ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2021年07月23日

「丹下左膳 飛燕居合斬り」
百万両の壺を追え!! 林不忘の人気作を中村錦之助×五社英雄で映像化。
大友柳太朗の大岡越前、鉄火姐御お藤の淡路恵子、盗賊藤岡琢也と多彩な顔ぶれも見もの

(たんげさぜん ひえんいあいきり ) 出演者:中村錦之助/木村功/淡路恵子/入江若葉/丹波哲郎/大友柳太朗 ほか 1966年

掲載2021年07月23日

丹下左膳 飛燕居合斬り
丹下左膳 飛燕居合斬り
©東映

 八代将軍吉宗の治世。裏で暗躍する愚楽老人(河津清三郎)は柳生藩取り潰しを狙って、日光東照宮改修を命じる。困った柳生但馬(丹波哲郎)は家宝「こけ猿の壺」に秘められた百万両で資金を賄うことを決意。だが、壺はひょんなことからチョビ安(金子吉延)の手に。壺を巡って柳生源三郎(木村功)、盗賊のお藤(淡路恵子)、与吉(藤岡琢也)、さらに公儀隠密の争奪戦が繰り広げられる中、その渦の中心に、愛刀濡れ燕と飛燕居合斬りで悪を討つ隻眼隻手の剣士・丹下左膳(中村錦之助)が現れる!

 ご存知、林不忘の人気作を錦之助主演、フジテレビの五社英雄演出で映像化。五社起用の理由は、テレビ「三匹の侍」で見せたスピード感と予算内で作り上げる新感覚の画と言われるだけに、お藤が走りながら帯を解き、肌襦袢一枚になって敵の目を惹きつけたり、「俺から離れるんじゃねえ」と与吉に声をかけながら、次々と敵を倒す左膳を斜め下から狙うシーンなど、五社テイストが随所に見られる。また、かつて左膳を演じた大友柳太朗が町奉行大岡越前として登場。「おぬしのような化け物が江戸にいては、御用が務まるか心もとない」などと左膳に語り掛け、いい味を出す。可憐な許嫁(入江若葉)がいた左膳の過去も明らかになるが、なんといっても下緒を口にくわえてすっと刀を抜く時の錦之助の色っぽさがたまらない。強敵(天津敏)との対決はみどころ。

掲載2021年02月26日

「立花登青春手控え」
藤沢周平の「獄医立花登手控え」を溝端淳平主演でドラマ化した第1シリーズ
囚人たちにからむ事件から人生の明暗を学ぶ若き医師の成長と活躍を描く

(たちばなのぼるせいしゅんてびかえ(しゅえん:みぞばたじゅんぺい) ) 出演者:溝端淳平/平祐奈/宮崎美子/マキタスポーツ/波岡一喜/鷲尾真知子/石黒賢/古谷一行 ほか  2016年

掲載2021年02月26日

 立花登(溝端淳平)は、医学を志し、江戸の町医者である叔父の玄庵(古谷一行)を頼って、秋田から出てきた。しかし、玄庵は酒好きで患者も少なく、登は、叔母(宮崎美子)には雑用を言いつけられ、遊び好きの玄庵の娘・ちえ(平祐奈)からはからかわれる毎日。そして、叔父一家の家計を助けるために小伝馬町の牢医となる。ある日、登は島送りとなる囚人・勝蔵(瀬川亮)から「自分の分け前を仲間から受け取り、女に渡してほしい」と頼まれる。依頼を引き受けた登は、腕のいい職人の勝蔵が、惚れた女おみつ(水崎綾女)に手を出した男を殺害した事件に疑問を抱く。その裏には意外な悪巧みがあったのだ。牢役人の平塚平志郎(マキタスポーツ)やベテラン岡っ引きの藤吉(石黒賢)から「あまり囚人に深入りするな」と注意されても、放っておけない正義感の強い登は、事件に巻き込まれ、人間の強欲や裏切りを知ることになる。

 原作は藤沢周平の「獄医立花登手控え」。82年に中井貴一主演でドラマ化されているが、その際にちえを演じた宮崎が今回は母親役、平塚役だった篠田三郎がナレーションを担当している。溝端はこれが初時代劇だが、制作スタッフからも真摯な登にぴったりと絶賛された。世の底辺に生きる人と出会い、周囲のおとなや道場仲間に助けられながら、得意の柔術で事件に立ち向かう二十歳の登が成長していく姿を一話完結で描く。青春時代劇の名作。

