ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2019年09月13日

【宮部みゆき劇場スペシャル】「荒神 KOUJIN」
突如現れた怪物が村人を襲う!宮部みゆき原作の衝撃的時代劇
人間の業と哀しみが、最新のVFXで表現された壮大なスケールの話題作

(こうじん) 出演者:内田有紀/平岳大/平岡祐太/柳沢慎吾/前田亜季/田中要次/加藤雅也/柴俊夫/大地康雄 ほか 2018年

掲載2019年09月13日

 関ヶ原の戦いから約百年後の元禄時代。東北の小さな村が一夜のうちに壊滅するという事件が起きる。荒れ果てた村から傷だらけになった少年が、朱音(内田有紀)の住む村に逃げてくる。少年は恐ろしい怪物を見たという。容赦なく人間を喰らうという怪物の恐怖におびえながらも、朱音と浪人の榊田宗栄(平岡祐太)、絵師の菊地圓秀(柳沢慎吾)らは、対策を考える。やがて、その怪物の封印を解いたのが、「どうしてもそれが見たくなって」という圓秀ではとの疑いが浮上。一方、朱音の兄で藩の重臣・曽谷弾正(平岳大)は、怪物を操り、自らの野望を達成しようと企む。やがて怪物は、人間の反撃などお構いなしに襲撃を始める。兄の悪事を知った朱音は「兄様は何をするおつもりですか」と迫るが、弾正は聞く耳を持たない。そして目の前に迫る怪物に対して、朱音は「私を殺してください」「あの怪物はわたしの子どもです」と告白する。彼女の悲惨な過去と秘密に怪物はどうかかわるのか...。

 原作は宮部みゆき。最新のVFXを用いて表現された怪物はリアルで怖い。内田有紀は知的なおとなの女性としての魅力と、少女のような純真さを表現。それゆえに怪物誕生の秘密が明かされる過程には、深い悲しみが漂う。また、隻眼で野心満々の弾正には、歪んだ感情と深い怒りがうかがえる。前田亜季、加藤雅也、大地康雄、角替和枝らキャストも充実。

掲載2019年08月30日

「コメディー お江戸でござる【セレクション放送】」
人情喜劇と歌と杉浦日向子おもしろ講座の三部構成で、気分は江戸時代にタイムスリップ!
伊東四朗ら芸達者な役者の絶妙な演技とともにセット転換など裏側もすごい

(こめでぃー おえどでござる【せれくしょんほうそう】 ) 出演者:伊東四朗/野川由美子/栗田貫一/桜金造/香西かおり/杉浦日向子 ほか  1995年

掲載2019年08月30日

 平成のお茶の間に楽しい笑いを届けた人気番組「コメディー お江戸でござる」。内容は、江戸時代、隣近所と親しく付き合い、助け合って生きた庶民の姿をモデルに、当時の豊かな文化と人情を織り込んだ「芝居」と、江戸情緒を感じさせるオリジナルソングを女性歌手が聴かせる「歌」、さらに芝居のテーマにちなんだ江戸の実情を語る江戸風俗研究家の杉浦日向子による「おもしろ江戸ばなし」の三部構成。座長の伊東四朗をはじめ、桜金造、重田千穂子、魁三太郎、野川由美子ら舞台経験豊富な役者たちが、さまざまな役柄で笑わせる。中でもえなりかずきは、やたら賢い小僧役でおとな顔負けのコメディセンスを見せ、評判になった。また、ゲストに小松政夫も出演し、伊東×小松の名コンビ復活!のお楽しみもある。

芝居のタイトルは「紙は天下の回り物」「情けは恋のためならず」など有名なフレーズのパロディが多く、たとえば第三話「目には青葉 山ほととぎす 人は見栄」では、高額の「初物」に憧れる見栄っ張りの江戸っ子の騒動が描かれる。最後の「おもしろ江戸ばなし」では、伊東四朗座長が、杉浦に「今回のお話では...」と、芝居の中で史実と異なる点を指摘してもらうのも定番だった。なお、毎回本物の舞台仕立てのセットで、場面転換も観客の前で、すべて手作業で途切れることなく進められるのは、この番組ならでは。裏側の高度な技術にも注目したい。

