ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2007年03月01日

『丹下左膳』「木枯し紋次郎」チームが集結!こだわりのオープニング、曲も斬新

(たんげさぜん) 1974年

掲載2007年03月01日

隻眼隻手の凄腕の浪人・丹下左膳(高橋幸治)の生き方と闘いを描くシリーズ。
第一部「乾雲坤竜の巻」で、左膳は、藩主の命で秘蔵の名刀を奪うことになる。その名刀とは、二刀で一対、離れると互いを呼び合い、必ず血の雨を降らすという大の乾雲、小の坤竜だった。「試合に勝ったものに二刀と娘・弥生を授ける」と、とんでもない提案をした小野塚道場の主。当然、恋人で剣り腕からしても本命の栄三郎(浜畑賢吉)が勝つと思っていた弥生だが、そこに左膳が乱入。乾雲が奪われる。二刀を狙う相馬藩の月輪一門までもが現れ、争奪戦は大混乱。さらに藩主には暗い企みが…。
第二部「こけ猿の壷」は、おなじみ「百万両の隠し場所」が記されているという「こけ猿を壷」を巡っての闘い。
合言葉は「姓は丹下、名は左膳!!」大河ドラマの信長役などで活躍した高橋幸治は、左膳のダークな部分もよく出している。蟹江敬三、尾藤イサオ、鮎川いずみら、あくの強い顔ぶれも時代劇ファンを喜ばせる。監修として市川崑(1、9、10話を監督)、美術に西岡善信、制作CALと「木枯し紋次郎」のチームが参加し、モノクロのアート感覚あふれるオープニング、♪誰のものでもない、自分だけのものが〜と歌う小室等の主題歌など、独特のムードを作り出している。

掲載2007年01月11日

『立花登 青春手控え』若き中井貴一が牢医師として人生勉強。柔術を駆使して、難問に立ち向かう。

(たちばなのぼる せいしゅんてびかえ) 1982年

掲載2007年01月11日

医学を志して、北の羽後亀田から江戸に出てきた二十歳の青年・立花登(中井貴一)。しかし、江戸で寄宿する町医者の叔父・玄庵(高松英郎)は、指導をするというよりは、登を都合よく使うようなところがあった。叔父一家の家計を助けるために、小伝馬町の牢医師になった登は、そこで人の心の表と裏を体験。医師として男として成長していく。
 第一回は、仮病を使って登に、仲間から金を受け取って、愛する女おみつに渡してほしいという男(高岡健二)の話。「男と見込んで」とまで言われ、真っ正直に男の頼みを聞いた登だが、肝心の仲間は海千山千のやくざ系。しかも、おみつにも事情が…。
 原作は藤沢周平。青春ドラマの中にも、事件あり、人間模様ありの濃い物語になっている。中井貴一は「先生と呼ばれると尻が落ち着きません」と初々しい。叔父の家で使用人扱いされ、土間で食事しても、女中おきよ(塩沢とき)と冗談を言い合う。屈折しつつも明るい好青年。時には特技の柔術で戦う。人を斬らないのもミソ。登を呼び捨てにし、「だって約束があるんだもーん」とわがまま放題の玄庵の娘を宮崎美子、娘に手を焼く玄庵の妻に中原ひとみ、世の中の裏を知り尽くした親分藤吉に地井武男、お調子者の下っ引きにさくら金造、登を見守る牢役人平塚源三郎に篠田三郎など充実したキャストが登を支える。