掲載2021年02月05日

「ちかえもん」
松尾スズキ演じる近松門左衛門が「学生街の喫茶店」「傘がない」を熱唱!?
「曾根崎心中」誕生までのドタバタを奇想天外な流れで描き、向田邦子賞を受賞した名編

(ちかえもん ) 出演者:青木崇高/松尾スズキ/優香/小池徹平/早見あかり/北村有起哉/高岡早紀/岸部一徳/富司純子 ほか  2016年

掲載2021年02月05日

 舞台は元禄の大坂。戯作者の近松門左衛門(松尾スズキ)は、50歳を過ぎてスランプ状態。赤穂浪士討ち入りを戯作にと頭をひねって書いたのが、大石内蔵助が切腹直前、「もう一度、妻が作った飯が食べたかった。なんで最後にわかめ蕎麦など食べたのか。鴨南蛮にすればよかった...」などとぼやく筋立て。本人は「どや、意外やろ」と自信満々だが、お調子者の渡世人・万吉(青木崇高)からも「ウケたろっちゅう、浅ましい魂胆見え見えや」と散々に言われる始末だ。

 「世間が沸き立つ筋を書け」と催促してくる道頓堀竹本座の竹本義太夫(北村有起哉)からこそこそ逃げ回りながら、面白いのは、近松の心のつぶやきがいちいち聞けること。それも「一枚も書けてなーい」とか「ちょっぴり胸キュンしたわしやった」とか普通に現代語だ。また、突然、近松が歌いだすのもお約束。第一話「大阪で生まれた女」、第二話「悲しくてやりきれない」、第三話「学生街の喫茶店」、第四話「傘がない」、そして第五話では「フランシーヌの場合」のメロディに乗せて、「赤穂浪士の場合」と松尾が赤穂浪士姿でスポットライトを浴び、ゆるく歌えば、白装束の浪士たちも白扇を広げて舞い踊る。驚愕の展開だが、のちに曾根崎心中の主人公となる徳兵衛(小池徹平)と遊女お初(早見あかり)と出会い、運命が動き出す。鮮やかな脚本を書いた藤本有紀は、本作で第34回向田邦子賞を受賞。意外すぎる結末に目を見張る名編。

掲載2021年01月01日

「旅がらす事件帖」
小林旭TV時代劇初主演作。影の道中奉行が渡世人姿で旅をしながら悪を斬る!
「まじめに地獄へ行けよ」の決めセリフと阿木燿子・宇崎竜童コンビの主題歌も聴きモノ

(たびがらすじけんちょう ) 出演者:小林旭/夏純子/叶和貴子/尾藤イサオ/三浦洋一/長門裕之/小沢栄太郎 ほか  1980年

掲載2021年01月01日

 世が乱れ、庶民が困窮した天保年間。老中首座となった阿部伊勢守(小沢栄太郎)を叔父に持つ旗本の神保直次郎(小林旭)は、幕府から「影の道中奉行」の密命を受け、渡世人に身をやつし、関八州、東海道と旅に出る。彼と道連れになったのは、尾上兵佐衛門(長門裕之)と娘の志寿太夫(夏純子)の旅芸人・湯島天神太鼓一座。実は兵左衛門には元お庭番という過去があった。直次郎は、諸国にはびこる悪を退治していく。

 日活映画のスター・小林旭のテレビ時代劇初主演作。直次郎は渡世人のときは白の着物の裾をからげ、涼し気な二枚目。そして悪人の前にたつときも颯爽として武家マゲと白い着流しで登場する。悪に「何者?」と問われれば、「三途の川の船頭だ!」と答え、最後は「まじめに地獄へ行けよ」のセリフで決める。手にした将軍拝領の刀をよく見れば、クロスした十手に葵の御紋が!! 精悍なスタイル、早変わり、決めセリフ、葵の御紋と時代劇ヒーローの要素をすべて持った直次郎。もちろん、阿木燿子・宇崎竜童による主題歌「みだれ雲」はアキラ節炸裂だ。脚本は「水戸黄門」の宮川一郎、「鬼平犯科帳」の安倍徹郎、「眠狂四郎」の星川清司らが手がけた。岡江久美子、加賀まりこ、栗田ひろみら毎回共演の女優陣も演技派が揃う。ナレーションは日下武史。マキノ雅弘が演出した最終回「直次郎 暁に旅立つ」では、凶悪なニセ直次郎が出現。その裏に大物の存在が浮かび上がる。

