ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2003年10月31日

「エノケンのとび助冒険旅行」日本一高いお山で金の実を食べる!名監督中川信夫のファンタジーセンスがあふれる。

(えのけんのとびすけぼうけんりょこう) 1949年

掲載2003年10月31日

 戦で荒れ果てた京の町。人形芝居を生業とするとび助(榎本健一)は、人さらいにさらわれそうになった少女・お福(ダイゴ幸江)を命がけで助けた。お福は、日本一高い山へ行けば、生き別れの母に会え、そこに生えている黄金の実を食べれば、大きな石でなぐられたとび助の頭もよくなるという。ふたりは富士山目指して、旅を始めるが、その行く手には、毒グモ、人食い鬼婆、お化けキノコなど、妖怪変化が待ちうけている。ふたりの運命は、いかに?
 漫画家・清水崑の原作を、映画化監督でもある山本嘉次郎が脚色(山本は、監督になる以前は、脚本家としても活躍していた)、それを「東海道四谷怪談」などホラーの名手として今も親しまれる中川信夫が監督。ホラーの名手とはいえ、怖さが全面に出る内容ではないため、全編ファンタジームード。手作り感いっぱいの書き割りによる背景を駆使、とび助や得意の特撮を活かした妖怪たちのシルエットが浮き上がるモノクロ映画独特の幻想的な雰囲気を作り出した。
 主演の榎本健一は、ご存じ喜劇王。親しみのない世代でも、一度見たら忘れられないお茶目さ。このエノケンが中川監督と、コンビで七作目となったのが本作品。共演には、神田正輝の母えある旭輝子。日本のファンタジーもなかなか味があると思えるはず。

掲載2003年10月17日

「大江戸捜査網’90」若きホープ橋爪淳主演。京本政樹、中村あずさ、通好みの隆大介の隠密同心が勢ぞろい!

(おおえどそうさもう’90) 1990年

掲載2003年10月17日

 私は、出会った人には「あなたの心の時代劇は何?」と質問することにしているが、その中でも最も人気の高いシリーズのひとつが、この「大江戸捜査網」だ。
 潜入、変装、早変わり、いろいろあるわりにはわかりやすいストーリー。集団捜査の面白さに加えて、全員で横一列に整列して夜の町を歩く決めシーンや「死して屍拾う者なし」の決めセリフ。元気のいい立ち回り。時代劇の面白さが詰まった構成は、シリーズを通して守られた。
 今回放送されるのは、タイトル通り、90年代に作られた最新版。前の老中・田沼意次の影響で、幕閣には賄賂が横行。腐敗ムードいっぱいの江戸の町の治安を守ろうと、身をやつしてがんばる隠密同心たち。メンバーは、葉月裕之介(橋爪淳)、秋草新十郎(京本政樹)、松原蔵人(隆大介)、花小路お光(中村あずさ)。性格はいまいち合わないメンバーであったが、捜査のチームワークはいい。
 主演の橋爪淳は、歴代隠密同心リーダー(杉良太郎、里見浩太朗、松方弘樹ら)に比べると甘さが目立ったが、その分を隆大介の重さでカバー。また、中村あずさの立ち回りは可憐とも、踊りのようともいえる独自のスタイルであった。決めのシーンの「隠密同心○○」の名乗りでは、京本政樹の早口&キラリとした視線に注目したい。

掲載2003年09月05日

「女とむらい師 べに孔雀」裏の“女とむらい師”が事件に挑む。必殺ファンはひかる一平にも注目のセクシー網。

(おんなとむらいし べにくじゃく) 1995年

掲載2003年09月05日

 風音は、女とむらい師(葬儀屋)を営む。ある日、心の臓を患い亡くなったという大店・伊勢屋のひとり娘・お初の弔い仕事がくる。お初の亡骸に手を合わせ、死に化粧を施す風音と相棒・秀次は、不審な点に気がついた。病死のはずのお初の前歯は折れ、乳房にも無残な傷跡。さらに裾をはだけると、乱暴された傷跡が。そもそも大店の娘の弔いを、小さな葬儀屋に頼むこと自体、何かあるとしか思えなかった。
 しかし、秘密に気づいたふたりは、逆に番屋に引き立てられ、仕置きされるはめになる。そこには役人たちも巻き込んだ恐ろしい真実があるはず。風音は、秀次、破戒僧の鞍馬とともに「裏の弔い稼業」に乗り出す。
 世の中との関わりを避け、ひっそり生きる美女には実は、裏のすさまじい「顔」がある。
その設定だけでもなかなかなのに、その白い素肌にはくっきりと「べに孔雀」が・・・。主演は、体当たり演技が評判の横須賀蓉美(昌美)。セクシー時代劇ではもっと活躍してほしい人である。また、必殺当時は初々しい青年のイメージだったひかる一平も、おとなの男として渋い一面を見せる。その他、共演には平沙織、西尾拓美、佐川満男など。悪い男たちを美女がビシッと退治する。日曜深夜にはVシネマ時代劇でお楽しみを。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。