ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2005年01月14日

「鶴姫伝奇−興亡瀬戸内水軍−」瀬戸内海のジャンヌ・ダルク。強気娘後藤久美子が大暴れ

(つるひめでんき-こうぼうせとうちすいぐん-) 1993年

掲載2005年01月14日

 16世紀初頭の瀬戸内海。美しい海の景色とは裏腹に、海上では大内軍と三島水軍が激しく対立していた。
 大三島の大祝家には、鶴姫という美しい娘がいたが、この姫は容姿には似合わないおてんば娘。男顔負けの度胸の持ち主で、周囲をビビらせていた。その姫も越智鷹丸(石橋保)と相思相愛に。幸せは目の前かと思われた矢先、大内家との和睦の使者となった鷹丸がだまし討ちにあって、命を落とす。怒りと絶望から仇討ちを誓った鶴姫は、自ら戦いの渦に身を投じる…。
 「瀬戸内海のジャンヌ・ダルク」と言い伝えられる“悲劇のヒロイン”鶴姫に「美少女」として一世を風靡した後藤久美子。当時、19歳の久美子は、後に世界的ドライバー・ジャン・アレジの強力なパートナーとなるが、今思えばこの作品には、その芯の強さがかなり発揮されているのである。
 日本テレビの年末スペシャル時代劇として制作された作品だけに、脚本は杉山義法、若き姫を助ける共演者には、三浦友和、森繁久彌、星由里子、名古屋章らベテラン陣、坂上忍、いとうまい子、橋爪淳、萩原流行、高島礼子など豪華な顔ぶれがそろう。水軍同士の戦いゆえに特撮も随所に登場。水上の大立ち回りに注目したい。

掲載2004年12月10日

「忠臣蔵外伝 薄桜記」05年に座長引退宣言の杉良太郎。持ち役の中でも特に思い入れの強い孤高の剣豪参上!

(ちゅうしんぐらがいでん はくおうき) 1991年

掲載2004年12月10日

血気盛んな中山安兵衛(竜雷太)は、有名な高田の馬場の決闘で大暴れ。江戸中の話題をさらい、その腕を見込んだ浅野家家臣の堀部家の養子となることに。しかし、その安兵衛の人生には、千春という女と、剣豪・丹下典膳(杉良太郎)が深く関わってくる。はからずも、浅野の殿様は吉良上野介に殿中で刃をふるい切腹。赤穂浪士が密かに討ち入りをめざす中、典膳と安兵衛は対決する運命に・・・。共演は他に佳那晃子、菅原謙次、大沢逸美、左右田一平、本田博太郎ほか。
 原作は五味康祐。典膳と安兵衛はまさに陰と陽。杉良太郎は、「一心太助」「喧嘩屋右近」のような明るいキャラクターも得意だが、舞台では「薄桜記」「殺陣師段平」のような孤独な男を好んで演じている。私は以前、その理由をご本人に尋ねたところ、「自分では協調して仕事をしようと思ってはいるが、なかなかできない。人は生まれるときも死ぬときもひとり。そんな気持ちはいつもある」といった話をされた。時代劇の世界でも独自のやり方を貫き、早い時期から自分の引退の時期を考えつづけたという杉さまにとって「薄桜記」は思い入れの特に強い一作だ。
 05年の座長引退も自ら決定。後進の指導にあたる予定とか。大阪での最終公演は、ファンのリクエストで演目を決定したという。でも、引退は早すぎ!そう思いませんか。

掲載2004年11月05日

「てなもんや大騒動」視聴率64%の超人気番組の映画版!藤田まこと&白木みのるコンビVSドリフの新撰組!?

