ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2021年08月06日

「風の墓標」
鎖国直前、父を探して異国に渡った男の数奇な運命と出会い
中井貴惠、山本陽子、松あきら、三人の女の思いを原作・平岩弓枝、脚本・大西信行が描く

(かぜのぼひょう ) 出演者:滝田栄/山本陽子/中井貴惠/松あきら/三田村邦彦/山形勲/田村亮/大村崑 ほか  1984年

掲載2021年08月06日

風の墓標
風の墓標
©NHK

 徳川政権の初期、日本の商人たちは異国との貿易に夢を描き、大海原へと繰り出していた。三代将軍・家光の治世。寛永二年、行方不明の父を探すため、新太郎(滝田栄)は、朱印船に乗り込む。新太郎に思いを寄せる平戸屋の娘・多美(中井貴惠)は不安の中、見送るしかなかった。ジャングルが広がる南国に驚きながらも、現地で働く人々と接した新太郎は、四年後に帰国。多美は平戸屋の窮状を救うため、御用商人松浦屋の息子との縁談が決まっていた。多美の兄・助四郎(三田村邦彦)に多美をあきらめるよう言われた新太郎は、長崎の豪商・茶屋新四郎(大山勝巳)の店で働き、再び、異国へと渡る。ルソンに向かった新太郎は、父がバタビヤにいると聞く。サルタン(田村亮)、中国人の宗林(戸浦六宏)らと出会い、商いに精進しながら、お京(山本陽子)、麗花(松あきら)ら女性たちとも出会った新太郎は、やがて日本の鎖国政策という過酷な現実に翻弄されることになる。
 「御宿かわせみ」など人気シリーズで知られる作家・平岩弓枝が、誠実に生きながらも時代の荒波に直面する長崎商人の恋と冒険とロマンを壮大なスケールで描いた長編。脚本の大西信行は、ドラマ「御宿かわせみ」はじめ、「水戸黄門」など多くの名作時代劇を手がけた。また、音楽の山本直純は昭和を代表する作曲家。このドラマの前年、大河ドラマ「徳川家康」に主演した滝田の力強い商人姿、切ない結末にも注目。

掲載2021年07月16日

「喧嘩安兵衛 決闘高田ノ馬場」
高橋英樹が悩みながら自分の道を見つける若き日の堀部(中山)安兵衛を豪快に演じる
田村高廣、南田洋子、下條正巳、堀ちえみ、萬田久子ら共演の笑って泣ける人情ストーリー

(けんかやすべえ けっとうたかだのばば ) 出演者:高橋英樹/田村高廣/萬田久子/南田洋子/堀ちえみ/下條正巳/森川正太/浅香光代/品川隆二 ほか 1989年

掲載2021年07月16日

喧嘩安兵衛 決闘高田ノ馬場
喧嘩安兵衛 決闘高田ノ馬場
©ユニオン映画

 大酒飲みで喧嘩好きの中山安兵衛(高橋英樹)は、三国峠で父の仇討ちを果たすが、敵方の中津川(浜田晃)と斬り合い、負傷。助けてくれたのは菅野六郎左衛門(田村高廣)だった。妻(南田洋子)と二人暮らしの菅野は「自分を叔父と思ってくれ」と言うが、人助けのため暴れた安兵衛は、菅野に迷惑をかけないため、長屋暮らしを始める。ある日、こどもを人質にした悪浪人を目撃した安兵衛は、ふんどし姿になって近づき、浪人を撃退。その姿を見た赤穂藩士・堀部弥兵衛(下條正巳)は、安兵衛が愛娘(堀ちえみ)の恋する相手だと知り、「親のわしが申すのもなんじゃが、申し分ない娘じゃ」と縁組を勝手に決定。が、そこへ魚屋と青物屋のケンカが勃発。「お前らがケンカしたら、みんなの晩飯はどうなる」と仲裁した安兵衛は、「喧嘩屋のだんな」と呼ばれるようになる。ある晩、安兵衛は若侍三人の暗殺を遂げた中津川を見つけた。藩で不正を続ける村上(品川隆二)の魔の手は菅野の身に。安兵衛は、恩人の危機を知り、高田馬場へと走る。

 田村高廣は、安兵衛を当たり役とした阪東妻三郎の長男。死を覚悟した菅野と妻の別れ、安兵衛を一途に思うおこま(萬田久子)の願いが胸を打つ。一方、浅香光代ら長屋の連中や弥兵衛とのやりとりは大いに笑える。出だしと結末は、堀部安兵衛が活躍した赤穂浪士の討ち入り話。田中徳三監督が、コミカルで豪快な高橋英樹の魅力を存分に引き出した痛快作。

