ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2002年12月27日

「くノ一忍法帖Ⅲ秘戯伝説の怪」2002年最後の日曜日。大掃除が終わったら、セクシーくノ一シネマでお寛ぎを。

(くのいちにんぽうちょうすりーひぎでんせつのかい) 1993年

掲載2002年12月27日

 将軍・徳川家定の世継ぎを待望する人々にとって、どうしても欲しい「巻物」が、性の奥義を記すという「医心方房内篇」であった。しかし、それを阻止しようと朝延が動き、幕府と熾烈な争奪戦に。その最前線に赴いたのが、甲賀のくノ一と、伊賀の忍者たちなのだ。その争いに巻き込まれた純愛カップルの運命とからめつつ、戦いは佳境に入る。
  お察しの通り「秘戯」とはお色気なのだが、幕府と朝延が本気で争うその巻物にはいったい何が書いてあるのか。凡人には想像もできないが、そのために命をかける運命の忍者って、つくづく大変だ。
  主演は清純派にして演技派の若林志穂。共演は、小松美幸、長谷まりのらきれいどころに、ベテラン悪役の遠藤太津朗、伊藤敏八と楽しみな面々が揃う。
  とにかく一度見たら、また次が見たくなると好評なのが、「くノ一忍法帖シリーズ」。原作者・山田風太郎の斬新なアイデアにはつくづく感動してしまう。同日放送される「くノ一忍法帖Ⅳ忠臣蔵秘抄」(主演・上野正希子)では、なんとあの「忠臣蔵」の討ち入り阻止のために、くノ一が色仕掛けを駆使するという。赤穂浪士たちは、くノ一のお色気に打ち勝てるのか?ますます興味津々の「くノ一忍法帖シリーズ」。年内最後の日曜日、じっくり堪能したい。

掲載2002年11月08日

「帰って来た木枯し紋次郎」あの紋次郎が堅気に!?作者・笹沢左保×監督・市川崑×主演・中村敦夫が帰ってきた!!

(かえってきたこがらしもんじろう) 1972年

掲載2002年11月08日

 破れた三度笠に汚れた縞合羽。口にくわえた長い楊枝。無宿渡世の孤独な男、木枯し紋次郎は、五年前、壮絶な死闘の末に、木曽川に転落し、死んだと思われていた。しかし、実際は木こりの頭に救われ、自らも木こりとして山深い村に木こりとして生きていたのであった。すっかり堅気になっていたはずの紋次郎だが、恩のある木こりの頭に、渡世人になって悪事に加担している息子を連れ戻してほしいと頼まれ、再び旅立つことになる...。
 意外にも木こりとしてカントリーライフを送っていたとは。紋次郎ファンには驚きの展開だが、やはり、静かな生活は長くは続かない。実は笹沢左保の原作にも「帰ってきた木枯し紋次郎」シリーズがあり、そこでは、他人の内訳話に紋次郎の方から質問するなど、以前の紋次郎より少し他人との距離が近くなったような気がして興味深い。このテレビ作品は、原作者がオリジナル・シノプシスを執筆し、監督はテレビ版紋次郎の産みの親・市川崑と本家本元による。72年に初めて紋次郎がテレビに登場してから、実に22年を経た紋次郎だ。原作ではしばしば年老いた渡世人の哀しい末路を描いた本シリーズだが、さすがに中村敦夫には独特の貫禄がついている。共演に坂口良子、岸部一徳、鈴木京香、金山一彦、石橋連司など。あの主題歌とともに楽しめる。

