ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2011年06月10日

『文吾捕物帳』
魔剣、殺人予告、密輸…難事件に挑む文吾
三船の千葉周作、滝田栄が歌う主題歌も注目

(ぶんごとりものちょう) 1981年

掲載2011年06月10日

松本清張の原作を元に、「太陽にほえろ」の小川英、「眠狂四郎」市川雷蔵シリーズの星川清司、「吉宗評判記暴れん坊将軍」の土橋成男らが脚色、「鬼平犯科帳」の小野田嘉幹、斎藤光正らベテラン監督による演出の捕物帳。
 その特長は、ミステリー作家の原作らしく、込み入ったトリックや複雑な人間模様など、人の業にも迫っている点。たとえば、第12話「美しき殺人鬼」の回では、正月の七草に猛毒のトリカブトが入れられ、主人公の文吾(滝田栄)の身内も被害を受け、江戸全体では26人もの人が亡くなるという大惨事に。七草を売った男を追ううちに、大店の織物問屋大津屋にたどり着く。たった一本の髪の髪油から、真相に迫る文吾の推理力はさすが。「いずれは、そのカマキリに食い殺されるぜ」というセリフもすごい。
 重くなりがちなストーリーが、からっと楽しめるのは、絶妙なキャスティング。文吾が世話になっている銭湯を切り盛りしているのが、泉ピン子と片平なぎさの姉妹。橋田ファミリーの女親分と2時間ドラマの女王が、ここで姉妹だったというのも見物。しばしば女湯が出てくるお色気度も高い。上司である片桐夏之進(平幹二朗)、兵頭(片岡孝夫・現仁左衛門)、千葉周作(三船敏郎)は貫禄十分。ミュージカルでも活躍する滝田栄が歌う主題歌「今すぐいくから」も聞き応えたっぷり。

掲載2011年05月13日

『必殺橋掛人』
橋掛人・津川雅彦が若い妻と娘ににらまれる
萬田久子・斉藤清六夫婦の必殺瓦投げも登場

(ひっさつはしかけにん) 1985年

掲載2011年05月13日

許せぬ悪をあの世に送るための“橋を掛ける”橋掛人。そもそもの始まりは、橋掛人の元締めが殺され、その娘お光(西崎みどり)が、父から託された江戸絵図の秘密を探ったことだった。お光は、絵図に記された十三ヶ所の印を頼りに、新たに呉服行商の柳次(津川雅彦)、屋根屋の松(斉藤清六)、おくら(萬田久子)夫婦と、鳥細工師新吉(宅麻伸)とともに、橋掛人として活動を始める。
 これまで必殺シリーズでは、女を泣かせ、人を苦しめる悪役として活躍していた津川雅彦。自身も、俳優として堂々と悪を演じたことで新境地が開けたと語っていたが、今回は悪を葬る側になり、美しい呉服の糸を使った華麗な締め技を披露する。面白いのは、その柳次が、家に帰ると、若い後妻(高部知子)と娘のお咲(安孫子理香)に囲まれて、きゅうきゅういってる父であり、夫であること。
第一回は、必殺のカラーを作り上げたひとり工藤栄一が監督。「江戸絵図の謎を探ります」では、柳次のかつての得意先だった花魁の尾上(本阿弥周子)の依頼で、吉原の悪(八名信夫)を狙う。おくらが、松と組んで、瓦を投げて相手を仕留める技を見せる場面、新吉が暗闇から現れるアクションにも注目。第四回「四谷の忍者寺を探ります」には、ライオン丸役で人気を得た潮哲也、漫才ブームで活躍したひとり、ザ・ぼんちおさむも出演。

掲載2011年05月06日

『八丁堀の七人』
人情派鶴太郎とクールな村上の絶妙コンビと
個性的な仲間が推理、走り、事件を追う!

(はっっちょうぼりのしちにん) 2000年

掲載2011年05月06日

物語の中心は、やもめ暮らしの人情派同心・仏田八兵衛(片岡鶴太郎)と、こちらも多感な息子を抱えるクールな与力・青山久蔵(村上弘明)。当初、赴任したばかりの青山は、言葉も仕事っぷりも乱暴で、仏田ら同心と対立していたが、やがてやり方は違うが、犯罪取締りに対する熱意は同じとわかり、七人が一致団結して悪の取り締まりに乗り出す。
 私はしばしば現場取材をしたが、「七人の刑事」「踊る大捜査線」といった集団刑事ドラマを意識したというだけあって、時代劇でありながら、推理劇であり、アクション劇であるのもこのシリーズの特長。音楽も鈴木雅之など現代的なイメージになっている。
 面白いのは、七人の個性。弱い者の味方仏田と豪胆な青山。女にモテる吉岡(日野陽仁)、経験豊富な花田(おりも政夫)、安全第一の磯貝(石倉三郎)とキャリア組と、熱血漢の松居(山下徹大)、新人の古川(末吉宏司)。特に末吉は、「町人の出で侍一年生」の古川と同様に本作が時代劇デビュー。ベテラン監督らからしごかれ、現場用語でいう「はまり」(水にはまるシーン)も積極的にこなし、立ち回りでは「星獣戦士ギンガマン」のヒーロー出身らしいアクションを見せる。
 見せ場は、七人が捕物装束で勢ぞろいするシーン。まさに捕物時代劇の名場面。仏田が凧の絵を描く趣味を持つ設定で、絵師でもある鶴太郎の絵が出てくるのも見逃せない。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。