掲載2021年07月09日

「ご存知!旗本退屈男Ⅸ 天下御免の巨悪斬り!大江戸に史上最大の危機迫る 花に嵐か?競艶三人の美女!」
豊臣残党が南の国に!?北大路欣也の退屈のお殿様がついに海を渡って悪と対決!
多岐川裕美、美保純、伊藤かずえら美女との関わりもみもの

(ごぞんじ!はたもとたいくつおとこ 9 ) 出演者:北大路欣也/堺正章/五十嵐いづみ/長門裕之/多岐川裕美/伊藤かずえ/美保純/林隆三/夏八木勲 ほか 1994年

掲載2021年07月09日

ご存知!旗本退屈男 Ⅸ
ご存知!旗本退屈男 Ⅸ
©東映

 将軍綱吉(長門裕之)から「天下御免」の赦しを得て、自由気ままに生きる旗本・早乙女主水之介(北大路欣也)。綱吉病気の知らせに駆けつけてみると、伊達家の八重姫(多岐川裕美)との縁談を勧められてしまう。だが、密かに伊達藩謀反のウワサの真偽を確認するよう頼まれた主水之介は、八重姫一行と用人の笹尾喜内(堺正章)と北へ向かう。そんな折、幕府転覆を狙う豊臣の残党は、紀伊国屋文左衛門(名古屋章)のもとに集結。主水之介も大坂の陣で死んだはずの豊臣秀頼生存説を耳にする。そこに見え隠れする謎の老人・石部帯刀(夏八木勲)。さらに主水之介の剣の友(林隆三)もからんで、事件の舞台は南の国へ。そこは豊臣の残党が流れ着き、再起を図っているとのことだったが......。

 かつて市川右太衛門の主水之介と堺駿二の喜内という名コンビをそれぞれ息子である北大路と堺正章が引き継いだ人気シリーズ。北大路のおおらかさはドラマを明るくする。今回はとにかくスケールのでかい物語。トレードマークでもある派手な着流し姿で気軽に海外(!)に渡ってしまう主水之介は、さすが「退屈のお殿様」。悲劇の姫の多岐川裕美、旅の供となる伊藤かずえ、南の島の娘役の美保純ら美女たちとの出会いや、一瞬にして奇怪な早替わりを見せ、意外な正体を語る夏八木の熱演にも注目。主水之介の「諸羽流正眼崩し」が冴えわたる。

掲載2021年06月04日

「巌流島 小次郎と武蔵」
渡辺謙の佐々木小次郎VS滝田栄の宮本武蔵 大河ドラマ主役ふたりが激突する
死闘の裏に細川家の謀が!? 武人の誇りを持つふたりの闘いを全く新しい視点で描く

(がんりゅうじま こじろうとむさし ) 出演者:渡辺謙/滝田栄/夏八木勲/榎木孝明/細川俊之/泉ピン子/名取裕子 ほか  1992年

掲載2021年06月04日

 「細川家の守り刀に」と細川家重臣の松井康之(大滝秀治)に見込まれ、優遇される佐々木小次郎(渡辺謙)は、武人として京・大坂にも名をはせていた。一方、宮本武蔵(滝田栄)は、銭もなくむさ苦しい姿で武者修行の旅を続けていた。やがて武蔵は、細川家で小次郎との御前試合を頼まれる。実はその裏には、亡き康之の跡を継いだ長岡興長(大橋吾郎)ら若き幹部たちの思惑があった。鉄砲の時代を迎えようという時代に、剣豪というだけで藩主・細川忠興(夏八木勲)に目をかけられる小次郎を疎ましく感じ、その排除に武蔵の剣を使おうとしていたのだ。はじめは小次郎を助けようとしていた沼田延元(蟹江敬三)も、長岡に「御家が大事か、小次郎が大事か」と迫られ、心が揺れる。保身に走る幹部たちの動きにより、忠興の「よきにはからえ」の一言で対決が決まった小次郎と武蔵だが、長岡のところに「武蔵、逃亡」という驚きの知らせがくる。

 「殺されるのが怖いから」力をつけたのだと本音を言う小次郎を心配した鈴香(名取裕子)は、「弱くなって」と熱い視線を送る。やがて迎える巌流島の決闘では、白い羽織の小次郎と黒い着物の武蔵。対照的な姿で、大河ドラマ主役ふたりが厳しい戦いに挑む。結末はまさかの展開に!脚本は渡辺謙主演の大河ドラマ「独眼竜政宗」のジェームス三木。伝説の決闘をまったく新しい解釈で描いた長編。

掲載2021年05月28日

「ご存知!旗本退屈男Ⅲ」
北大路欣也が父の当たり役・早乙女主水之介を演じて、華麗に世直し!
将軍のご落胤を巡る陰謀に忍者集団も暗躍。ついに主水之介にも恋しい相手が出現?

