ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2017年01月13日

アニメ「鬼平」
怪物級スタッフにより「鬼平犯科帳」初のアニメ化
アニメならではの豊かな表現で江戸の情景と闇を描く

(おにへい) 出演者:(声の出演)堀内賢雄/朴王路美(「王路」は王へんに「路」)/浪川大輔ほか 2017

掲載2017年01月13日

累計発行部数実に2700万部。池波正太郎の「鬼平犯科帳」誕生50周年記念の初アニメ化作品。江戸の凶賊を取り締まる火付盗賊改方長官の長谷川平蔵と部下、密偵たちの活躍を描くのは、原作通り。ただし、主人公の鬼平はくせっ毛のラフな髪に細面の二枚目。若々しさが際立つ。声はブラッド・ピットなどを担当するベテラン声優の堀内賢雄。息子の辰蔵役は「スター・ウォーズ」のアナキン・スカイウォーカーなどでも知られる浪川大輔が担当する。また、総指揮が大ヒット作「この世界の片隅に」を世に出した名プロデューサー丸山正雄。半世紀以上アニメ制作に携わり、「怪物級」といわれる手腕を持つ丸山作では石ノ森章太郎原作の「佐武と市捕物控」(68)も有名だ。

物語は「暗剣白梅香」「血闘」「盗法秘伝」など人気エピソードが揃う。第一話「血頭の丹兵衛」では、壮絶な拷問でも口を割らなかった盗賊小房の粂八(若いっ!!)が、家人を皆殺しにする盗賊は「血頭の偽物」、恩義ある丹兵衛の偽物を捕縛したいと頼む。刃のひらめき、江戸の町を俯瞰した映像など、アニメらしい表現も多彩。第二話「本所・桜屋敷」は、火付盗賊改方長官となった平蔵が、若いころ、暴れまわった本所が舞台。初恋の女との哀しい再会。妖艶なシーンにドキドキだ。主題歌は由紀さおりの「そして・・生きなさい」。こんな鬼平の世界もあるのかと新鮮な気持ちになる。

掲載2017年01月06日

「大奥 第一部 最凶の女」
沢尻エリカが十一代将軍徳川家斉の愛妾お美代に

(おおおく だいいちぶ さいきょうのおんな ) 出演者:沢尻エリカ/成宮寛貴/渡辺麻友(AKB48)/浅野ゆう子/田中要次/浜田学/浅井江理名/金子昇ほか 2016

掲載2017年01月06日

 十一代将軍徳川家斉(成宮寛貴)の治世。美貌の少女お美代は、実の父と思っていた中野清茂(板尾創路)から出生の秘密を聞く。お美代の本当の両親は、十代将軍徳川家治と側室のお美乃で、家斉を将軍に画策する田沼意次一派の陰謀で父は毒殺、身重の母も襲撃され、お美代を産み落として亡くなったというのだ。お美代は、「私を大奥にお連れ下さりませ」と志願。自分が仕えた家斉の側室お楽の方を巧みに操り、ついには家斉の目に留まる。それこそが出世を狙う中野とお美代の育ての親・智泉院の住職日啓(田中要次)の目論見。とはいえ、子だくさんで知られる家斉だけに側室のライバルも数多くいる。頑張って生んだ子が女の子で次期将軍になれないと焦るお美代の前に現れたのは「男に興味などありませぬ」ときりりと言い放つお志摩(渡辺麻友)だった。お美代とお志摩は、いつしか禁断の関係に!?

 お美代とお志摩が見つめあったり、入浴シーンまで。「大奥」のシリーズをずっと手がけた林徹監督もついに女の花園の禁断路線に足を踏み入れたと決意のほどを語っていた。絢爛な衣装を身にまとった沢尻エリカは冴えわたる美貌の下にメラメラと怨念を感じさせる熱演。そして秘密を抱えたお志摩の「陰」を渡辺が魅せる。シリーズの人気トリオ、鷲尾真知子、山口香緒里、久保田磨希の「美味でございます~」も復活し、ファンを喜ばせた長編。

