ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2020年07月31日

ゲキ×シネ「蒼の乱」
強き渡来の美女を天海祐希、愚直でまっすぐな将門小次郎を松山ケンイチが熱演
早乙女太一、平幹二朗らが壮大な戦いの物語を盛り上げる劇団☆新感線のゲキ×シネ

(げき×しね あおのらん ) 出演者:天海祐希/松山ケンイチ/早乙女太一/平幹二朗 ほか 2014年

掲載2020年07月31日

ゲキ×シネ 蒼の乱
ゲキ×シネ 蒼の乱
©ヴィレッヂ・劇団☆新感線

 京の朝廷から野蛮な地といわれる坂東の武者・将門小次郎(松山ケンイチ)は、愚直でまっすぐな若者。矛盾に満ちた社会に嫌気がさしていた。ある日、贅沢三昧の貴族の宴会で渡来人が占いをし、「大凶」が出る。命を狙われた渡来人の女・蒼真(天海祐希)と桔梗(高田聖子)は小次郎に助けられ、ともに脱出。謎めいた剣士・帳の夜叉丸(とばりのやしゃまる・早乙女太一)に導かれて、西海へと向かう。海賊から東国で蜂起するよう促された蒼真たちだが、簡単には動けない。その後、蝦夷の常世王(平幹二朗)と出会った蒼真と小次郎には、壮絶な運命が待ち受けていた。

 平安中期に起こった「承平天慶の乱」に着想を得た劇団☆新感線の作品で、作・中島かずき、演出・いのうえひでのり。一般には、将門は朝廷に反旗を翻し、関東一円を手中にして自らを「新皇」と名乗ったとされる。瀬戸内海では同時期に藤原純友が挙兵。ともに鎮圧され、将門はさらし首にされたと言われるが、そこは新感線の新解釈。まさかの二転三転ストーリーとなっている。天海祐希にとって劇団☆新感線三度目の出演で待望の主演作。松山ケンイチ、平幹二朗は初参加。見事な殺陣を見せる早乙女太一は、この作品でエネルギーあふれる平の演技を身近に観られた喜びを語っている。また、将門の騎馬戦略は知られるが、その愛馬「黒馬鬼」を劇団の人気者・橋本じゅんがユーモアたっぷりに演じる。見事な馬の足さばきに注目。

掲載2020年03月27日

「赤ひげ」
貧しい人々を診療する小石川養生所の主・赤ひげと若き医師たちの奮闘
山本周五郎原作。医療ドラマの原点ともいえる名作を船越英一郎主演で。

(あかひげ(しゅえん:ふなこしえいいいちろう) ) 出演者:船越英一郎/中村蒼/古舘佑太郎/前田公輝/大後寿々花/麿赤兒 ほか  2017年

掲載2020年03月27日

赤ひげ(主演:船越英一郎)
赤ひげ(主演:船越英一郎)
©NHK/ホリプロ

 保本登(中村蒼)はオランダ医学を学んで久々に江戸に戻ると、貧しい人々を無料で治療する「小石川養生所」で働くよう言われる。そこでは仏頂面の医長"赤ひげ"こと新出去定(船越英一郎)が、若手医師・津川(前田公輝)らを厳しく指導しつつ、多くの患者を受け入れている。エリート意識が強い保本は、与えられた制服も着ず、何度も赤ひげと対立。しかし、急患に対応するお手伝い女たちの的確な働きや麻酔なしの緊急外科手術、養生所の苦しい資金繰りなどを知るうちに「病気を治すだけが医者の仕事じゃない」という赤ひげの言葉を理解し、成長していく。

 保本は結果的に多くの死と向き合うことになるが、中でも切実なのはこどもたちの姿だ。「子殺しの罪」の回では貧しさからこどもが盗みを働き、疲れ果てた親はある決断をする。また「妊婦の覚悟」では親に身を売らされる娘の必死の願いが描かれる。正義を振りかざしても誰も救えないと覚悟する赤ひげ。医師にできることは何かという問いは医療ドラマの原点といえる。船越は特注の赤ひげをつけ、やくざ者にも若者にも堂々とぶつかる。緊迫場面も多いが、時々ふと浮かぶ、赤ひげの不器用なユーモアが面白い。ゲストの星野真里、山本學、田畑智子、雛形あきこらが命ギリギリの本音をぶつけるシーンもみもの。原作は山本周五郎。命と人情の名作シリーズ。

