ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2012年01月13日

『風林火山(主演:内野聖陽)』
武田信玄の軍師・山本勘助の壮絶な人生
内野聖陽×市川亀治郎×GACKTの激闘!

(ふうりんかざん) 出演者:内野聖陽/市川亀治郎/Gackt/柴本幸/千葉真一/佐々木蔵之介/仲代達矢 ほか 2007年

掲載2012年01月13日

旅を続ける隻眼の浪人山本勘助(内野聖陽)は、村娘ミツ(貫地谷しほり)と恋仲になったが、ミツは武田信虎(仲代達矢)に惨殺される。復讐を誓い、武田家に接近した勘助は、信虎の嫡男晴信(後の信玄・市川亀治郎)の度量を見極め、その天下盗りに全力を尽くすことを決めた。晴信は、諏訪の国の由布姫(柴本幸)を側室とする。父を騙しうちにした晴信を憎みながらも愛するという苦悩を抱える姫を密かに思い、彼女を守ろうとする勘助。一方で、天下を狙う晴信の前に、生涯のライバル・長尾景虎(GACKT)が現れる。武田VS上杉。川中島の激闘が始まった。
 井上靖の原作に、骨太な脚本で知られる大森寿美男のオリジナルストーリー(第11話までは完全にオリジナル)を加えたタフな戦国大河ドラマ。傷だらけで旅をする勘助の初登場衣装は、大河ドラマ史上もっともむさくるしいと言えるかも。内野聖陽に取材した際、板垣信方を演じ、その役が死んだときに俳優引退宣言をした千葉真一はじめ、芝居に熱心なキャストばかりであること、特に上杉方の宇佐美定満を演じた緒形拳から学んだことはとても大きいと語っていた。なお、その眼帯は、四種類用意され、立場に応じて変化している。この作品でドラマ初出演となったGACKTの景虎も大人気に。「運は天にあり」と名セリフで出陣する景虎は神々しく恐ろしさと独特の美がある。

掲載2011年11月11日

『花のあと』
北川景子の美しい剣士が決死の敵討ち
藤沢周平原作。静かで激しい女子の物語

(はなのあと) 2010年

掲載2011年11月11日

舞台は藤沢作品におなじみの東北の海坂藩。父の寺井甚右衛門(國村隼)に剣の手ほどきを受けた以登(北川景子)は、満開の桜の下で江口孫四郎(宮尾俊太郎)と出会い、後日、試合をした。藩随一の遣い手である孫四郎との立ち合いは、以登にとって初めてのときめきともなった。しかし、以登には許婚・片桐才助(甲本雅裕)の存在が。思いを断ち切った以登のところに、孫四郎が自害したという知らせが届く。その裏には孫四郎を陥れた男(市川亀治郎)の存在が。以登は、男との決闘を決意する。
主人公を演じる北川景子は、初めての時代劇に挑むにあたり、所作の稽古、殺陣の特訓に半年以上挑み続けた。インタビューした際、「指導の先生方が厳しく、泣きそうでした」「手と足の重心がかかる左足にまめができて、治ってまだできての繰り返し」と語った。主役の重責を背負っての演技を支えてくれたのは、エキストラ出演したロケ先の鶴岡の人々のあたたかいもてなしだったという。もっとも重要な「花」は桜の満開を待っての撮影。「青い鳥」で注目を集めた中西健二監督は、「次郎長三国志」でも監督補を務めており、時代劇への思いはとても強い。
思いつめる以登を支える才助の存在が実にいい。本格的な殺陣や藤村志保のナレーション、ラストシーンは、初めて時代劇を観る若い世代の心も打つはず。

掲載2011年07月29日

『彫師伊之助捕物覚え 消えた女』
中村梅之助が影のある男をじっくり演じる
藤沢周平のハードボイルド小説の映像化

(ほりしいのすけとりものおぼえ きえたおんな) 1982年

掲載2011年07月29日

2011年は、映画「小川の辺」も公開され、ますます人気となっている藤沢周平原作時代劇。藤沢作品には、「たそがれ清兵衛」「小川の辺」のように、藩の侍たちが上司の派閥争いなどに巻き込まれていく「勤め人」系の作品と、謎めいた町人(盗賊など)が一か八かの勝負に出る「闇の歯車」のような「ハードボイルド」系作品がある。この「彫師伊之助」は、後者のタイプ。さらに「たそがれ清兵衛」など、男やもめが事件の軸になるストーリーもお手の物。普段は明るい役が多い中村梅之助が人間の暗い一面を見せるのも興味深い。
下手人捕縛に必死になるあまり、家庭を顧みなかった岡っ引きの伊之助(中村梅之助)が、女房およう(上村香子)に逃げられて岡っ引きを辞める。版木彫師となり、酒のおぼれる毎日の伊之助のところに、おようの父弥八が、おようが助けを求めていると手紙を持って現れた。そのころ、江戸には「流れ星」という怪盗が出没。流れ星も伊之助と関わることになる。
前進座の看板役者であり、テレビ時代劇にも欠かせない顔となっていた梅之助は、多忙を極め、この「伊之助」が撮影された当時、本格的に役者の道を歩み始めた子息の中村梅雀は「うちで顔を合わせる時間がなかった」と振り返る。まさに脂の乗り切った梅之助といっていい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。