掲載2016年12月09日

「鬼平外伝 最終章 四度目の女房」
池波正太郎原作×井上昭監督の「鬼平外伝」集大成
盗賊のただ一度の愛...片岡愛之助テレビ時代劇初主演作

(おにへいがいでん さいしゅうしょう よどめのにょうぼう) 出演者:片岡愛之助/前田亜季/山本陽子/山下容莉枝/金井勇太/正名僕蔵/梨本謙次郎ほか 2016年

掲載2016年12月09日

浅草鳥越明神近くに住む大工の伊之松(片岡愛之助)とおりつ(前田亜季)は仲間にからかわれるほど仲の良い夫婦。だがある日突然、伊之松は「おりつをきらって去るのじゃない」と書き置きし、姿を消す。彼には商家に細工をして仲間を引き入れる盗賊"大工小僧"という裏の顔があったのだ。転々と女房を捨てながら仕事を重ねた伊之松だが、おりつのことだけは心に残っていた。しかし、盗賊の掟として二度と過去の土地に足を向けることは許されない。やがて、伊之松の正体を知らぬまま彼を待つおりつにも人生の変転が。共演には山本陽子、本田博太郎。愛之助と共演経験のある前田が女の情と哀しみを艶やかに熱演。盗賊仲間(金井勇太)が伊之松を危うく思うシーンなど、闇に生きる男同士の姿も丹念に描かれている。片岡愛之助のテレビ時代劇初主演作だ。

池波正太郎独特の江戸ノアールの空気が色濃く表現された原作『にっぽん怪盗伝』を映像化。監督は「座頭市」「眠狂四郎」などで知られる井上昭。「情念を描く」ベテラン監督は脚本を読み込み、「手がものを言うこともある」と顔に寄らず、手だけで気持ちを表現するなど、俳優陣をもうならせる演出を見せている。時代劇専門チャンネルが2011年から制作した「鬼平外伝」シリーズ最終作。井上監督に心酔する中村梅雀の味のあるナレーション、原作と一味違う結末にも注目したい。

掲載2016年11月11日

「池波正太郎時代劇スペシャル 顔」
よき父親には闇社会で生きる裏の顔があった。
松平健が初めて挑む仕掛人の「顔」に注目。

(いけなみしょうたろうじだいげきすぺしゃる かお) 出演者:松平健/石黒賢/小野塚勇人(劇団EXILE)/佐藤友紀/火野正平/中村嘉葎雄 ほか 2016年

掲載2016年11月11日

女房と幼い娘と暮らす浪人・木村十蔵(松平健)は、実は凄腕の仕掛人。許せぬ悪人しか手にかけないと決めていた十蔵が新たに狙う仏具屋の和助(石黒賢)は本当に極悪の盗賊なのか。一枚の絵から蘇る十蔵の暗い過去と因縁。先の読めないサスペンスが展開する。

 みどころの第一は登場人物が見せる裏と表ふたつの「顔」。池波正太郎作品を愛し、仕掛人を演じるのが念願だったという松平の穏やかな父の顔と凄みのある殺し屋の顔は必見だ。また、華やかな立ち回りとは違い、一太刀で敵を仕留める十蔵の緊迫感あふれる殺陣もみどころのひとつ。松平自身、若いころの『動』から、年輪を重ねた今だからできる『静』の動きに重点を置いたと語っている。

寒々とした雪道、荒涼としたススキの原、十蔵の心理と風景が見事にマッチした映像美はさすが京都の熟練スタッフによる仕事。闇の元締の火野正平、放浪の絵師・中村嘉葎雄らベテランの味のある演技と時代劇初挑戦の小野塚勇人(劇団EXILE)の体当たりの熱演、松平も舌を巻いたという名子役・松田苺も物語を盛り上げる。闇社会の掟に向き合う十蔵の決断と男たちを待ち受ける意外な運命。原作とは一味違う「決着」にも注目したい。

掲載2016年10月28日

「あぐら剣法無頼帖 用心棒と好色一代男」
二枚目半の松平健×笑福亭鶴瓶のなにわ人情活劇
芦田伸介、坂東八十助も出演の時代小説大賞作品

(あぐらけんぽうぶらいちょう ようじんぼうとこうしょくいちだいおとこ ) 出演者:松平健/笑福亭鶴瓶/山本陽子/相楽晴子/佳那晃子/佐野量子/芦田伸介/坂東八十助 1994年