掲載2006年12月21日

『忠臣蔵』天下の二枚目・長谷川一夫の大石内蔵助。雷蔵の浅野内匠頭、勝新の赤垣源蔵にも涙。

(ちゅうしんぐら) 1958年

掲載2006年12月21日

元禄14年、勅使饗応役の播州赤穂藩主・浅野匠頭(市川雷蔵)は、指南役の吉良上野介(滝沢修)から、執拗な仕打ちをうけ、ついに殿中松の廊下で、上野介に刃傷におよぶ。内匠頭は即日切腹。上野介にはおかまいなしという不公平な裁きは、波紋を呼ぶ。国元で知らせを受けた、浅野家家老・大石内蔵助(長谷川一夫)は、密かにある決意を固めていた。
 「忠臣蔵」初のカラー映画として、華やかさは天下一品。広大な松の廊下、吉良邸のセットなど、映画全盛期ならではの豪華版だ。長谷川一夫は、後に大河ドラマ「赤穂浪士」に主演。当時の視聴率で最高50パーセントを超えるという人気ぶりを見せたが、映画版では、抑えた演技の中にリーダーとしての貫禄、スターの華やかさを見せている。その動向を探ろうとスパイを放つ、上杉家の家老千坂兵部(小沢栄太郎)の「苦虫顔」にも注目。
 出色なのは、勝新太郎の赤垣源蔵。討ち入りの日、雪の中、兄を訪ねるが、あいにく兄は不在。仕方なく、座敷に兄の羽織をすえて、ひとり別れを告げる。愛嬌者の女中がくると、すかさず、涙を隠し、いつものお茶目っぷりを出して、「今度、ここにくるのは夏の盆のころか」などととぼけた対応をして去っていく。講談でもおなじみの場面だが、勝新太郎の芝居に思わずぐっとくる。

掲載2006年12月07日

『忠臣蔵 天の巻・地の巻』阪妻の内蔵助に嵐寛、月形、志村喬も!千恵蔵の内匠頭&立花左近二役もお楽しみ。

(ちゅうしんぐら てんのまき ちのまき) 1938年

掲載2006年12月07日

元禄14年。勅使饗応役を仰せつかった赤穂藩主・浅野内匠頭(片岡千恵蔵)は、儀礼一般の指導役である高家筆頭の吉良上野介(山本嘉一)に対して、殿中松の廊下で刃傷事件を起こす。内匠頭は、即日切腹。吉良にはお咎めなし。お家断絶、城明け渡しとなった赤穂の浪士たちは、国家老・大石内蔵助(阪東妻三郎)を中心に、殿の遺恨を晴らすため、吉良邸を目指す…。
 日本映画の父・マキノ省三没後10周年記念作品として、前編「天の巻」を息子であるマキノ正博が監督。目指したのは、「忠臣蔵の決定版!」
 阪妻のセリフは「まあず、亡君ご舎弟大学様をもって…」「申し上ぐるでござある」などとゆっくりながら、者狩りの展開は速い速い。なんと始まって9分で殿は切腹。総計二時間ほどで討ち入りも完了というテンポのよさだ。
 みどころのひとつは、内匠頭と立花左近の二役をこなす片岡千恵蔵。「立花左近」を名乗って、東下りの道中である内蔵助に、本物の左近(千恵蔵)が面会する。一触即発。双方の連れが刀の柄に手をかけて左右に控える中、内蔵助が差し出した白紙の道中手形を見て、誰だかさとる左近。そして、本物の道中手形を内蔵助に…。千恵蔵の、いい役全部お任せ!の貫禄演技。左近を前にしたピンチにも脇息にもたれ、悠々とした阪妻がカッコいい。

掲載2006年10月05日

『たけし×勝新 座頭市』金髪たけしVS58歳円熟勝新!共通点は、アイデアと即興性?

(たけし×かつしん ざとういち) 

掲載2006年10月05日

勝新太郎自らが、下母沢寛の原作から見出したキャラクター「座頭市」。盲目の渡世人で、酒と博打は大好きだが、弱い者と女にはとことんやさしい。弱い者いじめをするやつには、仕込み杖の居合いを駆使して、徹底的に戦う男。映画版で26本、テレビ版で100本もの「座頭市」に主演した勝新太郎が、自身で監督・脚本を担当し、見込んだ俳優たちを集めて製作したのが、1989年の映画「座頭市」だった。共演は樋口可南子、緒形拳、陣内孝則、片岡鶴太郎、泉谷しげる、三木のり平、川谷拓三、ジョー山中、安岡力也、内田裕也など。私かつて片岡鶴太郎ご本人から、この撮影現場の話を聞いたが、とにかく「勝新太郎の眼力」には驚かされたという。市として目を閉じているはずなのに、隅々の動きまでキャッチし、「ここはこうだ」と突如「監督」になる勝。「脚本は読んでこなくていい」とアイデアが思い浮かぶと変更は当たり前だった。
 一方、「金髪の座頭市」と話題になった北野武版も、浅野忠信、大楠道代、夏川結衣、ガダルカナル・タカ、石倉三郎、岸部一徳、柄本明らユニークな顔ぶれが集結。大衆演劇の「美女」橘大五郎も抜擢して、新鮮さも出した。勝・北野両作品に共通するのは、とにかくアイデア豊富、映像として面白さにこだわっているところ。既成のヒーロー像にない個性は「座頭市」ならでは。

掲載2006年03月23日

「徳川おんな絵巻」 日本の名城を舞台に女の愛憎劇が炸裂。#25「仮面の女」#26「悪霊の城」は極細眉毛の加賀まりこの女間者が!

