ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2000年12月08日

痛快!河内山宗俊

(つうかい!こうちやまそうしゅん) 1975年

掲載2000年12月08日

 御数寄屋坊主という立場を利用して、大名の秘密を盗み聞きしては強請、たかりをはたらく常習犯。おまけに、詐欺、はったりまでなんでもあり。でも、その毒牙の矛先は権力者の悪事に向けられる。
 主演はダーティーヒーローを演じたらピカイチの勝新太郎。仲間には、原田芳雄、火野正平、出門英、桃井かおり。監督は、三隅研二、工藤栄一という贅沢な布陣による痛快編。石原裕次郎らゲストも要チェック。
 凝りに凝った映像でおなじみの勝プロ作品の中でも、とくにのびのびと作られた感がある。ゲストも緒形拳、十朱幸代、藤村志保、津川雅彦、由美かおる、加賀まりこなど、これ以上望めない面々。宗俊の天敵は老中、水野忠邦という設定だが、ほかにも城中には妖怪変化のごとく悪人がわんさかいるところがおもしろい。変装や準備に金をかけて強請に成功しても、結局赤字になるあたりもご愛嬌。勝新太郎の豪放磊落なキャラクターもいい味となっている。

掲載2000年11月06日

翔べ!必殺うらごろし

(とべ!ひっさつうらごろし) 1978年

掲載2000年11月06日

 必殺シリーズの中でももっともカルトな作品。太陽を信仰し、旗を槍の如く投げて相手に突き刺すというとんでもない技を使う先生(中村敦夫)、記憶喪失のおばさん(市原悦子)、男装の怪力女・若(和田アキ子)らが、初回の「仏像の眼から血の涙が出た」など、江戸の超自然現象に関わりつつ、敵を仕留める。家政婦になる前の市原悦子の殺し屋ぶりに注目。
 前述のとおり本作は、必殺シリーズ異色中の異色作。ワケのわからない修行を続ける中村敦夫といわくあり気な市原悦子。男より男らしいばかりに世をすねた和田アキ子、マネージャー的存在の火野正平と巫女の鮎川いづみ。曲者揃いのメンバーが、人格が入れ替わってしまった敵や、不気味な赤い雪、さらにはポルターガイストと戦う。こんなとんでもない設定にも違和感なくマッチする中村敦夫のキャラクターはすごいな。さすが国会議員、惚れ直した!なお、最終回には記憶喪失だった市原悦子がついに… とあいなるので、必見。

掲載2000年10月28日

助け人走る

(たすけにんはしる) 1973年

掲載2000年10月28日

 どぶさらいから犬の散歩まで、何でも請け負う”助け人”、裏の顔は凄腕の殺し屋稼業。妹思いで飄々とした浪人、中山又十郎に田村高廣。煙管で敵を仕留める坊主の辻平内に中谷一郎、大工の棟梁で元締めの清兵衛に山村聰。
初回の「女郎大脱走」は智恵と度胸と必殺技で弱い女を救う”助け人”が大活躍。
シリーズの中でも一際痛快度の高い名作。
いつも明るい又十郎が、殺しの場面で見せる殺気は、何度見ても背筋がゾクゾクするほどの迫力。田村高廣に惚れなおす瞬間だ。また、助け人の情報屋役に油紙の利吉(秋野太作)、為吉(住吉正博)、又十郎の妹に佐野アツ子、平内に生活費を徴収しにくる妻に小山明子と、わき役も鋭い。後に島帰りの龍(「仮面ライダー V3」の宮内洋)が加わり、また違う面白さが出る。タイトルに必殺の文字がないのは、当時の時代背景に考慮したもの。