掲載2016年10月28日

 赤穂浪士の事件より十年ほど前の徳川五代将軍綱吉の時代。浪人・磯部信十郎(松平健)は、大坂で気の強い姉その子(山本陽子)と暮らしていた。信十郎は、友人の井原西鶴(笑福亭鶴瓶)に用心棒の仕事を紹介される。守る相手は、両替屋天王寺屋五兵衛(芦田伸介)。信十郎が、知り合いの植木職人が辻斬りにあったところを目撃した数日後、天王寺屋も参加した両替屋十人衆の寄合の帰り道、怪しげな刺客と遭遇する。夜叉の面をつけた刺客は植木職人を斬った剣客だった。信十郎は、天王寺屋を守れたが、同業の助松屋が斬られる。なぜ、彼らが狙われるのか。また、江戸から来たという刺客・夜叉御前とは何者か。この一件には、江戸城内で起きた堀田正俊(神山繁)と稲葉正休との対立、刃傷事件がからんでいる!? 事件の謎は深まるばかりだったが、天王寺屋はしたたかにもこの事件を商売につなげようとする。

 原作は第三回時代小説大賞を受賞した吉村正一郎の「西鶴人情橋」。面白いのは姉ににらまれ、西鶴に振り回されて、「もう俳諧は辞める...」などと言いだすトホホ顔の松平健。山本陽子は、弟ばかりか西鶴にも「あなたはあっちをフラフラ、こっちをフラフラ!」とぴしゃりと言い放つその子を好演している。雨宿りした松尾芭蕉(坂東八十助)が「西鶴というのは、怖いお人です」とつぶやく意味は深い。町娘お福(佐野量子)のかわいらしさにほっとする。

掲載2016年09月02日

「おんな太閤記」
橋田壽賀子が描くおんなたちの戦国ホームドラマ
秀吉がねねを呼ぶ際に使用した「おかか」も流行語になった高視聴率大河

(おんなたいこうき) 出演者:佐久間良子/西田敏行/中村雅俊/滝田栄/赤木春恵/長山藍子/泉ピン子/夏目雅子/藤岡弘 ほか 1981年

掲載2016年09月02日

農民の子から天下人へ。秀吉のサクセスストーリー「太閤記」を橋田壽賀子が「おんな」の視点から描く大河ドラマ。まず、すごいのがキャスト。秀吉を西田敏行、「おかか」こと妻ねねを佐久間良子。秀吉の母を赤木春恵、姉ともを長山藍子、妹あさひを泉ピン子、蜂須賀小六を前田吟。「渡る世間は鬼ばかり」の面々が勢ぞろい。大河ドラマ史上初の「戦国ホームドラマ」となった。史上初はこれだけではない。戦国ドラマでありながら、派手な合戦シーンが一切なかったのだ。第一話、戦から戻った織田勢の中に父を探すねねの姿から始まって、ラスト、ねねが遠目に見る大坂城の炎上まで。合戦は皆無。戦争体験者である作者は戦を書きたくなかったのだという。一方で、秀吉不在の城から女たちだけで脱出する際、ねねは襲ってきた暴漢を手にかける。人を殺める恐ろしさ、殺された者にも家族がいたろうにと苦しむねねの姿に戦の悲惨さがにじみ出る。

後半で強烈なのは、ねねと茶々(池上季実子)の対立シーン。秀吉の手をとり、「大坂に行くのは嫌ですぅ。北政所(ねね)さまと同じところでは気が休まりませぬ」とわがままを言う茶々。秀吉は懐妊した彼女に夢中。孤独なねねは涙する。女の心理を描くのはさすがに上手い。全50話の平均視聴率31.8パーセントを記録。信長の藤岡弘、お市の方の夏目雅子、豊臣秀長の中村雅俊など豪華共演陣にも注目。