掲載2019年05月24日

「クロムクロ」
現代によみがえった戦国サムライがロボットを操り、悪を斬る!!
愛すべきキャラクター、壮絶なアクション、GLAYの曲にもシビれる名作アニメ

(くろむくろ ) 出演者:声の出演:阿座上洋平/M・A・O/上田麗奈/瀬戸麻沙美/石川界人/小林裕介/武内駿輔/杉平真奈美ほか 2016年

掲載2019年05月24日

 舞台は2016年の富山。60年前、ダム建設の際に見つかった謎の遺物アーティファクトを研究する「国際連合黒部研究所」では、人型機動兵器の実験も繰り返されていた。ある日、謎の飛行物体が富山に落下。多数のロボット(顔は鬼!)が研究所を攻撃し、激戦が始まった。そんな折、研究所所長の娘、白羽由希奈は、偶然、箱型の「ザ・キューブ」に触れてしまう。驚いたことにそこから、裸の男が出現。この男こそ、450年前の戦国時代から現代にやってきた・青馬剣之介時貞だった。剣之介は、彼女をかつての主・雪姫と間違えていた。由希奈の家に居候し、彼女が通う「立山国際高校」に転入した剣之介は、生体認証により彼と由希奈にしか起動できない「クロムクロ」により、強大な敵と戦うことになる。

 もしも戦国サムライがロボットを動かしたら? そんな発想から生まれたこの作品は、とにかくキャラクターが素晴らしい。いつも口をへの字にした剣之介は敵を鬼と認識。「うぬら鬼の手先か!!」「大義を忘れた知れ者か!!」とサムライ魂で戦いに挑む。刀型の武器を駆使する壮絶なアクションはまさしく「殺陣」。一方ですぐに裸になって、由希奈の顔を赤くさせるなどお約束(?)シーンもあって、微笑ましい。若きパイロットたちの思い、家族の願いも描かれ、胸に迫る。GLAYによる疾走感あふれるOP主題歌にも注目。

掲載2019年05月17日

「桂ちづる診察日録」
蘭方の女医・桂千鶴が牢医師として町医者として人々を救う
殺人事件、復顔、父の仇、シーボルトにからむ事件にまで向き合う彼女の生き方に涙

(かつらちづるしんさつにちろく ) 出演者:市川由衣/高嶋政伸/三宅裕司/戸田恵子/遠藤憲一/キムラ緑子 ほか 2010年

掲載2019年05月17日

 幼いころ、父・桂東湖(遠藤憲一)の医術を見て、「私、お医者様になります」と宣言した千鶴(市川由衣)は、大坂と長崎で蘭方を学び、江戸で治療所を開く。父の親友・酔楽(三宅裕司)の紹介で、牢医師となった千鶴は、ハエとねずみだらけの牢で、同心たちから「女の医師など初めて見た」などと冷やかされながらも懸命に働く。そんな中で、彼女の前に傷ついた弥次郎(石垣佑磨)が。この男は亡き父の仇。悩みながらも千鶴は弥次郎の手術をする。そして、父の死には、かつて父が破門した悪医師がからんでいることを知る...。

 殺人事件や赤ん坊の父親捜し、記憶喪失の回復など、毎回の事件は、とても現代的。驚くのは第10話「もの言わぬ叫び」で、発掘された人骨の身元を探すため、千鶴が「復顔」に挑むこと。まるで科捜研!初時代劇にして連続ドラマ初主演の市川由衣は、清潔感あふれる演技で、哀しみを抱えた娘を演じ、泣かせる。また、「男だろ、泣くんじゃないよ!」と大男も黙らせる桂診療所の女中(鬼婦長?)のキムラ緑子、血を見ると気絶するため医師をあきらめた能天気な兄陽太郎の高嶋政伸、子殺しの罪を背負った牢名主の戸田恵子、「おべっかはいいよ!」と啖呵を切る劇作家南北先生の江原真二郎らが初々しい主役を盛り立てるのも気持ちいい。最終話はシーボルトもからむ大事件に。敵に立ち向かう千鶴に注目。

