ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2010年01月15日

『維新の曲』
「大映」の第一回作品は阪妻の坂本龍馬!
右太衛門、千恵蔵、嵐寛も登場の豪華版。

(いしんのきょく) 1942年

掲載2010年01月15日

数々の名画を世に出した「大映」は、もともと日活、新興キネマ、大都映画の三社合併によって生まれた。その合併の理由は、戦時中、物資の欠乏による生フィルムの不足だったという。苦しい事情の中で誕生した記念の第一作には、豪華キャストが顔を揃えた。
明治維新直前。土佐の坂本龍馬(阪東妻三郎)は、討幕のために薩長連合の必要性を説いていた。しかし、薩摩の西郷隆盛(片岡千恵蔵)は、長州のやり方に納得できず、なかなか同意が得られない。その最中、新撰組による池田屋事件が起き、さらに長州軍が京都に攻め入るものの敗走。混乱は続く。桂小五郎(市川右太衛門)は、単身薩摩藩邸に乗り込み、西郷との話し合いを望むが、西郷は動かない。
阪妻は得意のべらんめいで威勢のいい龍馬を見せて気持ちがいい。意地の張り合いのような薩長の動きにイライラし、宿屋で「長州ったのは、チューチューさえずって眠れやせんよ!」人懐こい笑顔は、龍馬にぴったり。浮浪者スタイルの桂が新撰組と戦うなど、スターのためにしっかり見せ場も用意されているのは、さすが。
終盤、存在感を見せるのが、徳川慶喜訳の嵐寛寿郎。監督の牛原虚彦は帝大から映画入りし、アメリカ留学してチャップリンの門下生になった経歴の持ち主。大物スターをイキイキと動かしている。

掲載2009年12月25日

『オールスター忠臣蔵まつり』
タッキーの内匠頭に仲間由紀恵の大石主悦!?
どうなっちゃうのの展開に森繁翁が乱入!

(おーるすたーちゅうしんぐらまつり) 1997年

掲載2009年12月25日

瓦版屋の読売屋は、とぼけた主人の徳兵衛(伊東四朗)と、商売熱心のお由美(野川由美子)、息子の和吉(えなりかずき)らが、聞き込み屋の三次(魁三太郎)、お重(重田千穂子)、金太(桜金造)らと仕事をしている。年末、赤穂浪士が吉良邸に討ち入ったという一報が入り、瓦版にすると大うけ。さらには、中村座の勧進元の重兵衛(坂上二郎)は、この話を芝居に仕立てたいと言い出す。さらにネタを仕入れようと、和吉たちは、大石内蔵助(高橋英樹)が預けられている細川家に変装して潜入を試みるが…。坊主、地蔵、医者、読売屋メンバーの誰が何に変装するかはお楽しみ!
人気シリーズ「コメディお江戸でござる」に豪華ゲストを招いた公開番組。劇中劇「いろは忠臣蔵」では、浅野内匠頭役の滝沢秀明が、吉良役の坂上二郎を見て、思わず「二郎さん…」とつぶやいたり、大石主悦役の仲間由紀が大まじめに少年役をやったり。坂本冬実。五木ひろしの珍妙なお軽・勘平、団しん也のものまねなど、今ではなかなか観られないユニークな場面も多数。なんといっても、圧巻は、瓦版の書き屋役の三波春夫の「俵星玄蕃」の熱演。あの「さ~くさくさくさく」という名調子は見物。
ラストでは、09年に亡くなった森繁久弥翁も登場して、会場を沸かす。まさに「オールスター」の雰囲気たっぷりの楽しい忠臣蔵。

掲載2009年11月20日

『大奥 第一章』
愛のためなら敵の抹殺も厭わない!
松下由樹の春日局が、「大奥」を創りだす

(おおおく だいいっしょう) 2004年

掲載2009年11月20日

おふくは嵐の夜、狼藉者を自ら手にかける。正しいことをしたはずが、夫の稲葉正成(神保悟志)から離縁され、生んだばかりの子とも引き離される。京都に出たおふくは、将軍家乳母募集の高札を見て、応募を決意。二代将軍秀忠と正室お江与(高島礼子)の長男竹千代の乳母となったが、おふくが仕事に励むほど、お江与との空気が冷たくなっていく。二男ばかりを可愛がり、母に愛されないまま成長した竹千代が、将軍職につけるよう、おふくは命がけで動く。その後も将軍となった家光(西島秀俊)の跡継ぎ誕生を願うおふくは、ついに「大奥」という仕組みを創りだす。
大奥誕生秘話、まさに「第一章」。そもそも誕生から、おふくとお江与、壮絶なにらみあいの中で出来上がった組織なのであった。高島礼子は、任侠映画にも主演しているだけに、そのにらみ具合はさすが。対する松下も初回から、血しぶきを浴びて戦うなど、女の底力を見せ付ける。尼の身を無理やり家光の側室にされたお万の方(瀬戸朝香)が、ふと心を休める笛の音。その笛吹き(金子昇)を呪わしい顔つきで見つめるおふくこと大奥総取締春日局。しかし、病に倒れた家光本人し意外なことを言い出す。菅野美穂主演の「大奥」でブームを作った浅野妙子の脚本は、過酷な中にも、女たちの愛を織り込む。終盤、春日局の真からの願いが明かされる。松下熱演。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。