掲載2020年12月25日

「散り椿」
亡き妻の願いを叶えるために剣をとる男、彼を思う人々、うごめく黒い影...
木村大作監督が富山の自然を活かし、オールロケで挑んだ「美しい時代劇」

(ちりつばき) 出演者:岡田准一 西島秀俊 黒木華 池松壮亮 麻生久美子 緒形直人 柳楽優弥 芳根京子 駿河太郎 渡辺大 2018年

掲載2020年12月25日

 かつて藩の不正を訴えたが受け入れられず藩を出た瓜生新兵衛(岡田准一)は、死期の迫った妻・篠(麻生久美子)に、篠の元許嫁で親友だった采女(西島秀俊)を助けてほしいと頼まれる。突然帰郷した新兵衛に戸惑う篠の妹(黒木華)らだが、次第に彼の生き方に共感するようになる。だが、不正の闇が新兵衛に迫る...。

 監督は黒澤明監督作品で撮影技師として腕を磨き、09年「劔岳 点の記」から映画監督としてこだわりの作品作りを続ける木村大作。「散り椿」は念願の初時代劇監督作だ。「この人でなきゃ」と自身がオファーした豪華キャストと「俺がやるからには、まったく新しい時代劇、美しい時代劇を創ろうと思った」という監督が手がけた撮影は、富山を中心としたオールロケ。冒頭、雪の中で新兵衛が追手と遭遇するシーンでは泡でできた人工の雪を大量に降らせ、とても五月に撮影されたとは思えない。また、監督自身も采女の父親役で出演。散り椿のもとでの新兵衛と采女のずっしりと重みのある殺陣は、大きなみどころだ。エンドクレジットが各人の自筆というのもこだわりのひとつ。岡田は主演、殺陣、撮影と三か所に名前が出る。四季の景観や歴史ある家屋など、こだわりの映像美と人間ドラマは高く評価され、第42回モントリオール世界映画祭では「審査員特別賞」を受賞した。強きサムライの秘めた純情や男の友情がしみじみと伝わる感動作。

掲載2020年12月11日

「殿さま弥次喜多 怪談道中」
中村錦之助と賀津雄(現・嘉葎雄)兄弟の若殿コンビが娘の怨霊と旅の空!?
沢島忠監督が、息の合ったふたりの魅力を存分に生かした痛快編

(とのさまやじきた かいだんどうちゅう ) 出演者:中村錦之助/中村賀津雄(現・中村嘉葎雄)/益田キートン/星十郎/大川恵子/松風利栄子 ほか 1958 年

掲載2020年12月11日

 尾州の若殿・徳川宗長(中村錦之助)と紀州の若殿・徳川義忠(中村賀津雄/現・嘉葎雄)は、大名行列が鉢合せし、たまたま出会った江戸の町人、弥次喜多(益田キートン・星十郎)と入れ替わり、本陣を抜け出して気ままな旅をすることに。ところが、途中、鉄砲名人・垣内権兵衛(田中春男)と関わり合ったことから、巡礼娘の怨霊に憑りつかれ、あっちこっちで怖い思いをすることになる。あたふたとたどり着いた箱根では、旅人を困らせる山賊に出くわすが、お化けにはビビるが、悪い人間など怖くない!とばかりに山賊の親玉をやっつけた。ふたりは女歌舞伎一座に入り込むが、またまた怨霊が現れる。金もなくなり、大井川の人足に仲間入りしたふたりだが、なんと牢獄に入れられる羽目に。尾州・紀州、藩の家老たちは殿様探しに躍起になる。そんな中、若殿たちは暗殺騒ぎに巻き込まれ...。

 宿で寝入ったかと思ったら、ぼーっと現れる怨霊におびえまくる若殿ふたりが面白い。共演には、大川恵子、桜町弘子、ダークダックスの四人組も。クライマックス、若殿とにらみ合うのは、東映の悪役として活躍した進藤英太郎。監督は美空ひばり映画で知られる沢島忠。キャッチコピーは「元気で行こうぜ!」錦之助と賀津雄の兄弟コンビは息もぴったりで、映画全盛期の娯楽作品らしい明るさ(怪談なのに)に満ちている。

掲載2020年08月07日

ゲキ×シネ「髑髏城の七人(2011)」
劇団☆新感線の代表作に小栗旬×森山未來×早乙女太一ら若手キャストが参加
天魔王が束ねる二万の兵士で固められた髑髏城に七人のクセ者が戦いを挑む!