掲載2020年03月06日

「池波正太郎時代劇 光と影」
池波正太郎の短編を片岡愛之助ら豪華キャスト主演オムニバスで12話。
女剣士の婿取り騒動を描いた作品にはアメリカで活躍する祐真キキが登場。

(いけなみしょうたろうじだいげき ひかりとかげ ) 出演者:片岡愛之助/雛形あきこ/岡本富士太/富山えり子 ほか  2017年

掲載2020年03月06日

 池波正太郎の短編を基に「運の矢」の片岡愛之助、「二宮尊徳 秘話」の筧利夫、「武家の恥」高橋光臣ら豪華な顔ぶれを主役にしたオムニバス12話。その第五話「女剣 妙音記」には、アメリカの人気ドラマで活躍する祐真キキが登場する。

 古河藩の武芸指南役として多くの弟子を指導してきた父を亡くした佐々木留伊(祐真)は、幼いころより剣の道にまい進した女武芸者。普段から男の姿で修行を続けてきた。藩主・土井大炊頭利重(西尾塁)の恩情で婿をとって家名存続を許されたものの、「自分より強い相手でなければ結婚しない」と宣言していた留伊は、なかなか相手が見つからない。唯一、叔父に薦められて候補になった小杉九十郎(脇崎智史)とは利重の反対で立ち合いもかなわず、佐々木家に仕える甚七(有薗芳記)らはやきもきするばかりだ。だが、留伊が次々男たちを打ち負かしているというウワサを聞いて困惑した利重は、ついに九十郎との立ち合いを許可する。その結果は意外なことに...。

 男装の女剣士は、池波作品にはおなじみ。「剣客商売」の佐々木三冬と本作のヒロインは名字も共通している。祐真は153センチと小柄ながら、習得した殺陣の技で見事に男たちに立ち向かう。また、なかなか素直になれない留伊が、少しずつ変化していく。そんな留伊を見守る甚七の孫(谷花音)が可愛い。

掲載2020年01月24日

「江戸城大乱」
独裁の大老VS桂昌院。徳川家後継ぎ問題で壮絶な争いが勃発!
松方弘樹、三浦友和、十朱幸代とともにカギとなる徳川綱吉役で坂上忍が出演

(えどじょうたいらん ) 出演者:松方弘樹/十朱幸代/神田正輝/池上季実子/坂上忍/野村真美/丹波哲郎/三浦友和 ほか  1991年

掲載2020年01月24日

 延宝八年。幕府大老・酒井雅樂頭忠清(松方弘樹)は、江戸城で徳川光圀(丹波哲郎)、徳川光友(金子信雄)らとの話し合いに向かっていた。四代将軍・徳川家綱(金田賢一)が病弱で跡取りも定まっておらず、万が一のために早急に五代将軍候補を確定するためであった。独裁的な権力を持つ酒井は、家綱の弟・綱重(神田正輝)を推挙し、それで決まりかけたが、堀田備中守正俊(三浦友和)が出迎える最中、綱重は殺されてしまった。一方、三代将軍・家光の子、綱吉(坂上忍)を生んだ桂昌院(十朱幸代)は、我が子を将軍にと画策。堀田とともに酒井と対決する覚悟を決める。江戸城の内外で勢力争いが繰り広げられる中、ついに家綱が息を引き取った。その遺言では甲府の綱豊を後継ぎに指名したとされるが、桂昌院は疑いを持つ...。

 徳川家の内紛をダイナミックに解釈するのは、東映映画陣の得意技。史実で老中首座から大老となり、権力のトップに君臨したとされる酒井を松方弘樹が豪快に演じた。注目は、大物酒井に対抗するため、必死に戦うことになる堀田役の三浦友和。また、桂昌院の十朱幸代は映画「女帝 春日局」でも貫禄を見せており、ここでも戦う女の強さを見せつける。監督は「動天」の舛田利雄。音楽は池辺晋一郎。主題歌を崎谷健次郎がメロウに歌い上げているのも時代を感じさせる。

