ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2007年03月23日

『必殺仕舞人』「女の恨み、はらします」京マチ子の美と泥臭い仕舞人たちの技が光る

(ひっさつしまいにん) 1981年

掲載2007年03月23日

必殺シリーズ第16弾。駆け込み寺との関わりから、手踊り一座を引き連れて「女たちの恨みを晴らす」旅に出た座長・坂東京山(京マチ子)。彼女を支える仕舞人は、兄貴的存在の晋松(高橋悦史)とギラギラした新米の直次郎(本田博太郎)だった。
 品よく色っぽい京マチ子は、華麗な踊りを見せるその手に必殺の簪を持つ殺し屋を妖艶に演じる。鋼を仕込んだ縄をたくみに扱う晋松、少々あぶなっかしいが一瞬の居合いで相手を倒す直次郎。中でも、直次郎の動きは予想できない。
私は本田博太郎ご本人にインタビューしたが、「仕舞人」のスタイルは第一回の監督・工藤栄一の影響が大きいらしい。とにかく、すぐに「ふんどし一丁」になる直次郎。ワンクールの放送(81年2月〜5月)で、撮影はほとんど寒中だったが、直次郎はふんどしで自らぬーっと顔を出す「地獄の黙示録」が大得意。水中に沈むシーンでは「どうしても浮いてきちゃうから、ふんどしに石を入れた」とのことだった。そこに重りが…。最終回、直次郎の去り方もまた、直次郎本人のアイデア。そのアイデア実行のために、大掛かりな道具が作られ、別のロケ隊が必要になったが、「必殺はそれくらいのことは当たり前」とみんなが協力的だったとか。職人技が光る「必殺」の現場らしいエピソードである。

掲載2007年01月04日

『花のお江戸の無責任』無責任なのになぜかモテモテ植木の助六!ハナの幡随院長兵衛の恐妻家ぶりも見もの。

(はなのおえどのむせきにん) 1964年

掲載2007年01月04日

盆踊りでのんきに歌を歌っていた助六(植木等)のもとに親父が殺されたという知らせが入る。のらくらする助六は、厳しい母上に「仇を討って来い!!」と尻をたたかれ、江戸に向かうことになる。しかし、手がかりは「背中に傷がある」というだけなのだった。
道中、気弱な権六(谷啓)と道連れになった助六は、今売り出し中の親分、幡随院長兵衛(ハナ肇)の居候に。ところが、評判とは違い、親分は強気女房おぎん(草笛光子)に頭が上がらない。おぎんに「吉原で焼き芋でも売ってこい」と言われた助六と権六は、悪旗本・水野十郎左衛門(田崎潤)から、お菊(藤山陽子)を助け出す。花魁揚巻(団令子)にすっかり惚れられたモテモテ助六は、揚巻に横恋慕するヒヒじじいヒゲの意休(進藤英太郎)が親の仇と狙いをつけ、絶対に裸にならない意休をなんとかしようとするが…。
歌舞伎でもおなじみの内容を、山本嘉次郎監督がクレイジーキャッツ仕様の歌あり、踊りありのにぎやかな映画にした一本。草笛光子の猛妻ぶり、有島一郎の「痛いじゃないのお♡」とおネエ言葉で迫ってくる妙な旗本ぶりも見もの。また、通常の芝居では幡随院は悲劇的に最期を遂げるが、そこはクレイジー、どんな展開になりますか!? 植木の♪バカになるのも楽じゃない〜と名調子もお楽しみ。吉原の華やかさにも映画の豊かさが漂う。

掲載2006年10月19日

『風来坊』おとぼけ名コンビがついに事件の核心へ!個性派・大辻伺郎の演技にも注目

(ふうらいぼう) 1968年

掲載2006年10月19日

粋な旅人・江戸三味線堀の又三郎(中村賀津雄・現嘉葎雄)は、実は跡目相続問題が勃発している尾張藩に潜入することを命じられた公儀隠密・神尾源之助。一方、又三郎と道連れになったヒゲの弥吉(大辻伺郎)も、実は又三郎の潜入を阻止するために放たれた尾張藩の刺客・大庭隼人だった。お互い裏の顔を持つものの、ふたりはその事実に気づかない、それどころか、妙に気が合い、旅先で悪人たちをやっつけたりする。痛快な道中を続けていた。しかし、いよいよ尾張は目の前。跡目を巡って、悪人たちが暗躍する中、目の前に現れたお殿様は、なんと又三郎にうりふたつ!! 「あつちの源さんはすこぶる強い。こっちの源さんはすこぶる弱い」って、のんきなことを言ってるき場合じゃない。そこで時代劇のお約束、ふたりは入れ替わって大活躍?しかし、弥吉の立場は…。「隠密剣士」の船床定男が演出に参加。忍者、剣術使い、爆発事件も起こって最終回は大混乱!
 ユニークなのは、又三郎のキャラクター。得意技が剣術と手品って。中村賀津雄は、男っぽさと人懐っこさが同居する旅人を好演した。また、相棒の大辻伺郎は、個性的な風貌を活かして60年代を中心に活躍した俳優。映画「銭形平次」で大川橋蔵親分の手下・八五郎、テレビ「仮面の忍者赤影」では木下藤吉郎などを熱演。72年には第一回ベストドレッサー賞も受賞している。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。