ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2002年12月06日

「忠臣蔵」今年は討ち入り300周年!里見浩太朗祭りで、正統派「忠臣蔵」をご堪能あれ。

(ちゅうしんぐら) 1985年

掲載2002年12月06日

 「紅白を脅かした男」あえてこう呼ばせていただきたい。なんたって、毎年、大晦日に大型時代劇に主演。かの「紅白歌合戦」を堂々と向こうに回し、その好評ぶりで話題になった、里見浩太朗の「大型時代劇シリーズ」が、今年、このチャンネルで「里見浩太朗祭り」として、蘇る!
 まずは「忠臣蔵」に注目。繰り返し映像化されてきた作品だけに、期待するのは、そのキャスティング。大石内蔵助に里見浩太朗、浅野内匠頭は、「若殿」というよりは、嫌な上司にいびられる中間管理職のようなイメージだったが、目に力を込めた怒りの演技はさすがの迫力。さらに、激することなく淡々としながらもイヤーな親父ぶりを見せる森繁上野介は、もうひとつの「芸」と感じ。
 辛い運命に翻弄されながらも、ひとつの道へとまっしぐらに進む四十七士たちの姿を、オーソドックスに描いた「忠臣蔵」だ。
 見逃せないのが、番組最後の「里見浩太朗インタビュー」。撮影の裏話や、出演者の意外な顔など、聞き逃せない話から、温和な里見さんが、鋭い観察眼を持った人だとよくわかる。
 討ち入りから300年。「忠臣蔵」好きな人も「忠臣蔵」初心者も、じっくり味わいたい作品。

掲載2002年11月15日

「忠臣蔵赤垣源蔵 討入り前夜」嫌われ者の弟の秘めた熱い思い。講談で人気の男泣きストーリーを阪東妻三郎が熱演。

(ちゅうしんぐらあかがきげんぞう うちいりぜんや) 1938年

掲載2002年11月15日

 今年は忠臣蔵討ち入り300年。これまでにも数多くの「忠臣蔵」が映像化されてきたが、本作品は、その中でもひとりの赤穂浪士の生き方にスポットをあてたしみじみとした名作。
 主家・浅野家が断絶してから、兄・伊左衛門(香川良介)のところに居候している赤垣源蔵(阪東妻三郎)は、鬱屈した日々を飲んだくれて過ごしている。あまりの変貌ぶりに兄嫁(中野かほる)や下男下女にまで蔑まれた源蔵は、兄の家まで追い出されてしまう。
 しばらくしたある雪の夜、源蔵はふらりと兄の家を尋ねてくる。兄の不在を知った源蔵は、兄の羽織を借りて、羽織を相手に杯を交わし、去っていく。
 タイトルの通り、討ち入りの前夜、最後の挨拶に訪れた男の姿である。原作は滝川紅葉。講談では「赤垣源蔵徳利の別れ」としてもよく知られている人気作。身内にも討ち入りの真実を明かさず、ただひとり兄の羽織と語りあう姿に、涙を誘われる。泣ける!
 阪東妻三郎は、単純明快、ストレートな正義の味方というよりは、放蕩、暴れん坊、だが実は熱いものを持った男、という役がよく似合う。
 共演は原健作、市川百々助、志村喬ら。仇討ちだけではない「忠臣蔵」の魅力がふくらむ一本。

掲載2002年10月11日

「長七郎江戸日記スペシャル」里見浩太朗の十八番といえばコレ!野川由美子&下川辰平インタビューもお見逃しなく

(ちょうしちろうえどにっきすぺしゃる) 1984年

掲載2002年10月11日

 二代将軍が愛した息子・駿河大納言忠長を父に持つ松平長七郎。将軍の座を巡って争いに巻き込まれた父は、自害して果てる。争いの末に将軍になった家光は、罪の意識もあってか長七郎に「大名に」と声をかけるが、長七郎が選んだのは、気軽な町家暮らしだった。瓦版屋の手伝いなどしているうちに、数々の事件と遭遇する長七郎。イザとなれば、葵のご紋のゴージャス着物で颯爽と悪人のもとに現れ、身分を明かしてビビらせて、最後には見事に成敗!里見浩太朗の十八番だ。
 お殿様の世直しだけでなく、江戸庶民の喜怒哀楽を盛り込んで、浮世離れした長七郎と交流もあたたかく描いた人気シリーズ。84年から88年までに10本のスペシャル版が作られた。12・13日放送の「長い七郎立つ!江戸城の対決」は、家光の嫡子と名乗る少年(白龍光洋)と、その命を狙う柳生(丹波哲郎)の陰謀。お家騒動が大嫌いな長七郎は、少年を救おうと立ち上がる。大衆演劇で人気を集めた白龍の達者な演技にも注目したい。
 また、「このお方は...」と悪人に長七朗の身分を解説しに馳せ参じる下川辰平、瓦版屋の女将おれん役の野川由美子のインタビューも要チェック。私は以前、野川由美子がテレビで「下駄で走ったら誰にも負けないよ!」と語っていたのが忘れられない。今度はどんな話が飛び出すのか?お見逃しなく。