(とくがわおんなえまき) 1970年〜1971年

掲載2006年03月23日

時代劇で女の愛憎劇といえば、「大奥」シリーズが代表作だが、この「徳川おんな絵巻」は、その地方キャラバン版というところ。名古屋城から始まって、日本各地の名城をとりあげ、その史実や言い伝えを基に女たちの秘められた悲喜劇に迫るオムニバスドラマだ。
 #25「仮面の女」#26「悪霊の城」の舞台は、宇都宮城。時代劇ファンなら「宇都宮」と聞いただけで、「吊り天井」を思い浮かべるとはずだが、ここではその伝説の裏側を描き出す。
 上様に屈折した思いを抱く本田正純(佐藤慶)は、タカビーな正室(村松英子)ともしっくりいかず、顔は暗い。そんな折、上様が日光ご参詣の途中に城に立ち寄るということに。そこで本田家のからくり師山口新八郎(中山仁)と大工の棟梁(村上冬樹)を巻き込んで、前代未聞の大からくりの陰謀が仕掛けられる。間者として忍び込んだ花野(加賀まりこ)は間者の権限を超えても、この陰謀を阻止しようとがんばるものの、敵は多勢。そうこうするうちに上様の頭上にどんどん下がる、吊り天井!! 花野ピンチ!!
 70年代らしい極細眉毛できりりとしたまりこは、立ち回りもなかなかの迫力。中山仁の好人物ぶりもいい。本当は殿を大好きだった正室の律子と正純の悲劇も織り込みつつ、歴史的大事件をどう救うのか。「おんな絵巻」シリーズ最大のスペクタクルをお楽しみに。

掲載2006年01月04日

「逃亡」無罪の罪で追われる上川隆也の運命は?市川崑監督の「光と影」の演出に注目

(とうぼう) 2002年

掲載2006年01月04日

江戸末期。甲州出身の無宿もの源次(上川隆也)は、岡っ引きの梅三郎(宅麻伸)に微罪で牢に放り込まれる。どうやら梅三郎は、源次に恨みのある様子。しかし、源次には思いあたることがない。そんなとき、江戸に大火が発生し、牢から出された源次は刻限までに戻らなければ死罪だと言い渡される。が、源次の行く先々に、梅三郎の罠が仕掛けられていた。
 原作は松本清張。人の心の暗い奥底を描き、最後の最後までなぞめいた展開は、さすが。また、第一話、二話の演出をした市川監督の濃厚な「光と影」にも注目したい。
 私は先日、主演の上川隆也にインタビューした。この番組の撮影は、「市川監督の演出はミリ単位。とにかく全力疾走」だったという。それまで時代劇では大河ドラマの「毛利元就」など武士の役が多く、無宿者は初だったため、当初市川監督に「それじゃ、武士の歩き方だ」と繰り返し注意を受け、「必死に逃げる」ことを要求された。確かに源次はよく走る。シーン撮影のたびに全力で走り、倒れこむほどの勢いだった。また、敵役の宅麻伸の役への集中力はものすごく、普段は陽気な人柄が、本番では「鬼気迫るほど」だったらしい。
 ほかにも原田美枝子、浅丘ルリ子、石橋蓮司、神山繁ら豪華キャストが終結。中でも、源次をかばう井川比佐志との男同士のやりとりや、ヒロイン野波麻帆とのシーンは新鮮。