(てなもんやだいそうどう) 1967年

掲載2004年11月05日

「てなもんや三度笠」といえば、調子のいい渡世人・あんかけの時次郎(藤田)とちょいと賢い小坊主の珍念(白木)のコンビが珍道中を繰り広げ、最高視聴率64パーセントという驚異的な記録を作った伝説的番組だ。
 その映画版「てなもんや大騒動」の舞台は幕末。勤皇党のウワサを聞いて一旗あげようと、時次郎は、大阪の珍念と京の都へ。偶然尋ねた寺に、坂本竜馬(財津一郎)がいると聞いて、早速弟子入りする。珍念の「この男(藤田)のあだ名は馬。あなた様とは因縁浅からぬ馬同志」という紹介っぷりが面白い。この竜馬、何かというと「チョーダイ!!」と素っ頓狂な声を発するあやしいやつ。案の定、ニセ者?で、有り金残らず取られた時次郎は「祇園のネエちゃんにモテるためには新選組や。旗の誠もいい文字やで」と、今度は新選組に大接近。全然勤皇じゃないって!
 しかし、こっちはこっちで近藤勇(芦屋雁之助)、土方歳三(いかりや長介)以下、主要メンバーがドリフの面々でどうも頼り無い。やがて竜馬一派と新選組の大乱闘が・・・。
 山本直純の音楽に、アベック、モンタージュなど現代語もどんどん出てきて、テンポは抜群。銅像そっくりの西郷隆盛の谷啓、「見損なってかんがね」と名古屋弁ねずみ小僧の南利明、貫禄があるんだかないんだかわかんない大前田英五郎親分の伴淳三郎など、昔の喜劇人の達者な芸と層の厚さに感動する。

掲載2004年07月02日

「丹下左膳 剣風!百万両の壺」今年は“丹下左膳YEAR!”仲代達矢の豪快左膳と、最後の時代劇となった夏目雅子。

(たんげさぜん けんぷう ひゃくまんりょうのつぼ) 1982年

掲載2004年07月02日

映画では豊川悦司、地上波・舞台では中村獅童が左膳に扮して大暴れ!意外なほどお茶目なトヨエツ左膳、主題歌がブルーハーツの「僕の右手」じゃあんまりシュールだよ!と言いたい獅童左膳。とにかく今年は、“丹下左膳YEAR”である。当チャンネルでも、「シェイは丹下、名はシャゼン」と独自のスタイルで人気だった大河内伝次郎の「丹下左膳 こけ猿の壺」「新篇 丹下左膳 隻眼の巻」、仲代達矢のテレビ版スペシャル「丹下左膳 剣風!百万両の壺」を放送する。
 その仲代版。相馬中村藩の藩士だった丹下左馬介(仲代)は、家老に剣の腕を見込まれて、藩内に潜入していた隠密を斬り、自らも右腕を失う。事が露顕することを恐れた家老一派に命を狙われ、目にも傷を負った左馬介。宮仕えの虚しさを蹴飛ばして、暴れん坊の丹下左膳として生きていく決心だ。そこへ柳生家の家宝「こけ猿の壺」が転がり込んでくる。どうやらその壺には莫大な金の秘密が隠されているらしい。壺を狙う公儀隠密、柳生、彼らと張り合う左膳の豪快な戦いから目が離せない!監督は今年十三回忌を迎える五社英雄。共演は、夏八木勲、西村晃、松尾嘉代、中谷一郎ほか。柳生のお嬢様役で出演した夏目雅子は、これが最後の時代劇出演。その相手役となったのが、かの日本一の斬られ役・福本清三だったというのもなかなか。

掲載2004年06月11日

「武田信玄」熱血貴一の信玄VSはみだし武将情熱系柴田恭兵の上杉謙信!注目は小川真由美女官様。

(たけだしんげん) 1988年

掲載2004年06月11日

新田次郎の骨太の原作を、名脚本家・田向正健がガシッと脚色、まさにNHK大河ドラマの王道の戦国絵巻。
 有名な風林火山の旗印のもと、甲斐・信濃に名をとどろかせた武田信玄に中井貴一。それまでなんとなくお坊ちゃんのイメージだった貴一だが、ここでぐっと厳しい男の生きざまを見せる。そして、そのライバルこそ、上杉謙信。これを柴田恭兵が演じたのは新鮮。血の気の多い騎馬軍団を率いる信玄と、緻密な作戦をたてる理想主義者・謙信。その合戦シーンは大迫力だ。
 一方、注目したいのは信玄の私生活。戦国の習いで、いやいや正室にした三条の方(紺野美沙子)は都育ちで粗野な武将ライフが大嫌い。また、それを煽るのが、都から連れてきた女官・八重(小川真由美)だ。「ま、そのような」と、いちいち信玄のライフスタイルに女官風の丸い眉毛をひそめる真由美。真由美の前では戦も男同志の友情も吹き飛ぶのだ。結局、信玄は大地真央、南野陽子など側室に安らぎを求め、ますます正室との仲は悪化。信玄は私生活も戦国だ。
 菅原文太、石橋凌、村上弘明、児玉清、中村勘九郎(この今川義元は見物!)ら、豪華キャストの名演技も続々登場。「今宵はここまでに致しとうございまする・・・」の若尾文子の名ナレーションとともにお楽しみを。