掲載2002年08月23日

「付き馬屋おえん事件帳Ⅰ・Ⅱ」「けじめ、つけさせてもらいます!」男たちを従えた山本陽子の“裏稼業の裏稼業”

(つきうまやおえんじけんちょうⅠ・Ⅱ) 1990年

掲載2002年08月23日

「付き馬屋」とは、遊廓での遊興費を取り立てる稼業。吉原で料理屋「喜の字屋」を営む女主人・おえん(山本陽子)の裏稼業は、実は付き馬屋だった。しかし、付き馬屋をするうちに、借金を踏み倒すだけでなく、もっと極悪非道の「闇」を知るおえん。「許しちゃおけない」と悪人のところへ乗り込むと、「けじめ、つけさせてもらいますよ!」と啖呵一発。悪を成敗してしまうのであった...。
 つまり、おえんには、裏稼業のさらにまた裏の顔があるのである。弱い立場の吉原の女たちを守るため、娘に嫌がられても付き馬屋をやめないおえん。そんなおえんを密かに守り、「裏の裏」でもいっしょに悪を倒すのが、「喜の字屋」の板前やお運びをする男たち(山城新伍、宅麻伸、小西博之、黒田隆哉、丹野由之)だ。おえんが鈴と紐のついたかぎ針をヒューンと投げれば、悪の親玉の首にがっちりからみつく。女怨念の恐ろしさを知れー、怖い顔の山本陽子ににらまれたら、極悪人もひとたまりもないのであった。
 一方、料理屋の女将として表の顔を見せるおえんと、ミーハーな女ともだち(入江若葉、芦川よしみ)キャーキャーおしゃべりする場面や、おえんに気がある吉原見回りの同心(中山仁)とのやりとりは、結構笑える。数少ない、おとなの女が主人公の事件もの。続編ができたり、舞台化される人気作になったのも納得だ。

掲載2002年08月16日

「豊臣秀吉天下を獲る!」主役の中村勘九郎はじめ、竹中直人、市川左團次、市川新之助らが大暴れの豪華版!

(とよとみひでよしてんかをとる!) 1995年

掲載2002年08月16日

  さて、豊臣秀吉といえば、いまさら説明の必要もないほど、繰り返し映像化されてきたキャラクターのひとり。草履取りから始めて、知恵と度胸と気配りでとんとん出世していく様は、戦国時代ならではの面白さ。そして、居並ぶライバルを押し退けて、ついに天下を獲り、さらには異国への出兵まで図る・・・。一方、美人にはついフラフラしたり、母や嫁には弱かったり、人間味プンプンの男。このあたりが、秀吉の魅力なのかもしれないが、こういう泥臭い男を演じてピカイチの勘九郎は、秀吉の表も裏も、光と影もしっかり見せてくれて、とてもいい味を出している。
  また、キャストが豪華なのも、このシリーズの特徴。徳川家康の竹中直人は、見事なタヌキ親父っぷりだし、明智光秀の近藤正臣は悲劇の男を美的にアピール、秀吉の母が若いころは美穂純で歳をとったら、中村玉緒ってのはちょっと意外すぎたか・・・。さらに秀吉の子供時代を勘九郎の息子・勘太郎が演ずるなど、興味深いキャスティング。中でも、意外に頑張っていたのが、織田信長の宅麻伸で、本能寺の変では、大暴れを見せる。他にも市川新之助、市川左團次、白竜など男優陣、風吹ジュン、黒木瞳ら女優陣も熱演。南こうせつの切々とした主題歌も聞き逃せない。