掲載2002年11月01日

「鞍馬天狗 御用盗異変」チャンバラスター大集合!!「七剣聖と呼ばれた男たち」の幻の名作をご覧あれ。

(くらまてんぐ) 1956年

掲載2002年11月01日

 嵐寛寿郎、市川右太衛門、大河内伝次郎、片岡千恵蔵、月形龍之介、長谷川一夫、阪東妻三郎。日本映画黄金期に大暴れした七人のスターを、世の人々は「七剣聖」と呼び、親しんだ。最近では名画座でもなかなか全員集合ということは難しかった七人の作品を、今月は一挙公開というお楽しみ企画。
 まず、五十音順で一番始めのスターは、嵐寛寿郎。アラカンの十八番といえば、やっぱり「鞍馬天狗」だ。
 幕末奉還を表明した後も、徳川幕軍と薩摩軍勢は対立していた。薩摩側は、密かに「御用盗」なる集団を作り、江戸で暗躍。庶民の徳川不信の情を煽ろうと画策した。御用盗たちは、強盗はやるわ、誘拐はするわの悪行三昧。鞍馬天狗は、同じ勤皇の士として薩摩に悪行をやめるよう説得するが、無視され、単身江戸に乗り込む!天狗を慕って江戸までやってきた杉作少年(松島トモ子)とともに、鞍馬天狗は、御用盗を成敗できるか?
 それにしても、顔は隠れてないし、白昼ではかえって目立つ覆面姿の天狗さま。「覆面」についていろいろ考えさせられる作品だが、コスプレできる覆面だったからこそのヒットだったのかもしれない。共演には現役大臣の扇千景ほか、神代錦、雅章子ら華やかな面々も登場。

掲載2002年10月25日

「木枯し紋次郎」原作者・笹沢左保さん逝く!作者が最期まで大切にした主人公の生き方が胸に染みる。

(こがらしもんじろう) 1972年

掲載2002年10月25日

 10月21日、「木枯し紋次郎」の作者・笹沢左保氏が、肝細胞ガンで亡くなった。60年に「招かれざる客」で江戸川乱歩賞次席でデビュー以来、四十年余りの作家生活。ガンがわかっても通院しながら執筆を続けるという、紋次郎の産みの親らしい、強い意思の人であった。享年71歳。
 生前、紋次郎シリーズの執筆風景が紹介されたが、そのこだわりぶりはすごがった。まず、街道の地図を詳細に調べ、その風景や気候を考える。紋次郎の足の速さと、街道の道のりを計算して、一日にどれほど進み、どこでどんな人と出会うかを想像していく。ペンより先にその手にあるのは、地図にあてて図る物差しである。緻密な構成と丁寧な描写は、この辺りからきているのであった。
 テレビ画面でも笹沢原作の通り、中村敦夫の紋次郎は、ぼろ雑巾のような旅装束の渡世人で無口で無愛想。ただし、原作でもテレビでも路銀を落として、飢えた挙げ句、預かり金で博打をするなど、ストイックというよりは、時には失敗もする人間臭い一面を見せたりする。そして、元俳優志望の作者も、一度だけ自ら「紋次郎」に出演。選んだ役は国定中治だったという。ガンと戦ったタフな作家というようりは、シャイでお茶目な人だったのかもしれない。新作が出ないのはさびしいが、せめて画面で紋次郎に会おう。合掌。

掲載2002年09月27日

「くノ一忍法帖自来也秘抄」中島美智代&大西結花主演のセクシー時代劇二連発。究極忍法“清水波”って何!?

(くのいちにんぽうちょう じらいやひしょう) 1995年

掲載2002年09月27日

時代劇のセクシー路線では、「大奥」「くノ一」が二大テーマだが、今回は、「くノ一」ものの傑作、山田風太郎原作の「自来忍法帖」「忍者月影抄」を、豪華キャストで制作した劇場版の二連発。
 その1「くノ一忍法帖自来也秘抄」は、子だくさんで有名な11代将軍家斉の33番目の男子徳川石五郎が婿に来る。乱れた藩内には、さまざまな陰謀が渦巻く。水面下では、伊賀くノ一と甲賀忍者の死闘が繰り広げられる...。お姫様役にアイドル歌手の中島美智代。速水典子らが繰り広げる女の戦いにプロレスラー藤原嘉明、伊藤敏八、遠藤太津朗らが、どうからむ?見どころは多いが、注目したいのは、くノ一らの必殺技。くノ一忍法精水波とは!?・・・とてもここには書けません。他にも「乱蛇体」「爪火舞」「火災乳」など、想像を絶する技の数々。荒唐無稽な山田風太郎の世界を映像化したパワーはすごい。第二弾「くノ一忍法帖忍者月影抄」は、元スケ番刑事・大西結花主演。こちらにも南蛮妖術「母如礼縫亡」(ボジョレーヌーボーって読めました?)が登場。ああ、どこまでいくのか、くノ一たちよ。
 日曜深夜。おとなのみなさん、セクシーなくノ一たちのすごい技をたっぷりお楽しみ!

