ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年04月04日

『青空浪人』
川崎敬三主演のユーモラス人情時代劇
のんき浪人の秘剣せきれい崩しにも注目

(あおぞらろうにん) 1971年

掲載2008年04月04日

元南町奉行所の内与力・大川忠介(川崎敬三)は、奉行の密命で御側用人堀大和守の不正を探っていたが、それを察知されたことから、職を辞し、浪人となる。はだか長屋の飯屋に居候し、店を手伝ってのんきに暮らす忠介だが、新奉行鳥居耀三は、過去の不正を暴かれる恐れありと彼を執拗に狙うのだった。
 原作は「桃太郎侍」の山手樹一郎。一見、のほほんとしながら、実は鋭い観察力と行動力で庶民の味方をする忠介。彼の秘剣せきれい崩しも冴え渡る。
 「アフタヌーンショー」の司会者としても知られる川崎敬三は、元大映のスターで、これが始めての時代劇。当時この役について「主人公の大川忠介は、これまでの時代劇に出てくるような強くて凛々しい浪人とは違い、町人のような気さくな人物。それだけに自分の持ち味に似ているので、初めての時代劇でも地のままでやれる」と張り切っていた。
 第八話「深川なみだ橋」では、忠介を監視するずが、次第に人柄に心酔している若手同心向井作兵衛(渡辺篤史)の親友が大坂で大塩平八郎の一派に加わり、江戸で騒動を起こすかという物語。役人として親友を捕らえられるか。悩む後輩に対する忠さんの思いやりがあたたかい。ほかに吉田義夫、佐藤友美、玉川良一など、ユニークな顔ぶれが忠さんを盛り立てる。

掲載2008年02月15日

『阿波の踊子』
阿波を舞台にした男の豪快な復讐劇。
可憐な高峰秀子も活躍。

(あわのおどりこ) 1941年

掲載2008年02月15日

阿波・徳島。この地では、毎年阿波踊りの日が近づくと、あるウワサが流れていた。それは、七年前、家老広幡平左衛門の陰謀で、無実の罪を着せられて阿波踊り当日に処刑された廻船問屋の十郎兵衛(清川荘司)の弟が、復讐に戻ってくるといものだった。そして、ついにその日が。船宿に怪しげな男たちが泊まり、十郎兵衛の許婚者だった豪農の娘も戻ってくる。ある夜、平左衛門の屋敷の門に「十郎兵衛不日参上」という張り紙が。復讐の男(長谷川一夫)は兄の汚名を晴らすため、海賊になり、いよいよ行動を起こす。決めセリフは「七年前の踊りの晩を覚えていますか」
 浄瑠璃で知られる「阿波の鳴門」に監督がヒントを得たという作品。長谷川一夫のまっすぐな二枚目ぶりと、ひたすら男を思う許婚者・入江たか子の美しさ、船宿で男を応援する可憐な娘・高峰秀子のアイドル的な明るさ、髭先生こと黒川弥太郎の存在感もなかなか。「おーい、明日踊ろうぜ」という合言葉が飛び交い、クライマックスへと突き進む。
 公開は41年。戦争の暗雲が日本中を覆い、実際は、阿波踊りは中止されていたという。しかし、マキノ監督は地元に呼びかけ、徳島市と協力して盛大な踊りシーンを実現。監督の心意気が覗える作品といえる。
 同年生まれの監督と長谷川一夫だが、時代劇作品は五本のみで、本作はその二本目。

掲載2008年02月08日

『家光と彦左』
マキノ雅弘・長谷川一夫ともに生誕100年!
家光長谷川と頑固彦左の古川緑波の競演。

(いえみつとひこざ) 1941年

掲載2008年02月08日

大坂冬の陣、夏の陣と活躍した大久保彦左衛門(古川緑波)は、徳川幕府が安泰し、竹千代こと家光(長谷川一夫)が将軍になることをひたすら祈っていた。しかし、幕府上層部には反対も多かった。そんなとき、「しばらく!!」と彦左が天下のご意見番として登場。自分の意見が通らないとみるや「では、神君のもとへ」といきなり切腹しようとする彦左衛門。その押しもあって、家光は無事に将軍となり、りっぱに成長をとげる。
 しかし、彦左には、自分の力がいらないほどになった家光を見て、淋しいのも事実。「上出来でござります。上出来じゃ」「名君におなりあそばせよ…」とひとりとぼとぼ廊下を去って行く彦左の姿には胸を打たれる。
 そんなとき、日光東照宮が完成し、家光は参拝することに。途中、宇都宮城に滞在かることになったが、そこには恐ろしい陰謀が。
 有名な「宇都宮吊天井事件」を描きつつも、そこはマキノ監督。日劇ダンサーチームの華やかな踊りや、長谷川一夫のふた役と悲しみの舞シーンなど娯楽的要素もたっぷり。宇都宮城の豪華なセットには、映画全盛期ならではの貫禄さえ感じられる。
「天下の一大事がそうそうあってたまるか!」頑固な彦左衛門と「じいが死んだら、この家光は誰に孝行すればよいのじゃ」という家光の優しさが心に残る。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。