ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2011年04月29日

『北条時宗』
和泉元彌主演。蒙古襲来に立ち向かった時宗。
父の渡辺謙、兄の渡部篤郎の熱演にも注目。

(ほうじょうときむね) 2001年

掲載2011年04月29日

北条時宗(和泉元彌)は、鎌倉幕府の実験を握る五代執権北条時頼(渡辺謙)の嫡子として育つが、彼には側室の子である兄・時輔(渡部篤郎)がいた。母(浅野温子)と父の関係はうまくいっておらず、憂いを抱えた時宗だったが、その偉大な父が死去。しかも毒殺の疑いが!? 幕府の中で発言力を高めながら、否応なく権力争いに巻き込まれる時宗のところに、世界制服を目指す蒙古から国書が届く。そして、ついに蒙古襲来という大きな危機に直面することに。
 大河ドラマ40作の記念的作品で、和泉元彌は、狂言師らしく、衣装の着こなしがとても自然。クライマックスともいえる蒙古軍団襲来シーンは、中国とモンゴルのロケに加え、実物大船とCGで描かれた。
 また、渡辺謙は、独裁的な力を発揮しながら、最期はすさまじい形相で時宗に遺言を遺す時頼を熱演。屈折した立場の時輔の渡部も赤いスカーフでナイーブさを表現していたのも印象深い。そして、時輔の運命は意外な展開に。ペリーは、クビライ・カアン役のバーサンジャブの存在感に圧倒された。そのクビライと堂々と話す大商人謝国明役の北大路欣也にも注目。オープニングは、モンゴルの民謡を取り入れた異国情緒あふれる音楽と、大海からモンゴルの草原へとCG画面の壮大な風景を旅する趣向で、楽しめる。

掲載2011年03月18日

『舞台「天璋院篤姫」』
「女の道は前に進むしかない!」波乱の幕末
内山理名主演の明治座舞台作品

(ぶたい てんしょういんあつひめ) 2011年

掲載2011年03月18日

薩摩島津家の一門に生まれた於一(おかつ)は、島津斉彬に見込まれて養女となり「篤」姫として、第十三代将軍徳川家定の正室となる。実家から旅立つ日、実母お幸の方から「女の道は前に進むしかない。引き返すのは恥」と教えられた篤姫は、波乱に満ちた人生を突き進む。内山は、若き女傑を熱演する。
大奥では、総取締の瀧山(高橋かおり)が君臨。女の園のしきたりに驚く篤姫。夫家定とはやっと心を通わせたものの、たった19ヶ月の短い結婚生活で死別。十四代将軍家茂のもとに嫁いだ和宮(遠野あすか)との確執…。篤姫の苦労は尽きない。そして、ついに、故郷の薩摩が先鋒となって倒幕の嵐が!
絶妙なのは、キャスティング。篤姫の心の支えとなる実母お幸と家定の実母本寿院を秋野暢子が二役で登場し、母としての優しさを見せる。いつもちゃきちゃきイメージの秋野の穏やかな母親ぶりは見物。また、実家から篤姫を見守り続ける重野に小林綾子。瀧山の高橋かおりとともに、名子役として活躍し、女優として成長したふたりが、大奥で対峙するのも興味深い場面。島津斉彬の西岡徳馬、勝海舟の国広富之も貫禄を見せる。
もうひとつの楽しみは、朝倉摂による華麗な大奥のセット。大胆でモダンな柄の屏風、江戸城のテラスのようなスペースなど、映像作品とは一味違うアート感覚が楽しめる。

掲載2011年03月11日

『半七捕物帳』
六代目菊五郎の当たり役に七代目が挑戦
現在の坂東三津五郎の下っ引きで共演

(はんしちとりものちょう) 1979年

掲載2011年03月11日

「神田三河町の親分」こと半七(尾上菊五郎)は、文政6年江戸日本橋生まれ。13歳のとき、父を亡くし、一度は道楽を覚えて家出したが、神田の吉五郎親分の子分となった。今は、吉五郎の一人娘のお仙(名取裕子)と恋仲で、子分たちと難事件に立ち向かう。
六代目菊五郎が舞台で演じて当り役のひとつとした半七に七代目が挑戦。すっきりした二枚目の親分を、「あたしゃ、あんたのたったひとりの姉なんだからね!!」とちゃきちゃきした姉の文字房(常磐津の師匠)の浜木綿子、江戸の町を突っ走る元気のいい子分・善八(森川正太)、源次(小島三児)、ベテラン子分熊蔵(下川辰平)らがもりたてる。子分のひとりに現在の坂東三津五郎が、若々しい姿を見せているのも注目。
第一話の「異人の首」に始まり、「唐人飴」「怪談津の国屋」「お化け半鐘」「化け銀杏」「怪談おいてけ堀の女」など、岡本綺堂の原作らしいオカルトテイストがしっかり入っているのも、半七シリーズの大きな特長。第23話「むらさき鯉」では、ご禁制のお堀の鯉を密漁していた男が殺され、その晩、その女房のところには「むらさき鯉の使い」という奇怪な女が現れる。罪の意識に沈む女房に半七が「白い黒いはお上が決めること。お前さんは自分を大事にしねえといけねえ」ときっぱり言う清清しさは、七代目の味になっている。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。