ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2018年05月18日

「伊能忠敬―子午線の夢―」
マジメ研究者伊能忠敬を加藤剛がマジメに演じた伝記映画
日本の美しい景色も映し出される劇団俳優座創立五十五周年記念作

(いのうただたか しごせんのゆめ) 出演者:加藤剛/賀来千香子/西田ひかる/榎木孝明/丹波哲郎/中野誠也/前田吟/愛川欽也/加藤大治郎 ほか 2001年

掲載2018年05月18日

 名主の伊能家に養子婿となって働き続けた伊能忠敬(加藤剛)は、五十歳を過ぎて隠居。「子午線の長さを測る」夢に挑戦を始めた。名主時代に「田畑の測量をやってきた」と自信をもって測量した数値を恩師である高橋先生(榎木孝明)に報告するが、「学問の上からは認めにくい」と誤差を指摘され、やがて幕府の御用で測量の旅に出ることを勧められる。その背景には、ロシアなど異国の船が頻繁に近寄り、日本の正確な地図が必要という事情があったのだった。仙台藩用人(前田吟)が一行を幕府密偵と間違えて大金を献上しにきたり、愛嬌たっぷりの旅館の主人(愛川欽也)と出会ったりとさまざまな経験をしながら、測量を続ける一行。北海道、関東、東北...忠敬の精密な地図は将軍からも高く評価される。

 生真面目な人柄で知られる加藤剛はコツコツ測量に挑む忠敬にはぴったり。ともに旅をする次男役は息子である加藤大治郎。父は息子に「人間の体が一番の測量器具だ」「基本をよく体に叩き込め」と教えていく。北海道のサケ漁など美しい日本の風景も随所に盛り込まれる。忠敬を支えたお栄(賀来千香子)の「一生に一度のお祭りだと思えばいい」という言葉はリタイア後の夢を応援する言葉として印象に残る。映画公開時にシニア層からも大きな反響を呼び、ウォーキングイベントも大いに盛り上がった。劇団俳優座創立五十五周年記念作。

掲載2018年05月11日

「栄花物語」
芸能生活50周年記念で森繁久彌が人間味あふれる田沼意次に。
ゆかりの俳優大集合で山本周五郎の名作がダイナミックに展開

(えいがものがたり) 出演者:森繁久彌/倍賞千恵子/北大路欣也/竹脇無我/村井国夫/西郷輝彦/叶和貴子/伊吹吾朗/山口いづみ ほか 1983

掲載2018年05月11日

 田沼意次(森繁久彌)は、十代将軍徳川家治(長谷川哲夫)の側用人として政治の実権を握り、金の力を重視する重商主義でしばしば悪評をたてられていた。清廉潔白を重んじる白河藩主・松平定信(村井国夫)は、意次のやり方に真っ向から反対。御家人青山信二郎(北大路欣也)に辛辣な田沼批判の檄文を書かせて、世論を煽ろうとするが、田沼流の規制緩和で経済が回り、自由な商売や文化に酔いしれる人々にはあまり効果がなかった。しかも、信二郎は、自分の行為を咎めもしない懐の深い意次の人柄に魅せられてしまう。一方、反田沼派だった勘定吟味役・河井保之助(竹脇無我)も、田沼が推進する印旛沼干拓計画の意図を理解し始めていた。しかし、田沼家では意次が頼みとしていた嫡男・意知(西郷輝彦)に悲劇が起こる。世の流れは変わりつつあった...。

 森繁久彌芸能生活50周年記念作。原作は山本周五郎。監督は「仮面の忍者赤影」「水戸黄門」の倉田準二。共演には男装姿もりりしい意次側室お滝の方(倍賞千恵子)、神出鬼没の稲葉小僧(松山英太郎)、勘定奉行(伊吹吾朗)、豪商天王寺屋(藤岡琢也)ら豪華キャストが揃う。飄々としながら、時に鋭く真意を突く意次は、森繁にぴったり。長くワイロ大好きの腐敗政治家と言われてきた意次は、近年、経済で幕府財政再建を果たした新感覚の持ち主と再評価が高まる。その波瀾の人生を堪能できる。

