ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2001年03月16日

源氏物語

(げんじものがたり) 1951年

掲載2001年03月16日

 あの「源氏物語」を日本映画史に燦然と輝く美男スター、長谷川一男の主演で描く。監督は名伯楽、吉村公三郎、文豪、谷崎潤一郎が監修に名を連ねる。耽美派、谷崎が生み出す光源氏は、栄耀栄華と幾多の女性遍歴のなかにも憂いを秘める孤独な男だった。
 平安の華麗な貴族文化と、ため息が出るほどの美男源氏、京マチ子、音羽信子ら美女たちにも注目したい、カンヌ映画祭撮影賞受賞作品。
 「源氏物語」のタイトルは知っていても、読破したした人は少ないかも。ただの色男の物語だと思っていると大間違い。人間模様や恋愛観など、千年の時を超えて訴えかけてくるところは、さすがに紫式部、恐るべし!庭園、神殿建築、舞踊、音曲それぞれにそれぞれに時代考証役がついたという凝りようといい、大御所、谷崎の監修といい、映画全盛期ならではの贅沢を堪能できる。脚本が新藤兼人、助監督が後に「座頭市」、「子連れ狼」などで活躍した三隅研二だったというのもさすが!

掲載2001年02月27日

怪盗鼠小僧といれずみ判官

(かいとうねずみこぞうといれずみはんがん) 1981年

掲載2001年02月27日

 遠山の金さんと鼠小僧がじつは親友だった!? 
 放蕩無頼の若者だった金四郎とご政道に楯つく怪盗が
“次郎さん”
“金さん”
と懐かしい再会を果たしたのもつかの間、哀しい対決をする運命に…。“子の刻参上”の予告どおり、怪盗は一世一代の大仕事に挑む。
 鼠小僧に若山富三郎、金さんに緒形拳。桜吹雪に、おかめひょっとこの刺青と、ふたりの秘密は?ペリーを含めファンの多い若山富三郎主演の長編時代劇。
 本作は、新藤兼人脚本で奇想天外な設定ながら、しみじみ見られるのは、若山富三郎と緒形拳の貫禄があってこそ。ふたりが往時をしのんで座敷遊びで踊る(深川生まれの富三郎は、長唄の杵屋勝東治の息子。粋な仕種は血筋といえる)シーンは心に残る。
 また、驚異のウエスタン時代劇「賞金稼ぎ」(75年)などのイメージが強い富三郎だが、実は大盗賊役も多く、81年から単発で続いた「御金蔵破りシリーズ」では、毎回るルパンもビックリの大業を仕掛けたのが印象的。いつか“若山富三郎祭り”を放送する機会があったら是非ご覧いただきたい。

掲載2001年02月14日

御家人斬九郎2

(ごけにんざんくろう2) 1997年

掲載2001年02月14日

 名門の末裔ながら無頼の御家人、斬九郎の活躍を描く人気シリーズ。 グルメな猛母、麻佐女(岸田今日子)の胃袋を満足させるために、心ならずも罪人の介錯を副業にする斬九郎(渡辺謙)。江戸の闇からの挑戦に巻き込まれる斬九郎の豪快な殺陣と、母、麻佐女に弱いコミカルな場面のギャップは、何度見ても秀逸。スペシャル版はじめ、中村敦夫、
上杉祥三、伊藤蘭など個性派ゲストが続々登場するのも楽しみ。
 視聴者からの放送希望の声がもっともおおいシリーズのひとつを一気に放送中だ。初登場したときのキャッチフレーズは
“正義感なんて、スッカラカン”
並みの正義の味方とはワケが違うところが、斬九郎の魅力だ。
 なぜか金目当て(?)に縁談を押し付けられても、相手がウブだとわかると無げにも断れない斬九郎。なじみの美人芸者、蔦吉(若村麻由美)ともいい線まで行くのに、いま一歩信用されない遊び人だが、イザとなると鬼より怖い。渡辺謙のスケールの大きさを存分に生かした、気持ちいい時代劇。

