ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年12月17日

明治座 里見浩太朗特別公演「大石内蔵助」今まで見たことない「忠臣蔵」あの有名シーンとは違う角度で大石の人間像に迫る力作。

(おおいしくらのすけ) 2004年

掲載2004年12月17日

「忠臣蔵」といえば、吉良上野介の浅野内匠頭への執拗な嫌がらせ、殿中刃傷事件、庭先での切腹シーンなどなど、定番場面が続くのが普通だが、本作は、ひと味違う角度から、突然の大事件に巻き込まれた大石内蔵助の行動、生き方、家族とのふれあいを描いていく。04年10月明治座公演が早くも登場。
 主演は、里見浩太朗。ご本人は、「大石内蔵助は、俳優の年齢、キャリア、作品製作のタイミングがぴったりあって、初めてやらせていただける大役。時代劇俳優にとって、あこがれの役」と言い切る。その里見作品としては、テレビ・舞台を含めて、六回目の内蔵助。最近は、水戸黄門でシルバー世代の代表も務めるベテランではあるが、内蔵助は最も大切にしている役のひとつといえる。
 私もこの公演は見たが、こんな忠臣蔵もあるのかと正直びっくりした。有名シーンの連続というよりは、おとなの心情をじっくり描かれた構成にぐっとくる。特に愛妻りく(酒井和歌子)との心のふれあい、別れのシーンではハンカチを持ち出す観客も多数。時代らしさを大事にしたセリフも美しい。この舞台を見ることなく急逝した脚本家・杉山義法の力が凝縮された感じがする。
 山下規介、中村繁之の元気のよさ、丹阿弥谷津子、新橋耐子らベテラン女優の味もさすが。舞台ならではの贅沢な忠臣蔵だ。

掲載2004年12月03日

「黄金の日日」松本幸四郎が南方貿易の商人を熱演、石川五右衛門の根津甚八、善住坊の川谷拓三も人気。

(おうごんのひび) 1978年

掲載2004年12月03日

時は織田信長がその才気を発揮しはじめた頃、堺の豪商・今井宗久の奉公人で、見るからに元気のいい青年・助左は、船乗りになって、異国に出ることが夢。やがて、彼は後に日本と南海を股にかける貿易商人・呂宋(るそん)助左衛門になるのだった。
 NHK大河ドラマ16作目となった「黄金の日日」は、とにかく型破りだった。まず、武将でも政治家でもない人物にスポットを当て、戦や陰謀よりも、経済や流通といった面から歴史の流れを描く、原作の城山三郎と脚本の市川森一・長坂秀佳が協力してドラマを作り上げるというのも初の試みだった。
その主役は、先代の市川染五郎(現・松本幸四郎)。私は以前、歌舞伎座の楽屋で、ご本人にこの作品について話を伺った。歌舞伎俳優にとって、一年舞台を休み、ドラマに賭けるというのは大きな決心のいること。それを決意させたのはチャレンジ精神と、魅力的なストーリーであった。やるからには凝り性で、自ら衣装に使う異国風の布を用意するなど、意気込みは大きかったという。
スケールの大きな展開と斬新な視点。石川五右衛門役の根津甚八、善住坊役の川谷拓三も人気で、五右衛門にはファンから助命の願いが出たほどだった。栗原小巻、名取裕子、夏目雅子らきれいどころも揃い、今も大河ドラマ史上屈指の名作といわれるのも納得。

掲載2004年11月19日

「鬼平犯科帳 『犬神の権三郎』」鞍馬天狗から変身ヒーローまで守備範囲は宇宙サイズ!みんな気になる目黒祐樹大研究。

(おにへいはんかちょう) 1994年

掲載2004年11月19日

先日、「丹下左膳」の舞台化などで今、ノリにノッてる中村獅童さんにインタビューし「気になる時代劇は?」と伺ったところ、なんとそのお答えは「参上!天空剣士」であった。天空剣士といえば、昼は長屋の傘張り浪人。しかし、夜は月の力で白い頭巾姿に変身し、悪を懲らしめるというすごいヒーロー。その主人こそ、目黒祐樹その人だ!
 目黒祐樹といえば、もちろん、剣豪スター近衛十四郎の息子であり、松方弘樹の弟。奥方は女優の江夏夕子という芸能ファミリーの一員である。時代劇系ではあるが、英語も堪能。三船敏郎、島田陽子、リチャード・チェンバレンらの出演で大ヒットした「SHOGUN」に出演した際には、得意の英語で三船の通訳もこなしたという。主演作には尾上菊五郎とコンビを組んだ「弥次喜多隠密道中」、30分で事件を解決した「鞍馬天狗」、父近衛十四郎と共演し、自ら主題歌も熱唱した「いただき勘兵衛旅を行く」などがある。正統派主役から海外の大作、さらには月の剣士まで。まさに活躍は宇宙サイズだ。
 この「鬼平犯科帳」では、元盗賊で密偵になった雨引の文五郎を好演。出すぎない存在感は、やはり強烈な父と兄に囲まれた祐樹ならではの心遣いなのか?今回の「犬神の権三郎」は文五郎二回目の登場。渋くいい男っぷりを見せている。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。