ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2012年10月19日

「春が来た」
引退同心仲代達矢×お役御免御庭番西田敏行
名優二人が恋をし、ずっこけ、泣かせる名作

(はるがきた) 出演者:仲代達矢/西田敏行/南野陽子/萬田久子/榎木孝明 2002

掲載2012年10月19日

 文化文政の江戸。敏腕同心として鳴らした甘利長門(仲代達矢)は、権力者の辻斬りを見逃すはめになり、自ら十手を返上。家族もいない気楽さでこれからは自由に生きようと決心する。一方、御庭番月形小介(西田敏行)も、主人である前将軍の側室が亡くなった途端、職を失う。ひょんなことから出会い、過去の自分を捨てるため、太郎兵衛、次郎兵衛と名乗って、第二の人生を歩もうとする。とはいえ、超不器用な二人はさっそく金に困り、考えついたのが、なんと荒れ寺をラブホテルのようにわけありカップルに貸すこと! 町奉行所の同心(辻萬長)ににらまれながらもなんとかやってきた二人だが、太郎兵衛が、謎めいた女お美代(南野陽子)に惚れ、次郎兵衛もまた、食材屋「四季屋」の後家おりせ(萬田久子)を慕うようになり、事件が巻き起こる。

原作は「子連れ狼」の小池一夫と小島剛夕の名作劇画。堅物イメージの仲代が、無精ひげも艶っぽい“ちょい悪”モテおやじ。超まじめな次郎兵衛に「お前、女の知らないな」などと言い出し大喧嘩になる場面など、哀しいのに笑ってしまう。笑わせ、泣かせる二人の名優のぶつかり合いは必見。西田がCGの力を借りて、まさかの凄腕忍びの者に!?

ペリーは仲代達矢インタビューの際、「小池一夫さんに“続編をやりたい”と言ったんだよ」と聞いた。名優もこの役が大のお気に入り! ラストシーンの洒落た感じも秀逸。 

掲載2012年10月12日

「隼人が来る」
高橋英樹が"花吹雪抜刀流"で悪を斬る!
あの大ヒットドラマと一騎打ちした痛快作

(はやとがくる) 出演者:高橋英樹/左とん平 ほか 1972

掲載2012年10月12日

 「徳川享保年間、時の将軍吉宗の命を受けて、単身密かに諸国を巡るひとりの男がいた…」印象的なオープニングナレーションで始まる「隼人が来る」秋月隼人(高橋英樹)は、密偵河童の喜八(左とん平)とともに悪政はびこる各地に出向き、悪を成敗していく。

 なんたって、この作品の見せ場は、隼人が遣う必殺剣“花吹雪抜刀流”。敵の前で隼人は刀を背に回す。その鍔には、一輪の菊が。敵が「む?」となった瞬間、刀を手首でくるりくるりと回転させ、一気に敵正面に撃ち込む!!ばったり倒れた敵の傍らにハラハラと散る花弁と、縦ふたつになった菊が。くーっ、バトントワラーの技もびっくり。時代劇の歴史始まって以来ともいえるキザな必殺剣だが、高橋英樹にはよく似合うのである。そのヒデキスタイルを考案したのは、「新選組血風録」など男っぽい時代劇を数多く手掛けた結束信二、「鬼平犯科帳」でも活躍した野上龍雄、「水戸黄門」でもおなじみの宮川一郎ら名脚本陣と、田中徳三、工藤栄一ら気鋭の監督陣。

72年放送当時、木曜八時の同時間帯にはTBSで最高56パーセントという驚異的視聴率を記録したホームドラマ「ありがとう」が放送されていたが、「隼人が来る」は時代劇ファンに大アピールして人気に。以来、木曜八時枠に「ぶらり信兵衛道場破り」「編笠十兵衛」と高橋英樹時代劇が続くことになった。

掲載2012年08月10日

「花の誇り」
藤沢周平が、宿命的な女二人の争いを描く
瀬戸朝香がきりりとした立ち回りを見せる

(はなのほこり) 出演者:瀬戸朝香/酒井美紀/田辺誠一/山口馬木也/葛山信吾 ほか 2008

掲載2012年08月10日

 田鶴(瀬戸朝香)と三弥(酒井美紀)は、かつてお城で行儀見習いをした友人だった。しかし、田鶴の義兄(山口馬木也)が若くして切腹。その理由が、三弥にふらせたせいだと思った田鶴は、三弥を許せずにいた。時がたち、田鶴の婿養子・寺井織之助(田辺誠一)と、三也の夫・宗方惣兵衛(葛山信吾)が、家老の座を争うことに。宗方有利という情報を得た田鶴は、三弥にだけは負けてはならないと、弱腰の織之助の背中を押す。そんな時、田鶴は家の門前で刺客に襲われた侍・関根友三郎(山口二役)を助けた。亡き義兄にうりふたつの男の出現に、かつて義兄に淡い心を抱いていた田鶴の心は揺れる。友三郎は江戸藩邸の密使で、藩の不正を知られる密書を携えていた。友三郎は再び、命を狙われる。小太刀の名手である田鶴が選んだ道とは。

 原作は藤沢周平。若き日の出来事から、不仲となった女二人が、運命的に対立。女の友情、義兄への恋心、さらに自分の強い決意で命がけの戦いを仕掛ける勇気。藤沢作品の中でも、女の中に潜む情念を描いた個性的な一本といえる。瀬戸朝香は「大奥」シリーズでも見せた強い女を、きりりとした立ち回りとともに見せる。また、外見がおとなしげな酒井美紀が、予想以上の意地っぱりぶりで、女のバトルの底深さを感じさせる。原作にはない祭り風景など描写も美しい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。