ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2018年08月03日

「かぶき者 慶次」
戦国一の武辺者!人気の派手男・前田慶次の晩年は、のんきなお父さん?
その胸に秘めた「男の約束」を藤竜也が硬軟自在に演じる。

(かぶきもの けいじ) 出演者:藤竜也/中村蒼/西内まりや/工藤阿須加/田畑智子/青山倫子/壇蜜/江波杏子/伊武雅刀/火野正平 ほか 2015年

掲載2018年08月03日

 前田慶次(藤竜也)は戦国一の武辺者、かぶき者武将として知られた男だが、関ヶ原の戦い後、妻子を加賀の前田家に残し、上杉家に仕えていた。実は男の約束で石田三成の遺児新九郎(中村蒼)を嫡男と偽り密かに育てていたのだ。慶次を怪しむ徳川方は、上杉領に天徳和尚(伊武雅刀)を送り、秘密を探る。

 原案は戦国ドラマに深い人間愛を描くことで知られた、大河ドラマ「天地人」の火坂雅志。マンガなどでも人気の派手男慶次だが、ここでは「たまには城に行きますか」とですます調で話し、料理をしたりとセミリタイア状態。しかし、いざ刀をとると、別人のようになる。慶次は、反徳川で暴走する若者たちを諫め、自ら天下人家康にも堂々と物申す覚悟を示す。一方、終盤は新九郎と血のつながらない妹佐乃(西内まりや)、親友の勝之進(工藤阿須加)三人の恋の行方も揺れ動く。のんきな父にいらだっていた新九郎は、出世や栄達とは違う生き方を慶次の背中に見出し、成長していく。このドラマは乱世から平和な時代へと続く世代交代の物語でもあるのだ。藤は飄々とした顔と男気を使い分け、いい味を出す。また、ひとにらみしただけで慶次をビビらせつつも深い理解を示す妻の江波杏子、密偵(壇蜜)の色香に迷う下男の火野正平、慶次とワケあり?の徳川方の前田美波里などベテラン陣のしゃれっ気たっぷりの演技も見ものになっている。

掲載2018年07月20日

「好色一代男 世之介の愛して愛して物語」
原作・井原西鶴。明石家さんまが「大阪一の女たらし」に!
めくるめく出会いと波乱の日々に大石内蔵助もからんで大騒ぎに

(こうしょくいちだいおとこ よのすけのあいしてあいしてものがたり) 出演者:明石家さんま/近藤正臣/倍賞美津子/美保純/市毛良枝/山岡久乃/内田朝雄/佐藤B作/山田邦子 ほか 1986年

掲載2018年07月20日

 但馬屋のドラ息子・世之介(明石家さんま)は、自他ともに認める女好き。素人から玄人まで相手かまわず手を出して「大阪一の女たらし」と言われていた。そんな折、武家の妻美与(倍賞美津子)にちょっかいを出したことから、その夫・千崎弥五郎(近藤正臣)から命を狙われることに。母(山岡久乃)の心配をよそに別れたつもりが、またお美与を追いかけ、ついには崖から身を投げた彼女を追って、自分もドボン!?
 なぜか金と女が付いてまわる世之介を、お笑い界のモテ男さんまが、テーマソング「You Are My Sunshine」に乗って、バラエティ同様のノリで軽やかに演じている。脚本は「必殺」「赤かぶ検事シリーズ」で知られる吉田剛。演出は「東芝日曜劇場」「ポーラ名作劇場」はじめ、多くの受賞歴もある久野浩平。本作でも、現代の劇場の舞台をそのまま使うなど斬新な仕掛けを見せる。また、「ここはおとなしい静かな女子ばかりや」と墓で死人を掘り返す奇怪な男(蟹江敬三)、優雅で人情味のある島原の吉野太夫(市毛良枝)、「おみゃあ(お前)には負けん」と名古屋弁丸出しの尾張のお大尽(斎藤洋介)など、共演者もユニークな顔ぶれ。「わいが惚れた女や」と女を追い続ける世之介の運命は、終盤に「忠臣蔵」もからんで意外な展開になっていく。大石内蔵助を誰が演じているかにも注目。