掲載2019年05月03日

「孤剣は折れず 月影一刀流」
暗殺!大奥!柳生!怪盗!エンタメ要素たっぷりの柴田錬三郎小説の映像化
憂いをまとう剣豪を鶴田浩二、お転婆姫の美空ひばり夢の競演作

(こけんはおれず つきかげいっとうりゅう ) 出演者:鶴田浩二/美空ひばり/桜町弘子/月形龍之介/黒川弥太郎/加賀邦男 ほか  1960年

掲載2019年05月03日

 兵法修業の旅の途中であった剣士・神子上(みこがみ)源四郎(鶴田浩二)は、恩師・小野忠明暗殺の報を聞き、江戸に帰還。孤児であった彼を育ててくれた恩人・松平伊豆守(黒川弥太郎)の屋敷で、恩師暗殺の裏に柳生但馬守(月形龍之介)と大奥の春日局(毛利菊枝)が絡んでいることを知る。恩師の仇討を誓った源四郎は、将軍の狩場で小野道場を裏切った四天王と対決、その後、謎めいた姉妹や怪盗・卍の黒兵衛(徳大寺伸)らと関わる。そして、偶然、馬を乱暴に走らせる若衆を見つけるが、それは将軍の妹・加寿姫(美空ひばり)であった。やがて、春日局の動向をつかんだ源四郎だが、囚われの身となってしまう。そこである男から吉原の紅葉太夫(花園ひろみ)に託されたのは、禁断の品だった! なんとしても脱出したい源四郎を救ったのは、黒兵衛だったが、恐ろしい敵が現れる。

 映画全盛期の東映で、鶴田×ひばり二大スターの競演で話題になった娯楽作。公開当時のキャッチフレーズに「風寒き荒野を彩る恋と剣! 邪心を斬って冴え渡る月影一刀流!!」とあるように、鶴田は明朗快活というより、荒涼とした中に憂いをおびた総髪の美剣士になっている。憂いの美男は原作者・柴田錬三郎のキャラクター造形の得意としたところ。共演には、月形龍之介、黒川弥太郎、桜町弘子ら東映時代劇には欠かせない顔ぶれがそろい、宿敵・竜馬役に平幹二朗が登場していることも見逃せない。

掲載2019年01月25日

「義風堂々!!兼続と慶次」
総監督・原哲夫、監督・ボブ白旗の豪快戦国武将アニメ
直江兼続がまさかの出生の秘密を抱え、前田慶次と莫逆の友となる!

(ぎふうどうどう!!かねつぐとけいじ ) 出演者:(声の出演)浪川大輔/佐藤拓也/川本成/郷田ほづみ/安元洋貴/根谷美智子/上田燿司/廣田行生 ほか 2013 年

掲載2019年01月25日

 大ブームを巻き起こした「花の慶次」はじめ、誰もが一度は目にしたことがある原哲夫の華麗なタッチの戦国武将たち。その原が総監督を務め、シャープな演出で知られるボブ白旗が監督を務めたのがこの作品。主人公は大河ドラマの主人公としても注目を集めた直江兼続と戦国の傾奇者としてゆるぎない人気を誇る前田慶次。本作では、兼続が毘沙門天の化身といわれた上杉謙信のご落胤という驚くべき設定で、命を懸けて上杉家を支える情熱的な家老として描かれる。一方、時に松の木かと思えるほどのマゲを結ったりする前田慶次もいかなる権力者にも媚びず、「義」を胸に戦い続けた人物として登場する。たなびく髪、隆々たる筋肉、輝く目、翻る鉄扇、光るかんざし、迫る長槍、まるでギターのような琵琶など、キャラクターやアイテムを見ているだけでも面白い。また、思慮深い大谷吉継、不適な井伊直政、毎回登場する戦国武将たちのキャラクターも大迫力。

 毎回みどころ満載の展開だが、貫かれるのは乱世を生き抜こうとする男たちの熱だ。天下人の地位を盤石にするため、八王子に攻め入る秀吉。そうした動きの中でも兼続の秘密を守るべく、忍びたちによる熾烈な影の戦いも展開する。兼続と慶次、ふたりが"莫逆の友"としてどう危機を切り抜けるか。「ルパン三世」の石川五ェ門役でも知られる浪川大輔(兼続役)など人気声優たちの熱演に注目したい。

