ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年09月25日

『大奥(2003年)』
女たちの愛憎をすべて飲み込んで大奥崩壊!
瀧山、天璋院、和宮、まるらの運命は

(おおおく) 2003年

掲載2009年09月25日

いよいよ幕府崩壊のときが近づいていたが、江戸の大奥では、徳川の世が終わるとは誰も思っていなかった。しかし、遠征していたはずの十五代将軍徳川慶喜(山崎銀之丞)は、大坂に全軍を置き去りにしたまま江戸に戻り、薩摩出身の天璋院(菅野美穂)に薩長軍との和解仲介を頼む。このことで大奥は騒然となり、逃げ出す者が続出すると、大奥総取締の瀧山(浅野ゆう子)は、「最後のひとりまで戦う覚悟で」と眉毛を釣り上げた。しかし、天璋院は、「城を去りたい者は去ってよろしい」と告げる。
自分の故郷の者たちが敵軍となって攻めてくるという最悪の状況にありながら、大奥の女たちには「この私が指一本触れさせませぬ」と宣言する天璋院がカッコいい!そして、すべての者が去り、大奥にただふたり残った瀧山と天璋院。ここにしか生きる場所がないと絶望する瀧山は思わぬ行動に出るが…。
商家の娘ながら、天璋院に目をかけられたまる(池脇千鶴)の恋の行方も含め、時代のうねりの中で生き抜く女たちの姿は感動的。
ちなみに史実では、瀧山は、大奥を辞したあと、養子をもらって家族を作り、大奥の仲間数人と交流しながら生きた。孤立しがちだった和宮も天璋院と明治の町歩きをしたという話が伝わっており、それぞれの人生を歩んだことがわかる。

掲載2009年09月18日

『鬼平犯科帳スペシャル 引き込み女』
凄腕の引き込み女を余貴美子が熱演。
市川染五郎もいい味出してます。

(おにへいはんかちょうすぺしゃる ひきこみおんな) 2008年

掲載2009年09月18日

江戸で軽業小僧と呼ばれる盗人が横行。火盗改めの筆頭同心・酒井祐助(勝野洋)は、長官の長谷川平蔵(中村吉右衛門)に、数年前から関東が蛮行を続ける駒留の弥太郎(石倉三郎)の一味に軽業を得意とする手下がいることを報告する。そんな折、密偵の大滝の五郎蔵(綿引勝彦)が、弥太郎の下で引き込みをしている女おもと(余貴美子)が、袋物問屋菱屋で働いていることを突き止める。平蔵は、親交のある医師・井上立泉の息子・玄庵(市川染五郎)に仲介を頼み、密偵のおまさ(梶芽衣子)を菱屋に潜入させる。
見所のひとつは、おもとVSおまさ。現役の引き込み女と元引き込み女の探りあい。「あんたとは同じにおいがする」敵対するはずの女同士が、日陰にしか生きられない苦悩を理解しあい、やがて予想外の展開を見せることに。余貴美子は、表の顔では陽気で可愛く、裏に回ると凄みを見せて、熱演。平蔵を盗賊のお頭だと紹介され、「いいお頭だねえ」と絶賛する姿は、実にいい。
もうひとつの見所は、市川染五郎の活躍。医師ながら、平蔵の仕事に共感し、捕物にも参加。叔父である吉右衛門とは、テレビ初共演で、映画でもテレビでも大好きな作品に出演できると感激。ただし、高いところでの演技(何をするかは画面で確かめてください)はなかなかに難しかったと語っている。

掲載2009年06月19日

『唄祭り 江戸っ子金さん捕物帳』
娘軽業師ひばりの意外な素顔とは!?
若山富三郎の金さんが連続殺人に挑む。

(うたまつり えどっこきんさんとりものちょう) 1955年

掲載2009年06月19日

初春の市村座。多くの観客が注目する『地雷屋』の宙乗りの真っ最中に立役者の市川長十郎が射殺されるという奇怪な事件が発生。十手を預かった巾着切りの銀次(川田晴久)が探索を始めると、今度は娘軽業春駒太夫(美空ひばり)一座でも同様の事件が発生。そして、不敵にも南町奉行遠山金四郎(若山富三郎)のすぐ近くで第三殺人が。どうやら、天保銭の入れ墨が鍵となりそうなのだが、渦中の春駒は行方不明。そこに怪しい一団の存在が浮かび上がってくる。
ひばりは一座の太夫として華麗な歌や踊りを披露。しかし、その裏に悲しい過去を持つ娘の顔を見せる。川田晴久は、早口の十手持ちを熱演。金さん役の富三郎も悠々たる存在感を見せる。面白いのは、探索に銀次の長屋の連中が加わることで、柳家金語楼の大家を先頭に、何かというとみんなで集まって捕物にやってくる。♪蜂の巣長屋に朝が来た〜と歌も響かせたり、マーチで大行進をしたり。歌ってる場合かよ!と突っ込みを入れたくなるほど陽気で、観る者を楽しませる。
後半、与力の笹山左近(山茶花究)が、真相に迫る。名奉行金さんは、この一件をどう裁くのか。冬島泰三監督の演出は、テンポがよく、昭和の娯楽映画の楽しさを詰め込んだ捕物帳に仕上がっている。ひばりがのびのびと演じているのが、印象的。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。