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掲載2021年08月20日

「赤穂城断絶」
赤穂浪士の物語を監督・深作欣二、大石内蔵助・萬屋錦之介ほかオールスターで描いた大作
浪士を襲う悲劇や、千葉真一の不破数右衛門VS渡瀬恒彦の小林平八郎の激突もみもの

(あこうじょうだんぜつ ) 出演者:萬屋錦之介/千葉真一/松方弘樹/渡瀬恒彦/丹波哲郎/三船敏郎 ほか 1978年

掲載2021年08月20日

赤穂城断絶
赤穂城断絶
©東映

 元禄十四年、赤穂城に、主君・浅野内匠頭(西郷輝彦)が殿中松の廊下で吉良上野介(金子信雄)に刃傷に及び、即日切腹したとの急報が入る。御家断絶、領地召し上げの沙汰に対して、藩士たちは、家老・大石内蔵助(萬屋錦之介)の考えを聞こうと詰め寄る。内蔵助は藩士の誓紙血判を集め、城を明け渡す。赤穂浪士たちの苦難の日々が始まった。山科に隠棲した内蔵助は、遊興にふけると見せかけ、吉良の動きを探る。一方、吉良方の剣士・小林平八郎(渡瀬恒彦)は、内蔵助の動静に目を光らせていた。

 「柳生一族の陰謀」で久々に東映時代劇に主演して大ヒットを飛ばした錦之介と、深作欣二監督のコンビによる大作第二弾。城の明け渡しに際し、内蔵助が「では、内蔵助の存念を申し上げる」「吉良上野介は不倶戴天の敵」「方々、同心くだされましょうや」と朗々と語るシーンは圧巻。柳沢吉保に丹波哲郎、大石りくに岡田茉莉子、瑤泉院に三田佳子、浮橋太夫に江波杏子、土屋主税に三船敏郎、多門伝八郎に松方弘樹など豪華な顔ぶれが揃う。監督の要望で、討ち入りまでの浪士たちの苦難も描かれ、中でも酒におぼれる橋本平左衛門(近藤正臣)とはつ(原田美枝子)夫婦の悲劇ははかなく、涙を誘う。オーソドックスな作りの中に、さすが東映アクションと思える平八郎と不破数右衛門(千葉真一)の激突もバッチリ。みどころを詰め込んだ「忠臣蔵」25回目の映画化作品。

掲載2021年07月30日

「浮かれ三度笠」
市川雷蔵×本郷功次郎×中村玉緒、若殿と姫が城を飛び出し思わぬ事件に巻き込まれる
チャーミングなキャラクターと痛快なストーリーから目が離せない!

(うかれさんどがさ ) 出演者:市川雷蔵/本郷功次郎/中村玉緒/左幸子/宇治みさ子/正司歌江・花江・照江 ほか  1959年

掲載2021年07月30日

浮かれ三度笠
浮かれ三度笠
©KADOKAWA1959

 尾張藩、徳川宗春が不穏な動きとのウワサを聞きつけた将軍・徳川吉宗(伊沢一郎)は、自分の甥の松平与一郎と宗春の娘・菊姫(中村玉緒)との縁組を進めようとする。しかし、与一郎が道楽者でふぬけと聞いた菊姫は、縁組を拒否。そんな折、姫を説得していた老家老が斬られ、宗春のたくらみに従う大名たちの連判状が姫の手に渡った。父の暴挙を止めようと、腰元の渚(宇治みさ子)と城を出た姫。連判状奪取に黒手組とふくろう組が動き出す。一方、二人を探すよう命じられた渚の恋人・楠見兵馬(本郷功次郎)は、陽気な旅がらす、やらずの与三郎(市川雷蔵)と意気投合するが...。

 べらんめえで粋な男・与三郎と姫たちとのやりとりは、お茶目で楽しい。ふくれたり、はにかんだり、暴れたり、玉緒の菊姫のチャーミングさは最高。エンディングは、ほとんどラブコメだ。ハジけてもどこかに品の良さがあるのは、雷蔵、玉緒の共通点といえる。

 翳のある役も多かった市川雷蔵は、この映画の前年に出演した「炎上」でキネマ旬報主演男優賞を獲得するなど、演技面で高く評価されている。その自信もあってか、旅あり、恋あり、チャンバラありのこの作品では明るく軽やかな芝居が輝いている。雷蔵をデビュー当時からよく知る監督のひとり田中徳三が、同年の「濡れ髪三度笠」に続いて演出。スターの魅力を柔軟に撮り切った。

