ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年11月12日

「鬼の棲む館」閉ざされた山寺で男と妻と愛人が同居!谷崎の濃厚ドラマに三千代が恐怖の微笑みを。

(おにのすむやかた) 1969年

掲載2004年11月12日

 南北朝時代。帝の地位を巡って世の中は不安定になり、治安も悪化。それに乗じて暴れていたのが「無名の太郎」こと大盗賊・太郎(勝新太郎)だった。しかし、今の太郎は、白拍子あがりだが、若くて美しい女・愛染(新珠三千代)に夢中。山奥の荒れ寺で愛欲に溺れる生活を続けるふたりのもとをある日、太郎の妻・楓(高峰秀子)が尋ねてくる…。
 夫の居場所をすごい執念で捜し当てた知性的な秀子VS妖艶な美しさを誇る三千代。女子の好みがバラバラとしか思えない太郎だが、なんとなく勝新太郎だと納得してしまうのが不思議。しかも、楓は、そのまま山寺に居ついてしまうのである。ただでさえ息苦しい環境なのに、さらにどんより&ピリピリした空気が漂う三人の奇妙な生活が始まって半年。高野の寺院の上人(佐藤慶)が、山寺に一夜の宿を頼んだところから、物語はまたひとつ進展していく。このまま無事にすむわけがない。破滅の予感。
 文豪・谷崎潤一郎の濃厚な世界を、新藤兼人が脚色、時代劇の名匠・三隅研次が監督。名カメラマン宮川一郎がねっとりと撮る。最近話題の昼ドラマもびっくりの設定だが、両女優が持ち味を存分に発揮。「座頭市」シリーズなどで油が乗っている勝新太郎の盗賊ぶりもいい。タイトル「鬼」とはいったい誰のことなのか。考えさせられる。

掲載2004年10月29日

「おらんだ左近事件帖」長崎帰りの美男外科医は殿様の弟で正義の味方!柴田錬三郎が企画参加した痛快編。

(おらんださこんじけんちょう) 1971年

掲載2004年10月29日

長崎でオランダ医学を学んだハンサム侍・左近は、実は尾張大納言の次男という由緒正しい家柄の生まれ。しかも、剣の達人で、困った人を見過ごしにできないナイスガイだ。
深川八幡の月心寺に、孤児たちと暮らす彼は、得意の医術と剣でもって、さまざまな事件を解決していく。
 原作は柴田錬三郎。この番組については、企画段階から参加。原作と脚本(大野靖子)が同時進行するというスタイルだった。柴田作品といえば、「眠狂四郎」が著名だが、この左近とは、「家柄よし、剣の腕よし、なのに寺暮らし」という共通点があるものの、キャラクターは、むしろ正反対。生きるのにうんざりし、女子とも刹那的な関わりしか持たない狂四郎に対して、左近は元気溌剌。前向きな人物だ。
左近を演じたのは高橋英樹。現在放送中のNHK「慶次郎縁側日記」ではすっかりご隠居になっているのが、初老の顔の中にふとした瞬間、左近のような剣豪っぽさがのぞくのも、また英樹の味。また、左近の衣装では、徳川の出自にとらわれず?黒い着流しの紋が「丸に左」つまり「左近」となっているのが面白い。共演には星由里子、松村達雄、後に英樹夫人となる小林亜紀子、孤児のひとりとして長谷川一夫の孫の長谷川裕二も登場。左近とこどもたちの関わりもみどころのひとつ。

掲載2004年09月10日

「仇討選手」元禄に突如「仇討ちブーム」が!堺正章が笑って泣かせる得意技で、名作を復活。

(あだうちせんしゅ) 1981年

掲載2004年09月10日

元禄の大事件といえば、もちろん赤穂浪士の討ち入り。その大評判にすっかり心を奪われた殿様のおかげで、とんでもない事件に巻き込まれたのが、植木職人の由松(堺正章)だった。足軽又助(秋野太作)に父親を斬られたばっかりに「では、仇討ちを」と、無理やり武士にされ、剣術修行に江戸まで派遣されることになったのだ。おっちょこちょいの由松に、もとより仇討ちできる力などなさそうなものなのに、周囲の面目やら見栄やらでどんどん引っ込みがつかなくなる。おまけに江戸へ向かう道中で知り合った女・お鳶(山口果林)と、又助の思い人・お花(音無真喜子)は姉妹という複雑な事態に。
 かつて大河内伝次郎が演じた名作を、堺正章が体当たりで熱演。ラビット関根、小堺一機ら、当時の若手を相手に、得意のコミカルな演技で笑わせながらも、武士の世界の矛盾や見栄を痛烈に描きだす。必殺シリーズなどでも知られる秋野太作だが、思わぬ仇討ちに困惑しつつ、いい味を見せる。共演には、現在、不思議な存在感で再び脚光を浴びている森下愛子も登場。初々しい娘姿を見せる。
 この長編は、役者としての堺正章にとって大きなものとなり、後に舞台でも上演。悲劇の部分も多い原作を、舞台では、からっと明るく仕上げた展開は、マチャアキ座長ならではかも。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。