スペシャルコンテンツ(SPECIAL CONTENTS)

80年代、多くの時代劇ファンを魅了した「御宿かわせみ」。30年の時を経て、その新作に主演する心境とは?

「これだけ時を経て、また年を重ねたるいを演じられる。夢かと思いました。うれしかったのは、小野寺さん、山口さん、結城さん、黛監督はじめ、美術さんや衣装さんなど、当時の共演者やスタッフも参加してくれて、『かわせみ』の世界をきちんと作り上げてくれたこと。新しいセットのかわせみは、当時より少し広い印象ですが、部屋の唐紙ひとつもわざわざ京都でしつらえるスタッフのこだわりから生まれる情感はそのまま。私はアメリカ育ちで、なんでも結論から話すなど、言動が外国的と言われますが、この作品の美しい日本語、縁を大切にする人々の生き方は心にしみます」

新作の舞台は明治。維新の混乱の中、幕府の軍艦に乗り込んだ東吾は消息不明に。ひとり娘・千春たちと宿を守るるいのところに、大けがをした若者(三浦貴大)が担ぎ込まれる。それは東吾の親友・畝源三郎暗殺の犯人につながる大きな事件へと発展する…。

「旅籠のホームドラマと、事件の謎をとくサスペンスドラマ。二重構造の面白さが大きな魅力ですね。旅籠の番頭役の笹野高史さんと女中頭役の結城美栄子さんとのやりとりなんかは、私も役を忘れて大笑いしてしまうくらい楽しい。一方で、るいは大切な人がいないさびしさをかみしめている。こんなに一途に旦那様を愛せたら素敵ですよね」

るいと東吾の別れの場面、義姉役の岸惠子、東吾と関りを持つ僧侶役の津川雅彦ら新たに加わった豪華キャストとのシーンは、胸に迫る。

「軍艦に乗り込むため、かわせみを出ていく軍服の東吾を、るいが思わず足袋裸足で追いかけて後姿を見送る、別れの場面は、脚本にはなかったもの。演出の黛さんもあの場面は何度も使われました。いいシーンになったと思います。でも、小野寺さん、もうちょっと出てほしかった(笑)。岸さん、津川さんとのシーンは、私の宝物です。まだ咲いていない桜を映すため、雪が残るほど寒い中、手作業で木に花をつけてくれたスタッフ、共演者の方々、みなさんに支えていただきました」

また、三浦貴大、渡辺大など、若い世代のキャストとの共演。

「今回は、渡辺謙さんの息子の大さんが、東吾さんの子、留学帰りの医師で神林麻太郎役。私は、デビュー間もない渡辺謙さんの母親を演じたことがあって、七つしか年齢が違わないのに、謙さんから『母上』と呼ばれて困ってます(笑)。若い方たちは感性豊かで演技も素晴らしいですね。私も刺激を受けました」

この30年は、るいも、真野さん自身も多くの出会いや学びを積み重ねた日々だった。

「新作のるいは妻となり、母となり、そして江戸から明治へと時代の激動を経験して、さらに腹がすわった女性になっている。るいが『私はここで生きていく』と空を見上げるシーンは『風と共に去りぬ』のような希望を持てるシーン。激動の中で賢く生きた人の姿を見れば『まだまだ捨てたもんじゃない』と感じていただけるはず。私はテレビシリーズが終わったころ、あまりに多忙で自分の時間がなく、女優を辞めたいと思ったこともありました。でも、辞めなくて新作に出演できて、本当によかった。ぜひ、多くの方に『かわせみ』を楽しんでいただきたいです」

ページTOPへ戻る サイトTOPへ戻る