掲載2021年04月23日

「父子鷹」
勝麟太郎を育てた豪快な父・小吉の一途な生き方と息子への愛を描く
市川右太衛門と映画デビューとなった北大路欣也の親子共演実現の話題作

(おやこだか) 出演者:市川右太衛門/北大路欣也/長谷川裕見子/志村喬/東山千栄子/薄田研二/月形龍之介 ほか  1956年

掲載2021年04月23日

 名門・男谷家に生まれ、幼いころ勝家の養子となった小吉(市川右太衛門)は、曲がったことが大嫌いな江戸っ子かたぎの侍。勝家の養女・お信(長谷川裕見子)とは許嫁の仲だった。家の興隆を願う周囲の期待に応えるべく、支配の石川右近のところで柄にもない奉仕を始めた小吉だが、男谷家の資産を狙う石川の無心をはねつける。兄・男谷彦四郎(月形龍之介)は、仕方なく小吉を信州にやるが、そこでは無法な行いをする悪人たちを召し取ることになった。だが、さらなる事件を起こし、小吉は牢に入ることに。出世をあきらめた小吉は、息子の麟太郎(北大路欣也)に期待をかける。十年間、お信とともに貧乏に耐えながら麟太郎の教育にまい進した結果は...。

 原作は子母澤寛の新聞小説。力はあるのに不正を許せないばっかりに世に出られなかった小吉の悲運を描いた作品だが、映画では右太衛門が演じているだけに、人に愛される好人物になっている。監督は右太衛門の「旗本退屈男」などでも知られる松田定次。公開当時のキャッチフレーズは「気骨の剣・熱血の斗魂・父と子の愛情を描く巨編!」右太衛門が欣也の手を握るポーズのポスターも味がある。この作品で映画デビューを飾った北大路欣也は、未来のスターの輝きと愛嬌あふれる美少年。後年、大河ドラマ「篤姫」で勝海舟を演じた際、父子共演の本作を思い出したという。

掲載2021年03月12日

「居眠り磐音」
原作・佐伯泰英。時代劇初主演の松坂桃李が心に傷を抱えた"恋する美男サムライ"に
江戸の町の人々との触れ合いと、陰謀に立ち向かう磐音の剣の冴えに注目の映画

(いねむりいわね ) 出演者:松坂桃李/木村文乃/芳根京子/柄本佑/杉野遥亮/佐々木蔵之介 ほか 2019年

掲載2021年03月12日

 坂崎磐音(松坂桃李)は、のほほんとした穏やかな男だが、実はすごい剣の遣い手。剣の師匠(佐々木蔵之介)が「眠っているのか、起きているのか...居眠り剣法」と呼ぶ、不思議な強さを持っている。磐音と、幼なじみの親友・小林琴平(柄本佑)、河出慎之輔(杉野遥亮)は揃って江戸勤番を終え、九州・豊後関前藩を支える若手として期待されていた。だが、悲劇的な事件により、親友を斬り、許嫁の奈緒(芳根京子)とも別れ、脱藩。江戸に出る。長屋の大家(中村梅雀)の娘・おこん(木村文乃)らに助けられ、両替屋・今津屋の用心棒として働く磐音は、やがて悪徳商人(柄本明)や幕府中枢の人物がからむ陰謀に立ち向かうことに。その心の中にはいつも奈緒の姿が...。

 原作は佐伯泰英のベストセラー。監督は「超高速!参勤交代」の本木克英。時代劇初主演の松坂は、おっとり顔と剣豪の顔を使い分ける。悪侍に「某が相手をいたそう」と剣をとると、町人たちから「えーっ」と心配され、江戸のファッションリーダー、トップ花魁の高尾太夫からは「かわいらしい用心棒」と言われるほどのおっとりぶりだが、その剣は鮮やか。このギャップが、磐音の魅力だ。数奇な運命をたどる奈緒の変貌や中村梅雀、谷原章介らとの共演シーン、江戸の人情も見逃せない。主題歌はMISIAでタイトルは「LOVED」。松坂の恋する美男サムライに注目したい。

掲載2021年02月19日

「大江戸もののけ物語」
妖怪オタクのへっぽこ若侍が妖怪たちと協力して事件に立ち向かう
岡田健史、本郷奏多、森川葵ら若手チームが、ベテラン俳優陣演じる悪妖怪にどう挑む?