掲載2019年01月11日

「雲霧仁左衛門3」
中井貴一主演雲霧は原作を踏襲しつつオリジナルの展開に!
一党の新たな顔と春風亭小朝&板尾創路の悪役コンビに注目。

(くもきりにざえもん3 ) 出演者:中井貴一/國村隼/内山理名/手塚とおる/渡辺哲/村田雄浩/板尾創路/近藤芳正/春風亭小朝 ほか  2017年

掲載2019年01月11日

 人を傷つけず、雲か霧のごとく大規模な盗み仕事をしてのける雲霧仁左衛門(中井貴一)一党と、彼らを執拗に追い続ける火付盗賊改方・安部式部(國村隼)らの攻防を描くシリーズ。第三弾の本シリーズは、池波正太郎の原作世界を踏襲しつつ、オリジナルのストーリーを展開。雲霧が武士の身分を捨てることになったいきさつと彼にとっての敵との対決が軸となる。

 物語の始まりは前シリーズ最終回の一年後の江戸。一党を解散した雲霧は行方不明となっていたが、そのころ、江戸には雲霧を名乗る盗賊が残虐な押し込みを続けていた。その偽雲霧を陰で操っていたのが、雲霧とは因縁の深い藤堂家の江戸家老・磯部主膳(春風亭小朝)だった。磯部は平然と人殺しをする剣客関口(板尾創路)を使い、火盗に接近。偽雲霧を追うため集まった一党だが、七化けのお千代(内山理名)が捕まってしまった。ウソありワナあり、仕掛けあり。一党にとって危機が続くが、雲霧はその危機までも逆手にとって、磯部をぎゃふんと言わせる襲撃を計画。雲霧と火盗に藤堂家も加わる三つ巴の戦いから目が離せない。注目したいのはのっぺりフェイスで冷酷な計画を練る小朝と板尾の悪役コンビ。また、今シリーズから新たな一党の顔となる小頭・三坪の伝次郎(近藤芳正)、大工小僧七松(大東駿介)らの得意技も見逃せない。

掲載2018年11月23日

「眩(くらら)~北斎の娘~」
天才絵師の娘もまた天才!北斎の娘お栄を宮﨑あおいが好演
江戸の文化人の人間模様と目を見張る映像美で芸術祭大賞を受賞

(くらら~ほくさいのむすめ~) 出演者:宮﨑あおい/松田龍平/三宅弘城/西村まさ彦/野田秀樹/余貴美子/長塚京三 ほか 2017年

掲載2018年11月23日

 人気絵師・葛飾北斎(長塚京三)の三女お栄(宮﨑あおい)は、幼いころ父に「この世は円と線でできている」と聞かされ、成長すると自らも筆をとり、父を支える。絵師の夫の絵が下手だと鼻で笑って離縁された経験のあるお栄は、かつて父の門人だった善次郎(松田龍平)に盛り場に連れていかれ、艶やかな芸者や灯りに照らされる座敷や街並みに魅了される。「善さんの優しさは毒だ...」いっしょに暮らす女がいることを知りつつ、お栄は善次郎に惹かれていく。

 大河ドラマ「篤姫」でも父娘を演じた宮﨑・長塚は、衣食住には関心がなく、ぼろ着物で暮らし、引越しを繰り返す似た者親子役でも息がぴったり。宮﨑は長い煙管でたばこをふかし、「したかねえ」「上からものを言いやがって」と男言葉で新境地を見せた。お栄の苦しい恋の意外な結末と、「変人」と言われながらも落ち込む娘の横にすっと現れ、「この橋を渡ったら忘れよう」と声をかけるなど、不器用であたたかい人間味ある"父"北斎の姿に心打たれる。火事の炎の色、大川の水色、珍鳥カナリアの羽色、色町で見た人間の顔の陰影などを必死に見つめ続けたお栄(葛飾応為)は、晩年、日本のレンブラントとも称される作品を完成させる。原作は直木賞作家朝井まかての人気小説。脚本は大森美香。江戸の美とともに滝沢馬琴(野田秀樹)とのつながりなど当時の文化人の人間模様を巧みに描き、文化庁芸術祭大賞を受賞した長編。

掲載2018年11月09日

中井貴一主演「雲霧仁左衛門」
原作・池波正太郎 中井貴一が大盗賊「雲霧」のお頭に。
七化けのお千代、木鼠の吉五郎ら個性的な配下とともに火盗と対決!