掲載2001年02月08日

御家人斬九郎

(ごけにんざんくろう) 1995年

掲載2001年02月08日

 若い世代からもリクエストが殺到する人気シリーズを独占放送!
 名家ながら超貧乏な御家人の斬九郎こと松平残九郎(渡辺謙)は、剣豪だけど名うての遊び人。だけど食い道楽の猛母、麻佐女(岸田今日子)には頭が上がらない。仕方なく母の食い扶持を稼ぐために罪人の介錯を副業にしている。
 ストーリー展開は、八丁堀の友人(益岡徹)と難事件に巻き込まれたり、美人芸者、蔦吉(若村麻由美)と相思相愛になったりと忙しい斬九郎だが、豪快な太刀さばきは文句ナシのカッコよさ。
 柴田錬三郎の原作。松平家の見栄に振り回される武家の情けなさと、深川で遊んで生きようとする跡取り斬九郎の対比が面白い。息子が罪人の介錯をして稼いだ金で
“今宵は八百善(お気に入りの高級料亭ね)に…”
とイソイソ出かけようとする母、岸田今日子の怪演も爆発。
“おのれ九郎!!”
と、薙刀を振り回す母をダマしたつもりが、結局は母の思うつぼにはハマる斬九郎とのやり取りは何度見ても笑える。また、岸田今日子と渡辺謙の間にはさまれて、いつもオロオロする岡っ引き佐次役の塩見三省もいい味を出している。

掲載2000年11月30日

国定忠治

(くにさだちゅうじ) 1954年

掲載2000年11月30日

 上州国定村の馬子・忠治は、悪政と凶作に腹を立て、やくざの道に入る。運も手伝って親分格になるが、自分勝手な理由から他の親分を斬ってしまう。さらには、百姓の味方をしたつもりが裏切られ、追い詰められる忠治…。
 辰巳柳太郎が舞台での当たり役を人間くさく熱演。島田正吾はじめ新国劇の役者が総出演の大活劇。やくざの裏表、人の弱さにも迫る新鮮さがある。
「国定忠治」といえば、
“赤城の山も今宵限り…”
のキメゼリフが有名だが、この作品にはその場面はない。そのかわりに“そうだべ、そうだべ”
“ばかたれめ”
を連発し、勝手に人を斬ったり、友人の妻である初恋の女に乱暴をはたらく横暴なヤクザぶりを見せつけている。辰巳柳太郎は、田舎の暴れん坊をハイテンションで演じていて、シブさが光る島田との対比がいい。一時は百姓から、生き神様とまで言われながら最後は無視されるヤクザの哀しさなど、見どころの多い作品。

掲載2000年10月31日

剣客商売2

(けんかくしょうばい2) 1999年

掲載2000年10月31日

 飄々と生きる父と剣一筋の堅物息子。ふたりの剣客の活躍を描く池波正太郎の人気シリーズもいよいよ後半。行きずりの女(森口瑶子が好演)のために命を捨てた若侍と出会う「暗殺」、息子大治郎を想う老中田沼意次の娘、女剣客三冬(大路恵美)の「三冬の縁談」など、見どころの多い話が続く。主演は藤田まこと、息子に渡部篤郎。田沼意次役の平幹二朗もいい。
 池波の原作では大治郎と三冬は結ばれ、子どもも生まれるのだが、テレビのほうはどちらも奥手で気持ちを言い出せないまま。われわれ視聴者や世慣れた父、小兵衛がやきもきするほどなのであった。権力者の娘だからと理不尽は仕打ちを受けたり、卑劣な手を使う男たちに敢然と立ち向かう三冬には、ペリーも自分を見るようで応援したくなる。しだいに女らしい面も見せる三冬だが、料理はダメ、気が利かないなど、その人間味の描き方はさすがに池波作品。梶芽衣子、三浦浩一ら“鬼平組”の出番もうれしい。

掲載2000年10月17日

剣客商売

(けんかくしょうばい) 1998年

掲載2000年10月17日

 また見たい!との熱い要望に応えて、藤田まこと、渡部篤郎主演の第1、2シリーズを放送開始。孫ほどの若妻と悠々と暮らす老剣客、秋山小兵衛、剣一筋の堅物息子、大治郎。庶民から老中、田沼意次まで様々な人と事件に出会う剣客親子を描く。池波正太郎原作の江戸情緒や味覚、人間描写、殺陣の緊張感が生きた快作。夜12時の再放送もうれしい。
 泰平の世で剣によって生きるのは、“商売”と語る小兵衛と、その“商売”が下手な大治郎。その対比と息子の成長ぶりが面白い。実際に大治郎役の渡部篤郎は、だんだん殺陣に光るものを見せるようになってきた。とくに、眉墨の金ちゃん、妖怪小雨坊など奇怪な相手との対決は見もの。また、小兵衛の妻、おはるを演じる小林綾子の愛らしさ、いきつけの料亭「不二楼」の女将、梶芽衣子のこなれた演技、もっとも難しい役、時の老中、田沼意次の娘で女剣士の三冬役の大路恵美ら女優陣にも注目。

