ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年05月14日

「暗殺指令」高橋英樹と工藤栄一がぶつかる。武家社会の矛盾に体当たりする浪人の王道痛快編。

(あんさつしれい) 1984年

掲載2004年05月14日

 近年、バラエティ番組を中心に活躍し、すっかり「笑いのわかるおじさま」として定着しつつある高橋英樹だが、なんといっても十八番は素浪人役。浪人といえば、かなりビンボーだったはずだが、この人の浪人は、どこか品があり、何もしなくても「剣はすご腕」の風格を漂わせる。
 「三匹が斬る!」シリーズのようにコミカル路線でも味を出せるのが、英樹の強みだが、シリアス演技も忘れてはいけない。この「暗殺指令」は、沼田藩のお家騒動をきっかけに、武家社会の矛盾と戦いつつ、自分の生き方を見つめる浪人に扮する。
「俺はおのれ自身のために剣を磨く」と宣言しつつも、お家大事の事件に巻き込まれ、藩そのものと対決する男。男たちが苦悩するわりには、渦中のお姫様(宮崎美子)は「わらわをいったいどうするつもりじゃ!」と結構強気だ。宮崎美子の健康的なお姫様…80年代ならではの配役といえる。
 時代劇ヒーローの王道を歩んだ高橋英樹の持ち味はなんといっても豪快な立ち回り。共演には夏八木勲、牧冬吉、伊吹剛、さらに東映時代劇には欠かせない日本一の斬られ役・福本清三と、手練が揃う。この面々を仕切る監督が、工藤栄一とくれば、その迫力のアクションは、期待通り。単発ドラマらしいキレのよさもいい。

掲載2004年04月30日

「命捧げ候〜夢追い坂の決闘〜」藤沢周平作品を昼ドラヒット作家・中島丈博が脚色。南野陽子の悲しい女と緒形の男気。

(いのちささげそうろう〜ゆめおいざかのけっとう〜) 1996年

掲載2004年04月30日

 木曽福島藩吟味役・塚本伊織(緒形拳)は、藩にはびこる不正を暴くが、逆上し襲いかかってきた相手を咄嗟に斬ってしまった。江戸に逃れた伊織だが、まともな暮らしは望むことはできない。一方、伊織の妻・佐江(南野陽子)もまた、苦しみを抱えている。病の娘おくみのために、夫に隠して夜の商売に身を落としていたのだった。伊織の行方がわからなくなって長い年月を経たころ、「弔い伊之吉」という用心棒の噂がたつ。すべてを捨て去ったような男だが、その腕は恐ろしいほど。その男がやがて宿命的な戦いをすることになる。
 人気の高い藤沢周平作品の中でも、特に支持される「帰郷」「穴熊」を、中島丈博が脚色。中島脚本といえば、今年話題の昼ドラマ「牡丹と薔薇」でもドロドロした人間の性をこれでもかと描き、大ヒット。それだけに、「命捧げ候」も、女の悲しみと、修羅に行きる男の無念さがにじみ出る。主演の緒形拳は、無駄な動きも言葉も一切しない分、枯れた男の心情を静かに表現。母と娘、ふた役に挑戦した南野陽子もがんばっている。共演には高松英郎、西岡徳馬、八名信夫など手練りが揃う。特に注目したいのは、浅野忠信。緒形の渋い味と、浅野の若さが、物語に陰影を感じさせる。新国劇出身の緒形拳の鮮やかな立ち回りを久しぶりにじっくり見られる長編。

掲載2004年04月16日

「家光が行く」名君の若き日の物語。元祖・暴れん坊将軍とも言いたい青春時代劇の主役は懐かしの彼!

(いえみつがいく) 1972年

掲載2004年04月16日

三代将軍・家光といえば、徳川の歴史の中でも名君として名高く、しばしばヒーロー的扱いをされる人。では、その若い頃はどうだったのか?このシリーズは、名君の誕生の秘密が実は「視察」にあったと断定。家光は、「視察に」と称して、城を脱出。浪人姿に変装して、町中の人々と関わり、さまざまに事件解決にも奔走するというお話だ。主演は、仲雅美。当時(72年)、仲雅美というと、沖雅也とカン違いする人も多数いたが、まったくの別人で甘いマスクと魅惑のボイスで人気の若手俳優。「家光」放送翌年には、由美かおるの後ろ姿ヌードで話題騒然となった映画「同棲時代」に主演するなど、大活躍していた。映画では少し陰のある青年だが、この「家光」では、明朗生活。元祖暴れん坊将軍といってもいいほどだが、八代将軍吉宗に比べると、暴れ方もさわやか系だ。共演はハナ肇、目黒祐樹、小柳ルミ子、吉沢京子ら。ルミ子は、「私の城下町」の頃で清純派だったのだ・・・。今は姿を見られない仲雅美と合わせ、時代の移り変わりを実感できる番組ともいえる。ちなみにこの番組が登場した72年は8時台に「家光」のほか「大岡越前」などファミリー路線、10時台には「必殺仕掛人」「眠狂四郎」「地獄の辰捕物控」などアウトロー時代劇が全盛期。このあたりにも時代を感じる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。