掲載2018年04月06日

「赤胴鈴之助」
国民的少年ヒーロー・鈴之助が仲間と強敵に立ち向かう。
親子愛、友情、敵討ちと冒険が続く。宮崎駿も絵コンテを描いた名作アニメ。

(あかどうすずのすけ) 出演者:(声)山本圭子/小鳩くるみ/兼本新吾/桂令子/井上真樹夫 ほか 1972年

掲載2018年04月06日

 日本一の剣士を目指す赤胴鈴之助は、亡父の形見である赤胴を身に着けて江戸に出てきた。父の知り合いである北辰一刀流の千葉周作の道場に入門するが、そこは江戸一番といわれる名門。道行く町人にさえ、「続くものか」とバカにされるが、持ち前のガッツと周作や娘のさゆりに見守られ、厳しい修行に耐えていく。やがて江戸では幕府転覆をたくらむ謎の集団・鬼面党が暗躍。それは鈴之助の運命にも大きく関わってくる。
 昭和期には吉永小百合出演のラジオドラマでも親しまれた人気作を72年にアニメ化した作品。巨匠・宮崎駿も「やったぞ!赤胴真空斬り」(26話)などで絵コンテに参加している。愛嬌たっぷりの鈴之助が母を思う親子愛、ライバル竜巻雷之進との友情、周作との師弟愛など人との交流や、やがて鈴之助が編み出す「赤胴天空斬り」「赤胴真空斬り」といった超常現象的必殺技を駆使したチャンバラ、キリシタンの秘宝探しなど、時代劇要素はたっぷり。対する鬼面党の仕掛けも大がかりだ。三位一体の不気味な三兄弟、妖しいくノ一、さらには「水中竜」「鬼面戦車」といった機械仕掛けまで飛び出して、鈴之助は何度も危機に直面する。そして姿を現す鬼面党の党首・銀髪鬼。一度倒したと思った銀髪鬼だが、そこには秘密が...。今も愛される主題歌「がんばれ!赤胴鈴之助」も元気よく歌いたい名作アニメ。

掲載2018年03月02日

「一路」
陰謀と戦いながら参勤交代ミッション!
困難の中で一致団結する感動ロードムービー

(いちろ) 出演者:永山絢斗/渡辺大/藤本隆宏/梶原善/忍成修吾/武蔵/内山信二/平祐奈/室井滋(声)/石黒賢/佐野史郎 ほか 2015

掲載2018年03月02日

 小野寺一路(永山絢斗)は急死した父に代わり、西美濃の旗本蒔坂家の参勤交代のリーダーをわずか十九歳で務めることになった。期日通りに江戸に到着しなれば、御家の一大事。父が遺した参勤交代マニュアルを手に、わざわざ古式ゆかしい装備で山深い中山道を進むが、途中、吊り橋が切れていたり、路銀が盗まれたりと事件が続発。一行の中に裏切り者がいるのか!?実は蒔坂家乗っ取りを企む殿の後見役蒔坂将監(佐野史郎)の陰謀があったのだ。ところが、蒔坂家の殿様左京大夫(渡辺大)は"うつけ者"と評判で、挨拶に来た一路の顔を見ると「お前、歌舞伎役者の河原崎権十郎によう似ておるのお」と大喜びしたり、「やっこさーん、こりゃこりゃ」と言いだす始末。そんな中、江戸では殿の妻子に危機が迫る。

 当初は若造に指図され、嫌な顔だった蒔坂家の面々も、一路の誠意に気づき、次第に一致団結。面白いのは殿の二頭の愛馬が人間の言葉をしゃべり(声は室井滋と熊田曜子)が口喧嘩しながら道中すること。しかし、殿をがけ崩れから守った一頭は骨折。死にゆく馬を、頭を下げて見送った一行の気持ちはひとつになる。頑固な家臣(藤本隆宏)や「腹いっぱい食わせて」と嘆く丁太(武蔵)と半次(内山信二)の槍持ちコンビなど全員がいい味を出す。「第三回本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞した浅田次郎原作。涙と笑いの感動ロードムービー。

掲載2018年02月09日

「隠密くずれⅢ 消えた大名行列」
松方弘樹と芦屋雁之助が金儲けに走る隠密くずれコンビに!
大名行列消失の裏にある秘密と謎の尼僧の関係は...