掲載2018年06月29日

「銀二貫」
若手演技派・林遣都が武士を捨てて丁稚奉公に出た若者を熱演。
髙田郁原作の笑いあり、涙あり、恋ありの大坂商人修行青春物語。

(ぎんにかん) 出演者:林遣都/松岡茉優(第4話~最終回)/塩見三省/芦田愛菜/板尾創路/石黒賢/風間俊介/津川雅彦 ほか 2014年

掲載2018年06月29日

 十歳の時に、若侍に仇討ちだと目の前で父(石黒賢)を惨殺され、自分も斬られそうになった鶴之輔(林遣都)は、若侍に大事な金「銀二貫」を差し出して止めに入ってくれた大坂天満の寒天問屋井川屋・和助(津川雅彦)に助けられ、そのまま店で丁稚として働くことになった。松吉と名を変えた鶴之輔は、武家の習慣が抜けず、背筋が伸びていることさえ「商人らしくおまへん」「返事は『はい』やない。『へい』や!」と叱られる毎日だが、丁稚仲間(尾上寛之)ら多くの人に助けられ、少しずつ成長していく。しかし、大口取引先の老舗料理屋の二代目が、寒天の産地を偽ったことで、井川屋はあらぬ疑いをかけられ、経営不振に陥ってしまう。

 原作は「みをつくし料理帖」で知られる髙田郁。「銀二貫」は、天神様に寄進するめため、井川屋が必死に貯めていた金額を表す。へらに焼きみそをつけて貧乏神を追い払う習慣など、大坂の商人の地道な生き方をていねいに追った場面も多い。林は、初の時代劇出演らしく、ぎこちなさもあるが、それを主の津川、鬼番頭の塩見三省らベテランが盛り立てる。物語同様、ゼロから主人公をみんなで育てようという雰囲気が伝わるところがいい。中でも、井川屋の台所を一手に引き受ける女衆のいしのようこは、店の経営危機の最中に「旦さん、番頭さんと三人で心中なんて嫌だすわ。番頭さんは離れたとこで首吊って」などと、とぼけたことを言って笑わせる。また、板尾創路、ほっしゃん。(星出英利)、語り役の狛犬の声で山口智充が出演。お笑いタレント陣の演技も光る。

 やがて、松吉には幼なじみの真帆(松岡茉優)、取引先の娘(浦浜アリサ)などが関ってくる。派手な殺陣や事件とは無縁だが、松吉の青春と市井ものの時代劇の良さをじっくり味わえる。いぶし銀の魅力のあるシリーズ。

掲載2018年06月22日

「影狩り」
村上弘明×地井武男×石橋蓮司、三人の「影狩り」が幕府御庭番と激闘
小田原城など関東ロケシーンも多数。さいとう・たかをの人気劇画のドラマ化作品。

(かげがり) 出演者:村上弘明/地井武男/石橋蓮司/柴俊夫/江原真二郎/長門裕之/風祭ゆき/佐野浅夫/鳥越マリ ほか 1992年

掲載2018年06月22日

 幕府財政がひっ迫し始めた江戸中期。幕府は大名家のお家断絶や領地削減をするため、密かに各地にお庭番=影を派遣し、各藩の落ち度を探らせていた。かつて影の密告により、わずか六歳の藩主の介錯をすることになった室戸十兵衛(村上弘明)は、幕府のやり方に怒り、今は仲間の日光(地井武男)、月光(石橋蓮司)と組んで、報酬を受け取って影を抹殺する「影狩り」を商売としていた。その三人に伊南藩から依頼が入る。伊南藩では、御法度の鉄砲・大筒づくりの秘密を影につかまれてしまったという。十兵衛らは、伊南藩の幼い殿と大筒を運ぶ行列の警護をするが、お庭番集団が襲い掛かる。十兵衛は若殿を守るため、崖から飛び降りるが...。

 さいとう・たかをの人気劇画を「旗本退屈男」の古田求脚本、「鬼平犯科帳」の吉田啓一郎監督で映像化。女子を見れば「かわいいのお」とデレデレする日光、十兵衛のトラウマを見破るクールな月光、妖術を操る傀儡師、「あと三日で完成する」と大筒に命をかける男(長門裕之)など、登場人物のキャラが全員濃いのも特長となっている。クライマックスのポイントは、藩の中でごく普通に暮らしながら、指令がきたときに「影」となる秘密スパイ「草」が誰なのか。土中から次々と現れるお庭番、山中での死闘、小田原城など関東地区でのロケを駆使した、迫力のアクションシーンはみもの。18年に急逝した大杉漣もちょっとだけ出演している。