掲載2002年05月25日

「大盗賊」 “ミスター・ボス”丹波哲郎は、時代劇でもやっぱり大ボス!大胆な盗み技に注目

(だいとうぞく) 1974年

掲載2002年05月25日

「盗みはすれども、非道はせず」の大盗賊・闇将軍(丹波哲郎)。昼の顔はいかにも温厚な絵師・緑川で通っている。
一見、のんきに絵ばかり描いているように見える闇将軍だが、用意は周到。いよいよ決行の夜ともなれば、闇将軍は白装束に白頭巾に変身して、現場に直行するのであった・・・って夜中に白じゃ目立ちすぎですよ、闇将軍!と思わず声をかけたくなるが、丹波哲郎はそんな些細なことは気にしない。気にしないどころか、本業の盗賊の他に、得意の剣術で悪人まで退治してしまう大暴れ。もう、どうにも止まらない丹波パワーだ。
丹波哲郎の時代劇といえば、六十年代の大ヒット作「三匹の侍」があるが、思えば当時から、どんな大事件にも動じない雰囲気だった。その雰囲気を活かし、「キーハンター」や「Gメン」で“ボス”として親しまれたのはご承知の通り。最近の「Gメンスペシャル」でも、変わりなく黒木警視として登場し、「Gメンに定年なし!」をアピール。いまや「丹波哲郎が誰かの部下になる」姿など、想像もできないのである。もちろん、この「大盗賊」でもボスぶりを発揮。夜桜のお時(松尾嘉代)、お町(野際陽子)、新吉(三ツ木清隆)ら手練を従えて、堂々の白頭巾。
やっぱり、日本でこんなボスになれるのは、この人だけだな。実感。

掲載2002年05月17日

長七郎江戸日記 華麗な二刀流で大変身!里見浩太朗の当たり役、「長さ〜ん」の野川由美子もいい味。

(ちょうしちろうえどにっき) 1983年〜1986年

掲載2002年05月17日

時代劇のヒーローには複雑な家庭環境の人が多いが、この長七郎もなかなか大変。父・駿河大納言忠長は、二代将軍・秀忠の次男。しかし、秀忠の長男・家光と将軍の座を争ったために、自害に追い込まれてしまう。将軍になった家光は罪ほろぼし?に、長七郎を大名に取り立てようとするが、長七郎は忠臣・三宅宅兵衛(下川辰平)らに助けられ、素浪人の姿で町中で暮らすのであった・・・。ふつう、三代将軍家光は「名君」と言われて、時代劇の主役になったり(例・三田村邦彦の「将軍家光忍び旅」)するのに、この番組では完全に悪役ってのが興味深い。
この長七郎、不運な生い立ちにも係わらず、正義感はひと一倍。ふだんは瓦版屋・夢楽堂の居候だが、いざ、悪人屋敷に乗り込むと、葵のご紋入りの華麗なお殿様ファッションに大変身。独自の二刀流で「俺の名前は引導がわりだ!迷わず地獄へ落ちるがよい!」とすごいセリフで悪人たちをビビらせる。「おのれ、何者!?」と聞かれても、自分で応えたりしない。すかさず下川辰平が走ってきて、「ええい、このお方は・・・」と説明するのだ。
「長さ〜ん」とゲタで駆け寄ってくる夢楽堂の女主人・野川由美子の女っぷりもいい感じ。華麗、変身、キメセリフ、大立ち回り、時代劇の要素のすべてが入った、里見浩太郎の十八番。文句なくスカッとできる。