掲載2016年08月26日

「江戸の用心棒」
古谷一行×夏木勲×田中健、用心棒三人の友情と活躍
「忠臣蔵」にも関わることに!?藤沢周平原作の痛快作

(えどのようじんぼう) 出演者:古谷一行/田中健/夏木勲/笑福亭仁鶴/中井貴惠/三島ゆり子/服部妙子 ほか 1981年

掲載2016年08月26日

 お犬様が大事にされた元禄時代。江戸には多くの人間が流入。仕事紹介の「口入屋」が繁盛していた。出羽高澤藩で偶然、藩内の陰謀を知り、許嫁(中井貴惠)の父を斬って脱藩した青江又八郎(古谷一行)も江戸に流れ、口入屋・近江屋(笑福亭仁鶴)の紹介で用心棒稼業を始める。又八郎は、子だくさんの西国浪人・細谷源太夫(夏木勲)と博打好きの旗本三男坊米坂八内(田中健)と親しくなり、用心棒の依頼に絡むさまざまな事件を追う。一方、江戸城では浅野内匠頭の刃傷事件が発生。又八郎らは、赤穂方、吉良方、どちらとも関わることになってしまう。

 藤沢周平の名作「用心棒日月抄」を大胆に脚色。古谷はポニーテールの又八郎を若々しく演じている。いい加減だが子煩悩の源太夫と、白いマフラーをした洒落者の八内と又八郎の友情、「あんさん、クビになったらうちの信用が台無しです」と商いに厳しい播州出身の近江屋とのとぼけたやりとり、又八郎のダイナミックな殺陣も見物だ。ゲストには吉沢京子、赤座美代子など演技派女優が多数登場。小坂一也、阿藤快が悪役ゲストになっているのも驚き。監督には森一生、渡邊祐介、高瀬昌弘、脚本には「鬼平」でも知られる阿部徹郎、古田求、中村努、殺陣には「木枯し紋次郎」の美山晋八が参加している。エンディング主題歌「漂流船」を海援隊の千葉和臣がソフトに歌い、桜、菖蒲、紅葉と四季を織り込む映像も美しい。

掲載2016年07月29日

「御鑓拝借~酔いどれ小籐次留書~」
大名行列の御鑓を奪われる前代未聞の大事件発生!
佐伯泰英原作。初老侍の殿への思いに思わず涙。

(おやりはいしゃく~よいどれことうじとめがき~) 出演者:竹中直人/藤木直人/国仲涼子/鶴田真由/津川雅彦/高橋英樹/辻本祐樹/石丸幹二/本田博太郎/小野寺昭 ほか 2013年

掲載2016年07月29日

 徳川十一代将軍家斉のころ。播磨若生藩茂木家の大名行列に初老の侍が乱入。「御鑓拝借」という書きものを示した後、竹や刀を振り回し、茂木家の鑓先をスッパリ切って持ち去るという前代未聞の事件が起こった。茂木家の御先組物頭の古田寿三郎(藤木直人)が必死に探索を続けると、その侍はかつて豊後九重藩名留島家・江戸下屋敷の厩番だった赤目小籐次(竹中直人)だとわかる。無類の酒好きの小籐次は、おこう(鶴田真由)が営む柳橋の料亭の酒合戦で一斗五升を飲み干して寝過ごし、勤めをしくじったとして浪人となっていた。そして小籐次は、豊後布杵藩稲森家の御鑓を狙う。たったひとりで行列に突込み、鮮やかにしてのけるその仕業に庶民は熱狂。このままでは御鑓を奪われた藩は取り潰しにもなりかねない。古田と稲森家家老村瀬(高橋英樹)は、小籐次が鑓を奪った理由を知り、愕然とする。

 原作は人気時代小説家佐伯泰英。なんといっても魅力は、小籐次を演じる竹中直人。小柄で冴えないおじさんだが、剣を持てば赤目家一子相伝の「来島水軍流」の達人。竹中は野を走り、林をすり抜け、屋根を飛び走る。「わしは殿に一命を救われた」という小籐次の殿への思いに胸打たれる。クライマックス、藤木直人VS石丸幹二など立ち回りもバッチリ。家老よりも殿に見える(?)高橋英樹が、久々に豪快な殺陣を見せるのもうれしい。

