ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年08月17日

『上杉鷹山 二百年前の行政改革』大胆なアイデアで目指せ、改革!自ら痛みを率先して受けた藩主の物語

(うえすぎようざん にひゃくねんまえのぎょうせいかいかく) 1998年

掲載2006年08月17日

上杉家九代目の藩主になった鷹山(筒井道隆)は養子で、家の実情をよく知らなかった。フタを空けてみれば、藩の財政はパンク寸前。それもこれも戦国の覇者・上杉謙信を始祖とした誇りから、会津、米沢と移るたびに収入が減っているのに、藩士も減らさず、節約もしなかったためだった。
 早速、改革を志した鷹山は、側近の佐藤(宍戸開)に命じて、藩で冷遇されている有能メンバーを招集。思い切った改革案を作らせる。しかし、藩士の家の庭にも桑の木を植えたり鯉を飼う、藩士の妻女も機織を、などという案に、幕府古老の重役たちは「武士の恥」と激怒。ついに鷹山を力づくで追い詰め、幕府に直訴してでも追放しようと圧力をかける。
 鷹山は自らの経費を1500両から200両に減らし、粗食生活を実践。城の庭にも桑を自ら植え始める。筒井道隆は、「私が藩主に適しているかどうか決めるのは領民だ」と、いつもの飄々としたテンションで、若い藩士たちを納得させてしまう。一方、いちいち文句をつけて血圧を上げている重役たちの顔ぶれは神山繁、北村総一朗、すまけい、森山周一郎。この四人の共通点は、低音の声がいいこと。四人揃って迫られると、なかなかの迫力。浮世離れした先代藩主・宇津井健が「わしが浪費したのがいけなかったか…」と反省するシーンもいい。気持ちいい歴史劇。

掲載2006年07月13日

『おらが春』西田敏行が、小林一茶になって名句を連発。五十すぎてモテモテの秘密とは!?

(おらがはる) 2002年

掲載2006年07月13日

生涯に一万句を詠んだという俳人・小林一茶。意外に知られていないその生涯を、田辺聖子が小説「ひねくれ一茶」で描き、吉川英治文学賞を受賞。そのユニークな原作を基に、これまたユニークな俳優・西田敏行が、生き生きした一茶を見せる。
 北信濃の豪農の家に生まれた小林弥太郎は、三歳で生母(市原悦子)を失い、継母のさつ(三林京子)からはいじめられる。15歳で江戸に奉公に出た弥太郎は、20年後、俳人・小林一茶(西田敏行)として、故郷に帰る。しかし、そこでは、さつと弟が「兄さんには財産はやれん」とがんばっていた。
 どんな人物にもなりきれる、“なりきり名人”西田敏行と、“平成の意地悪ばあさん名人”三林京子の対決は見もの。嫌味には嫌味で対決する一茶の「ひねくれ」ぶりはなかなか。
「一茶さんの小さいものを詠む句が好き」と、芳香漂う粋人・今様紫式部といわれた花嬌(かたせ梨乃)、「五七五に命をかけた」と、まともに生きられない男たちなど、俳句を巡る人間関係も興味深い。
五十すぎて、なぜかモテモテになる一茶。
しかし、やっと美人妻をもらいながら、子を次々亡くす悲劇。その深い悲しみが俳句にも染み出て、胸を打たれる。
「めでたさも 中くらいなり おらが春」
この句の深い意味がわかってくる。

掲載2006年06月15日

『お庭番忍びの構図』非情の掟に生きる「草」の生き様。田中邦衛の息子忍びは、遠藤憲一。

(おにわばんしのびのこうず) 1983年

掲載2006年06月15日

お庭番とは、徳川幕府の公儀隠密。伊賀組、甲賀組の忍者集団から構成されており、その中でも、各藩の中に住み、住民として溶け込みながら隠密活動を続ける者は、“草”と呼ばれていた。
 将軍家継の世、岡崎城下に不穏の動きありとして、隠密たちが動き出す。どうも、城の拡張工事に秘密がある様子。岡崎でのんきな居酒屋のおやじとして暮らす男(田中邦衛)は、本名を不破数馬、ベテランの「草」だった。その居酒屋に深夜、老隠密(花沢徳衛)が瀕死の状態で駆け込む。事態は予想以上に根が深い様子。江戸で修行を積んだ数馬の息子も加わり、探索を始めるが…。
 田中邦衛が、居酒屋のとぼけ親父と非情な隠密のふたつの顔、隠密の煙草入れの仕込み刀を操るなど、「岡っ引きどぶ」を思わせるアクションを見せる。怪我を心配し、引き止める数馬に「てめえの死に場所は自分で見つける」という老練な忍びの最期を見せ付ける花沢徳衛もさすが。「おやじどの」と登場する数馬の息子が若き遠藤憲一なのも、ファンにはうれしい!
 多くの犠牲を出し、無二の親友とも対立しながら、結局、公儀の命令に従うしかない忍びの過酷な運命。むなしさを感じた数馬が選んだ道とは。名手・木下忠司の音楽、ナレーションの隆大介の低音ボイスも楽しめる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。