掲載2019年06月21日

「アシガール」
脚力だけが取り柄の女子高生がタイムスリップして大名家の若君に一目ぼれ!
黒島結菜と伊藤健太郎の顔合わせで大反響の時代劇ラブコメ

(あしがーる ) 出演者:黒島結菜/健太郎(現・伊藤健太郎)/松下優也/ともさかりえ/川栄李奈/石黒賢/イッセー尾形ほか 2017年

掲載2019年06月21日

 足が速いだけが取り柄のさえない女子高生唯(黒島結菜)は、ある日、「僕をいじめたやつを戦国時代に送り込んでやる」と嫌な目的で弟が作り上げたタイムマシーンを誤って稼働させ、戦場にタイムスリップしてしまう。「足軽の唯之助」と名乗った唯は、羽木家の若君・忠清(健太郎・現、伊藤健太郎)に出会い、一目ぼれ。猛アタックを開始する。戦場では忠清の馬を追跡、城では門番に追い払われても侵入を試みる。寝言でも「若君...」とつぶやく唯。その心が通じたのか、羽木家に仕える天野家の隠居(イッセー尾形)に「かけくらべに出て勝てば家臣にするかも」と言われ、彼に会いたい一心で力走し、見事勝利!...ということは、「アシガール」は、足軽の女の子というダジャレだけではなく、「私には速いアシガアル」という二重ダジャレ?考えすぎですか?

 キラキラの若君に馬に乗せてもらったり、転んだ拍子に抱きとめられたり、現代にわたった忠清が高校生姿で壁ドンまでする!? ラブコメお約束の胸キュンシーンも満載だ。彼の許嫁の阿湖を川栄李奈が演じているのも面白い。黒島、健太郎、川栄のチャーミングな演技と彼らを支える唯の母(中島ひろ子)、父(古舘寛治)や忠清の父(石黒賢)、唯を助けた母親代わり(ともさかりえ)らおとな世代の思いにもホロリとする。SNSでも大反響を呼んだ時代劇ラブコメ。一度見るとおとな世代もハマります!

掲載2018年12月21日

「織田信長」
高橋英樹にしかできない堂々の織田信長が戦国を疾走する!
津川雅彦の斉藤道三、風間杜夫の徳川家康、意外な木下藤吉郎にも注目

(おだのぶなが ) 出演者:高橋英樹/涼風真世/長門裕之/津川雅彦/戸田菜穂/小山明子/京本政樹/高島礼子/三田村邦彦/風間杜夫 1994年

掲載2018年12月21日

 織田信長(高橋英樹)は、尾張の戦国大名・織田信秀(神山繁)の次男として生まれたが、その奔放さで家臣たちも手を焼いていた。やがて斉藤道三(津川雅彦)の娘お濃(涼風真世)と結婚、桶狭間の戦いなど激戦を経て、ついには将軍足利義昭(京本政樹)を担ぎ出して天下を治めるべく快進撃を続けるが...。有名なエピソードを豪華キャストで描いたワイドドラマ。高橋英樹は時代劇スターの貫禄たっぷりで、時に過激に時に男の色気を感じさせつつ、カリスマ武将を堂々と演じている。凛としたお濃、浅井長政(堤大二郎)との別れを経験するお市(中村あずさ)など美女の存在も光る。

病死とされる武田信玄(南原宏治)が信長の密命で暗殺された!?など名場面はたくさんあるが、「長篠の戦」では、城の窮状を知らせた鳥居強右衛門(船越英一郎)が武田軍に捕縛され、見せしめに磔にされたことを怒り、鉄砲を繰り出して武田騎馬軍を撃退。多くの馬が迫り、次々落馬する兵。迫力の合戦シーンになっている。同時に「世の中を驚かせるために生まれてきたお方...」という言葉に「大きな借りができた」と不安げな徳川家康(風間杜夫)。その後、信長に恨みを抱く明智光秀(小野寺昭)など複雑な人間関係も展開。御屋形様をひたすら慕うお調子者の木下藤吉郎(秀吉)を三田村邦彦が演じているのも面白い。主題歌は吉田拓郎と加藤和彦の「純情」。

掲載2018年12月14日

「男を金にする女」
夜鷹になった元武家娘を大原麗子がチャーミングに演じた鴨下信一演出作品。
誠実さでふたりの男を「金(きん)」に輝かせた娘の運命とは?

