ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2000年08月17日

鬼平犯科帳

(おにへいはんかちょう) 

掲載2000年08月17日

この番組を見てから池波作品を読破した、ジプシーキングスの主題歌を着メロに使っている、など様々な反響を呼んでいる名作、中村吉右衛門版「鬼平犯科帳」。77日間連続放送中の長丁場、今週は第二シリーズに入る。犬塚弘の粋な盗人ぶりと、上方の兇賊、金田龍之介の極悪ぶり、妻を殺された若き同心(香川照之)の哀しみが胸に迫る「流星」、峰竜太の役者ぶりが光る「お峰徳次郎」、若い頃放蕩無頼を極めた鬼平が関わった女の話「むかしの女」は山田五十鈴が登場。人気のラインナップが続くのでお見逃しなく。
「鬼平」といえばゲスト陣が豪華だが、山田五十鈴はそのなかでも印象的な女優のひとり。撮影の現場で彼女がひとこと「きれいに撮ってね」と言うだけで、現場の雰囲気がぐっと引き締まったという逸話を持っている。素人のペリーにも、なんだかその様子が目に浮かぶような気がするくらいだから、そんじょそこいらの存在感とはわけが違うってなもんだ。
「むかしの女」では、五十鈴が三味線で「薗八(そのはち)」という節を弾くシーンがある。ほんの五分たらずのシーンなのだが、完璧に演奏するためにこの大女優は専門家の元に稽古に通ったそうだ。う〜ん、さすが。それほどの思い入れがあったから、鬼平と五十鈴のからみは何度見てもいいんだな…、納得。

掲載2000年08月07日

鬼平犯科帳

(おにへいはんかちょう) 

掲載2000年08月07日

“一度観たら病みつき”、“あの回をもう一度”と若い世代からもリクエスト多数、新たなファンも増えているこのシリーズ。今週は火付盗賊改方長官(ひつけとうぞくあらためかた)、長谷川平蔵(中村吉右衛門)の妻・久栄(多岐川裕美)の過去の男があくどい手を使う「むかしの男」。渋さが光る密偵・大滝の五郎蔵(綿引勝彦)登場編の「敵(かたき)」など、見逃せないエピソードが続く。妻の過去など承知の上と男を蹴散らし、同時に妻の心中を思いやる。鬼平の男気に拍手喝采。共演者、スタッフのインタビュー特別番組も楽しめる。
 前述した密偵・大滝の五郎蔵を演じる綿引勝彦は“こわい顔”がウリの実力派俳優で、少し前にその“顔”を生かしたゲームのコマーシャルで子供たちのあいだで有名になった。そんな“綿引五郎蔵”は元は盗賊の頭だが、鬼平の配慮で密偵となり他の密偵たちからも信頼されている、という設定。大柄で低い声の綿引は、まさに“五郎蔵”にぴったり、ハマリ役なのだ。とくに今週放送の「敵」のラストシーンが忘れられない。
詳しくは放送をご覧いただくとして、池波正太郎の原作では、五郎蔵と同じ密偵のおまさ(梶芽衣子)が夫婦になるのだが、テレビシリーズでは、ついにその展開はなし。おまさは紅一点の密偵として鬼平に秘めた想いを抱きつつ、尾行、張り込みに命がけでのぞむ。
ペリーとしては、“綿引五郎蔵&梶おまさ”の夫婦密偵をぜひ観てみたかった。渋い綿引と陰のある梶、結構サマになる大人のカップルになったとも思えるのだが…。残念。

掲載2000年08月07日

荒木又右衛門

(あらきまたえもん) 1982年

掲載2000年08月07日

時代劇ならではの痛快さ、真剣勝負の緊迫感。これぞ、まさにチャンバラヒーローという作品の、颯爽の登場だ。妻の弟を惨殺したのが無二の親友だと知った、剣の達人、又右衛門。友情と義理人情に悩みながらも、職を辞し、家名を捨てて敵討ちの助太刀を決意する。やがて舞台は伊賀上野の鍵屋の辻。決闘の時刻が迫る…。主演は平次親分で親しまれた大川橋蔵。町人役とはひと味ちがった橋蔵の魅力があふれる。共演は高橋恵子、志垣太郎、田村高廣ほか。講談でも有名な決闘シーンでの熱演に注目してほしい。
今作で又右衛門を演じる大川橋蔵はどんな役でもキリッとした二枚目。82年のこの作品は数少ないテレビ長編である(このニ年後に五十代半ばで他界)。「荒木又右衛門」はテレビではほかに坂東好太郎(60年)、原田芳雄(73年)、高橋英樹(93年)が演じている。ということは、又右衛門は十年に一度はテレビ化される人気キャラクターなのだ。人気の秘密はわかりやすいストーリー展開と決闘の豪快さ、友情と義理人情に悩む男の生き方に共感を呼ぶためか。いずれにしても“大チャンバラ”として長く愛される物語だ。このチャンネルでほかの三作を放送する機会があったら見比べてみるのも一興かも。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。