(おんみつくずれ3 きえただいみょうぎょうれつ) 出演者:松方弘樹/芦屋雁之助ほか 1983

掲載2018年02月09日

 幻の三蔵(松方弘樹)と夢の五介(芦屋雁之助)は、薄給なうえに仕事の汚い裏を知ったことで上司とぶつかり、公儀隠密から抜けた隠密くずれ。今は江戸の商人と用心棒の恰好で旅をしながら、金儲けの口を探している。ふたりは奥州中村城下に向かう山中で、慌てた様子の藩士たちに大名行列を見なかったかと問い詰められ、吟味のためと強引に連れていかれる。どうやら藩主・相馬因幡守(伊吹剛)はじめ帰国の行列三十人が神隠しのごとく消えてしまったらしい。藩の実権を握る家老の岩瀬弾正(青木義朗)により牢に入れられた三蔵と五介は口封じされそうになったところを危うく逃げ出し、大名行列消失の裏を探り始める。

 フジテレビ「時代劇スペシャル」で放送されたシリーズ第三弾。面白いのは、主役のふたりが正義の味方ではなく、「千両」など高額の謝礼を示されるとさっさと悪家老の側につこうとするなど、人間臭いキャラクターであること。しかし、藩主の妹の姫を守るため、命をかける乳母藤波(本阿弥周子)やその妹で美人の尼僧桂月院(范文雀)の心意気に感じ入ったふたりは、クライマックス、仙台藩青葉城に乗り込んで大暴れを繰り広げる。美人に弱い三蔵と幽霊に弱い五介。ふたりのコメディタッチのやりとりが楽しい。監督は「五月みどりのかまきり夫人の告白」やドラマ「影の軍団」「柳生あばれ旅」などで知られる牧口雄二。

掲載2017年12月29日

「赤穂浪士 天の巻・地の巻」
東映オールスター大集合!忠臣蔵映画初のカラー作品
千恵蔵の立花左近、右太衛門の大石内蔵助の演技対決

(あこうろうし てんのまき・ちのまき) 出演者:片岡千恵蔵/市川右太衛門/大友柳太朗/中村錦之助/月形龍之介/東千代之介/伏見扇太郎/小杉勇 ほか 1956年

掲載2017年12月29日

 元禄十三年三月十四日、勅使饗応役を務める播州赤穂藩主・浅野内匠頭(東千代之介)は、指導役である高家筆頭・吉良上野介(月形龍之介)の愚弄に対して怒り、ついに殿中松の廊下において刃傷事件を起こす。内匠頭は即日切腹。御家はお取り潰しとなる。赤穂藩城代家老・大石内蔵助(市川右太衛門)ら赤穂浪士の討ち入りを懸念する米沢藩家老・千坂兵部は、盗賊の蜘蛛の陣十郎(新藤英太郎)、お仙(高千穂ひづる)、十手持ちの金助(河野秋武)、さらに堀田隼人(大友柳太朗)らに浪士の動きを探らせる。一方、立花左近(片岡千恵蔵)は御役目の道中の最中、自分の名をかたる武士と対峙する。それは他ならぬ大石内蔵助だった...。

 原作は大佛次郎。脚本は新藤兼人、監督は松田定次。東映五周年記念作品として、「宿命の松の廊下!痛恨一太刀に終わる無念の刃傷 オールスター総出演で贈る絢爛と幕開く、東映の忠臣蔵!」と宣伝文句も勇ましい。巨額の製作費と一年の撮影期間を費やして昭和31年に公開された、忠臣蔵映画初のカラー作品となった。大きな特長は、赤穂浪士とは一歩離れた立花左近や堀田隼人から見た「忠臣蔵」になっているところ。千恵蔵VS右太衛門の対面シーンはさすがの迫力。千恵蔵が深いしわで事の重大さと意志を表明すれば、右太衛門は苦渋の決断をした大石を圧倒的な眼力で見せる。二大スターのガチ対決を堪能したい。