(おおえどもののけものがたり ) 出演者:岡田健史/本郷奏多/山田杏奈/森川葵/青山美郷/平尾菜々花/石丸謙二郎/イッセー尾形 ほか 2020年

掲載2021年02月19日

 しゃっくりが出るともののけが見える能力を持つ旗本の次男坊・新海一馬(岡田健史)は、優秀な兄とは違って失敗ばかりの妖怪オタク。寺子屋の師匠をしているが、みんな言うことを聞かず、ほぼ学級崩壊状態。しっかり者の教え子・お雛にビシッと締めてもらう有様だ。だが、一馬は、お雛の「死んだ母に会いたい」という願いを叶えるため、古代の火焔土器から蘇ったもののけ・天の邪鬼(あまのじゃく・本郷奏多)らと、恐ろしいもののけ"魂さがし"に自分の「魂」を賭けた勝負に出る。第二話では、詐欺のため身売りさせられそうになった娘・およう(山田杏奈)を救おうと、遊女屋の主に化けた妖怪(石丸謙二郎)に体当たり。第三話では、自分と父と兄を殺そうと刀を振り回す剛腕妖怪(池内万作)が現れる。やがて明らかになる一馬と兄の関係、苦悩する天の邪鬼の正体とは...。

 注目は妖怪たちの造形。天の邪鬼は、土器が体にも顔にも張り付いた状態で、特殊メイクだけでも長時間がかかる。頭の皿から足ひれのついたつま先まで作り込む河童(青山美郷)も大変だ。外見は町娘だが、一馬に「化け猫?」などと言われると、目を吊り上げ、鋭い爪をむき出しにして痛い猫パンチを繰り出す猫又を演じる森川葵は、猫の動きを観察し、取り入れたという。へっぴり腰の一馬をはじめ、若手チームはベテラン妖怪たちにどう立ち向かうのか。彼らの知恵と勇気にぐっとくる。成長する一馬を応援したい。

掲載2020年12月04日

「赤穂浪士」
百花繚乱!千恵蔵、右太衛門、錦之助、橋蔵、千代之介ら東映オールスターが勢ぞろい
東映創立10周年記念大作。原作・大佛次郎、監督・松田定次による名場面満載の「忠臣蔵」

(あこうろうし ) 出演者:片岡千恵蔵/市川右太衛門/中村錦之助/大川橋蔵/東千代之介/月形龍之介/大友柳太朗 ほか  1961年

掲載2020年12月04日

 元禄十四年、勅使饗応役に任じられた赤穂藩主・浅野内匠頭(大川橋蔵)は、「賄賂厳禁」のお定めに従ったため、指導役の高家筆頭・吉良上野介(月形龍之介)に嫌がらせをされ、ついに松の廊下で刃傷事件を起こす。居合わせた脇坂淡路守(中村錦之助)は、内匠頭の無念を悟る。内匠頭は、即日、庭先で切腹。悲報が赤穂の大石内蔵助(片岡千恵蔵)のもとに届く。

 原作は大佛次郎。脚本は「七人の侍」などの小国英雄、監督は松田定次。時代劇の王道「忠臣蔵」を、オールスターキャストで製作した東映創立十周年記念大作。当時の宣伝には「大東映」「日本一!」など華々しい言葉が並ぶ。

 見どころは、スターそれぞれに用意された見せ場。城を明け渡した内蔵助は、同士とともに主君の仇討を志す。吉良方に悟られぬよう遊興を続ける内蔵助。一力茶屋では満開の桜の木に登り、花びらをまき散らす。その華やかなこと!一方、上野介の息子で出羽米沢藩主・上杉綱憲(里見浩太郎/現:里見浩太朗)の家臣・千坂兵部(市川右太衛門)は、内蔵助の親友でもあった。互いの考えがわかる間柄だけに、言いたいことをぐっとこらえ、見つめ合う千恵蔵、右太衛門。御大二人の苦み走った対面シーンは迫力だ。精悍な東千代之介の堀部安兵衛、密かに浪士を助ける剣士・堀田隼人の大友柳太朗、美少年の松方弘樹の大石主税などが、「忠臣蔵」の名場面を紡ぐ。鳴り響く陣太鼓、雪の中の討ち入り大立ち回りは圧巻。