(おとこをきんにするおんな ) 出演者:大原麗子/中村橋之助(現・中村芝翫)/杉村春子/山岡久乃/橋爪淳/唐沢寿明/長谷川稀世/小鹿みき ほか  1990年

掲載2018年12月14日

 夜鷹のおとせ(大原麗子)は、元武家の娘だが、父が他人の罪を被って浪人した後に病死。母親のおたか(山岡久乃)も心労で病となり、暮らしのために身を落としたのだった。ある夜、呉服商の一人息子・十吉(橋爪淳)がおとせの客となる。やり手の母 おつね(杉村春子)に育てられた十吉だが、嫁とりにも商売にも身が入らず、遊び人のふりをしても格好がつかない中途半端な若旦那だった。おとせと会った後、十吉は240両もの大金が入った財布を失くしたことに気づく。一方、おとせは首をくくろうとしていた角助(中村橋之助・現・中村芝翫)を助け、十吉からもらったお代の一朱金を渡してしまった。大金を正直に返したおとせを嫁にと考えるおつね、一方、おとせに助けられて発奮、「お前を嫁にする」と宣言した角助。男をりっぱな商人として「金」に輝かせる女、おとせの運命は...。

 原作は94年に100歳で没した小島政二郎。石井ふく子プロデュース、「ふぞろいの林檎たち」の鴨下信一演出。脚本は「水戸黄門」第一シリーズの宮川一郎で、人情噺の中にエンタメ要素も入れ込んでいる。キャストも杉村・山岡らベテラン陣とともに若き日の唐沢寿明も出演。底辺に生きながら誠実さと包容力のある娘を演じた大原はウイスキーの名物CMで見せたチャーミングな魅力とともに武家娘らしい強さも見せての大活躍。

掲載2018年08月31日

「石川五右衛門」
連続時代劇13年ぶりに主演の市川海老蔵が華麗なる大泥棒に!
奇想天外な技を駆使して秀吉を翻弄、茶々とラブロマンスも?

(いしかわごえもん) 出演者:市川海老蔵/國村隼/比嘉愛未/榎木孝明/丸山智己/益岡徹/山田純大/前野朋哉/高月彩良 ほか 2016年

掲載2018年08月31日

 市川海老蔵が新作歌舞伎で演じて好評を博した「石川五右衛門」のドラマ化。13年ぶりの連続ドラマ主演を果たした。

 五右衛門は、京の都で評判の役者一座の座長・白波夜左衛門という顔を持つ。一座の顔ぶれは、仕掛け名人で子持ち男の三上の百助(山田純大)、身が軽い情報通の足柄の金蔵(前野朋哉)、キャットウーマンのような堅田の小雀(高月彩良)。彼らは「金銀財宝を盗んでも、畜生外道は許さねえ。天下御免の大泥棒、石川五右衛門一家、見参だ!」とポーズを決める盗賊団だった。天下人豊臣秀吉(國村隼)の圧政に怒る五右衛門は、市中を騒がせ、大坂城にも侵入。秀吉の側室茶々(比嘉愛未)と出会い、ラブロマンスに発展? 「町を見たい」と城を抜け出した彼女を手持ちの巨大凧に乗せて、空中ランデブー。「いつかあんたを盗んでやろうじゃねえか」くーっ、こんなセリフ、海老蔵にしか言えません!