掲載2018年06月01日

「血斗水滸傳 怒涛の対決」
右太衛門、錦之助、橋蔵、ひばり、千恵蔵!映画黄金期のオールスター時代劇
進藤英太郎演じる飯岡助五郎の悪役っぷりもビカビカと輝く。

(けっとうすいこでん どとうのたいけつ) 出演者:市川右太衛門/中村錦之助/大川橋蔵/東千代之介/里見浩太郎/大河内傳次郎/進藤英太郎/大友柳太朗/片岡千恵蔵 1959年

掲載2018年06月01日

 天保年間、利根川をはさんでふたりの侠客、笹川繁蔵(市川右太衛門)と飯岡助五郎(進藤英太郎)が対立していた。恒例のあやめ祭りの最中、賭場荒らし騒動がおき、繁蔵自らが下手人を取り押さえると、助五郎が笹川一家を陥れようとしたことが発覚。人望厚い繁蔵は、大きな争いを避けようとするが、助五郎の悪だくみは止まらない。役人に土地の売れっ妓八千草(美空ひばり)をとりもとうと図るが、それも繁蔵一家の富五郎(若山富三郎)が救い出して、事なきを得た。すると今度は娘義太夫の一件で掛け合いに出た佐吉(東千代之介)を旅人岩松(大川橋蔵)に討たせようとする。岩松は助五郎の腹黒さに嫌気がさして寝返るのだった。やがて国定忠治(片岡千恵蔵)の花会が開かれ、忠治は手打ちを勧めるが、助五郎は怪しい動きを始め...。

 昭和三十年代、映画の全盛期の輝きあふれる東映オールスター時代劇。義理人情に悩む助五郎の子分政吉(中村錦之助)、繁蔵を助ける病身の浪人平手造酒(大友柳太朗)など登場人物それぞれの見せ場も織り込まれ、ファンを納得させる高岩肇の脚本、佐々木康監督の演出も勢いがある。強烈な悪役ぶりを見せる進藤英太郎の存在感もさすが。繁蔵が助五郎の非道に耐えて耐えて、ついに利根川の河原での決闘で見事、敵をやっつける王道のストーリーは何度見ても気持ちがいい。

掲載2018年01月05日

「小ぬか雨」
藤沢周平が描く、追われる男と孤独な女の密室の恋
傘のおさめ方ひとつにも心がにじむ井上昭監督作品

(こぬかあめ) 出演者:北乃きい/永山絢斗/仁科貴/中原果南/佳島みさ/上杉祥三/本田博太郎 2017年

掲載2018年01月05日

 親を亡くし、娘らしい喜びも知らないまま、望まぬ縁談が決まったおすみ(北乃きい)の履物屋にある夜、若い男新七(永山絢斗)が逃げ込んでくる。かくまううちに二人は惹かれあうが、おすみの許嫁と追手が迫ってくる。追われる男と人生に希望を持てなかった女の密室の恋。男の秘密が次第に明らかになる過程や追手をいかにかわすかという息詰まるサスペンスも盛り込まれ、濃密な展開となっている。

 藤沢周平の市井ものの原点ともいわれる短篇集『橋ものがたり』の一篇を映像化した時代劇専門チャンネル【藤沢周平 新ドラマシリーズ 第二弾】。監督は名匠井上昭。本格的時代劇初主演の北乃は「おすみは彼に出会って初めて本当の愛を知る。これは娘の情念の物語だと思いました。橋を渡る、雨を見る、時代劇は小さな動きで人物の気持ちがわかる。驚きや笑顔など、自然に表情が変化するよう心がけました」永山は「傘のたたみ方ひとつにも形があり、現場で教わった通りにやると、心がにじむようでした。こういうことが学べる現場にいられる幸せを実感しました」と語る。井上監督は「水」の表現にこだわることでも知られる。繊細な表現を支えるのが、京都のベテラン時代劇スタッフの技術だ。照明や内容に合わせて濃淡が調整され、美しく降る「雨」の表現もみどころのひとつ。二人の切ない恋の行方に注目したい。

掲載2016年12月30日

「駆込み女と駆出し男」
ワケアリ女たちが縁切寺に駆込み成就!
大泉洋・戸田恵梨香・満島ひかりと堤真一も魅せる!

