ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年06月12日

『女の花道』
芸に生きる女を美空ひばりが熱演。
坊ちゃん亭主田村高廣、師匠杉村春子が光る

(おんなのはなみち) 1971年

掲載2009年06月12日

鳥取砂丘で拾われた孤児のおきみ(美空ひばり)は、16歳になると、勧進巫女として出雲を出る。途中、育て親と死に別れたおきみは、京で偶然、志摩流丹後(杉村春子)の地唄舞を見て、その素晴らしさに感動し、押しかけ弟子になる。先輩弟子たちにいじめられながらも、けなげに修行を積んだおきみは、丹後から次期後継者にとまで見込まれるが、歌舞伎の振り付け師篠原流家元文二郎(田村高廣)と恋に落ち、破門覚悟で結婚する。しかし、家柄重視の文二郎の家で、孤児のおきみは孤立していく。時は幕末。京に長州が攻め入り、大混乱となる。
 川口松太郎が美空ひばりのために書き下ろし、京都の町を熟知した沢島忠監督が都の雰囲気たっぷりに描いた文芸作品。幼いころより天才と騒がれ、一度は愛する人のために生きようと思いながらも、結局は芸の道に戻っていく、ひばりの自伝的要素が垣間見られる。「上手に見せようとばかり思うて情けがないなあ」わがままな坊ちゃん亭主を演じる田村高廣、芸一筋ながら「おきみにはおきみの生き方がある」ときりりとした師匠の杉村春子のふたりは格別の味を出す。他にものんだくれ親父の悲哀を見せる辰巳柳太郎、育ての親おいねの北林谷栄など、ひばりの芸能生活25周年にふさわしい豪華な顔ぶれが揃う。燃えた京で再び芸に目覚めるひばりの踊りは圧巻。

掲載2009年05月15日

『出雲の阿国』
歌舞伎の始祖・阿国の激しい踊りと恋
菊川怜と堺雅人の顔合わせで描く

(いずものおくに) 2006年

掲載2009年05月15日

出雲の村でおばばに育てられた阿国(菊川怜)は、よその村から駆け落ちしてきた男女の間に生まれた。両親は殺され、村でも異端と見られがちだったためか、心の中で「いっぺんでええ。おら、出雲を出てみたい」と願っていた。村では娘たちの踊りで出稼ぎをすることになり、阿国も仲間に入る。しかし、許婚の九蔵(津田寛治)は大反対。本気で戻ってくるならと無理やり阿国の体を奪う。大坂で阿国は踊りに目覚め、やがて芸の世界でのし上がろうとする鼓奏者の三九郎(堺雅人)と運命的な出会いをする。
 おばばに「決して傾くな」と言われながらも、踊るうちに官能的な境地に達し、「おばば、すまねえ」と自分の道を見つける阿国と大役に必死に挑む菊川怜の姿が重なる。
 それにしても、この三九郎は困ったやつ。出会いの場面で、阿国に踊りに「思わず鼓を打ちとうなりました」などとキザな登場をし、阿国には「出会う定めであったかもしれんなー」などと甘い言葉をささやく。一方で有力なパトロンを得るために「お前が踊り続ける限り、わしはお前のそばにおる」って、阿国はすっかり都合のいい女扱いですか!
 秀吉時代のきらびやかな文化、中でも群集がたったひとつの黄金の「鷽(うそ)」を奪い合う神事の再現など、美術も堪能できる。芸に恋に生きた阿国の運命を見定めたい。

掲載2009年04月10日

『暴れん坊将軍2003』
意外な黒幕と古田新太&藤原嘉明の最凶敵!
吉宗は陰謀渦巻く佐渡島へ乗り込む

(あばれんぼうしょうぐんすぺしゃる2003) 2003年

掲載2009年04月10日

柏崎の代官所が襲われ、出張中の佐渡奉行堀田采女(津嘉山正種)が殺される事件が起こった。その下手人とされたのは、「しらぬい党」という謎の集団で、彼らは越後の天領ばかりを襲う盗賊であった。今回も強奪が目的化と思われたが、吉宗(松平健)と大岡越前(田村亮)は事件に不自然さを感じる。吉宗はさっそく佐渡へ向う。今回も自ら佐渡出張という上様のフットワークには感心するばかり。側近のじい有馬彦右衛門(名古屋章)が「まさかご自分で?」と監視の目を光らせても、十文字隼人(大森貴人)らお庭番の手を借りて、さっさと出かけてしまう。佐渡では「しらぬい党」から身を守りたいという北国屋に用心棒として潜入。そこにはいかにも怪しい先輩用心棒秋月梅軒(本田博太郎)がいた。しかし、吉宗が見たのは、しらぬい党の意外な正体とさらに恐ろしい陰謀。それを阻止しようとした吉宗の前には、青龍(藤原嘉明)と白虎(古田新太)というシリーズ最強の敵が立ちはだかった。
 以前、古田新太ご本人にインタビューした際、「暴れん坊将軍」は大好きな作品で出演はとてもうれしかったと語っていた。舞台で迫力ある立ち回りを披露しているだけに刀だ上様と対決したかったが、用意された武器は鎌。いつか刀で対決したいとも。悪役にやる気まんまんであった。実現を期待したい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。