ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2010年08月20日

『春姿ふたり鼠小僧』
杉良太郎が義賊と目明しのひとり二役!
とぼけた面白さと人情味あふれる長編

(はるすがたふたりねずみこぞう) 1982年

掲載2010年08月20日

江戸の町は、鼠小僧の話題でもちきり。悪どい金持ちから奪った小判を貧しい者のところにばらまく「義賊」と評判で、一般庶民だけでなく、岡っ引きの清吉(鈴木ヤスシ)や銀次(岡本信人)まで、鼠の小判を期待する始末だった。そんな折、ならず者にからまれた辰巳芸者のお駒(名取裕子)を助けた駒形の新五(杉良太郎)は、自分とうり二つの弥平次(杉二役)の存在を知る。弥平次は、紅白粉の行商人で、お駒とほれあう仲。しかし、悪徳商人の大黒屋(安部徹)が、お駒を自分のものにしようと悪巧みを巡らせていた。
杉良太郎が当たり役のひとつ、新五と、鼠小僧の二役に。追う側と追われる側をひとりでこなすというすごい展開。まじめで思慮深い新五と、お調子者で素顔を見せない弥平次。ふたつの顔の使い分けが面白いが、親切そうに女の化粧を手伝いながら、女の口の悪さが気に入らないと、おかめのような顔に仕上げてしまう弥平次のとぼけた三枚目ぶりを、杉本人は楽しんでいるようにも見える。名取裕子は、持ち前のきっぷのよさを発揮して、威勢がよくて可愛い女を熱演。おなじみ、新五のいきつけの店では、桜井センリと一谷伸江の名コンビの元気がいい。ラスト、義賊への裁きをどうするか。新五の決断が見物。

掲載2010年08月06日

『旗本退屈男(主演:市川右太衛門)』
市川右太衛門が、当たり役をテレビシリーズで
品川隆二、十朱久雄も笑わせる痛快決定版!

(はたもとたいくつおとこ) 1973年

掲載2010年08月06日

昭和5年から昭和38年まで、30作の「旗本退屈男」映画作品に主演した市川太右衛門。その魅力は、おおらかな存在感と、豪快な立ち回り。少々不合理なストーリーでも、観客に「待ってました!!」と言わせる華やかさだ。
そもそも主人公の早乙女主水之介は、無役の旗本ながら、正義感は人一倍。かつて上様の危機を救うために、額に傷を受け、以来、日本全国どこへ出かけようとOKのお許しをいただいた人物。事件あるところに、必ず現れては悪を斬る。遣うは、必殺剣・諸羽流正眼崩し。ただでさえ、カッコいいのに、そのサムライ・ファッションたるや、時代劇でもまず右に出るものがいないほどのきらびやかさ。映画版では、金糸・銀糸をふんだんに使った豪華着流しを平均15着は用意したという。このテレビ版でも、毎回、「退屈男ならでは」の衣装が披露されている。
今回放送されるシリーズで、面白いのは、まず、早乙女家の用人・笹尾喜内役の十朱久雄。どこかへフラフラと旅に出てしまう殿を思うまじめ用人は、いつもハラハラ。また、殿が大切にしている妹・菊路にデビューしたての竹下景子も登場する。その殿をそそのかして(?)旅に誘うのが、威勢のいい町人・三平(品川隆二)。三平は映画にはなかったキャラだが、殿を慕う加茂さくらとともに、物語をテンポよく運ぶムードメーカーになっている。

掲載2010年07月09日

『秘太刀 馬の骨』
藤沢周平原作をCGを駆使して大胆に映像化。
謎の秘剣「馬の骨」がついに出るのか!?

(ひだち うまのほね) 2005年

掲載2010年07月09日

疾走する馬の首の骨を一刀両断したという謎の秘剣「馬の骨」。その唯一の遣い手はいったい誰なのか。その秘密を探るため、江戸から北国の小藩にひとりの剣士・石橋銀次郎(内野聖陽)が現れる。銀次郎は、六人の剣士と立ち会うことになる。その六人とは、「馬の骨」を編み出した初代が作り上げた道場の三代目(小市慢太郎)、徹底的に相手の剣を受けてスキを狙う「受けの沖山」(六平直政)、バカ力の「豪腕」内藤(本田博太郎)、籠手打ち名人の長坂(尾美としのり)など、特徴のある面々。果たして、その中に「馬の骨」の遣い手はいるのか。それはどんな剣なのか。
面白いのは、銀次郎のキャラクター。何事にもとことんのめりこみ、人の迷惑かえりみず、強引に立会いを仕掛けて体当たり。おまけにマザコン!? 同じ藤沢作品の名作「蝉しぐれ」で折り目正しい青年武士を演じた内野がまったく違うキャラに挑んでいるのもみどころのひとつ。また、戦いのたびに、CGを駆使して真横から見せるなど、それぞれの剣を今までにない映像で表現するのも面白い。
脚本はNHK朝ドラマ「ゲゲゲの女房」でしみじみと懐かしい世界を描く山本むつみ。
終盤、銀次郎が「馬の骨」を探す本当の意味が見えてくる。この剣で、六年前に家老が暗殺された事件の真相とは。銀次郎の伯父で、藩筆頭家老(近藤正臣)の怪演にも注目。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。