ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2006年05月11日

「女ねずみ小僧スペシャル1 いけないことだぞ!大江戸マラソン博奕地獄」三谷版女ねずみシリーズ。西村雅彦、梶原善、ちらり出演者にも注目。

(おんなねずみこぞうすぺしゃる いけないことだぞ おおえどまらそんばくちじごく) 1990年

掲載2006年05月11日

世のため人のためになればと、悪徳商人から巻き上げた金を庶民にばらまいてきた女ねずみ小僧ことお凛(大地真央)。しかし、その金を元手に博打を始めた男が借金地獄に陥った事実を知ってしまう。その博打を仕切っているのが、大黒屋(北村総一郎)だった。なんと大黒屋の地下は、ルーレットなど南蛮の博打も揃ったラスベガス状態!さらに「大江戸早駆け競争」の賭けで大もうけをしようという大黒屋の企みを知ったねずみ一味は、早速作戦を開始する。
 ねずみ一味に笑福亭笑瓶、白竜、彼らを助ける人の好青年で背中に桜吹雪の彫物がある金さんに野々村真(ということは、あの“真くん”が将来の名奉行!?)、マラソンランナーにヨネスケ、瀬古選手にそっくりの三遊亭楽太郎、さらに大黒屋の悪番頭に西村雅彦、殺し屋に梶原善など、ちらり出演者も要チェック。大地真央は得意のコスプレで奉行の妹に変装。が、マラソンに興奮、大黒屋の前で「いけーっ!!」とつい地が出てしまい、ピンチに…。
 脚本は、大河ドラマ「功名が辻」(脚本・大石静)で足利義満役で熱演(?)を続ける三谷幸喜。かつて時代劇の脚本について大石先輩に相談したとも言われる。ひょっとして、その「相談した時代劇」とは、この「女ねずみ」だったかも?そう思うと、ますます興味深い。

掲載2006年02月23日

「音なし源 さの字殺し」中村梅之助が笹沢佐保アクション作品に。裏の裏の顔とダブル匕首の技も披露。

(おとなしげん さのじごろし) 1983年

掲載2006年02月23日

中村梅之助といえば、テレビの「遠山の金さん」や「伝七捕物帳」の伝七親分として親しまれたベテランだが、今回は、笹沢佐保作のアクション時代劇に挑戦。暗い過去をひきずり、闇の中に生きる男を演じている。
 料理屋春駒の板さん源太(梅之助)は、ふだんは気のいい男のようだが、どこかにかげりがあった。実は、岡っ引き文次郎(織本順吉)の隠れ下っ引きで、事件の裏にうごめく悪人を密かに探っていたのだ。しかし、源太には、その裏にもうひとつの顔を持っていた。二十年前、両親と妹を殺した通称「さの字」という男に復讐を誓っていたのだ。そこに「左文字小僧」と名乗る盗賊が十五年ぶりに現れたと知らせが。「さの字」の盗賊と聞いて、源太の目はきらりと光る!
 注目したいのは、源太を思う春駒の女将お小夜を演じる松尾嘉代。源太のしようとしていることを察し、「さの字だね。さの字のことになると、人が変わっちまうよ」と悲しみながら、でかけていく源太のひげを剃ってやる。おとなの女心をこってりと見せる。多くの時代劇に出演、二時間ドラマでも犯人から探偵まで幅広く演じてきた松尾嘉代だが、こうした“こってり”はマネのできないうまさだ。
 また、伝七では見事な十手さばきを見せた梅之助が、ここでは「ダブル匕首」の技を披露。板前と復讐の鬼の顔の使い分けも新鮮。

掲載2006年02月16日

「阿波おどり狸合戦」狸の恩返しかラブストーリーか?予想もつかない展開に化かされてみたい。

(あわおどりたぬきがっせん) 1954年

掲載2006年02月16日

舞台は阿波の国。商売がうまくいかず、ついに今夜は夜逃げ…という大和屋茂右衛門は、みんなに追われ、あわや狸汁にされそうになっている一匹の狸・小松島の金長(黒川弥太郎)を助けた。義理堅い金長は、大和屋の丁稚に乗り移り、店の商売を建て直す…とここまでなら、「狸の恩返し物語」かと思うところだが、そうはいかない。
 なんと、この金長、次は狸の世界で修行を開始するのだ。度胸試しのために、首ひょろひょろの妖怪と遭遇したり、ほれられたお姫様を巡って恋の鞘当はあるわ、これって、妖怪映画なの? ひょっとしてラブストーリー!? そうこうするうちに、今度は「魍魎の一巻」というお宝の争奪戦が始まり、なんだかかんだと川原で大出入りになってしまうという、まるで狸に化かされているようなこの展開。「人情」「恋物語」「冒険」「股旅」、映画の要素をすべてごった煮(ひょっとして狸汁?)にしてしまったような、なんでもありのすごい内容なのである。
 しかし、狸映画のいいところは、腹鼓ひとつで槍が出ようが鉄砲が出ようが、文句が言えないゆるい明るさ。そして、最後はみんなで阿波踊りを歌って踊って、めでたし、めでたし。暗いニュースが多い昨今、狸映画の偉大さに改めて気づく方も多いはず。大まじめに狸を熱演する黒川弥太郎にも注目。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。