ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2007年10月25日

『はんなり菊太郎2−京・公事宿事件帳−』京都の公事宿を舞台にした人情劇。菊太郎の意外な「仕掛け」にもご注目!

(はんなりきくたろう きょう・くじやどじけんちょう) 2004年

掲載2007年10月25日

七年前、突然出奔した田村菊太郎(内藤剛志)は、親友の源十郎(渡辺徹)が営む公事宿「鯉屋」の居候として、のんきな毎日を送っていた。もともと京都東町奉行所同心組頭の家に生まれながら、妾腹である自分よりも正妻の子である弟に家督を継がせようとした家出であったが、どうやら、のんき生活が気に入っている様子。しかし、江戸時代の弁護士事務所ともいえる公事宿に持ち込まれる争いごとや弟の探索を手伝ううちに、事件解決に手を貸す菊太郎なのである。
 頭も切れて腕もたつ。人の痛みもわかる菊太郎にはただの二枚目より一枚上手の男っぽさがある。女でひとつで娘を育てる恋人お信(南果歩)との静かな愛や飄々とした父(田中邦衛)とのやりとりもなかなかに面白い。
毎回ゲストも豪華で、パート2の第五回では、さる大物俳優がカメオ出演。よーく観ると「おや」と発見があるはずなので、お見逃しなく。
 私は内藤剛志ご本人に「菊太郎って、不思議な存在でなんだか夢の中の人物みたいでしょ?菊太郎はいつも老猫お百をひざに抱いて、座敷と縁側の境目の敷居に座ってる。これは現世とあの世の境目みたいなもので、本当に菊太郎ってこの世にいたのか?という雰囲気を出しているんです」確かにつかみどころもなく、でも、人を幸せにする菊太郎には不思議さがある。その辺りもしっかり味わいたい。

掲載2007年06月21日

『八代将軍 吉宗』強運の将軍も政治や家庭は大変!シリアスな中に笑いもある娯楽大河ドラマ

(はちだいしょうぐん よしむね) 1995年

掲載2007年06月21日

徳川御三家・紀州藩藩主徳川光貞(大滝秀治)の子として生まれた源六は、りっぱな兄がふたりもいたため、気楽な身分。しかし、父と兄が相次いで亡くなり、五代目藩主・吉宗(西田敏行)になる。藩政改革をすすめて11年。今度は八代将軍の座に。江戸に乗り込み、日本全体の政治を改革しようと試みるが、米相場その他、難題は山積み。家庭では、跡取り息子(中村梅雀)の心配をし、女性たちのご機嫌も気になる。さらに自分を「父」と名乗る青年まで現れて、騒動に…。同じ吉宗でも女っ気のなかった「暴れん坊将軍」(松平健)とは違い、こちらの吉宗は「父と言われれば、覚えが」などと戸惑うのであった。
 吉宗といえば、「公事方御定書」「目安箱」「小石川養生所」「町火消し四十七組設置」など、名奉行大岡越前(滝田栄)と協力して改革を進めた将軍。が、抵抗勢力の圧力や経済変動など苦労も多かった。その様子をジェームス三木がコミカルに描き、西田敏行が人間臭く熱演。語りが名調子の近松門左衛門(江守徹)これで面白くならないわけがない!
 最近、私は吉宗の足跡を尋ねて紀州を旅した。現在の和歌山城内には、「目安箱」のもとがあり、街中には吉宗が奨励した学校跡の石碑も。城からは和歌山の町がぐるりと見渡せて最高の景色。強運の吉宗はここから江戸に旅立ったのかと思うと感慨深かった。

掲載2007年05月25日

『必殺仕掛人 梅安蟻地獄』緒形拳の「映画版梅安」チャンネル初登場 悪徳医師・小池朝雄がギラギラで魅せる

(ひっさつしかけにん ばいあんありじごく) 1973年

掲載2007年05月25日

藤枝梅安(緒形拳)は、ある夜、なじみの料亭「井筒」からの帰り道に浪人に斬りつけられる。独自の勘でかわした梅安だが、相手は人違いをしたらしく闇に消えた。「井筒」の仲居おもん(ひろみどり)から、自分と背格好がよく似た医師の山崎宗伯(小池朝雄)が来ていると聞いた梅安は、そこで宗伯が蝋燭問屋伊豆屋長兵衛(佐藤慶)と密談をしていることを知る。数日後、梅安が、裏の仕事の元締め音羽屋半右衛門(山村聰)から依頼されたのは、「伊豆屋殺し」だった。
 宗伯を狙ったのは、母の恨みを晴らしたいという女郎の願いを聞いた小杉十五郎(林与一)だった。小杉の人柄を見た梅安は「同じ殺しでも、小杉さんと私とじゃ違うんですよ。私はとても畳の上では死ねませんからね」などと笑顔なのに怖い、凄みのある男ぶりを見せる。宗伯の情報を得るため、妾(松尾嘉代)とねっとりからむのも緒形版ならでは。また、小池朝雄は悪のくせに臆病な泥臭い男をギラギラと熱演。「仏の長兵衛」と町民に慕われながら、腹の底では「天下を動かす大商人になる」とクールに悪を魅せる佐藤慶とは好対照で面白い。
 クライマックス、梅安が実行したのは、意外な状況での仕掛け。映画らしい大人数のエキストラも動員され、緊迫感あふれる「仕掛け」が繰り広げられる。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。