ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年03月27日

『エノケンの弥次喜多』
武田家五十万両を追って東海道ドタバタ大会
監督・中川信夫、製作・市川崑の豪華版

(えのけんのやじきた) 1939年

掲載2009年03月27日

いきなり山賊の喜多八(エノケン)が人を襲って金を奪う出だしに「これは?」と思ったら、それはやっぱりの夢の中。「オレも夢とはゆめゆめ思わなかった」ととぼけたことをいいつつも、勘違いの勢いで弥次郎兵衛(二村定一)と旅に飛び出す。
 たまたま泊まった宿にはやんごとなき姫君が。どうやら武田家再興の五十万両の話をしているのだが、どういうわけかその地図を弥次さん喜多さんが手に入れて大騒動が始まる。びりびりと破いて手紙にしてしまった絵地図を巡って、盗賊、欲張り浪人、ついには金太郎や鬼にそっくり(?)な面々も入り乱れての争奪戦。巨大な天狗のセットをよじのぼっての追いかけっこや、「わしゃかなわんよ」と異国人風のおかし山賊一味など、出るわ出るわ変人たちが。駕籠を踏み抜き、そのまま自分の足でえっさほいさと走ったり、あっという間に東海道を往復するなど、弥次さんは、スーパー健脚で(そんなに足が速いなら、そもそも悪人につかまるわけがないけど?)ファンを笑わせる。
 監督は中川信夫。怪談映画の名監督だが、1939年の「エノケンの森の石松」で顔を合わせて以来、エノケンとの作品が続いた。随所に出てくる奇想天外なアイデアやビジュアルは、怪談映画と共通しているといえるかも。エノケン映画初心者にもお薦めの一本。

掲載2009年02月13日

『いのち燃ゆ』
原作はビクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル」!
微罪で島送りになった男の数奇な運命と救い

(いのちもゆ) 1981年

掲載2009年02月13日

幕末。夜中に流人の泣き声がするという天草の“夜泣き島”に十年もいる丈吉(柴俊夫)。大塩平八郎の一味と誤解され、幼い妹のためにひとつかみの飯を盗んだことで島に流されたのだ。赤毛のために幼いときから義父にいじめられ、すべてをあきらめたような丈吉だが、その働きぶりを見込んだ島の庄屋(加藤嘉)から、娘(神崎愛)の婿になって、跡取の作次郎(石橋正次)の片腕になってほしいと頼まれる。しかし、その裏にはとっくに赦免になるはずが、役人のミスで丈吉が島から一生出られないという事情があったのだ。すべてを知った丈吉は島抜けを決意するが、庄屋殺しの下手人と間違われ、作次郎から執拗につけ狙われることに。
 ユーゴーの名作「レ・ミゼラブル」を大河ドラマ「天と地と」などで知られる杉山義法が脚色。丈吉はやがて、自分の出生の秘密を知り、ひとりの女と出会ったことで運命が大きく変わる。うまくいきかけると作次郎に追われ続ける日々。人間の愛憎と赦しの過程をじっくり描く大作だ。
 共演は、長崎の医師・良庵に高橋幸治、謎の人物市蔵に坂上二郎、後半に新撰組が登場する点にも注目したい。小雨の降る天草ロケで、主演の柴は、猟師に捕らわれたり、海に飛び込むなどなど大熱演。地元の人たちから拍手を受け、意欲を増したという。

掲載2008年12月05日

『大奥 スペシャル・エディション版』
仲間由紀恵の絵島VS高島礼子の天英院!
ダークサイドで杉田かおるが微笑む…。

(おおおく すぺしゃる・えでぃしょんばん) 2006年

掲載2008年12月05日

三度のテレビシリーズを大ヒットさせたスタッフによる映画版。大奥最大のスキャンダル「絵島生島事件」の意外な背景を描く。
 町育ちながら、フェアな精神と聡明さで大奥を率いる絵島(仲間由紀恵)は、将軍の生母月光院(井川遥)からも信頼され、奥女中たちからも慕われていた。しかし、月光院には、側用人間部詮房(及川光博)との密会のウワサが。一方、わがままが通らない天英院(高島礼子)は、絵島の失脚を図る。白羽の矢がたったのは、人気役者の生島新五郎(西島秀俊)。彼のもとに頭巾で顔を隠した奥女中(杉田かおる)が訪れる。怖い怖い。杉田かおるは本作のキーウーマンである。
 知的だが恋にはうぶな絵島、恋に溺れる月光院、彼女たちにめらめらと嫉妬の炎を燃やす女たち。一触即発の女の園で、ついに事件が勃発。しかし、ただの陰謀で終わらないのが、「大奥」シリーズを手がけた脚本家・浅野妙子の新視点。生島と手に手をとる絵島の苦悩と恋には、多くの女性ファンが涙を流した。
また、高島、杉田に加え、松下由樹、浅野ゆう子ら強烈な女優陣が勢ぞろいするのも話題に。絵島が斬る華やかな内掛けはじめ、林徹監督自らが提案した図柄など総額一億円の豪華衣装も含め、華麗な「大奥」の集大成ともいえる映画。今回は劇場公開版に約8分のカットを加えたスペシャルバージョン。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。