(ごぞんじ!はたもとたいくつおとこ 3 ) 出演者:北大路欣也/堺正章/古村比呂/長門裕之/桜田淳子/成田三樹夫 ほか  1989年

掲載2021年05月28日

 将軍の危難を救い「天下御免の向う傷」を負い、「世直し勝手」の信頼を得た旗本・早乙女主水之介(北大路欣也)の活躍を描くシリーズ。ある夜、忍者集団に襲われる芸者・お袖(桜田淳子)を助けた主水之介は、彼女の母がかつて将軍・綱吉(長門裕之)の子を宿し、八丈島に移ったと聞く。嫡男のいない綱吉の後継には、甲府宰相・綱豊(夏夕介)が最有力と聞いていた主水之介は、早速、八丈島へ。一方、綱吉の側近・牧野備後守(成田三樹夫)は娘の須美が懐妊した綱吉の子を次期将軍にと画策する。島でご落胤・小太郎(山本陽一)を発見した主水之介は江戸へと向かおうとするが、思わぬ結果に...。

 主水之介といえば、昭和の映画全盛期、市川右太衛門の当たり役「退屈のお殿様」。息子の北大路は父から受け継いだ華やかな衣装を身にまとい、「は、は、は」と高らかな「一世一代の退屈笑い」と必殺剣「諸羽流正眼崩し」の華麗な殺陣を見せる。本作の見せ場その①は、すさまじい顔で迫る頭(鹿内孝)率いる忍者集団による大仕掛けの暗殺作戦。その②は、お袖と離れ、「人生無常じゃのう」などと言いだす主水之介。張り切り用人・笹尾喜内(堺正章)や妹の菊路(古村比呂)が気をもむ主水之介とお袖の思いの行方に注目したい。他にも菊路のコスプレ?や桂歌丸・林家木久蔵(現:木久扇)と堺とのやりとり、成田の貫禄の悪役ぶりなど、痛快時代劇の王道らしい場面があふれている。

掲載2021年04月09日

「剣客商売スペシャル 助太刀」
若者が探す父の敵は意外なところにいた!秋山小兵衛の決断とは?
藤田まこと、蟹江敬三、益岡徹ら、おとなの男たちの苦悩も心を打つスペシャル

(けんかくしょうばいすぺしゃる すけだち ) 出演者:藤田まこと/山口馬木也/寺島しのぶ/小林綾子/梶芽衣子/三浦浩一/山内としお ナレーター:橋爪功 2004年

掲載2021年04月09日

 老中・田沼意次(平幹二朗)の仲介で、秋山小兵衛(藤田まこと)は、老剣客・酒井善蔵(蟹江敬三)と再会。聞けば、酒井は大病を患って道場を閉めたが、娘(中原果南)の看病でようやく回復したという。道場は腕のたつ娘婿・忠兵衛(山田純大)に任せて再開したと聞いて、小兵衛は喜ぶ。一方、小兵衛の息子・大治郎(山口馬木也)は、旗本の息子・高田平馬(村井克行)とその仲間にからまれている初老の浪人・林牛之助(益岡徹)を助けた。牛之助は、ひとりで父の敵を討とうと奮闘する若者・中島伊織(石田法嗣)に剣術を教えていた。再び卑怯な襲撃を受け、「なんとか伊織に敵討ちをさせたい」と言い残して息を引き取った牛之助のため、大治郎は動き出す。敵は意外なところにいた。それは小兵衛にとって悩ましいことだったが...。

 98年から、知る人ぞ知る剣の達人・小兵衛を演じてきた藤田まことにとって、04年のこのスペシャルは、蟹江敬三、益岡徹らとともに男の苦悩を演じ、渋さと懐の深さを示した作品となっている。若者を助けたいというまっすぐな牛之助を演じた益岡、晩年にやっとつかんだ幸せを手放したくないと苦しむ老年の男を演じた蟹江の迫真の演技が心を打つ。三冬(寺島しのぶ)、四谷の弥七(三浦浩一)らいつもの顔ぶれも登場。クライマックスの敵討ちで、どう「助太刀」するのか。殺陣シーンにも注目したい。