掲載2017年02月17日

「大奥〈男女逆転〉」
二宮和也が美男三千人の園「大奥」へ!
柴咲コウの八代将軍徳川吉宗ら豪華キャストの絢爛絵巻

(おおおく〈だんじょぎゃくてん〉) 出演者:二宮和也/柴咲コウ/堀北真希/玉木宏(特別出演)/大倉忠義/佐々木蔵之介/板谷由夏ほか 2010

掲載2017年02月17日

 七代将軍徳川家継のころ、江戸では男子だけが罹る謎の疫病が大流行、悲惨な姿で次々と命を落とし、男子の人口が激減した。運よく病と無縁でいる貧乏旗本の息子水野祐之進(二宮和也)は、剣術に励み、幼なじみのお信(堀北真希)らとつきあいながら暮らしていたが、家の困窮を救うべく、女将軍の跡継ぎ対策のため設置された「大奥」に入る。藤波(佐々木蔵之介)、松島(玉木宏)ら美男三千人がひしめく「大奥」は、嫉妬や策謀渦巻く伏魔殿。そんな中、水野はその才覚と大胆さで頭角を現し、ついに八代将軍吉宗(柴咲コウ)の目に留まる。当然、嫉妬攻撃にさらされそうな立場だが、なぜか周囲は冷ややかな笑顔を彼に向ける...。

 男女逆転「大奥」という奇抜な発想で綴られる作品だが、人間の業や純な心が織り込まれ、しっかりしたラブストーリーになっているところが大きな魅力。倹約将軍吉宗を演じた柴咲の堂々とした上様ぶりは見事。また、将軍の寝屋で願いごとをするのは御法度。命をとられても仕方ないが、ここでは「ただひとつの願い」がかなえられる。それは何か。主役が「嵐」の二宮だけに、お付きの杉下(阿部サダヲ)に「お背中をお流しします」と言われて湯殿に入り、うっすら化粧まで施されてのラブシーンに注目が集まった。大岡忠相に板谷由夏、祐之進の両親に映画の遺作となった竹脇無我、倍賞美津子と豪華な顔ぶれが揃っている。

掲載2017年02月10日

「あさきゆめみし ~八百屋お七異聞」
おでこ全開の前田敦子が純愛を貫く悲劇の少女を熱演
八百屋お七の事件にジェームス三木が新解釈で挑む

(あさきゆめみし ~やおやおしちいぶん) 出演者:前田敦子/池松壮亮/平岡祐太/竹下景子/中村雅俊/田山涼成 ほか 2013

掲載2017年02月10日

 江戸本郷。裕福な八百屋のひとり娘お七(前田敦子)は、火事で焼けた自宅立て直しの間、預けられた寺で、寺小姓の吉三郎(池松壮亮)と出会う。「うっかり近づくとやけどするよ」と言われた彼に惹かれるお七。両親(中村雅俊、竹下景子)は、店の実直な手代勘蔵(平岡祐太)との縁談を勧めるが、思いを抑えきれず、お七は吉三郎と密会。その最中に火事が起き、ふたりの運命が大きく変わる。火事を起こしたのは誰なのか。お七を救おうと必死になる両親、さらに取り調べをする役人たちも彼女に素直になるよう促すのだが...。

 お七は実在とされ、歌舞伎などでも題材にされてきた。これまでは「再び火事になれば、恋しい男に会える」と放火し、火あぶりの刑になった娘と描かれてきたが、ジェームス三木脚本のこのドラマでは、冤罪だと解釈している。悲劇の原動力となるのは、お七の一途な思い。お七が吉三郎に出会ったのは十四歳。初恋に戸惑い、「体に魔性のキツネがすみついた」と思い込むほど幼い。当時、AKB48を卒業して女優業に力を入れる前田敦子は、おでこを出して時代劇初挑戦。所作の習得にも熱心で、池松とも演技について語り合ったという。目に涙を浮かべ、「私をおとなにしてください...」と吉三郎に迫るなど、思い詰めた少女は、終盤、女性として凛としてみえる。その変化を見せたことが、前田の成長と重なる。

