ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2011年04月01日

『鬼平外伝 夜兎の角右衛門』
中村梅雀、石橋蓮司、平泉成らの熱演で
「鬼平」の原点、盗賊の生き様の描く

(おにへいがいでん ようさぎのかくえもん) 2011年

掲載2011年04月01日

盗賊・夜兎の角右衛門(中村梅雀)は、父角五郎(中村敦夫)の跡目を継ぎ、頭となった。夜兎の一党は「盗まれて難儀をするものへは手を出すまじきこと」「つとめをする時、人を殺傷せぬこと」「女を手ごめにせぬこと」の三か条を堅く守っていた。しかし、偶然知り合った女おこう(荻野目慶子)が、自分のした盗みのせいで、右腕を失ったと知った角右衛門は、家族も仲間も捨てて、自ら火付盗賊改方に名乗り出る。そこから、彼の運命は思わぬ方向に動き出す。作家・池波正太郎が「鬼平犯科帳」を書く前に手がけた盗賊たちの物語「にっぽん怪盗伝」の中の「白波看板」をベースにした作品。盗賊の「看板」の意味から、人間にとって何が一番大切かというところまで踏み込む深い味わいがある。
「京都の現場は気持ちいい」と語る梅雀演じる角右衛門が、先代からの仲間・捨蔵(石橋蓮司)と別れる場面などは、鬼気迫る迫力。火盗の一員である平泉成、盗人くちなわの平十郎の本田博太郎など、京都時代劇を知り尽くした面々の熱演にも注目。一方で、不幸な目に遭いながら心に清らかなところを持ち続けたおこうは、荻野目慶子しか出せない雰囲気。私はおこうが角右衛門とうなぎを食べるシーンに立ち会ったが、休み時間もおこうになりきる彼女の集中力には脱帽。寒い中の撮影でも、現場は熱気にあふれていた。

掲載2011年02月25日

『おろしや国酔夢譚』
「ここは地獄」から日本を目指した漂流民
女帝エカテリーナに謁見した日本人の真実

(おろしやこくすいむたん) 1992年

掲載2011年02月25日

1782年、大黒屋光太夫(緒形拳)ら17名は嵐で難破し、伊勢白子から、9ヵ月漂流後、はるか北の果てカムチャッカに漂着。原住民や毛皮を獲りにきたロシア人に拉致された一行は、言葉を覚えながら、脱出の方法を探るが、極寒の環境で張るまで生き残れたのはわずか6人。便乗してオホーツクに行くはずの船も難破。光太夫らは、流木などで二年掛かりで船を手作りし、オホーツクにたどり着く。しかし、ここでも日本へ帰る許可を与えるイルクーツクの総督は一年以上先にしか来ないといわれる。今度はイルクーツクを目指し、犬ぞりを出す一行。ついに女帝エカテリーナに直訴までして帰国を望む彼らを待ち受けていたのは、さらに過酷な運命。なんてこと!
原作は史実を基にした井上靖の同名小説。凍りつく雪原を出発する際、光太夫は言う。「これからは人に頼るな。頼られた者が危ない」つまり、脱落したら助け合ってはいけないということだった。途中、そりから落ちた庄蔵(西田敏行)は「ここは地獄だ…」。庄蔵は凍傷がもとで片足を斬りおとす。
どんな環境にいても「親方」と光太夫を中心に結束する面々の心意気がいい。若き船員沖田浩之の熱演もみどころ。光太夫の心を知り、助けを出す自然学者のラックスマンの友情にもぐっとくる。「望郷」とはどんな心なのか。しみじみとする歴史ロマン。

掲載2011年02月18日

『悪役列伝』
悪徳商人に悪代官!この貫禄はマネできない。
時代劇のもうひとのり主役「悪役」大集合

(あくやくれつでん) 

掲載2011年02月18日

『悪役列伝』この企画に「待ってました!」と声をかけた方も多いのでは?
憎々しげな存在感、主役を食うほどの貫禄。でかい悪役がいなければ、時代劇は面白くない。その大物悪役大集合企画の幕開けを飾るのが、川合伸旺(1932~2006)。「暴れん坊将軍」など数多くの作品で活躍した本格派。ファンの間では「ミスター悪代官」とも呼ばれるほど。「悪代官」フィギュアのモデルにもなったといわれる。アクションも厭わず挑戦する人で、萬屋錦之介の「子連れ狼」では、太い杖に鎖を仕込んだ「振杖」で拝一刀に襲い掛かり、名場面のひとつになっている。
今回放送される「大江戸捜査網」の左文字右京役の松方弘樹とは、しばしば共演しているが、放送された81年当時は川合伸旺がちょうど50代にさしかかる頃で、心身ともに円熟期にさしかかった時代。番組は、岡江久美子、南条弘二、大山勝巳が新レギュラーになった時期にあたる。
ペリーがもっとも多く取材した悪役さんのひとりで、素顔はとても優しい紳士。童画を描くのが得意で個展も開く腕前であった。同郷(愛知県豊橋市)の松平健公演の常連で、フィナーレのマツケンサンバでは、きらりと光る浴衣姿でにこにこと登場した姿が忘れられない。やってみたい役はの質問に「引退した雲霧仁左門」と答えておられたのも印象的。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。