掲載2000年10月06日

大殺陣

(だいさつじん) 1964年

掲載2000年10月06日

 四代将軍家綱の下で陰謀を企む大老酒井。そのご政道に怒った学者、山鹿素行一党は、大規模な暗殺を計画。山鹿側、大老側の死闘が始まる。血みどろで首まで水に浸かった文字どおりの大殺陣など、先頃世を去った工藤栄一監督のハードな作品。若き里見浩太郎、悲壮感あふれる大坂志郎、クールな平幹二朗らに明朗時代劇とは違う一面を発見できる。
さすが後に“必殺シリーズ”で評判をとる工藤監督の時代劇だけに、非情で鋭いストーリー展開。幸せの絶頂からいきなり絶望の淵に突き落とされる若侍役の里見浩太郎は、「松平長七郎」シリーズなどののほほんとしたお侍さんとは、まったく別人。また、子だくさんで一見のんきに見えた大坂志郎が死地に赴くにあたって見せる狂気も胸に迫る。敵の大友柳太朗の味は言うまでもナシ。わざわざモノクロ映像にこだわった工藤監督。カッコいぞ!とエールをおくりつつ、ご逝去にあたりご冥福をお祈りします。合掌。

掲載2000年08月08日

東海道四谷怪談

(とうかいどうよつやかいだん) 1959年

掲載2000年08月08日

怪談映画数々あれど、永く人に語り継がれた傑作が登場。鶴屋南北の原作の巧みさと、監督、中川信夫の恐怖を描く美的感覚の見事さ。そして何より主役の天知茂が怖すぎ!色と欲におぼれた人間のおどろおどろしい殺意と殺された者たちの怨念。全編にわたり毒、戸板返し、蛇、錯乱、花火に虫の声までひりひりする恐怖満点。涼しい一夜をどうぞ。
本作を監督した中川信夫といえば、ジャパニーズ・ホラー、最近はJホラーとか言われてるけど、その原点、いわば家元として今年再評価されているのだ。単館系の映画館などで作品がリバイバル上映され、ホラーファンからカルト映画ファンまでが詰め掛けて連日大盛況らしいぞ。この作品が作られたのは1959年、SFXなどない当時の技術でここまで表現した創造力に驚かされる。いらないシーンがまったくなく、簡潔そのものってとこもいい。もちろん、主役の天知茂に出会ったことも、この作品の運命を決定づけるに非常に大きな役割を果たしたことは言うまでもない。だって、すごいもん。鬼気迫るカンジって、ペリーもイキナリ素になってるけど、それくらいすごい。でも、本人は後年、
“オレはホンとは明るいんだ。みんなでオレをニヒルにしちまった”
とボヤいていたとか。キャラとご本人は必ずしも一致しないってことですね。

掲載2000年07月12日

伝七捕物帳

(でんしちとりものちょう) 1979年

掲載2000年07月12日

「ヨヨヨイヨヨヨイヨヨヨイヨイ、あ、めでていな」の二本指締めでおなじみ、黒門町の伝七親分の登場でい! 特別に十手の紫房を許された捕物名人。悪には得意の万力鎖の技で立ち向かう。主役は「遠山の金さん」でも大人気の中村梅之助。伝七は金さん配下だから、梅之助は両方のが代表作なのだ。テレビの前で指締めに参加すれば気分爽快。
「銭形平次」「半七」「人形佐七」と並ぶ捕物帳の傑作(原作は「遠山の金さん」の陣出達朗)ながら、映像化の例が少ないのは、梅之助を越えるのが大変だから? なお映画では高田浩吉の代表作。浩吉、梅之助の「丸顔路線」は、伝七の温和な人柄をよく表していた。梅之助さんはお話が面白い方として業界では有名。以前、梅之助さんにインタビューした際、件の「ヨヨヨイをやって…」という言葉がノドまで出たのに、結局は言えず終い。小心者だった。トホホ…。

掲載2000年07月10日

翔べ!必殺うらごろし

(とべ!ひっさつうらごろし) 1978年

掲載2000年07月10日

 太陽を信仰し、敵に大きな旗を投げて突き刺す、信じがたい技の先生(中村敦夫)、ボソボソ話しかけて油断させ、短剣を刺す記憶喪失のおばさん(市原悦子)、怪力で相手を全身骨折させる男装の若(和田アキ子)。必殺シリーズ異色中の異色作。本当にこんな必殺技が使えたのか?確認は画面で。栗田ひろみら懐かしゲストも多数出演。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。