掲載2017年02月03日

「小川の辺」
東山×愛之助!兄弟のように育った三人の過酷な運命
オール山形ロケで描く藤沢周平のロードムービー

(おがわのほとり) 出演者:東山紀之/菊地凛子/勝地涼/片岡愛之助/尾野真千子/松原智恵子/笹野高史/西岡德馬/藤竜也ほか 2011

掲載2017年02月03日

 東北の小藩・海坂藩。藩士・戌井朔之助(東山紀之)は、脱藩した佐久間森衛(片岡愛之助)を討つよう命じられる。佐久間は朔之助の剣友であり、妹・田鶴(菊地凛子)の夫。自らも剣を学んだ田鶴は、兄に手向かうはず。友と妹を斬れるか。また朔之助に仕える新蔵(勝地涼)もまた心穏やかでいられない。新蔵はこどものころより、朔之助や田鶴と兄弟のように育った間柄で、密かに田鶴を思っていたのだ。佐久間はなぜ脱藩したのか。やがて伝わる農民を思う佐久間の正義感。やり切れぬ思いを抱きつつ、動き出す三人。「小川の辺」は武士としての使命感と兄弟愛、夫婦愛などを描く藤沢周平の名作だ。歌舞伎界の人気者片岡愛之助は、かつて舞台で藤沢作品『蝉しぐれ』に主演経験もある。超多忙な中、「どうしても出たかった作品」と出演を決めたという。

 東山VS片岡の殺陣も見どころのひとつ。BGMは太鼓の音だけ。緊迫感あふれる場面だ。ボクシングができる東山は刀をよける動きが素早くギリギリまで迫る迫力。愛之助は言葉少なく、ダイナミックで巧みな剣裁きを見せて見事。ハリウッドで活躍する菊地凛子は時代劇初挑戦。初々しさとともに女の強い一途さを表現する。菊地を支えるのが藤竜也、松原智恵子、笹野高史らベテラン陣。オール山形ロケの美しさは格別で、佐久間夫妻のロードムービー的味わいも楽しめる。

掲載2017年01月27日

「鬼平犯科帳スペシャル 浅草・御厩河岸」
元錠前破りの密偵田辺誠一と大盗賊田村亮が登場
「この俺が一番悪い奴かもしれねえ」という鬼平の心は

(おにへいはんかちょうすぺしゃる あさくさ・おうまやがし ) 出演者:田村亮/田辺誠一/左とん平/小林綾子/鶴田忍/東風万智子/仁科貴 ほか 2015

掲載2017年01月27日

 ある日、密偵の伊三次(三浦浩一)は、乱暴者の中間(仁科貴)らに袋叩きにされる老人(左とん平)を助けようと大げんかになる。大滝の五郎蔵(綿引勝彦)は、老人が大盗賊海老坂の与兵衛(田村亮)とつながる卯三郎だと思いだす。卯三郎は、元錠前破りの密偵岩五郎(田辺誠一)の父親。おまさ(梶芽衣子)から卯三郎のことを聞いた長谷川平蔵(中村吉右衛門)は、海老坂一味捕縛に動き出す。岩五郎は、働き者の女房お勝(小林綾子)と盲目の義母お八百(南條瑞江)に居酒屋「豆岩」を任せ、自分は居眠りばかりする怠け者。五郎蔵に「毎日が暇で仕方ありません」と言って呆れられる。それが何十年ぶりに再会した父に錠前破りを持ちかけられた途端、イキイキとし始める。海老坂一味が狙う強欲な醤油酢問屋柳屋(鶴田忍)の錠前のことを知った岩五郎は、「はずしてみてえ」という誘惑に負けてしまうが...。

 「鬼平犯科帳スペシャル」シリーズ通算149作目。おなじみ猫殿の料理も「お頭のお体を考えて」薄味になった。ゆるいイラストでも人気の田辺は、のんきな居酒屋の亭主を好演。また、田村亮は鬼平との遭遇シーン、白洲でもさすがの風格を見せる。柳屋での盗みは、静かで誰も傷つけない本格の仕事ぶりでとてもスリリング。「この俺が一番悪い奴かもしれねえ」とつぶやく鬼平の真意と、原作とは一味違うラストにも注目したい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。