掲載2016年07月08日

「暴れん坊将軍Ⅳスペシャル 狙われた江戸城の花嫁!」
男勝りの姫様登場で上様、ついに結婚!?
二転三転、おなじみのメンバーが複雑な陰謀を暴く

(あばれんぼうしょうぐん4すぺしゃる ねらわれたえどじょうのはなよめ!) 出演者:松平健/北島三郎/船越英二/浅茅陽子/横内正/渡辺篤史/五代高之/伊藤つかさ ほか 1991

掲載2016年07月08日

 例によって八代将軍・吉宗(松平健)の縁談を持ち込んだ側用人のじい・孫兵衛(船越英二)。今度は、九州秋月藩の松姫で、上様にお似合いだと張り切るじいだが、肝心の吉宗にその気はなく、また町へと脱出。たまたま吉宗は町道場で門弟たちを叩きのめす若侍の鮮やかな剣裁きに感心していたが、その若侍は門弟たちに恨まれ、襲撃された。その場を助けた吉宗は、若侍が実は女(川上麻衣子)と知って、驚く。一方、め組の紋次郎(渡辺篤史)らは、覆面の刺客がひとりの武士を襲う場に遭遇。武士は「まつ」と言い残して息絶える。そして吉宗は、江戸にいた松姫が行方不明だと耳にする...。

 吉宗の縁談はしばしば事件になるが、今回注目したいのは、「偉そうにしている男の方など大嫌い」「将軍様が悪い」と新之助に言いたい放題のじゃじゃ馬松姫を演じる川上麻衣子が見せる変化の数々。華麗な姫、若侍、さらに花魁まで。また悪役ゲストも素晴らしい。「この山吹色...」「この世は金」と目をらんらんとさせる西田健や立川三貴、松姫行方不明で悩むじいに「拙者なら切腹してお詫びいたすところじゃ」と嫌味を言う斉藤洋介、平然と悪仲間を抹殺する河原崎建三など、スペシャルにふさわしい顔ぶれが揃った。娘を誘拐した悪人に敢然と立ち向かう辰五郎(北島三郎)、静かに吉宗を見守る母(中村玉緒)らレギュラー陣も元気がいい。後味爽やかな長編。

掲載2016年05月20日

「江戸っ子判官とふり袖小僧」
ひばりが歌い、千恵蔵が踊る!華やかさと楽しさ満点
ご存知、「いれずみ判官」と娘義賊が見事に謎を解く

(えどっこはんがんとふりそでこぞう ) 出演者:片岡千恵蔵/美空ひばり/月形龍之介/花園ひろみ/片岡栄二郎/徳大寺伸 ほか 1959年

掲載2016年05月20日

 かっぱらいで牢に入れられた劇作家・亀屋東西(田中春男)は、懐に自作の脚本を持っていた。それは名奉行・遠山金四郎と義賊ふり袖小僧の物語。ところがそこにふり袖小僧本人(美空ひばり)がいたから大騒ぎ。その脚本に書かれた物語とは...。1959年、映画全盛期、大スター美空ひばりと金四郎を当たり役にした片岡千恵蔵、夢の共演という話題作らしく牢のセットも豪華で広々としている。ひばりはふり袖小僧の粋な義賊姿から、いなせな男衆、きりりとした女おえんにとくるくると姿を変えるが、千恵蔵もまたひょっとこの面を被ってお座敷で踊り騒ぐお殿様、やくざ者、さらには町奉行と変化の連続。お面を被ったまま、なかなか顔を見せないのは、主役登場シーンのお約束だが、大勢の芸者を引き連れ、俺の座敷に無礼に入り込んだとふり袖小僧に声を発しただけで千恵蔵ボイスだとわかるのはさすが。

 偽のふり袖小僧の凶行に怒る本物だが、しつこい岡っ引き・藤兵ヱ(沢村宗之助)に追われるはめに。隠れ家にまで踏み込まれ、仕方なく手下の木鼠吉次(片岡栄二郎)とすばしりの虎(花房錦一=香山武彦)と旅に出た。ところが懐を狙った渡世人に捕まり、押入れに閉じ込められてしまう。その渡世人こそ、金さんだった!

 監督は多くのひばり映画を手がけた沢島忠。テンポがよく痛快時代劇映画のお手本のような本作。もちろんお白洲の見せ場もバッチリ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。