役も中谷一郎、近藤洋介、神崎愛、岸田森、小沢栄太郎、殿山泰司、草野大悟、天本英世、益岡徹と、曲芸役者大集合という感じ。さらに後に同じ山本周五郎の原作「町奉行日記」を「どら平太」として主演することになる役所広司(若い!)も若侍役でチラッと出演するのもお楽しみだ。
 原作の面白さと演出の巧み、さらにキャストの楽しさが堪能できる。贅沢な長編。

掲載2001年08月31日

ついに登場!中村主水「暗闇仕留人」

(くらやみしとめにん) 

掲載2001年08月31日

 テレビ時代劇の中でも最も熱いファンを持つシリーズといえば、なんといっても「必殺。」そのシリーズ「顔」ともいえるのが、藤田まこと演ずる「中村主水」
 必殺シリーズ第一弾の「必殺仕掛人」は、池波正太郎の原作「仕掛人梅安」に準じていたが、第二弾「必殺仕置人」は、テレビオリジナル。そこに飄々と登場したのが、中村主水であった。北町奉行所の同心で、職場では役にたたない昼行灯と呼ばれ、家では跡取りも作れない婿養子。嫁姑にへこへこした情けない男だが、実は、剣の達人。正義のためでなく、金のために許せない悪人を殺す、裏の顔を持っていた。
 喜劇で知られた藤田まことが殺し屋?とスタート当時は驚かれたが、番組が始まってすぐに、その俗っぽさ、世の中の裏表を知った皮肉っぽさ、何より「よく見ると怖い顔」が評判になった。ちなみに「中村主水」の名前は、「007」ジェームス・ボンドの語感から命名されたという。
 シリーズ第4弾「暗闇仕留人」は、ある事情により、番組名に「必殺」の文字が使われていない時期(74年)の放送で、中村主水、三味線のバチや仕込みの矢立てで相手を仕留める蘭学者の糸井貢(石坂浩二)、怪力で相手の心臓を握りつぶすというすごい技の持ち主・大吉(近藤洋介)が、闇の仕事をする。大吉の愛人・妙心尼(三島ゆり子)の色っぽいセリフ「なりませぬ」が流行語になった。

掲載2001年08月24日

「怪談シリーズ」残り少ない夏を、じっくり怖く楽しもう

(かいだんしりーず) 

掲載2001年08月24日

 時代劇の怪談は、単に気持ち悪かったり、残酷だったりするのではなく、人間の弱さや欲の深さ、哀れさが出ていて、時には笑ってしまうようなオチもあったりする。
 実は、そこが時代劇のよいところ。ほとんどCGも使わず、特殊メイクもまだまだの時代の番組が、今も多くの人の心に残っているのは、「きっとここで出るな」というポイントで幽霊が出てくる妙な安心感が、楽しかったせいもあると思う。
 そこで今週の恐怖のラインナップ。
 「怪談大奥あかずの間」は、生類憐れみの令で悪評ふんぷんの将軍綱吉に殺された女が夜毎、大奥で鼓を打つというお話。主演は勝呂誉、共演は、現大臣の扇千景。
 続く「新撰組呪いの血しぶき」。隊の掟や暗殺などによって、新鮮組土方らに殺された者の怨霊に襲われる隊士たちの恐怖。こちらも今は国会で活躍する中村敦夫の主演。
「怪談雪女」は、遊女おゆきを捨てて、名主の娘と結婚した男が、雪女と遭遇。有馬稲子と高橋悦史で送る。
 30日からは、新シリーズ「日本怪談劇場」がスタート。佐藤慶の「怪談蚊喰鳥」、田村亮の「怪談牡丹燈籠」など、名作が登場。
 こどもの頃、あんなに怖かった映像が、おとなになってみると...やっぱり怖いかも!
 残り少ない夏を、怪談でじっくりお楽しみください。

掲載2001年08月17日

「怪談シリーズ」名作怪談で残暑お見舞い申し上げます。

(かいだんしりーず) 

掲載2001年08月17日

 毎夜恐怖の45日間と銘打って、お送りしている「日本の怪談」特集。
 今週も豪華ゲストによる、名作が勢ぞろい。18日は、名作中の名作「四谷怪談」を、かつて映画で大評判をとった天知茂の主演でテレビ化。円山理映子の熱演と、ミスター三文役者こと殿山泰司が、人間の醜さ、浅ましさをドロドロと見せる。見どころ満載の一本。
四谷怪談が鶴屋南北の傑作なら、20日は三遊亭円朝の悲しくも怖いお話。「怪談牡丹灯篭」は、若い浪人に恋焦がれて死んだ娘が夜な夜な恋人を尋ねてくる。高田美和の美しい幽霊っぷりに注目したい。翌21日には、田村三兄弟の兄・田村萬広主演で、金に目が眩んで人殺しをした男の破滅を描く「怪談蚊喰鳥」が登場。長門裕之の迫真の演技が怖い。
雨、古い、沼、と怪談の三拍子揃ったのが22日の「怪談雨の古沼」栄達のために妻を売り飛ばした男と、その妻、妻を慕う弟子がからむ因縁話。原作は阿竹黙阿弥。中村扇雀、岡田茉莉子、神田隆ら芸達者の共演作。
 このほか、操を守った娘が殺され、怪猫となってあらわれる「怪談まだら猫」(林与一、武原英子主演)や非業の死をとげた男の怨霊が犯人とそのこどもにまで呪いをかける「怪談累ヶ渕」(三遊亭円朝原作、伊吹吾郎、加賀ちか子主演)など、日本の怪談は女優がみんなきれいで、余計に怖いのが特長。一度見たら忘れられない、一度見たのにまた見たい。不思議な怪談の魅力に浸って下さい。