(かけこみおんなとかけだしおとこ ) 出演者:大泉洋/戸田恵梨香/満島ひかり/内山理名/陽月華/キムラ緑子/樹木希林/堤真一/山崎努 ほか 2015

掲載2016年12月30日

 時は天保十二年。質素倹約で世の中がきゅーきゅーする最中に、見習い医師の信次郎(大泉洋)は、倹約令をヤジってにらまれ、叔母の源兵衛(樹木希林)が営む鎌倉の旅籠「柏屋」に転がり込む。医師としても中途半端な信次郎は、実は曲亭馬琴(山崎努)に憧れる戯作者志望。頼りない信次郎だが口は達者。柏屋が御用宿となっている幕府公認の縁切寺東慶寺に駆込む女たちの「離婚調停人」のような役割を果たすことに。寺に駆け込んで二年の修行を積めば離婚は成立。顔に火ぶくれを持った女じょご(戸田恵梨香)、足にケガをした豪商の愛人お吟(満島ひかり)、心を閉ざしたゆう(内山理名)らの心の痛みに触れ、口八丁手八丁で必死に女たちを守る信次郎は少しずつ変化していく。

 原案は井上ひさしの『東慶寺花だより』。「クライマーズ・ハイ」の原田眞人監督の初時代劇作品。完成披露で「時代劇ルネッサンス!」と高らかに叫んだ監督は「幕末太陽傳」など名作を研究、「幕末の写真を見ると既成のかつらのように太いまげはあり得ない」と、熟練スタッフにまげをリアルに小さくすることを指示した。多くの女優が敬遠する「眉落としとお歯黒」を満島ひかりは快諾。お吟の主人役の堤真一も表と裏の顔を見せてカッコいい。大泉洋の大量の早セリフは神業級だ。そして誰より存在感を示すのが山崎努。馬琴の静かな語りが染み渡る。人間の業と優しさが詰まった物語。

掲載2016年12月23日

「春日局」
橋田壽賀子が江戸城の家族を描いた大河ドラマ総集編
大原麗子が「謀反人の娘」からお局様への道を突き進む

(かすがのつぼね そうしゅうへん だいいっかい うばのじょうけん ) 出演者:大原麗子/佐久間良子/長山藍子/中村雅俊/山下真司/五木ひろし/江守徹/藤岡琢也/丹波哲郎ほか 1989

掲載2016年12月23日

 明智光秀(五木ひろし)の重臣斎藤利三(江守徹)の娘おふく(大原麗子)は信長(藤岡弘)を討った謀反人の娘として、白い目で見られ苦難の少女時代を送った。その後、関ヶ原の戦いで豊臣方を裏切った小早川秀秋(香川照之)に仕えた夫稲葉正成(山下真司)が浪々の身となってしまう。苦しい生活の中、おふくは、徳川家康(丹波哲郎)に見込まれ、二代将軍秀忠(中村雅俊)とお江与(長山藍子)の嫡男竹千代の乳母となる決意をする。しかし、お江与らは我が手で育てた次男忠長(斉藤隆治)を可愛がり、次期将軍にもと望む。その動きを察知したおふくは駿府に急行して、家康に直訴。大御所様の宣言で竹千代は三代将軍家光(江口洋介)になる。

 「謀反人の子の乳は飲ませぬ」と嫌な顔をするお江与。母に愛されず屈折した家光を命がけで守るおふく。作・脚本の橋田壽賀子はおふくVSお江与の女のバトルを鋭く描写する。しかし、お江与もおふくもわが子を手許で育てることすら許されない悲しみを抱いているのである。名女優大原麗子は凛々しく、愛情深い女性像を創り、「大奥で権勢をふるった女帝」といった春日局のイメージを一新した。また、苦悩深き光秀の目線から見た「本能寺の変」や裏切り者といわれる小早川秀秋を軸とした「関ヶ原」は新鮮。随所で徳川のボスとしての存在感を示し、橋田流の長セリフも堂々と言い切った丹波哲郎の家康も見逃せない。