掲載2005年09月22日

「どくろ銭」大衆文学の人気作品を北大路欣也で。土屋嘉男の怪人ぶりもチェック。

(どくろせん) 1984年

掲載2005年09月22日

とつぜん家に飛び込んできた妙な男(江幡高志)から、「荷物を届けてほしい」と頼まれた娘お小夜(岡田奈々)。しかし、届けた先には奇怪な事件が待っていた。偶然、彼女と知り合った浪人・神奈平四郎(北大路欣也)は、宇喜多家の財宝のありかを示すという四枚の“どくろ銭”の存在を知る。そこにはいつも不気味な頭巾をかぶった男の存在が…。
 財宝探しに不気味な殺し屋、黒猫にお姫様など、昔から伝奇時代劇に欠かせない要素がたっぷり。原作者は、大正末期から昭和初期に活躍した大衆文学作家・角田喜久雄で、人気作品らしく、何度も映像化されている。この主人公は、北大路欣也の父・市川右太衛門もかつて演じたことがあった。
 今回は脚本が「水戸黄門」でおなじみの“葉村彰子”となっているだけに、藤岡琢也、根本律子、西沢利明、さらにはナレーターの芥川隆行など、ナショナル劇場の常連のキャストが揃っている。中でも「小夜、そなたも湯に入るがよい」などと声をかける檜姫(根本律子)と、「銭柄の頭巾」をかぶって鎖鎌を振り回す怪人・土屋嘉男の存在感はなかなか。また、女の悲しみを表現する新藤恵美は、制作された84年当時から、貫禄十分だ。
 監督は、「仮面の忍者・赤影」シリーズでも知られる倉田準二。音楽は渡辺岳夫。

掲載2005年07月14日

「利家とまつ〜加賀百万石物語〜」公私共にしっかり女房・松嶋菜々子。なんと名古屋ではまたまたゆかりの歌が!?

(としいえとまつ かがひゃくまんごくものがたり) 2002年

掲載2005年07月14日

加賀百万石の祖として今も地元では慕われるお殿様・前田利家(唐沢寿明)と妻・まつ(松嶋菜々子)。天下をとろうと動く戦国のカリスマ的リーダー織田信長(反町隆史)の下で、家臣たちは出世争いを繰り広げるが、戦っているのは夫ばかりではなかった。知恵もののサルこと秀吉(香川照之)の妻おね(酒井法子)らとは親友同士ながら、妻(美女ぞろい)同士もビシビシッと視線がぶつかりあうときも…。
 このドラマの少し前に反町夫人となった松嶋菜々子。そのしっかり女房ぶりはドラマでも発揮され、「何から何まで私にお任せくださりませ!!」と名文句を生んだ。また、竹野内豊が利家の弟で、悲劇的な最期をとげるのも名場面。黙々と仏像を彫る姿はなかなかに哀愁が漂っていた。
 ところで、もともと前田家が治めていた尾張荒子近辺には、今年、「あおなみ線」という新鉄道がオープン。名古屋の地元ラジオ局が発掘した、フォークソング調のご当地ソング「あおなみ旅情」というのが密かなブームになっているらしい。もちろん、その歌詞の中にも「利家とまつ」関連の言葉が! 名古屋でも利家とまつは大人気! ちなみに作曲したのは地元の歯医者さん、熱唱しているのは、地元在住の元スクールメイツの奥様だとか。ぜひ、この歌をまつ本人にも聞かせたいものである。

掲載2005年03月03日

「伝七捕物帳」 伝説の「ヨヨヨイ」一本締め名親分。免許皆伝・梅之助の本物志向が光る!

(でんしちとりものちょう) 1973年

掲載2005年03月03日

テレビ時代劇には数多くの名岡引が登場したが、中村梅之助の「伝七」は、もっともリクエストの多い人気作。
 江戸は黒門町の伝七親分(梅之助)は、町の人たちの強い味方として慕われている。弱いものいじめと見れば、たとえ相手がりっぱなお武家でも体当たり。刀を抜かれても、「静かにしろい! そんななまくら刀でこの伝七を斬ることはできねえぜ」と、啖呵一発。
 伝七は、特別に許された紫の房の十手と、万力鎖がトレードマーク。撮影当初、十手は、立ち回り用のレプリカが間に合わず、重い本身を使用。また、万力鎖については、梅之助は当時、五人しかいなかった正木流の免許皆伝。本物でした!殺陣師がケガをするほどの威力のある万力鎖のさばき具合も、見所のひとつ。
 また、伝七の人気の秘密は、なんといっても、事件解決後、子分と指をそろえて、「ヨヨヨイ、ヨヨヨイ、ヨヨヨイヨイ、めでてえな!」と、明るく見せる恒例の「指締め」。これは当たり役「遠山の金さん」の「これにて一件落着」に負けない、こどもたちにも親しまれる決めセリフをと考えられたもの。そういわれてみれば、子ども時代、さんざんマネした方も多いはず。親分たちの狙いは的中したわけ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。