
■第6回 「忘れられない月形龍之介の言葉」
栗塚さんの代表作のひとつ「用心棒シリーズ」は、「新選組血風録」の脚本家・結束信二、監督・河野寿一が作り出したオリジナル作品。その第一弾「俺は用心棒」第一話のゲストは、近衛十四郎であった。旅を続ける浪人・山川大蔵(近衛)が、たまたま助けた美女の敵は、用心棒(栗塚旭)が狙う悪人と同じ人物だった。終盤、ふたりがすれ違うシーンは、とても印象的だ。
「用心棒シリーズは、人気が出てたくさんの著名スターが出演してくださった。近衛さんと共演できたのも、すごくうれしかったですよ。大スターなのに、気さくな方で、とにかく釣りが大好き。息子の松方さんもそうですよね(笑)。近衛さんは、撮影が終わると浴衣姿のまま車に乗り込んで日本海に出かけちゃう。楽しい方でした」
他にもゲストは多彩だ。
「近藤正臣さんはデビューしたばかりで、まだ京都の実家の料理屋さんをときどき手伝っていたみたいでした。若くて二枚目でね。悪役のみなさんも、小池朝雄さん、藤岡重慶さん、面白い方が多かった」
中でも忘れられないのが、月形龍之介の言葉だという。
「『帰ってきた用心棒』に出てくださったときには、あまりお体がよくなかったようでしたが、それでも芝居に品があってね。素晴らしかった。僕は月形さんが『姿三四郎』の敵役をされた作品が大好きで、憧れでもありました。一度、ご自宅に呼んでいただいたら、庭には池や木があって、とてもりっぱなんです。思わず、素晴らしいお宅ですねと感想を言ったら、月形さんは『時代劇をやる俳優が、マンションの戸をガチャンとやって出てくるようじゃ、侍にはなれないだろ』と仰った。僕はその心がけが、あの渋くていい演技につながるんだなと、わかった気がしました。池や木を自宅の庭に置くのは難しいけれど、日頃から心がけをすれば、僕にも侍の味が出せるかもしれない。月形さんの言葉は今も心に刻んでいます」
※次回は12/15を予定しております。
連作コラム「ペリーのちょんまげ」でお馴染み
ペリー荻野プロフィール
1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。
「anan」「ひよこクラブ」で女性向けのエッセイ、毎日新聞、産経新聞ビデオサロン、「じゃらん」等では時代劇コラムを連載中。史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。TBSラジオにもレギュラー番組を持つなど時代劇ブームの仕掛け人となる。
著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。最新刊は月刊誌「ビデオサロン」(玄光社)に連載中のエッセイ"ちょんまげ漫遊記"を加筆した。「ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)。当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。