掲載2020年11月20日

「家康、江戸を建てる 後編 金貨の町」
江戸を日本一の都市に!名家の圧力に屈せず、小判づくりに挑んだ職人を描く
直木賞作家・門井慶喜の原作を「半沢直樹」脚本家がドラマ化した熱血編

(いえやす、えどをたてる こうへん きんかのまち ) 出演者:柄本佑/広瀬アリス/林遣都/市村正親/高嶋政伸/高橋和也/吹越満/吉田鋼太郎 ほか 2019年

掲載2020年11月20日

 江戸を日ノ本一の都市にしたい家康(市村正親)は、豊臣家の拠点である大坂以上の商都にするためには、全国共通の小判鋳造が欠かせないと考える。家康が目を付けたのは、当時、贈答品として鋳造されていた大判を京で製造している後藤家の職人・橋本庄三郎(柄本佑)。後藤家は金貨づくりを牛耳る名家で、庄三郎は随一の腕を持ちながら、血縁ではないため、名を出して仕事をすることができないでいた。彼にとって江戸へ出て「天下万民に流通する日本初の小判」をつくることは、自らの名を上げる絶好の機会。しかし、庄三郎の仕事を後藤家の当主・徳乗(吉田鋼太郎)や弟の長乗(吹越満)らは快く思わず、秀吉の力を使ったり、徳乗の娘・早紀(広瀬アリス)との縁談をちらつかせたりして庄三郎を揺さぶる。傷つき、苦しみながらも上質な小判づくりに挑む庄三郎。そして、時代は動き、関ヶ原の戦が起こる。

 「天下統一など、ただの越すべき峠のひとつに過ぎん」市村のエネルギッシュな家康、華麗な衣装でお姫様のような広瀬アリス、蹴倒されても立ち上がり、仕事に誇りを示す柄本。貨幣づくりという視点から、のちに世界一の大都市となった江戸のなりたち、経済の仕組みなどが伝わる。門井慶喜の原作を「半沢直樹」「家政夫のミタゾノ」の脚本家・八津弘幸が脚色。波乱の時代と、愛と嫉妬に満ちた人間ドラマを、衣装、美術にこだわって表現した力作。

掲載2020年11月13日

「家康、江戸を建てる 前編 水を制す」
未開の低湿の地・江戸に清らかな水を確保せよ!家康の命令を達成した苦労人たちの物語
門井慶喜原作。佐々木蔵之介、市村正親、生瀬勝久、松重豊、千葉雄大らの好演が光る

(いえやす、えどをたてる ぜんぺん みずをせいす ) 出演者:佐々木蔵之介/生瀬勝久/優香/市村正親/高嶋政伸/千葉雄大/マギー/藤野涼子/松重豊 ほか  2019年

掲載2020年11月13日

「わたしはいつの日か、この江戸を日ノ本一の都にしてみせる」

 徳川家康(市村正親)は、目の前に広がる低湿の地、江戸を眺めながら、決意を固めた。そのためには、人々が暮らすための清らかな水が必須だった。海水が流れ込むこの地に水を確保するにはどうしたらよいか。家康が「江戸の飲み水探しを申しける」と命じたのは、家臣の大久保藤五郎(佐々木蔵之介)。若き日に足を負傷し、馬に乗れない身となった藤五郎は、家康の菓子係だった。なんとか(現在の)井の頭池から江戸市中に22キロの水路を作って上水を通す計画をたてたものの、藤五郎に協力するのは、人望はあるがどこか頼りないひげもじゃの武蔵野の名主・内田六次郎(生瀬勝久)と自称専門家ながら経験浅い変人の春日清兵衛(千葉雄大)のみ。利根川工事で着々成果をあげる伊奈忠次(松重豊)を横目に、幕府の金庫番(高嶋政伸)ににらまれつつ、藤五郎は奮闘する。

 ひしゃくを腰に差し、従者(マギー)とともにえっちらおっちら水を探して歩き回り、時には「時がないんじゃ」と人々に頭を下げ、泥まみれで工夫たちと笑いあう。佐々木蔵之介が不器用ながら、必死に任務を全うする藤五郎を愛嬌たっぷりに演じれば、生瀬は「誰が山猿じゃ」と笑いをとる。千葉のちょっとズレた秀才ぶりも面白い。江戸のなりたちを知る歴史ドラマであり、人間ドラマとしても楽しめる名編。

