ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年06月27日

『大江戸出世双六』 
歌う映画スター高田浩吉の一心太助。 
とぼけた大久保彦左衛門の伴淳三郎が最高!

(おおえどしゅっせすごろく) 1955年

掲載2008年06月27日

腰元が家宝の皿の一枚を割り、お手討ちかと大騒ぎになったところに現れた奉公人の太助(高田浩吉)。「人間の命より皿が大事か」と、残りの皿も木っ端微塵にした太助は、つくづく武家奉公が嫌になり、長屋で魚屋を開業する。
一方、江戸城では、将軍家光(北上弥太郎)が、ため息をついていた。何をするにも人に管理される将軍生活よりも、気ままな暮らしに憧れる家光は「あの鳥のようにどこへでも飛んでいきたい」などとつぶやく、お坊ちゃんなのだった。そんな上様を見兼ねたのが、「天下のご意見番」大久保彦左衛門(伴淳三郎)。彦左は、「おこげの握り飯が食したい」という上様の願いをかなえるため、密かに仲間の太助の長屋に案内してきた。ゴボウを見て「これこれ、これはなんと申す」などという上様の登場で長屋は大騒ぎ。しかも、上様は長屋の娘おちかちゃん(水原真智子)が好きになってしまい…。
 高田浩吉は、持ち前の明るさで元気のいい太助に。もちろん、お得意の歌もたっぷり。また、「これこれ、この長屋におこげを作る名人はおらんか」などととぼけた伴淳彦左は、いつものぼそぼそ口調で最高の味を出す。また、大目付(須賀不二男)の悪人ぶりもなかなかだが、不気味な存在感を漂わせる浪人役で、近衛十四郎が出ているのも面白い。

掲載2008年06月13日

『あかね空』
山本一力の直木賞小説の初映画化。
内野聖陽の正反対キャラの違うふた役に注目。

(あかねぞら) 2007年

掲載2008年06月13日

京で修行を積んだ栄吉(内野聖陽)は、京風豆腐の味を広めようと単身江戸にやってくる。右も左もわからない栄吉を何かと手助けしたのは、同じ長屋の娘おふみ(中谷美紀)だった。硬い江戸の豆腐になれた人々になかなか栄吉の豆腐は受け入れられず、苦心の日々が続く。しかし、明るく気丈なおふみの支えで、なんとか光が差してきた。夫婦になったふたりは、三人の子にも恵まれ、小さな店には幸せが満ちていたが、あるときから、おふみはなぜか長男の栄太郎ばかりを可愛がるようになる。そして、一家にやがて暗い影が。ふたりは、家族が、危機をどう乗り越えて行くのか。
 原作は時代小説の第一人者として人気の山本一力。「あかね空」は第126回直木賞受賞作であり、山本作品の初映画化となった。
 この作品では、最新のCG技術による斬新な映像美にも。物語の重要な現場となる「永代橋」のシーンは、早稲田大学の本庄情報通信研究開発センターの協力となり、橋の全景とにぎわう風景までも精密に描かれ、まるで空から江戸の町を眺めている気分になる。
 また、後半、重要なカギを握る人物として登場する傳蔵を内野聖陽が二役で演じるのも話題に。中村梅雀の憎憎しげな演技と、栄吉とは正反対に不気味な雰囲気を漂わせる傳蔵の存在感は強い印象を残す。

掲載2008年04月25日

『おしどり喧嘩笠』
二度と抜くまいと誓った剣をどうする!?
美空ひばりと鶴田浩二の長谷川伸の痛快編。

(おしどりけんかがさ) 1957年

掲載2008年04月25日

いなせな旅人、いろはの伊四郎(鶴田浩二)が安宿でうどんをすすろうとしたとき、なんと天井からぽたれぽたりと鮮血が。
 「薬味にしちゃ赤すぎる」
 と二階へ上がってみれば、そこには侍が事切れていた。横には、曰くありげな娘お才(美空ひばり)が。そこに飛び込んできたのが、斬られた侍の同僚・笠松(小堀明男)。笠松は伊四郎を下手人と勘違い。勤王志士を追う岡っ引きらと、お才を狙う源太郎一家。追いつ追われつの最中、伊四郎は、二度と抜くまいと誓った刀に手をかける。どうする伊四郎!?
 「あっしは悪いせがれなんですよ」
 伊四郎は思わず本音をもらす。
 原作は長谷川伸の「蹴手繰り音頭」。映画では6年ぶり、時代劇では初顔合わせとなった美空ひばりと鶴田浩二が息の合ったところを見せる。ひばりは鳥追い姿で流しをするなど、得意の歌と七変化で大サービス。オリジナル曲「おしどり喧嘩笠」「むすめ旅唄」も楽しげに響く。二大スターの貫禄とユーモアあふれる言葉のやりとりに、映画全盛期ならではの楽しさも感じられる。小堀明男の男気あふれる武士、伊四郎と入浴シーン(?)もある、どんぐり安の堺駿二の軽妙な演技にも味がある。
 大詰め。別れ道にさしかかった伊四郎とお才は、このまま別れてしまうのか? 
 可愛いひばりの表情にも注目を。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。