掲載2004年03月12日

「徳川家康」丸顔のイメージを一気に変えた滝田家康 役所信長と超美人淀殿・夏目雅子にも注目。

(とくがわいえやす) 1983年

掲載2004年03月12日

戦国時代。岡崎城主・松平広忠の子として生まれた竹千代(後の家康)は、幼いころから人質として各地を転々とする日々。その彼をいつも見守っていたのは、母・於大(大竹しのぶ)であった。元服し、松平元信となった竹千代は、初陣を勝利で飾り、武将としての才能を発揮し始める。やがて、三河を統一、有力な戦国大名となった家康が目指すのは、徳川による天下だった。
 不遇の青年時代から、徳川幕府を開くまでの波瀾の75年の生涯。さまざまな武将たちとの表、裏の戦いも描き、最高視聴率37.4パーセントを記録した大河ドラマ。
 その人気の秘密は、やはり主役・滝田栄の熱演。丸顔、タヌキおやじのイメージを一気に変えたばかりか、人間的に悩みの多かった家康の心情をじっくり見せた。また、家康と人気を二分したのが、役所広司の織田信長。天才的なひらめきと行動力。滝田&役所の顔長コンビに、クセのある豊臣秀吉(武田鉄也)がからみ、曲者・武田信玄(佐藤慶)の動きも気になる。一方、女優陣も、家康の正室築山殿(池上季美子)、濃姫(藤真利子)、超美形の淀殿(夏目雅子)など、大河ドラマらしい豪華版。当時、朝のドラマでは「おしん」が話題になり、家康ともに「耐える」主人公に注目が集まった。一度見た方も、二度見て新しい発見があるはず。

掲載2003年12月12日

「忠臣蔵」年末年始特別企画。里見浩太朗の大石内蔵助に風間杜夫の浅野内匠頭。吉良はあの人!!

(ちゅうしんぐら) 

掲載2003年12月12日

 年末年始は、なぜか時代劇をじっくり見たくなるもの。数ある作品の中で、大型テレビ作品として話題になったのが、本作。
 里見浩太朗の大石内蔵助は納得として、風間杜夫の浅野内匠頭はかなりの冒険。私を含め、あんまり悲劇が似合わないキャラクターというイメージだった。が、これが意外にぴったりきて、数々の無理難題にぐっと耐え、とうとう松の廊下で刃傷に至る瞬間のハイテンションな動きは、さすが「鎌田行進曲」の俳優だと、ちょっとうれしい。
 が、何よりこの作品での話題は「吉良上野介」が森繁久弥だったということ。ホームドラマの好々爺が天下の悪役である。すんなり受け入れられるのか?
 この役をぜひ、とご本人にお願いしにいったのは、なんと里見浩太朗その人だったという。ご本人に直接お聞きした話では、「出演中の舞台の楽屋にお邪魔して、先生このたびは、『忠臣蔵を』とお願いすると、『どの役?』と鋭く返されまして、緊張しました・・・」あの里見さんを緊張させるとは、さすがの貫禄。この作品は、この吉良が実現したからこそ、多くの支持を得たといえる。(初オンエアは、紅白歌合戦の真裏にもかかわらず、視聴率は15パーセントを超えた)堀内孝雄が切なく歌いあげる主題歌「憧れ遊び」とともに、男の忠義に泣ける一本。

掲載2003年12月05日

「討ち入り!「忠臣蔵」祭り」加山の内匠頭に伴淳の吉良。本格派から、喜劇パロディまで。スター勢揃いがうれしい。

(ちゅうしんぐらまつり) 

