ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年08月08日

『あばれ医者嵐山』
時代劇界で「あばれ」といえば西郷輝彦!
愛妻家にして悪には鬼になる名医を熱演

(あばれいしゃ らんざん) 1995年

掲載2008年08月08日

西郷輝彦の時代劇作品といえば、「江戸を斬る」の遠山金四郎を思い浮かべるファンも多いはず。が、「あばれ八州御用旅」(9月放送予定)と本作「あばれ医者嵐山」の「あばれ」シリーズもまた、代表作のひとつといえる。
 林嵐山(西郷)は、将軍家御典医という名家の生まれにして、長崎でシーボルトの鳴滝塾で修行したという超エリート。しかし、自ら弟に家督を譲り、町医者の林家に養子に入って、愛妻・美沙(渡部梓)とともに小さな診療所で町の人々の治療に当る。医師ながら、剣の腕もある嵐山だが、人の命を救うのが仕事と、刀は、元盗賊の覚兵衛(長門勇)とお駒(佳那晃子)に預けている。しかし、飯屋を営む覚兵衛が聞きつけるうわさや、駆け込み寺の庵主月光院(野川由美子)の話から、許せぬ悪を断つために、剣をとる。
 西郷輝彦ご本人にインタビューした際、こども時代は、チャンバラごっこに夢中で、時代劇に出演することは、とてもうれしかったという。長門勇といえば西郷も出演した「影の軍団」にも出演。時代劇のベテランとしていい味を出す。でも「江戸を斬る」では、愛妻おゆき(松坂慶子)が紫頭巾に扮してともに戦ったが、今回、妻にはかなり気を使っている様子。そんな嵐山の「入り婿」ぶりも面白い。主題歌「時に抱かれて」は、もちろん西郷輝彦本人の歌で、なかなかの名曲。

掲載2008年07月25日

『エノケン・笠置のお染久松』
二大スターと喜劇人たちの共演。
暴れん坊お染、わてほんまによい言わんわ!

(えのけん・かさぎのおそめひさまつ) 1949年

掲載2008年07月25日

おっちょこちょいの油屋の丁稚・久松(エノケン)は、トン吉(益田喜頓)、久助(山茶花究)、与七(坊屋三郎)ら先輩にしかられてばかり。ただひとりかばってくれるのは、店のお嬢さんお染(笠置シヅ子)だけだった。お嬢さんが好きな先輩たちは、ますます面白くなく、久松をいじめ、とうとう久松は、店を辞めることに。久松には、親の決めた許婚もいて、お染とは永遠の別れになりそうな展開だったが…。
 こどものころから歌が上手いと評判で、大阪松竹少女歌劇で活躍した笠置シヅ子は、後に歌手デビュー。1947年、服部良一が作曲した「東京ブギウギ」が大ヒット、続いて「ヘイヘイブギ」「ジャングルブギ」「買物ブギ」などをヒットさせ、“ブギの女王”と呼ばれた。敗戦直後の日本に明るさを振りまく彼女に喜劇の才能を見出したのは、エノケン本人で、コンビを組んだ映画は、おおいに人気を博すことになった。
 もちろん、映画には歌も満載。「お染久松」にも、「丁稚ブギ」「お染久松ルムバ」「お祭りブギ」など楽しい曲が揃う。芝居でおなじみのお染は、可憐なお嬢様だが、笠置お染は「お口がパクパク」とからかわれつつも、「うるさいな!はよせんと怒りまっせ!!」と、暴れまくり、ついに思いをかなえる。元気のよさと多くの喜劇人とのからみも見物のひとつ。

掲載2008年07月18日

『唄祭り 佐太郎三度笠』
高田浩吉“奇跡のカムバック”の記念作品
どんなピンチにも歌が飛び出す明るさがいい。

(うたまつりさたろうさんどがさ) 1957年

掲載2008年07月18日

伊豆の佐太郎(高田浩吉)は、村祭りの夜に地元の貸元と悶着を起こして、姿を消す。旅がらすを続けていた佐太郎だが、三島の宿で男装の女武芸者宇津木数馬(久保菜穂子)と関わりあいになり、謎の追っ手の存在を知る。実は彼女は井伊家ゆかりの者で、大切な密書を届ける役だったのだ。しかし、佐太郎のおっちょこちょいの道連れが、密書を宿の仲居に渡してしまい、さらに仲居は別の人の手に。佐太郎は、必死に後を追う。
 戦前から活躍しながら、一時劇団活動のために映画界を離れ、復帰のチャンスがなかなかなかった高田浩吉が、得意の歌で「伊豆の佐太郎」をヒットさせ、見事にスクリーンに戻ってきた。“奇跡のカムバック”といわれた記念すべき作品。
 関所では、♪太鼓はドンドンと歌って突破、旅芸人おつなと知り合えば、さっそく即興で舞台に上がって歌と踊りで追っ手の目をくらますなど、「そんなのアリ?」な場面も多いが、そこは「唄う映画スター第一号」の貫禄だ。
 芸熱心で、この作品の次に撮影された「天馬往来」(内出好吉監督)では、高い塀から飛び降りて骨折。三週間絶対安静といわれながら、数日後には「アップだけでも」と撮影所に出かけ、松葉杖で奮闘したという。映画に出る喜びを全身で表現しているような「唄祭り佐太郎三度笠」の爽快感を味わいたい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。