掲載2002年05月03日

「徳川風雲録 御三家の野望」 八代将軍の座を争う御三家。脂の乗り切った北大路欣也と市川右太衛門の共演も話題に。

(とくがわふううんろく ごさんけのやぼう) 1986年

掲載2002年05月03日

79年にスタートしたテレビ東京系の「12時間ドラマ」。81年の萬屋錦之介の「それからの武蔵」以来、正月2日をまるまる時代劇に費やすという、驚くべき放送スタイルを貫いている。いつ見ても、そこにチョンマゲの人がいる画面。今でこそ、このチャンネルではそういう楽しみ方ができるが、かつては、年一回、この長時間時代劇の日だけが、そんな「夢」のような一日だったのだ。
その二十年余りの長時間時代劇作品の歴史で、北大路欣也は一時代を築いた人である。
85年「風雲柳生武芸帳」、86年この「徳川風雲録御三家の野望」、87年「風雲江戸城怒涛の将軍家光」、88年「花の生涯」、90年「宮本武蔵」と主演が続く。タイトルに「風雲」が多いので、私の中では、一時期「風雲といえば北大路」というくらい定着したものだ。
中でも、この「徳川風雲録」は、「暴れん坊将軍」でおなじみの徳川吉宗の若き日の物語。妾腹に生まれながら、相次ぐ兄の死で、御三家紀州家の当主になった吉宗。それだけでも大変なのに、今度は八代将軍の座をめぐって、尾張、水戸との争いに巻き込まれる。
まさに風雲人生。城を抜け出して世直しする松平健の吉宗とはひと味ちがうが、「暴れん坊」なのと、女子にモテモテなのは共通項。
父・市川右太衛門との共演や、丹波哲郎、原田芳雄、中村嘉葎雄ら、クセ者たちの活躍にも注目したい。

掲載2002年02月08日

「旅人異三郎」若き杉良太郎のカッコいい渡世人。コブシも回しまくりの正統派また旅シリーズ。

(たびにんいさぶろう) 

掲載2002年02月08日

 「大江戸捜査網」の隠密同心。「右門捕物帳」の町方同心、「水戸黄門」の助さん、「新吾捕物帳」の岡っ引き、「遠山の金さん」お奉行、「喧嘩屋右近」の浪人、最近では大河ドラマで大老も演ずるなど、時代劇であらゆる役をこなしてきた杉良太郎。やっていない大役は、「忠臣蔵」の吉良上野介くらい?と思えるほど、その役柄は幅広い。
 その杉良時代劇史の中の「最初の渡世人役」が、この「旅人異三郎」なのである。
 原作は「座頭市」でもおなじみの子母澤寛。
自分の三度笠を放り投げて自分の行き先を決めるフーテン系の若き旅人異三郎。が、宿場、宿場には悪人がいて、黙って見過ごせない。
結局、早送りか?と思えるほどの早業、無外流居合抜きでバババッと人助け。実は、単身命懸けの人助けをする理由というのがすごいのである。「泣くのはやめておくんなさいよ・・・人が泣くのは辛うござんす」と、「人が泣くのは辛うござんす」というのが動機なのだ。
 裏街道を生きる渡世人だが、どこかカラッと明るい印象なのは、異三郎が無類の歌好きだからかも。わらべ歌から民謡、盆踊りの歌まで各地でコブシを回して熱唱する。ちなみに主題歌は藤田まこと作詞、遠藤実作曲の「三度笠」。♪い〜さぶろぉおおお〜と、いっしょに歌う楽しみもある。監督マキノ雅裕、池広一夫らによる、股旅モノの正統派。

掲載2002年01月11日

「大菩薩峠」幕末、血に飢えた剣士の波乱の人生 中里介山の名作を市川雷蔵主演の三部作で。

(だいぼさつとうげ) 

掲載2002年01月11日

妖しい剣、“音無しの構え”をつかう剣士・机龍之助は、富士を遠く眺める大菩薩峠で、何の理由もなく老いた巡礼を斬り捨てる。これが、この狂った剣士の衝撃的な登場シーン。奉納試合の相手・宇津木文之丞を惨殺し、その妻お浜を奪い、江戸へ逃げる龍之助。お浜との間に子まで出来ながら、文之丞の弟・兵馬から果たし状が届くと、お浜までも斬って江戸を脱出する。京にたどりついた龍之助は、新選組に入隊するが・・・。
とにかく狂気の連続なのだが、なぜか目が離せないのは、机龍之助というダークヒーローのインパクトゆえ。新選組に入った龍之助が、不気味に笑いながら狂乱し、御簾を斬りまくる名場面でも、銀色に光る着流しを乱しながら暴れる龍之助は、美しくさえある。
その後、老巡礼の孫娘に狙われたり、龍之助が盲目になったりと流転は続く。名監督・三隅研二、森一生による、見はじめると止まらない三部作だ。
主演の市川雷蔵は、同じ大映のスターでも、皆で騒ぐの大好きな勝新太郎と正反対で、もの静かで家庭を大切にした。孤高の人のイメージが強いが、この「大菩薩峠」撮影時には野球に凝り、試合の最中、打撃不振だと「これが本当の音無し構えや」と冗談を飛ばしたというエピソードが残る。
今も若い女性にファンを増やしつづける雷蔵の狂気の演技がいい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。