ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2008年09月26日

『平岩弓枝のお美也』
愛のために命をかけるお美也の生き方に感動。

(ひらいわゆみえのおみや) 2002年

掲載2008年09月26日

東海道新居宿。本陣の娘お美也(高島礼子)は、政略結婚で藩の重役の家に嫁ぐ。明るく家事をこなすものの、姑たき(夏木マリ)は、嫁が気に入らず、文句ばかり。やっと息子が生まれて幸せをつかんだと思った矢先、夫(野村宏伸)は早世。お美也は、たきから息子を置いて出て行けといわれる。身を切られる思いのお美也を支えたのは、亡き夫の弟(勝村政信)。愛してはいけないと知りつつ、ふたりは惹かれあうが…。
 愛する男を追って、関所破りまでしようとするお美也。しかも、彼女には次々と難題、不運が襲いかかるのだ。そして、新たな出会いも。女性が自分で運命を切り開くのが難しい時代に、懸命にたくましく生きるお美也の姿に胸を打たれる。
 高島礼子は、どんなときにも姿勢よく「はい」と元気よい返事をして、明るさを漂わす。そこに「お美也さん」と地の底から響くような声で登場するたきこと夏木マリのいじめっぷりは強烈。一方で、たきにやりこめられる舅(前田吟)やお美也の父(愛川欽也)ら男たちは優しい。息子役の神谷隆之介もおとなに負けないいい芝居を見せる。
 物語が進むにつれ、人生はどんな過酷であっても、前に進むしかないという作者・平岩弓枝のメッセージが伝わってくる。殺伐とした昨今、じっくり味わいたいシリーズ。

掲載2008年05月02日

『華岡青洲の妻』
嫁和久井映見VS姑田中好子の戦いに決着?
谷原章介のおとぼけ青洲にも注目。

(はなおかせいしゅうのつま) 2005年

掲載2008年05月02日

世界で始めて全身麻酔による乳がん手術を成功させた江戸後期の名医・華岡青洲。しかし、その影には、彼を巡る壮絶な嫁姑バトルが繰り広げられていた。
 代々医者として地域に慕われている華岡家。家を切り盛りする姑・於継(田中好子)は若々しく美貌の持ち主。その息子青洲(谷原章介)は二枚目で、彼の嫁になった加恵(和久井映見)は、幸せだった。が、やがて青洲の関心を得るために、嫁と姑が対立。青洲が麻酔薬の研究に没頭すると、於継と加恵は、「自分を実験台に」と申し出る。田中好子は、元アイドルキャンディーズの一員だったとは、とても思えぬ強烈な姑に。加恵に浴びせる冷凍目線には、恐ろしささえ感じる。一方、受けてたつ和久井映見もかなりのもの。このふたりに囲まれて、おろおろしたり、へらへらしている青洲は谷原章介にぴったりなイメージだ。
 終盤、於継は亡くなり、加恵は実験のために失明。バトルは終息したかに見えたが、病に倒れた青洲の妹小陸(小田茜)の言葉はすさまじい。「恐ろしい。私はお母さはんと姉さんのことをよう見てましたのよし」「私の幸せは嫁にいかんかったことや」それでも、加恵は「私はここがええのやしてよし」と微笑む。小陸は「それは姉さんが勝ったからやわ」作家有吉佐和子ならではの視点で描かれる家族の物語。女のバトルに終わりはありません。

掲載2008年03月28日

『橋の上の霜』
金八武田鉄矢が妻子と妾の間で右往左往
狂歌の解釈もバッチリ指南?

(はしのうえのしも) 1986年

掲載2008年03月28日

大田直次郎(武田鉄矢)は、御目見得以下、70俵五人扶持の幕府下級武士。しかし、狂歌の世界では、四方赤良(よものあから)として広く世に知られた人物であった。
 彼は多くの弟子をとっていたが、中には吉原遊郭の主人たちの姿も。彼らと親しくつきあい、廓の大文字屋の主人(金田龍之介)の家に出入りするうちに、直次郎は遊女・三穂崎(秋吉久美子)と深い仲になる。とはいえ、直次郎には、妻里世(多岐川裕美)とふたりの子ども、堅物の父(浜村純)や弟(岡本信人)もいる。はじめはこっそりだったが、深夜帰宅が重なり、ついには三穂崎に子ができたと言われ、ますます抜き差しならないことに。折も折、幕府の改革を皮肉った「世の中に蚊ほどうるさきものはなし。ブンブ、ブンブと…」という落首の作者が直次郎ではないかとウワサがたち、彼は窮地に陥る。
 金八こと武田鉄矢が両方の女にいい顔をしようとするエゴむき出しの男を演じ、狂歌の講釈も披露するという異色作。また、遅く帰った夫にも「お戻りなされませ」と謙虚な表情をしながら、はさみで着物のをずたずたにする妻、「ぬしのせいでありんす」とわがままを言う三穂崎など、女性の描写が鋭いのは、原作者平岩弓枝らしい。大田家を見守る友人夫婦(菅原文太、新珠美千代)の視線、弟の視線、多面的に楽しめる人間ドラマ。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。