ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年03月05日

「京極夏彦 怪 赤面ゑびす」えびすの顔が赤く染まると、島が滅びる!恐ろしい島で、又市(田辺誠一)らが活躍

(あかつらえびす) 2000年

掲載2004年03月05日

 その独自の世界で、読者を魅了し、今年度直木賞を受賞した京極夏彦が、自ら脚本を手掛けたテレビシリーズ「怪」。本作も京極ワールドが大爆発している。
 魔除けの札売りの又市(田辺誠一)と算盤の徳次郎(火野正平)が受けた不思議な依頼。行方不明になった商家の跡取り息子とその許嫁。なぜか許嫁の娘だけが戻ったが、正気を失い、廃人同様になっていた。彼女を正気に戻すよう頼まれた又市と徳次郎だが、術が効きそうになった途端、娘は「戎島、赤面ゑびす」という言葉を残して死ぬ。
 戎島。実は徳次郎はその島の出身で、妹がまだいるらしい。不思議話収集家の戯作者・山岡百介(佐野史郎)によれば、戎島にはおびただしい数の恵比寿像が飾られ、島民は笑うことを禁じられているという。その島は流れ着く物資のおかげで豊かだが、なにやら恐ろしい予感が…。なんてったって、その島を支配しているのは、本田博太郎なのだ…。
 火野、本田に西崎みどりも加わり、「必殺シリーズ」ファンにはたまらない配役。また、著書でも不良っぷりが知られた宇梶剛士の悪辣盗賊、若者ドラマにも欠かせない存在の小日向文世の善良な番頭、さらにハードボイルド作家大沢在昌の演技にも注目。又市の御札が宙を舞い、ビシッと仕置きの技が決まる。田辺誠一は偉い!と感動の瞬間だ。

掲載2003年12月31日

「鬼平犯科帳」鬼平も、丹波が演じるひと味違う。どこか超然とした「ボス」と火盗改め方の大活躍。

(おにへいはんかちょう) 1975年

掲載2003年12月31日

 とにかく出だしから、丹波哲郎カラー。「ルパン三世」などの音楽でおなじみの山下毅雄のスタイリッシュな曲に乗せて、イラスト化された丹波鬼平がポーズを決める。タイトルも横書き。スパイ映画のようなのである。思えば、製作されたのが75年。ということは、あの「Gメン75」と同時期ってこと!? Gメンと鬼平をいっしょにやっていた丹波もすごいが、時代劇なのにその「ボス」っぽさがそのままというのもある意味新鮮。本来、江戸の情緒や味を追及していた作品だが、この鬼平は、事件解決のスピード感が光っている。立ち回りもものすごくスピーディである。小難しい動きはなしでタタタッと斬る。これもまた、この主役らしい。
 しかし、なかなか粋な人物でもあり、ドジな部下・木村忠吾(古今亭志ん朝)を可愛がり(ちなみに同心役で丹波義隆も出演)、行き着けの軍鶏鍋屋の女の子にも慕われる。第一話「用心棒」ではヒゲばかり立派で剣はからきしの浪人・高木軍兵衛(ハナ肇)を密かに助け、手柄とさせた上に「昼間ブラブラしてないで修行しろ」と道場まで世話するのである。軍兵衛は後に、鬼平の人柄を讃えるとともに「怖い人だ」と評する。優しさと厳しさの同居したのが鬼平の味なのだ。
 エンディングでは、また山下音楽ならではの口笛も堪能できる。ユニークな鬼平。

掲載2003年11月13日

「大江戸捜査網’91」時代劇の若きホープ橋爪淳を中心に隠密同心大集合。シリーズ最終作のパワーを見よ!

(おおえどそうさもう’91) 1991年

掲載2003年11月13日

「死して屍拾う者なし」名ナレーター黒沢良のキメでもおなじみの「大江戸捜査網」。杉良太郎、里見浩太朗、松方弘樹、並木史郎の後継者として颯爽と登場したのが、当時の時代劇若手のホープ橋爪淳であった。
 橋爪版「捜査網」は、90年に元締めの老中・松平定信に田村高廣、隠密同心に京本政樹、中村あずさ、隆大介を迎えてスタート。その翌年、さらにパワーアップを図ったのが、この91年版であった。
 腐敗した田沼意次時代。ご政道を正すために、松平定信(若林豪)が組織した隠密同心チーム。天竜寺隼人(橋爪)、秋草新十郎(京本)、流れ星お蝶(あずさ)、小笠原甚内(和崎俊哉)が悪と戦う。前シリーズでは尼僧に扮した中村あずさの大暴れや、他の時代劇では悪役もこなす和崎の渋い戦いぶり、ちょっと前まで隠密役がよく似合った若林豪が老中になったか・・・と感概も深い。それに全員前シリーズとは名前が違うのに、なぜか京本だけは、同じ名前で出ているという謎も考えてみたい。
 ふだんは町人・直次郎になりきっている橋爪淳の行き着けの店の女将は山本リンダ。当時、復活人気で再び「ウララー」と頑張っていた頃。そんな時代も感じつつ見ると、また楽しい。人気シリーズの最終作。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。