掲載2002年08月30日

「荒野の素浪人」三十郎の三倍強い!剣豪と泥棒見習いとガンマンの三人組が行く。ちょんまげ西部劇。

(こうやのすろうにん) 1972年

掲載2002年08月30日

 三船敏郎といえば、もちろん、黒澤映画の主演男優「世界のミフネ」として知られているが、テレビでは、映画とはひと味違ったユニークな活躍を見せる。
 そもそも「荒野の素浪人」の主人公・峠九十郎というキャラクター誕生のきっかけは、映画「用心棒」の桑畑三十郎や「椿三十郎」の“三十郎”の三倍強い、ことから命名されたという。名前を倍掛けする発想もすごいが、なんで「三倍」だったのか。二倍で六十郎も、四倍で百二十郎も、ゴロが悪いというのはわかるけど。その倍掛けネームを世界のミフネがオッケーと承諾したというのも、なかなかいい話だと思う。
 そんな九十郎がいかに強いか。それは一度に三人以上を殺傷するすごいオリジナル必殺剣「八方達磨返し」に現れる。この技、前を斬った瞬間、太刀を左手に持ちかえて、後ろを刺し、同時に右手の小刀で前のもうひとりを攻撃するという瞬間技。さすがに三船敏郎以外にできる技じゃない。
 この番組のもうひとつの魅力は、九十郎のふたりの相棒だ。忍術の心得があるらしき泥棒見習いの香具師の二郎吉(坂上二郎)と、五連発銃をぶっ放す“五連発の旦那”こと鮎香之介(大出俊)。宿場の悪と対決する三人にヒューッとからっ風が吹く。これはまさに西部劇。理屈抜きで楽しみたいシリーズ。

掲載2002年07月13日

「御金蔵破り」 若山富三郎の隠れた人気シリーズ。富三郎VS花沢徳衛の“執念対決”に注目。

(ごきんぞうやぶり) 1981年

掲載2002年07月13日

若山富三郎の時代劇というと「子連れ狼」シリーズやテレビの「唖侍・鬼一法眼」「賞金稼ぎ」などがあるが、実はこの「御金蔵破り」も隠れた人気シリーズ。
伝馬町の牢で五年のつとめを終え、婆姿に出た土蔵破りの名人・大蛇の富蔵(富三郎)。佐渡金山で非業の死をとげた父の恨みを晴らそうと、五年の間に練りに練った計画は、「江戸城の御金蔵破り」だった。相棒に選んだのは、牢で知り合った二枚目の遊び人の半次(林与一)だが、この半次には、賭場を荒らされてつけ狙う弥太五郎一家という敵がいた。さらに富蔵の動きを執拗に追う目明かしの勘兵衛(花沢徳衛)。富蔵は、人々の目をくらますために花火大会を計画実行の日に選ぶが・・・。
己の技を駆使して、天下の御金蔵を狙う富蔵と自分のカンを信じて張りつく勘兵衛。お互い一歩も譲らない、執念親父と執念親父の対決は決着は?また、あっと驚く盗賊の仕掛け技もこのシリーズならでは。共演は他に宇津宮雅代、岸田森、岸田今日子。
弟・勝新太郎に比べ、アクは強くないが、実は殺陣のうまさには定評があった富三郎。この番組でもとても60代とは思えない活躍ぶりを見せる。さらに独特の低音で「俺がいただく」なんて言われると、ぞぞーんと背中に響く。味のある俳優であった。

掲載2002年04月12日

「ご存じ金さん捕物帳」道を歩きながら、いきなり歌うお陽気奉行。笑って踊れる橋幸夫版金さん。

(ごぞんじきんさんとりものちょう) 