掲載2000年09月14日

鞍馬天狗

(くらまてんぐ) 1981年

掲載2000年09月14日

 幕末の京都。新撰組相手に颯爽と戦う黒覆面の男。ヒーロー中のヒーローに長身の二枚目、草刈正雄が挑戦。トレードマークの短筒もバリバリのSWリボルバー。ほとんどスパイ映画のカッコよさ。彼を慕う杉作少年を当時のアイドル、伊藤つかさ、宿敵、近藤勇に財津一郎、土方歳三に細川俊之などユニークな配役、後藤利次の音楽など斬新な天狗作品。 天狗と言えば、代表的な嵐寛寿郎はじめ、歴代の天狗が覆面はしても顔は覆わなかったのに、草刈版では、本人の提案で目だけを出した文字通りの覆面姿。敵に囲まれても、アラカンのようにバッタバッタと斬り倒すというよりは
“いづれも浅手。死ぬことはない”
とキザなセリフとともに去っていくのが、草刈版の特徴だ。キャストでは、ほかに桂小五郎に岡田裕介、元盗賊の吉兵衛に西村晃など。杉作が実は女の子だったという設定が、最終回に生きてくるのだが、その辺は見てのお楽しみ。

掲載2000年08月29日

軍兵衛目安箱

(ぐんべえめやすばこ) 

掲載2000年08月29日

 八代将軍吉宗の頃、庶民の訴えを聞くために設置された目安箱。そのなかから見捨てられた訴状に目をとめ、密かに事件を解決しようとした老中がいた…。主演は片岡千恵蔵。67歳にしてテレビ時代劇初登場の記念碑的番組。晩年の深みある存在感と、推理に立ち回りに大活躍する姿がカッコいい!渡辺篤史、倉丘伸太郎、亀石征一郎ら、若手の配役も充実。
千恵蔵は、27年歌舞伎界から映画界に進出。9月にこのチャンネルで特集する鞍馬天狗で一世を風靡した嵐寛寿郎とは、終生のライバルと呼ばれた。映画では「瞼の母」、「赤西蠣太」、「国士無双」、「判官シリーズ」、「血槍富士」、「大菩薩峠」、「十三人の刺客」など、時代劇の傑作に出演。テレビではこの「軍兵衛目安箱」や、「大岡越前」のご隠居・大岡忠高役(大岡越前の父)が印象深かった。83年に千恵蔵が亡くなると、「大岡越前」の番組のなかでもご隠居が亡くなったことに。ほかの俳優では替われない存在感だったってことだな、納得。

掲載2000年08月29日

怪傑黒頭巾

(かいけつくろずきん) 1981年

掲載2000年08月29日

幕末の動乱。庶民のピンチに愛馬ハクセツを駆って、颯爽と登場する、天下のヒーロー、怪傑黒頭巾! 戦前から少年少女に親しまれた正義の味方を、若山富三郎がキリッと見せる。乱れた世に乗じた強盗浪人、悪徳役人との対決。長屋の人情。痛快時代劇のすべてがあるといってもいい番組だ。どこからともなく現れる黒頭巾は後に登場するたくさんのヒーローたちの手本にもなった。主演の若山富三郎は珍しくひとり三役に挑む。二宮さよ子、加藤嘉、岸田森ほか共演者もクセ者そろいで、お楽しみ。
若山富三郎は、テレビ時代劇では昭和48年の「唖侍・鬼一法眼」(チャンネルに放送を希望するリクエストが多数寄せられているらしいぞ)や、昭和50年の「賞金稼ぎ」(ライフルは撃つわ、ショットガンはぶっ放すわ、おまけに馬にまたがりやってくる様はまんま西部劇)、映画では「子連れ狼・子貸し腕貸しつかまつる」などに主演。明朗な時代劇より、ワイルド系のイメージが強い。その意味では「怪傑黒頭巾」は、すごく明るい感じ。現代劇での、貫禄を生かした味のある役と見比べるのも一興かも。ペリー的には、弟の勝新太郎との共演作もじっくり見たいところだ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。