(げき×しね どくろじょうのしちにん(2011) ) 出演者:小栗旬/森山未來/早乙女太一/小池栄子/勝地涼/仲里依紗 ほか 2011年

掲載2020年08月07日

ゲキ×シネ 髑髏城の七人(2011)
ゲキ×シネ 髑髏城の七人(2011)
©ヴィレッヂ・劇団☆新感線

 織田信長が本能寺に消えて約8年、天下統一が豊臣秀吉によってなされようとしていた天正18年。関東で謎の男が勢力を拡大、不気味な「髑髏城」に"関東髑髏党"を組織する。その男は、"天魔王"(森山未來)と名乗り、かつて信長に仕えていたという。乱世の狂気に惹きつけられるように、天魔王のもとには兵士が集まり、その数は二万にも膨れ上がった。一方、髑髏党に追われた女を助けた捨之介(小栗旬)は、色里の実力者・蘭兵衛(早乙女太一)に女を匿ってもらうことに。捨之介にも蘭兵衛にも捨てられぬ過去があった。やがて狂気をはらむ天魔王の正体と野望を知った捨之介ら七人は、髑髏城に乗り込み、戦いを始める。

 1990年の初演以来、劇団☆新感線の代表作として上演を重ねてきた作品に新たな解釈とキャストを迎えた2011年の作品。共演には小池栄子、勝地涼、仲里依紗ら威勢のいい若手と、劇団員の高田聖子、粟根まこと、河野まさとらが登場する。なんといってもみどころは、ダイナミックな殺陣と時代劇らしいキメの数々。ゲキ×シネは舞台鑑賞では見えないキャストのアップもきっちり拾っているので、それぞれの役のキャラがより鮮明に映し出される。小栗のカッコよさ、森山の狂気、そして、すらりと現れ、キレのいい戦いっぷりをみせる早乙女はとにかく美しくて強くて見惚れるほど。ゲキ×シネならではの「髑髏城」を堪能できる。

掲載2020年07月10日

「天地人 総集編」
「愛」を掲げて戦った戦国武将・直江兼続の生涯を描いた大河ドラマ
妻夫木聡のしなやかな強さと、家康(松方弘樹)らくせ者武将たちのぶつかり合いに注目

(てんちじん そうしゅうへん) 出演者:妻夫木聡/北村一輝/常盤貴子/田中美佐子/高嶋政伸/東幹久/玉山鉄二/加藤清史郎/長澤まさみ ほか  2009年

掲載2020年07月10日

 戦国時代、主君・上杉景勝(北村一輝)を助け、「愛」の文字を兜に掲げて、颯爽と生きた直江兼続(妻夫木聡)。総集編第一回「天」の章では、わずか五歳で上杉の家臣となるべく、寺に入れられた与六(後の兼続・加藤清史郎)が、巨木のような上杉謙信(阿部寛)に「わしは、こんなところに来とうはなかった!」と言い放つ。その正直さと率直さを謙信は「気に入った」と見込み、兼続の運命は大きく変わる。阿部謙信は、まゆ毛も黒々顔も黒々で野性味たっぷり。「北斗の拳」のケンシロウ風だ。だが、カリスマ性のあった謙信が亡くなると、不穏な空気が...。兼続は景勝の人柄をよく理解し、陰ひなたなく支え続ける。

 時代の表舞台に立った織田信長(吉川晃司)が本能寺の変で討たれ、時代は大きく動く。成長した兼続は、次々と戦国のトップを怒らせる。天下を手にした秀吉(笹野高史)から黄金を積まれ、家臣にとスカウトされた際には断固拒否。あわや手討ちになりかける。やがて、淀殿(深田恭子)と秀頼を遺して秀吉が亡くなると、豊臣と徳川の対立は避けられない状況に。大名たちが分裂していく中、義を重んじる上杉の決意は固かった。兼続は歴史に残る大批判の書状を堂々と送りつけ、家康(松方弘樹)をカッカとさせる。兼続の度胸は五歳の時のままだ。笹野、松方のくせ者ぶりにも注目したい。生涯、側室を持たなかった兼続の愛妻・お船(常盤貴子)への思い、斬新なヘアスタイルと着物のセンスで目立ちまくる石田三成(小栗旬)との友情、長く不遇だった真田幸村(城田優)との出会いなども見逃せない。幸村の姉(長澤まさみ)が女忍びとして動くのも面白い。いい味なのが、景勝との関係だ。口下手だが心優しい景勝は、兼続が安産祈願に作りかけた小さな彫り物を見て、「早くイノシシを完成せねばな」とぼそっと励ますが、実はそれは犬...。主従のやりとりはどこかとぼけてほのぼのとする。大河ドラマ史上、初めて関ヶ原の戦いで敗れた側の武将を主人公にした作品。勝ち組、負け組が取りざたされる現代に、人としての真の生き方、幸せとは何か、原作者・火坂雅志の問いかけがドラマにあふれる。

掲載2020年06月12日

「多十郎殉愛記」
「極道の妻たち」の84歳・中島貞夫監督、約20年ぶりの新作
高良健吾が愛する者のため逃げまくる。まさかのラブシーンにも注目!

