ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2002年03月22日

「岡っ引きどぶ」飲む、打つ、買うのドロ臭い岡っ引きを田中邦衛が熱演。江戸の町を邦衛が走る!

(おかっぴきどぶ) 

掲載2002年03月22日

 時代劇の岡っ引きというと、たいてい「品行方正」「庶民の味方」「美人にモテモテ」である。銭形平次、人形佐七、半七・・・みんなこの条件にぴったりだ。
 しかし、「眠狂四郎」で希代のアウトローヒーローを生み出した柴田練三郎の岡っ引きとなると、ちと味が違う。岡っ引きどぶは、飲む、打つ、買うの三拍子。ひとつ間違えば、どっちが捕まる側だかわからないような男だ。しかし、悪に対する爆発力は人一倍。反抗心旺盛、長いモノに巻かれる感覚などサラサラ持ち合わせないパワフルな男なのだ。
 ユニークなのは、その岡っ引きを田中邦衛が演じていること。田中邦衛といえば、その独特なボソボソしゃべりを聞いただけで、バックに「あ〜あああああ〜♪」とさだまさしの主題歌が流れているような気分になる、「北の国から」の親父役でおなじみだ。「岡っ引きどぶ」は「北の国から」とはうってかわって、江戸の町をとにかく走り回り、仕込み十手で大立ち回りを演ずる邦衛どぶ。当時五十代後半だと思うと、元気いっぱいぶりに感心する。美女にはモテないが、樹木希林からは熱烈ラブコールを送られ、芸達者同士のアドリブっぽいやりとりは可笑しい。
 それにしても、「もう許せねえ!」と啖呵を切るセリフもやっぱり、田中邦衛オリジナルの独特な口調なんだよなあ。モノマネ心をくすぐる人だ。つくづく。

掲載2002年03月15日

「網笠十兵衛」「忠臣蔵」裏舞台を描く池波作品。村上弘明の渋さとお茶目さが同時に楽しめる一本。

(あみがさじゅうべい) 

掲載2002年03月15日

 「生類憐れみの令」で世の中大混乱の将軍綱吉の時代。代々将軍家のご意見番をつとめる中根平十郎(津川雅彦)は、浪人月森十兵衛(村上弘明)に、下々の動きを探らせていた。そこに起こった吉良家と浅野家の確執。十兵衛は、公儀方の人間ながら、密かに赤穂浪士の討ち入りを助けることに...。
 池波正太郎作品だけに男気の描き方は天下一品。十兵衛と堀部安兵衛(三浦浩一)との友情、女密偵の悲しい女心(大沢逸美)、大石内蔵助役の中尾彬が、「歴代大石の中でも最もこってりした内蔵助」を見せてるのにも注目だ。さらに柳生新陰流の使い手、十兵衛が実は、柳生十兵衛の孫だった、なんていう「隠し玉」も登場して、物語はさらに複雑に。「忠臣蔵」ともうひとつの活劇が同時に楽しめる、お得な一本とも言える。
 このドラマがユニークなのは、主人公が妻子持ちというところ。一応、菓子屋の亭主で妻(藤真利子)と娘には全然頭があがらない。亭主のお役目がよくわからない妻は、「いつもお出かけばかり」と愚痴を言い、しょっちゅう夫に菓子の味見をさせるので、十兵衛は虫歯になってしまう。焼いた梅干しを手拭いに巻いて、頬に貼りつける十兵衛。なんか全然強くなさそうだよ...。ちなみに村上弘明ご本人はいたってお茶目な人で、実は駄洒落もかなりお得意。別枠の独占インタビューでも、その人柄をチェックしてほしい。

掲載2002年02月22日

「大奥」岸田今日子のナレーションと森山良子の「愛のセフィニ」にクラクラな妖艶絵巻。

(おおおく) 

掲載2002年02月22日

「思えば大奥とは女人たちの運命の坩堝(るつぼ)でございました...」
 背骨をちょっと硬めの刷毛でなぞられたようなオゾゾ感で、ハッとふりむくとそこにすわっている岸田今日子が!?と、思わず錯覚してしまいそうなオープニングで、目がくぎづけ。
 なにしろ将軍以外の男子禁制の空間に美女が何百人もひしめいていたんだから、聞いただけで艶めかしい想像をしてしまいそうだ。
二代将軍秀忠の頃に創設された「大奥」は、以来260余年、江戸城が開城するまであったという。たったひとりの男の愛を奪い合い、嫉妬と欲望が渦巻く。
 「ほほほ、皮肉なものでございますなぁ」と厭味攻撃があれば、「なんと、おはげしい。上様もさぞご満足でござろう」とお色気攻撃で応酬。とうとう上様の子を宿した女の腹を棒で突いて流産までさせる。怪しい僧侶や腰元スパイもそこここに登場。なんてまあ、恐いんでしょう。
 レギュラーを置かず、毎回、栗原小巻、山田五十鈴、司葉子など豪華メンバーによる読み切り式のめくるめく「大奥絵巻」。もちろん、上様の寝室の濡れ場も出てきてドキドキ感もある。ラストは、森山良子が高いキーで♪サフィニ〜と歌い上げる主題歌「愛のセフィニ」で愛の不確かさに酔いしれる。当時のアイドル女優のお姫様ぶりも隠れた楽しみ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。