掲載2002年04月12日

 長寿時代劇の中でも、ひとつの役をいろんな役者が演じたという点では「金さん」シリーズが一番。中でも、もっとも若々しい金さんとして登場したのが、この橋幸夫版だ。
 初代中村梅之助、二代目市川段四郎と、ポッチャリおとな顔が続いたのに対して、三代目の橋金さんは、顔はすっきり面長で肌もつやつや。町人姿になっても、足元軽やかで、道を歩きながら、突然♪生まれついての一本気〜、お江戸お江戸八百八町〜などと歌いだす。まるでミュージカルのようなこの展開。歴代金さんの中でも、もっともお陽気な奉行なのだ。テレビ朝日系で制作されたリシーズの中では、唯一の歌手出身者で、カルト的注目度も高い。しかもただお陽気なだけではない。立ち回りでは、ピピーッと花札を投げて武器にする。金さんに特定の技がある設定も珍しい。お侍育ちのくせにいつ花札投げの技など取得したのか...底知れない力を秘めた奉行なのである。いよいよお白州では「白だか黒だか知らないが、この桜吹雪を散らせそこなったのが運の尽きでい!」と啖呵一発。悪者どもを黙らせる。
 この他、ねずみ小僧志願の山田太郎、珍妙な発明家の柳沢真一、お奉行が心配でたまらないじいの大友柳太朗など、コメディ的場面が多いののも、橋版金さんの特長。細かいことは気にせずに、カラッと笑って一件落着。ぜひ、金さんとお陽気に歌い踊りたい。

掲載2002年04月05日

「雲霧仁左衛門祭り」山崎努の渋さが最高に活きた一本。池上季実子の変身ぶりとスペシャルトークも楽しみ。

(くもきりにざえもんまつり) 

掲載2002年04月05日

 山崎努は最近、ビールのCMなどで「渋いのにコミカル」な面が浸透しているが、この「雲霧」では、渋さの本道を見せつけている。“犯さず、殺さず、貧しい者からは盗まず”の掟を守り、江戸から上方までの大仕事をしてのける大盗賊・雲霧仁左衛門。その手口は巧妙を極め、例えば一味の美女・七化けのお千代を堂々と大店の後妻に嫁がせ、後に盗むというロングラン&超大作だ。おかげで代々の火盗改めも手も足も出なかったが、ここで協力なライバルが登場した。火盗の新長官・阿部武部(中村敦夫)だ。正義のためならカッと熱くなるのは、中村敦夫にぴったり。
「わたしは丸裸になろうとも雲霧一味を捕らえてみせる!!」と宣言すると、いままでダレてた同心や密偵たちもやる気を出し、とうとう雲霧一味のしっぽをつかまえてしまう。
 しかし、そこで芋づる式にならないのが、雲霧。今度は火盗のひとりスパイに引きずり込み、阿部式部、雲霧と対立する凶悪盗賊団と対決することに...。
 ひたすら雲霧を慕うお千代のむせかえるほどの色香や、一味の小頭(石橋蓮司)のぞくっとする怖い顔など、キャストは豪華版。地上波では見られなかった雲霧最後の大勝負は必見。池上季実子のスペシャルインタビューでは、公家の女から女盗賊に早変わりするなど「お千代の世界」を堪能できる。画面から再び、むせかえる色香が...。お楽しみに!

掲載2002年02月15日

「帰ってきた木枯らし紋次郎」二十年分の渋みを加えた敦夫紋次郎。岸部一徳、鈴木京香も共演の長編。

(かえってきたこがらしもんじろう) 

掲載2002年02月15日

 上州新田郡三日月村に生まれた天蓋孤独の渡世人、人呼んで木枯し紋次郎。かつては口には長い爪楊枝が目印の、腕のたつ旅人だった。その紋次郎が五年前、壮絶な戦いの末に木曽川の谷底に消えた。てっきり死んだと思っていた紋次郎が、実は木こりの頭に助けられ、木曽山中で木こりとして生きていた!
 谷底に転落、実は生存というパターンは少なくないが、その後、木こりになっていたとは...。テレビ初登場(72年)から二十年以上もたって「帰ってきた」中山敦夫紋次郎。刻み込まれたしわや貫禄は、リアルで渋い。
 定職を得、ひとつところに落ちついたのも束の間、木こりの頭の息子が渡世人になって悪事に加担。連れ戻して欲しいと頼まれた紋次郎は、再び渡世の道へ舞い戻るハメに...。
 以前も長患いをして、そこに腰を落ちつけるのかと思ったら、やっぱり旅に出た紋次郎の話があった。その時も今回も新品がないわけでもないのに、結局、いつもの破れ三度笠と汚れ縞合羽を選ぶ紋次郎。彼なりのコーディネイトでないと落ちつかないのか、それともジンクスなのか。実は時代劇の主役の中でも密かに衣服にこだわる男なのである。
 市川崑演出は、若くはない紋次郎の悲しみまでも画面に出し、泣ける。岸部一徳、鈴木京香、加藤武、石橋蓮司ら共演者もいい味、股旅好きにはたまらない長編。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。