(たじゅうろうじゅんあいき ) 出演者:高良健吾/多部未華子/木村了/三島ゆり子/栗塚旭/山本千尋/永瀬正敏/寺島進 ほか  2019年

掲載2020年06月12日

 幕末の京都。長州藩を脱藩した剣豪浪人・清川多十郎(高良健吾)と彼の面倒を見るワケありの小料理屋女将・おとよ(多部未華子)の悲恋が物語の軸となる。ふんどしに着物をひっかけただけの姿で、自堕落な日々を送る多十郎の貧乏長屋に、兄を慕う腹違いの弟の数馬(木村了)がやってくる。数馬は兄の脱藩は尊皇攘夷の思想あってだと信じ込んでいるのだ。やがて、多十郎は、京都の治安維持を強化する見廻組に見つかり、大勢の捕り方に追われる身となる。愛する者を逃がすため、多十郎は走り出す!追手の隊長・寺島進との一騎打ちシーンや、竹林を駆け回る30分もの逃走劇は、昭和の映画全盛期のチャンバラ映画を思わせる迫力だ。

 監督・脚本は「極道の妻たち」で知られる、撮影当時84歳の中島貞夫。約20年ぶりの新作であり、監督補佐には「私の男」で高く評価された中島監督の教え子・熊切和嘉監督が参加していることも注目される。その監督が惚れこんだ高良健吾は、映画「武士の献立」では料理侍、大河ドラマ「花燃ゆ」では幕末の熱血男・高杉晋作などを演じてきたが、ここではダメダメなのになんともいえない色男。ふんどしが真っ白なのも、美術のこだわりか?また、「瞬間的」ともいえる多十郎のラブシーンがあるのも重要だ。この場面で、しかもこんな短い!でも、熱い!全編に監督、キャストの時代劇映画への思いがあふれる。純粋チャンバラ映画。

掲載2020年05月22日

「映画 刀剣乱舞-継承-」
日本史最大の謎「本能寺の変」に歴史改変の魔の手が!?
刀剣男士たちのドラマチックな活躍を最新の映像技術で表現した劇場版。ハマります。

(えいが とうけんらんぶ-けいしょう- ) 出演者:鈴木拡樹/荒牧慶彦/北村諒/和田雅成/岩永洋昭/定本楓馬/椎名鯛造/廣瀬智紀/八嶋智人/山本耕史 2019年

掲載2020年05月22日

 日本刀の名刀を擬人化し、戦で敵を討伐するという画期的なゲームに始まり、アニメ、ミュージカルと表現を拡大させ、大人気となった「刀剣乱舞」初の実写映画。脚本は「侍戦隊シンケンジャー」など特撮シリーズで活躍する小林靖子。時代劇では珍しく、各地で「応援上映」がなされた。

 西暦2205年。歴史修正主義者が、歴史の攻撃を計画。天正十年六月。「本能寺の変」で炎上する本能寺から織田信長(山本耕史)を逃がす、時間遡行軍の計画が実行されようとしていた。それを察知した審神者は、刀剣たちを人の形に蘇らせ、歴史改変阻止のため動き出す。成功したかに見えた刀剣男士のミッションだったが、信長は生存!? 正しい歴史に戻すため信長暗殺の命を受けた彼らだったが...。舞台版でも活躍した三日月宗近役の鈴木拡樹、山姥切国広役の荒牧慶彦、薬研藤四郎役の北村諒ら若手の人気俳優たちがすさまじいバトルを繰り広げる。また審神者役の堀内正美、羽柴秀吉役の八嶋智人らベテランが、刀剣男士の女性ファンから支持されたことも話題に。注目は、そびえたつ安土城をぐるりと見回したり、地上での激闘を真上から緻密に追いかけたりする空撮ショット。山深い現場で、木々の間を縫う最新のドローン技術を駆使することで可能になった"鳥の目線"ショットの数々だ。「刀剣乱舞」初心者も彼らの真剣勝負にハマるはず。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。