掲載2016年10月07日

「臥竜の天 伊達政宗・独眼竜と呼ばれた男」
東北の雄・伊達政宗を椎名桔平が人間臭く熱演
家族との確執や、秀吉との出会いなど、政宗の思いを描く

(がりょうのてん だてまさむね・どくがんりゅうとよばれたおとこ ) 出演者:椎名桔平/榎木孝明/金山一彦/原田夏希/秋吉久美子/伊武雅刀/津川雅彦 ほか 2013

掲載2016年10月07日

 戦国時代、幼いころの病で隻眼となりながら、父を早く亡くして当主となり、東北で勢力を伸ばす"独眼竜"伊達政宗(椎名桔平)。だが関東以西では、豊臣秀吉(津川雅彦)が圧倒的な強さで天下統一を目指していた。秀吉に従うか否か。決断を迫られる中、母保春院(秋吉久美子)との食事の際に、政宗は毒に気がつく。母は、自分よりも弟の小次郎に伊達家を任せたいのか。長い苦悩の末に政宗が下した決断とは。

 原作は大河ドラマ「天地人」の火坂雅志。語りは遠藤憲一。製作は、政宗が東北とイスパニアとの交易を目指して派遣した日本初の公式使節団「慶長遣欧使節団」が出発してちょうど四百年の2013年。天下を狙いながら、豊臣から徳川家康(伊武雅刀)に政権が移っても、したたかに生き、「杜の都」仙台の基礎を作った政宗。彼の粘り強さと挫折をチャンスに変えるタフな心は、仙台城や町の整備にもつながった。「時代劇になじみのない若い人にも見てほしい」と願う椎名は、苦悩する政宗を、「天下を獲れなかったのではなく、あえて獲らなかった」と解釈し、人間くさく熱演。重たい甲冑に身に着けての演技、「伊達もの」らしく35着もの衣装替えもこなした。また歴女にも人気の高い伊達家ナンバー2の片倉小十郎(榎木孝明)が秀吉に家臣にと望まれた際に見えた政宗との信頼関係、愛妻愛姫(原田夏希)との絆にも胸が熱くなる。

掲載2016年09月23日

「けろりの道頓 秀吉と女を争った男」
道頓堀を作った男の「いい香りのする美女の作り方」!?
司馬遼太郎原作。破天荒にして純な男を西田敏行大熱演

(けろりのどうとん ひでよしとおんなをあらそったおとこ) 出演者:西田敏行/財前直見/筒井道隆/木村佳乃/伊東四朗/仲村トオル/阿木燿子/細川ふみえ ほか 1999年

掲載2016年09月23日

 河内の豪農・安井道頓(西田敏行)は子ができず、正妻おりん(財前直見)公認で妾を何人も養っていた。美少女お藻(木村佳乃)を見初めた道頓は、彼女には「青物だけを食べよ」と命じる。すると不思議なことにお藻からはえもいわれぬよい香りが漂うのだった。ところが天正17年、お忍びで青物市場を訪れていた関白豊臣秀吉(伊東四朗)にお藻を見つけられ、側女として召し出すよう命じられてしまった。泣く泣くお藻を差し出した道頓に秀吉は褒美として緋鯉を贈ってくる。やがて、農民のために川と川をつなぐ堀を掘ろうと思いついた道頓は、資金調達や人手の確保を始めるが、普請が無許可だと代官所に捕えられる。

 原作は司馬遼太郎の短編。今も大阪のシンボル『道頓堀』の始めを作った男の数奇な運命をユーモアと愛情たっぷりに描く。いい味を出すのが、正妻おりんの財前直見。夫を信じ、妾たちにも優しかった彼女の死に「ほんま、わしはけったいな男やねん」と道頓は号泣。妾達(鈴木紗理奈、細川ふみえ)も大泣きする。秀吉の死後、またも大坂には戦の気配が。堀の普請を続ける道頓は「庶民が作ったものを侍が壊していく」と怒り、意外過ぎる行動に出る。ナレーションは、道頓の養子で堀の普請を引き継いだ安井道卜役の上岡龍太郎。淀殿に阿木耀子、片桐且元に仲村トオルが出演。ジェームス三木脚本らしい泣き笑いの戦国長編。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。