掲載2001年07月13日

「剣客商売」 軽妙酒脱。これぞ理想の隠居ライフ

(けんかくしょうばい) 1998年

掲載2001年07月13日

 池波正太郎特集の夏。代表作の一つ。
 知る人ぞ知る剣の達人・秋山小兵衛は、息子大治郎に道場を譲り、40歳も年下の娘を女房にして、悠々自適の隠居生活。が、人々に「大先生」と慕われ、剣の修羅場をくぐってきた小兵衛は、数々の事件に遭遇する...。
 この物語の面白さは、なんといっても登場人物にある。剣の道に行きながら、ふと若い女おはる(小林綾子)に「手を出して」しまう小兵衛(藤田まこと)の人間臭さ、対照的に女っ気がいっさいない堅物の息子大治郎(渡部篤郎)。権力者・田沼意次(平幹二朗)の娘で、これまた剣に生きようとする美人剣士・三冬(大路恵美)。その三冬が実は大治郎にちょっと気があるというのも興味深い。堅物同志の恋は実るのか...(原作では結婚しますが)他にも小兵衛を慕う岡っ引きの弥七(三浦浩一)や下っ引きの傘徳(山内としお)の町人気質、抑えた色気のある料亭不二楼の女将(梶芽衣子)などなど配役も豪華。
 真剣な立ち回りの場面もあり、焼きもち焼きのおはるに小兵衛がやりこめられるなどユーモアある場面もあり。もちろん、池波作品に欠かせない料理の数々も登場。
 現在、地上波で放送中の新シリーズでは、大治郎が「恩師の墓参に」旅に出ていることになっており、不在。このチャンネルでは大治郎ファンにはうれしい第一シリーズ、第二シリーズの一挙放送。存分にお楽しみを!

掲載2001年06月30日

「雲霧仁左衛門」地上波未放送の3話は必見!!

(くもきりにざえもん」ちじょうはみほうそうの3わはひっけん!!) 1995

掲載2001年06月30日

 7月の特集は「映像で綴る「池波正太郎の世界」第2章」ということで、注目作品が勢ぞろい。中でも「雲霧仁左衛門」は、通の池波ファンの間でも大人気の作品だ。
 享保年間。入念な準備と完璧な組織力で、「犯さず、殺さず、貧しき者からは奮わず」人を傷つけることなく大きな盗みをやってのける大盗賊“雲霧仁左衛門”。その探索を司るのは、火付盗賊改方だが、常に雲霧一味に出し抜かれ、煮え湯を飲まされてきた。が、新任の火盗の長官は、「全財産をなげうってでも、雲霧一味を捕縛する」と宣言。今までやる気のない長官にイライラしていた同心、岡っ引きたちを叱咤激励する。
 これと目をつけた商家に女賊“七化けのお千代”らを潜入させる雲霧。密偵を使い、雲霧一味の下っぱを追い詰める火盗。凶悪な盗賊一味との対決や、女につけこまれる火盗役人の裏切りもからみつつ、いよいよ押し込みの当日がやってくるが・・・騙し、騙されの緊迫感は、この作品ならでは。
 配役は、雲霧一味に山崎努、小頭の木鼠の吉五郎に石橋蓮司、お千代に池上季実子。火盗方は、長官に中村敦夫、与力山田藤兵衛に西田健、同心高瀬に鷲成功、密偵に増田恵子。
とにかく「なんとしてでも!!」とテンションの高い敦夫長官と、沈思黙考型の努雲霧の対決は見物。さらに大きな仕事を決意した雲霧との最終決戦をにおわす最終3話は地上波未放送のお宝編。これは見逃せない!

掲載2001年03月29日

昨日消えた男

(きのうきえたおとこ) 1941年

掲載2001年03月29日

 天下の二枚目、長谷川一夫扮する遠山の金さんが、謎の難事件に挑む。長屋の嫌われ者が殺される。長谷川“金さん”が探索に乗り出すと、彼に恨みを持つ者たちの怪しい行動が次々と明るみに。下手人は一体? 
 原作は、ハリウッドの人気探偵シリーズ「影なき男」。お白洲に登場した金さんが、絡み合う事件の糸を見事な推理で解き明かす。ミステリー・ファンにもオススメしたい本格推理時代劇。
 複雑な人間関係と、長屋の人情、金のいざこざなどから、死体は動かすわ、ポーズはとらすわ、金は盗むわの複雑な事件。にこにこしているだけで本当に推理してるのか? と思わせる“長谷川”金さんではあったが、そこはさすがに名奉行、ちゃんと真犯人にも目星をつけていたのであった。
 マキノ正博監督は、この作品を隣のセットで撮影中の渡辺邦雄監督に対抗して、9日間で撮ったという。映画全盛期ならではのエピソードも残る。艶っぽい山田五十鈴もいい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。