ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2009年10月09日

『弁天小僧』
市川雷蔵が初めて挑んだ歌舞伎題材作品
西岡善信による豪華な美術を背景に名場面!

(べんてんこぞう) 1958年

掲載2009年10月09日

三十二万石の雲州公の隠居が、屋敷奉公にあがったばかりの小娘に狼藉疑惑? そこに現れた美男の寺小姓。小姓は巧みに隠居たちを言いくるめ、娘と金を奪って逃げた。その寺小姓こそ、弁天小僧菊之助(市川雷蔵)だった。女好きの上に知恵も働く菊之助は、悪旗本の鯉沼伊織(河津清三郎)が、呉服屋浜松屋に無理難題を押し付けて、娘のお鈴(近藤美惠子)までわがものにしようと企んでいると知り、一計を案ずる。そして、浜松屋には美しい町娘が。娘は懐に鹿の子を入れて、万引きを疑われるが…。
ご存知、「弁天小僧」の名場面。伊藤大輔監督によるテンポよい演出と、大映の美術の名匠・西岡善信による豪華なセットで、歌舞伎題材に初挑戦する、元歌舞伎俳優・雷蔵は「おいら、しっぽを出しちまうぜ!」「どなたさまもまっぴらごめんなさいよ」と、キレのいいセリフを見せる。バッチリ芝居の鳴り物も入っている。
無頼である弁天が、「おいら、まつとうな人間じゃあねえ」と純粋な娘にほだされて、義侠心を出す。「おめえもてえした向こう見ずだな」と弁天をたしなめる遠山金四郎(勝新太郎)、弁天を助ける盗賊・日本左衛門(黒川弥太郎)の存在感はさすが。終盤、屋根の上でたくさんの御用提灯に囲まれた弁天がどうするのか? 時代劇の醍醐味たっぷりの痛快編。

掲載2009年08月14日

『牡丹燈籠』
赤座美代子のお露と本郷功次郎の新三郎
でも一番怖いのは、生きた悪女眞由美様?

(ぼたんどうろう) 1968年

掲載2009年08月14日

町屋でこどもたちに読み書きを教える旗本の三男坊萩原新三郎(本郷功次郎)は、盆の燈籠流しの場で、美しい娘・お露(赤座美代子)と知り合う。武家の娘でありながら、吉原に売られたお露の身の上を、おつきの女中お米(大塚道子)から聞いた新三郎は、せめて盆の間だけでも、祝言の真似事をして過ごしたいという彼女の希望を聞き届けることに。しかし、次第に新三郎に死相が現れ、調べてみると、恐ろしい真実が明らかになる。
 カランコロンの駒下駄の音とともに夜毎現れる亡霊。70年代には体当たり演技でパワフルな女優魂を見せた赤座美代子もここでは楚々とした武家娘に。怖いのは、やっぱりお米の大塚道子。お米に思いつめた目で「むごいお仕打ちを。恨めしゅうございます」と言われたら、どんな願いも断ることは不可能だ。
 が、実は一番怖いのは、長屋の女房おみね役の小川眞由美様だった!遊び人の亭主・伴蔵(西村晃)から事情を聞くと、なんと幽霊から金をとろうと企むのである!
「いいじゃないか、死んでおもらいよ」
 おみねの価値観はすっきりはっきり。しかし、彼女らが手にした金の出所は…。
 人のよい新三郎のために力を尽くす白翁堂(志村喬)の優しさがいい。製作は大映で、美術を現在の「鬼平」や映画「たそがれ清兵衛」の西岡善信が担当していることも注目。

掲載2009年07月03日

『ひばりの三役競艶雪之丞変化 前編・後編』
ひばりが人気役者と義賊、悲劇の女の三役に
豪華セットと歌踊り、あでやかさ満開映画

(ひばりのさんやく きょうえんゆきのじょうへんげ ぜんぺん・こうへん) 1957年

掲載2009年07月03日

非業の死をとげた両親の敵討ちを心に秘めた人気役者・雪之丞の物語に美空ひばりが挑んだ意欲作。冒頭には、「私は懸命に、ただひたすら懸命に…」と雪之丞を持ち役にした長谷川一夫を称えたひばりの口上もついていて、当時のスター同士の心配りも伺える。江戸中村座。評判の人気役者・花村屋雪之丞(美空ひばり)の江戸初舞台お目見えでわきたっている。舞台花道の桟敷には、土部三斎(阿部九州男)と娘浪路(北沢典子)の姿もある。実は土部こそ、雪之丞が親の仇と狙う相手のひとりだった。長崎の海産物問屋松浦屋を陥れた悪党たちを追い詰めよとする雪之丞。しかし、その前に剣の免許を巡って邪魔をする門倉平馬(丹波哲郎)なども現れて、容易にはいかない。そんな雪之丞の強い味方になったのが、近頃評判の義賊・闇太郎(ひばり)だった。
原寸大に作られた芝居小屋の豪華セットで弁天小僧の名場面を演じたり、歌い踊るひばり。華麗な雪之丞と江戸の裏社会に生きる闇太郎を、声のトーンを使い分けて演じるひばりには、天性の「声の演技」の力を感じる。単純な敵討ち物語でなく、経済的な制裁や女心の哀しさ、クライマックスには少々ホラーのような展開(ひばりが『化粧をしてもしても…』という場面はお見逃しなく)も用意されて、長時間飽きさせない。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。