掲載2003年12月05日

 師走といえば、忠臣蔵!ということで、14日は「忠臣蔵」の名作が揃う。
 まず、「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」は、松本幸四郎(白鸚)主演。まず「花の巻」で、赤穂城主・浅野内匠頭(加山雄三)が、勅使指南役の吉良上野介(市川中車)に諸大名の目の前で田舎大名と呼ばれたことから、ついに刃傷にいたるまで。いじめにうぐぐぐと耐える加山。若大将とはまた違った表情だ。
 「雪の巻」では、赤穂浪士たちが本懐をどけるまで。永遠の美女、原節子、司葉子、新珠三千代、星由里子、池内淳子ら、女優陣も華を添える。また、吉良方の用心棒となった俵星玄藩役で三船敏郎が登場。堀部安兵衛(三橋達也)とすなわち対決か、という場面も。名殺陣師・久世竜の緊張感あふれるぶつかり合いに注目。
 もう一本。「珍説忠臣蔵」は、密輸はするわ、高利貸しはするわ、バイトで女の世話までやってのけるとんでもない吉良上野介(伴淳三郎)と、大石内蔵助(古川緑波)の運命やいかに?田端義夫、堺駿二、木戸新太郎、阿部九州男、清川虹子、横山エンタツ、花菱アチャコら、当時の人気者が総出演の明るい忠臣蔵。後に「連想ゲーム」で人気になる田崎潤もいつものパワフルな存在感を見せる。いかに日本人が「忠臣蔵」が好きかよくわかる。
充実のラインナップ。

掲載2003年11月28日

「大魔神怒る!」火あぶりシーンは本当に燃やす!モーゼも驚く、名監督・三隅研次の迫力特撮巨編。

(だいまじんいかる) 1966年

掲載2003年11月28日

 戦国時代。湖をはさんで隣り合わせの名越一族と千草一族は、本家と分家の間柄もあって、平和に暮らしていた。しかし、ある日、土地がやせて隣国の御子紫一族の弾正(神田隆)が、名越の領地に突然、攻め入り、占領してしまう。
 危機一髪で脱出した名越の殿様・十郎(本郷功次郎)は、千草の殿(内田朝雄)を惨殺し、湖の神ノ島に祀られた名越・千草の武神像を爆破。湖に捨てたばかりか、領民の前で千草の姫・早百合(藤村志保)らを火あぶりにしようとする。神に祈る早百合の目から、ひとすじの涙がこぼれ落ちる時、とてつもない奇跡が・・・。
 「大魔神」という名前と、やさしげなハニワ顔が一気に怖い顔に変化する過程を記憶している方も多いはず。がしかし、それだけでこの映画は語れないのである。私は以前、直接藤村志保さんに伺った話によると、三隅監督は、火あぶりのシーンでは本当に藤村さんの足元でボーボーと火を燃やし、リアルさにこだわったという。しかも、大魔神が湖から登場するシーンは、「モーゼの十戒」もびっくり!の大仕掛け。最新のCGなしでここまでできちゃう日本映画の底力を見た思いがする。セットや立ち回りももちろん本格的。一度見たら、必ず誰かに話たくなる作品。

掲載2003年09月12日

「田村正和祭り」美剣士・腕下主丞の「乾いて候」から「子連れ狼」まで!マネのできない正和的世界。

(たむらまさかずまつり) 

掲載2003年09月12日

田村正和。こう書いただけで、何か一般人とは異なる世界を感じさせる。
名優・阪東妻三郎の息子という立場でありながら、他の兄弟とまったく違う雰囲気のゴーイングマイウェイ。「ニューヨーク恋物語」といったラブストーリーでも、「パパはニュースキャスター」といったコメディでも、そして「古畑任三郎」といったミステリーでさえも、ファッションもヘアスタイルも統一。その正和が唯一、いつものファッション&ヘアから離れるのが時代劇なのだ。
 将軍・吉宗の子でありながら、父に捨てられ、その毒味役となった悲運の男・腕下主丞を描く「乾いて候」。暗い過去を持つ美剣士は、まさに正和のためにあるような役。そこに高廣、亮も共演した三兄弟が勢ぞろいというのも楽しみ。今は女優業から離れた宮崎ますみの姿が見られるのも貴重かも。
 また、妻を惨殺され、一子大五郎とともに冥府魔道に生きる拝一刀に扮した「子連れ狼その小さき手に」でも、例の低ーい声の中に子を思うやさしさがにじむ独特の拝一刀像を作った。柳生烈堂(仲代達矢)との死闘でさえも、どこか華麗な感じがする。
 こうして見ると、正和の場合、それが時代劇であっても、そこに独自性が必ず存在する。その意味でも他者にはマネのできないムードの俳優なのである。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。