掲載2021年01月08日

「剣客商売 婚礼の夜」
北大路欣也の秋山小兵衛、貫地谷しほりのおはるのほっこりした日々に事件勃発
大治郎役の高橋光臣、佐々木三冬役の瀧本美織ら新レギュラーの成長ぶりもみもの

(けんかくしょうばい こんれいのよる ) 出演者:北大路欣也 貫地谷しほり 瀧本美織 高橋光臣 古谷一行 國村隼 2020年

掲載2021年01月08日

 剣の達人、秋山小兵衛(北大路欣也)が、道場を息子の大治郎(高橋光臣)に譲り、年の離れた女房おはる(貫地谷しほり)と隠宅で悠々自適の暮らしをしながら、事件に向き合う池波正太郎原作の人気時代劇。本作は、剣の弟子でもある目明かしの弥七(山田純大)らが追う僧侶の殺害事件と、その犯人とおぼしき凶悪な浪人たちに大治郎の親友・浅岡鉄之助(内田朝陽)が狙われていることを知った小兵衛が、調べを進めていく。一方、大治郎が師範代を務める老中・田沼意次(國村隼)の道場では、意次の妾腹の娘である女剣士・佐々木三冬(瀧本美織)が稽古に励んでいた。

 みどころは、めでたい婚礼の準備と同時進行で悪人退治が進むこと。小兵衛や大治郎の人を思う姿があたたかい。また、北大路小兵衛は、友との交流もていねいに描かれるところが味でもある。冒頭、「古い友がまた一人減った」とぼやきながら墓参りをした小兵衛は、独り者の医師の小川宗哲(古谷一行)を訪ね、「おお月だ」と縁側で月見酒としゃれこむ。そのしみじみしたシーンは、「剣客商売」ならでは。山下智彦監督のこだわりだ。

 高橋と瀧本はこの作品からレギュラーに。高橋はNHKBS「神谷玄次郎捕物控」に主演し見事な殺陣を披露、瀧本も「妻は、くノ一」で忍びアクションに挑んでいる。今後の時代劇の柱となる若手俳優陣がベテランとの共演で、どう成長していくかも楽しみになる。

掲載2020年12月18日

ゲキ×シネ「五右衛門ロック」
古田新太演じる天下の大泥棒・石川五右衛門と怪しげな面々が歌って踊って大暴れ
北大路欣也、松雪泰子、森山未來、江口洋介も参戦した劇団☆新感線のヒット作見参!

(げき×しね ごえもんろっく ) 出演者:古田新太 松雪泰子 森山未來 / 江口洋介 / 北大路欣也 ほか  2009年

掲載2020年12月18日

 豊臣秀吉が天下人となり、栄華を誇った時代。各地を荒らしまわり、秀吉の怒りも買った稀代の大泥棒・石川五右衛門(古田新太)は役人・岩倉左門字(江口洋介)らに捕縛され、真っ赤に煮えたぎる釜茹の刑に処される。その葬儀を仕切るのは謎の美女、真砂のお竜(松雪泰子)。五右衛門は、お竜たちの仕掛けにより、生き延びていたのだ。やたら騒がしい南蛮人ペドロ・モッカ(川平慈英)たちに乗せられた五右衛門一味は、南の果てのタタラ島に眠る神秘の石「月生石」を求めて船出する。「野郎ども、帆を上げろ!」と威勢のいい五右衛門だったが、暴風雨で海に投げ出され、タタラ島国王クガイ(北大路欣也)に捕らえられる。「月生石を狙う者はすべて死罪とする」というクガイの前で絶体絶命というそのとき、クガイに敵対心むき出しのバラバ国カルマ王子(森山未來)、ボノー将軍と妻・シュザク夫人が乱入。五右衛門一味の運命、クガイと月生石の正体、さまざまな謎はどう解けるのか?