(くもきりにざえもん(しゅえん:なかいきいち)) 出演者:中井貴一/國村隼/内山理名/柄本佑/手塚とおる/渡辺哲/京野ことみ/村田雄浩/伊武雅刀 ほか 2013年

掲載2018年11月09日

 享保年間、徳川吉宗の時代。江戸市中はもとより、東海道、中山道など広域で大がかりな盗みを実行する「雲霧仁左衛門」一党がいた。雲霧は、決して人を傷つけず大金を奪い、雲か霧のごとく姿を消す。狙うは厳重な警戒態勢の大店ばかり。驚くのは、雲霧一党の結束力だ。名古屋の大商人を狙った際には、京の雅な女に化けた一味の美女・七化けのお千代(内山理名)を送り込み、店の主人をメロメロに。まんまと家に入り込んだお千代は金蔵と鍵の在りかを探る。完璧な仕事をする雲霧を捕らえることに執念を燃やすのが火付盗賊改方の安部式部(國村隼)だ。雲霧が独自ルートで連絡を取り合い、隠れ家を確保すれば、安部らは与力、同心、密偵らが総力を挙げて聞き込み、張り込みで追いかける。雲霧の見事な作戦と、それを崩すべく推理を働かせる火盗との知恵比べが見ものだ。

 原作は池波正太郎。雲霧は天知茂、萬屋錦之介、山崎努らが貫禄たっぷりに演じてきたが、中井貴一は、知性漂う「盗人界の理想の上司」といった雰囲気だ。池波作品らしく、登場する盗賊の顔ぶれは個性的。冷静な小頭の木鼠の吉五郎(伊武雅刀)、動きが素早く汚れ仕事も引き受ける州走りの熊五郎(手塚とおる)、感情的でもろさもある因果小僧六之助(柄本佑)らが、得意技を活かし、仕事をしてのける。やがて見えてくる謎めいた雲霧の過去...。痛快にしてシリアスな盗賊の世界を堪能したい。

掲載2018年09月07日

「風の峠~銀漢の賦~」
松本清張賞受賞した葉室麟の名作を中村雅俊×柴田恭兵で映像化
命をかけた男の友情と彼らを支える家族の姿、意外な結末に注目。

(かぜのとうげ ぎんかんのふ) 出演者:中村雅俊/柴田恭兵/桜庭ななみ/平岳大/池田鉄洋/吉田羊/中村獅童/高橋和也/麻生祐未 ほか 2015年

掲載2018年09月07日

 月ヶ瀬藩の鉄砲衆・日下部源五(中村雅俊)は、不器用で出世とは無縁だが義に厚い男。彼の親友のひとり松浦将監(柴田恭兵)は藩家老となり、もうひとりの百姓・十蔵(高橋和也)は一揆の首謀者となっていた。源五は、友を斬った将監とは絶交。十蔵の娘・蕗(桜庭ななみ)の成長を見守っていた。藩では、側用人・山崎多聞(中村獅童)の画策により、不穏な動きが。そんな折、源五は娘婿(池田鉄洋)から、将監暗殺を依頼される。すべてを捨てて藩のために働く決意の将監に源五はどう向き合うのか...。

 原作は葉室麟の松本清張賞受賞作。「お前には見事に命を使い切ってもらわねばならん」と命を捨てる覚悟の源五。それに応える将監。そこにいなくても存在を感じさせる十蔵。男の友情が胸を打つ。35年ぶりの共演となった中村×柴田は、老齢の男の渋みと苦悩をそれぞれの個性で見せている。また心優しく正義感の強い十蔵の高橋、源五らの前に立ちはだかる剣豪役の平岳大、眉毛を消して怪演する獅童ら脇役も豪華。中でも注目したいのは、蕗役の桜庭と源五の娘役の吉田羊。桜庭は露天風呂で敵方に急襲される入浴シーンを熱演。吉田は「お前をとって食おうというわけではない」など、気が強い性格ながらも父を思う娘を好演する。悲劇が続く展開だが、どこかユーモアをまじえた表現が多いのも本作の味。意外すぎるラストに思わずにんまり。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。