 一味は役者役だけに派手な身なりに濃い化粧で絢爛さもある。また、五右衛門が指パッチンしただけで指先に火が点いたり、悪の剣豪榊役の格闘家棚橋弘至が「地獄へ行け」と振り下ろした刀を五右衛門が真剣白刃取りしたりと見せ場はたっぷり。「必殺」の石原興監督はじめ、京都のベテラン時代劇スタッフと海老蔵が半年間、撮影に挑んだ。上妻宏光の三味線主題歌「月夜の影~石川五右衛門のテーマ~」も鳴り響く。ダイナミックな展開がみもの。

掲載2018年07月27日

「大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]」
菅野美穂演じる綱吉の治世、華麗なる男女逆転大奥に堺雅人降臨!
右衛門佐の秘めた野望と切ない真実の愛の行方とは

(おおおく えいえん えもんのすけ・つなよしへん) 出演者:堺雅人/菅野美穂/尾野真千子/柄本佑/田中聖/要潤/竜星涼/満島真之介/三浦貴大 2012年

掲載2018年07月27日

 謎の疫病の蔓延で健康な男が極端に少なくった江戸時代。男女の役割は逆転し、将軍も女性が務めていた。華やかな文化が花開いた元禄時代、五代将軍・徳川綱吉(菅野美穂)は、積極的に政務を遂行していたが、問題は跡取り。女人禁制の「大奥」には、三千人もの見目麗しい男たちが集められていた。そこに側室候補として呼ばれたのは、貧しい公家出身の右衛門佐(堺雅人)。めきめきと頭角を現す彼にライバルたちも嫉妬のまなざしを向けるが、右衛門佐には秘めた野望が。綱吉に取り入り、側室ではなく、「大奥総取締」として地位と富を手に入れたが、思わぬ事態に陥る。彼は綱吉を愛していたのだ。「将軍とは卑しい女のことじゃ」と自嘲するように生きる綱吉は世継ぎ誕生のため、夜な夜な男たちと過ごす日々。綱吉と右衛門佐の思いの行方は...。

 よしながふみの大ヒットマンガを映画化。豪華な打掛姿の菅野美穂、クールで端正な堺雅人、のちに結婚し、本当に永遠の愛を誓うことになるふたりはぞくぞくするほど美しい。綱吉の正室に宮藤官九郎、側室のひとりに要潤、右衛門佐の付き人に柄本佑など、共演者も若手演技派が揃う。綱吉の実父桂昌院の西田敏行の怪しい存在感も秀逸。綱吉の子の急逝、生類憐みの令など歴史的要素を取り入れつつ、MISIAの主題歌とともに孤独な男女の切ないラブストーリーとして描き切っている。

掲載2018年07月13日

池波正太郎時代劇スペシャル「雨の首ふり坂」
池波正太郎の傑作ハードボイルド戯曲を中村梅雀主演で初映像化
アウトローたちの深い因縁と大杉漣との共演シーンもみもの

(あめのくびふりざか) 出演者:中村梅雀/三浦貴大 中尾明慶/泉谷しげる 大杉漣 2018年

掲載2018年07月13日

 容赦なく人を殺し、報酬を得てきた凄腕の渡世人・源七(中村梅雀)は、かつてともに暮らしてきた女おふみ(芦名星)を捨てた。二十七年後、静かに堅気の暮らしを送る源七に暗い影が忍び寄る。源七の前に現れる橋羽の万次郎(三浦貴大)。源七を助ける饂飩屋のおやじ(泉谷しげる)、過去を知る半蔵(大杉漣)。男たちの運命が複雑に絡み合い、やがて源七は雨の中、刀をとって首ふり坂へと向かう。

 原作は、池波正太郎の傑作戯曲。脚本は「精霊の守り人」の大森寿美男、監督は「パンドラ」の河毛俊作。監督と梅雀は「フランスのギャング映画のように」というイメージが一致。特製の黒い着物と合羽、笠、小物まで徹底的にこだわった外見と、決して笑顔を見せない源七の表情は、梅雀の新たな魅力となっている。また大きな見せ場は、独特の殺陣。源七は敵を前にするとすっと刀を肩に背負う。動き回らず、集中して一撃でズバッと斬る。流れの速い川では、敵方の俳優は倒れても流されないように石にしがみついて頑張ったという。撮影後に急逝した大杉漣と梅雀は初めての時代劇共演だった。梅雀は「源七と半蔵は目があっただけで分かり合う、年を重ねたバディ。ふたりだからこそできる壮絶な場面を見てください」と語る。全編に流れるEGO-WRAPPIN'の音楽とともにラストシーンの余韻までじっくり楽しみたい長編。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。