 劇団☆新感線の中島かずき作、いのうえひでのり演出のスピード感あふれる展開、森雪之丞作詞によるロックな楽曲の数々、激しい殺陣、とにかく出演者は歌にアクションに全力投球。みどころは多いが、聴きどころのひとつは北大路の熱唱! ペリーは舞台公演で観たが、ゲキ×シネでは俳優たちのアップも楽しめて、また違う迫力が感じられる。クライマックス、新感線得意の「意外な仕掛け」「因縁」にも注目。

掲載2020年10月16日

「火怨・北の英雄 アテルイ伝」
不屈の魂で故郷を守るために戦った古代東北の英雄・阿弖流為を大沢たかおが熱演
東北ロケで豊かな自然の情景を織り込みつつ、愛と平和、侵略の非情を描く歴史巨編

(かえん・きたのえいゆう あてるいでん ) 出演者:大沢たかお/北村一輝/内田有紀/大杉漣/髙嶋政宏/石黒賢/近藤正臣 ほか  2013年

掲載2020年10月16日

 奈良時代末期、東北の蝦夷(えみし)と呼ばれる一族は、稲作や狩猟を共同で行いながら平和に暮らしていた。しかし、日本全土の平定を狙う大和朝廷は彼らに移住、従順を迫る。胆沢・大墓の族長の息子、阿弖流為(あてるい・大沢たかお)は弓の名手で、ヤマトに無理に連れて行かれた妹・阿佐斗(あさと・高梨臨)の奪還のため、呰麻呂(あざまろ・大杉漣)の乱に加勢、ヤマトの城に火を放つ。記憶を失った阿佐斗を目の当たりにした阿弖流為は、朝廷の力と理不尽さに怒り、「里人の命を捨てさせるわけにはいかない」と移住を主張する父(神山繁)と対立。族長となった阿弖流為は、一度は奇跡的に勝利したものの、山野は荒れ果て、犠牲も出して危機は広がるばかりだった。やがて彼は、多くの民を逃がすため、盟友・母礼(もれ・北村一輝)とともに宿敵・坂上田村麻呂(高嶋政宏〈現:髙嶋政宏〉)に最後の戦いを挑む。

 原作は東北在住の作家・高橋克彦。盛岡市、奥州市、遠野市など東北の地でロケを敢行、美しい自然が織り込まれ、おおたか静流の幻想的な歌声と響き合う。大沢は馬上から弓で矢を放ち、大刀を掲げて戦う熱演。大友氏の裏切りを伝えるなど阿弖流為を支える妻役の内田有紀、田村麻呂の部下となる阿弖流為の兄役の石黒賢らが脇を固める。中でも「海の蝦夷は虫の息じゃ。次は山の蝦夷じゃ...」と東北を律令国家に取り込む野心を抱く桓武天皇役の近藤正臣は迫力。大杉漣、斎藤洋介、江波杏子など今は亡き名優たちの古代人演技も見逃せない。歴史冒険巨編。

掲載2020年09月04日

「欽ちゃんファミリー時代劇スペシャル 俺たちの熱い風」
視聴率100パーセント男と言われた欽ちゃんと仲間たちの青春時代劇
上意討ちや横暴な殿様に立ち向かう若者たちを風見慎吾、西山浩司らが体当たりで演じる

(きんちゃんふぁみりー じだいげきすぺしゃる おれたちのあついかぜ ) 出演者:風見慎吾/西山浩司/中村敦夫/江波杏子/萩本欽一/倉沢淳美/志穂美悦子/清水善三/佐藤B作 ほか  1984年

掲載2020年09月04日

 舞台は江戸末期。駿河沼田藩の青山早太郎(風見慎吾)は、上意討ちの命を受けて江戸に出たが、15年も前の事件の敵を見つけられず、食べ物もないほど困窮していた。たまたま知り合った侍志望の町人・久助(西山浩司)や大工の源助夫婦(小西博之・志穂美悦子)、だめ息子・音松(斉藤清六)の母(清川虹子)や妹・おかよ(高橋真美)ら裏長屋の住人たちに助けられ、明るさを取り戻した早太郎だが、おかよが借金のために売られそうになったり、長屋で幼い息子と夫の帰りを待つお園(江波杏子)を「側室に」と強引に迫ってくる殿様の手先が現れたりし、ついに剣を抜くことに!?

 84年当時、出演番組が全部大人気で"視聴率100パーセント男"といわれた萩本欽一が、縁のタレントたちと共演した長編ドラマ。脚本には「踊る大捜査線」の君塚良一も参加している。萩本自身も謎の飴売りおじさん・金太として出演し、終盤、物語の決着をつける重要な役割を果たす。バカ殿様の見栄晴が池にぽちゃんと落ちたり、早太郎の上司の山口良一がオロオロしたりと、軽い笑いは随所にあるが、全体はシリアスな青春ドラマとなっている。早太郎は思わぬところで敵と遭遇し、「俺は逃げも隠れもせん」という相手の堂々とした態度に苦悩する。そして、つらい別れも。江波杏子や心やさしい居酒屋の女将役の真屋順子など、今は亡き名女優の存在感も心に残る。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。