掲載2020年11月06日

「家光と彦左と一心太助(主演:中村錦之助)」
中村錦之助が徳川家光といなせな一心太助の二役に。次期将軍候補に毒殺の危機が!
進藤英太郎の大久保彦左衛門もいい味を出す。監督・沢島忠による東映の人気シリーズ。

(いえみつとひこざといっしんたすけ ) 出演者:中村錦之助/進藤英太郎/中村賀津雄(現・中村嘉葎雄)/平幹二朗/桜町弘子/山形勲 ほか  1961年

掲載2020年11月06日

 威勢がよくて正義感あふれる魚屋、一心太助(中村錦之助[萬屋錦之介])と天下のご意見番として名高い頑固者・大久保彦左衛門(進藤英太郎)の活躍を描く東映の人気シリーズ第四弾。

 江戸城で二代将軍秀忠の嫡男・家光の毒殺未遂事件が勃発。家光の弟である忠長(中村賀津雄[現・中村嘉葎雄])を次期将軍に推す本田上野介(薄田研二)、鳥居土佐守(山形勲)一派のしわざではと憂慮した彦左や春日局は、偶然にも家光とうり二つの太助を入れ替えることを思いつく。太助の姿で魚河岸に行った家光は、庶民の暮らしを知り、太助がいかに人気者かを実感。上野介につながる荒くれが魚河岸の差配にからんで暴れるが、家光は柳生十兵衛(平幹二朗)の助けを受けて切り抜ける。そして事件は大詰めを迎えるのだった。

 監督は沢村忠。脚本は小国英雄。みどころは家光と庶民の太助を錦之助が見事に演じ分けるところ。特に江戸城での太助は何でも「よきにはからえ」ですましていたのに、魚河岸の話が出た途端、「よきにはからえ...じゃないよ!!」と町人言葉になって大張り切りでしゃべりだす。これには彦左も大慌て? 錦之助の明るさを存分にいかし、悪役が多かった進藤英太郎のコミカルな演技も面白い。平幹二朗の十兵衛の太刀さばきもカッコいい。ラストも大立ち回りがたっぷり。輝くスターの晴れやかな演技に注目したい。

掲載2020年08月14日

「ANOTHER WORLD('18年星組 宝塚大劇場)」
宝塚歌劇星組トップスター・紅ゆずるの恋する上方若旦那が笑わせます!泣かせます!
あの世に冥途カフェ?落語を題材にした若旦那チームと鬼や閻魔様とのやりとりにご注目。

(アナザー ワールド('18ねんほしぐみ たからづかだいげきじょう) ) 出演者:紅ゆずる/綺咲愛里/礼真琴 ほか  2018年

掲載2020年08月14日

 大坂の両替商の若旦那・康次郎(紅ゆずる)が目覚めると、そこはなんと「あの世」。神社で名前もわからぬ嬢(いと)さんを見染め、恋患いでこっちの世界に来てしまったのだ。すると、そこには下界での遊びに飽きてこっちに来たというチャキチャキの江戸の遊び人・徳三郎(礼真琴)、喜六(七海ひろき)、貧乏神(華形ひかる)など、とんでもない仲間たちが。康次郎が恋した菓子屋の娘・お澄(綺咲愛里)も恋患いで冥途にやってきたと知った彼らは、恋の成就を願うが、そこに地獄の閻魔様が立ちはだかる?

 宝塚歌劇星組トップスター・紅の若旦那が、あの世で恋に冒険に大活躍!ということで話題になった本作は、「地獄八景亡者戯」「朝友」「死ぬなら今」「崇徳院」4つの落語を基にしたコメディミュージカル。はんなりした康次郎を慕うお澄との歌と踊り、徳三郎らとの友情、「命に感謝や!」という命のありがたさなど、さまざまな要素が楽しめる。亡者の印である白い三角の「天冠」にスパンコールをつけ、スピード感あふれるセリフで魅了する紅は、大阪出身で大阪弁での芝居は念願だったという。この台本はゲラゲラ笑って読み始めたが、最後は泣けて読めなくなったとか。鬼たちとの珍妙なやりとりや「冥途カフェ」「冥途歌劇団」「日本美女絵巻」など、宝塚歌劇ならではの華麗な見せ場もたっぷり。奇想天外な冥途旅、「ANOTHER WORLD」をリラックスして楽しめる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。