ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年10月08日

「炎立つ」大河ドラマが描く奥州藤原氏の栄枯盛衰。渡辺謙の二役と、時任三郎の弁慶もいい味!

(ほむらたつ) 1993年

掲載2004年10月08日

奥州で権力をふるう安倍頼良(里見浩太朗)の次男の婚礼に出席した奥州藤原氏の祖・経清(渡辺謙)は、頼良の長女・結有(古手川祐子)と出会う。一方、その婚礼で安倍氏が金の盃を贈り物にしていたことから、陸奥の国郡司は、安倍氏に年貢倍増を通達。拒否されたことで安倍氏討伐が開始される。戦乱となった奥州で生きた藤原経清、その子・清衡(村上弘明)、三代目秀衡(渡瀬恒彦)らが築いた華やかな時代。が、四代目・泰衡(渡辺謙の二役)の時、源義経(野村宏伸)の登場で、奥州の平和は再び脅かされる。
 渡辺謙の子が村上、さらに渡瀬と、全然似てない親子関係ではあるが、奥州に強大な勢力を誇った藤原氏の時代を大河ドラマらしいスケールで見せる。出演者も病から本格復帰した渡辺謙、NHK初出演の里見浩太朗はじめ、坂本冬美、鈴木京香、財前直見、紺野美沙子ら女優陣も豪華。時任三郎のワイルド武蔵坊弁慶も話題になった。
 脚本は、「真珠夫人」「牡丹と薔薇」など昼ドラマでも人気を博し、人間ドラマを描かせたらこの人、ともいえる中島丈博。
 みちのくの黄金の都、とも言われた藤原氏の地元を存分に取材。本格的な雪上合戦シーンもこの作品ならでは。降りしきる雪の中、馬を繰る渡辺謙は、他の作品とはまた違う表情を見せる。

掲載2004年07月09日

「二人の武蔵」藤岡“隊長”武蔵VS江守 “ギロリ”武蔵。東千代之介の佐々木小次郎も光る異色作。

(ふたりのむさし) 1981年

掲載2004年07月09日

武蔵がふたりいた!?五味康祐原作、このあまりに大胆な設定にどんどん引き込まれてしまう。しかも、その武蔵が、江守徹と藤岡弘で、全然似てないところもポイント。
 作州宮本村浪人・平田武蔵(江守)と、播州宮本村浪人・岡本武蔵(藤岡)は、お互いの存在を知ることもなく、それぞれ各地で武者修行を経験。名高い吉岡道場へと向かう。同じ名前を持つ剣術使いが出会ったからには、タダではすまない。「手合わせを」と早速、斬り合いになる。ふたりを止めた優男こそ、剣豪・佐々木小次郎(東千代之介)。奇しくも武蔵を助けた小次郎だが、やっぱりふたりの目標は吉岡道場。とうとう、平田武蔵は、吉岡清十郎(大林丈史)を果たし合いで破ってしまう。一方の岡本武蔵は、清十郎には恩のある身。こうなっては、武蔵と武蔵の決闘を避けられないのであった…。
 いまだに謎の多い、武蔵の人生。この番組制作当時は、演技派俳優・江守VSアクション俳優・藤岡という構図だったのが、現在では、バラエティ番組の怒り役VS秘境探検隊長となっているのも時代の流れか。また、江守武蔵が冷静沈着剣豪で、藤岡武蔵がワイルド剣豪という個性も出ていて面白い。果たして、二人武蔵の勝敗と佐々木小次郎との因縁は、どうなるのか。ナレーターの小池朝雄の低音も物語にぴったりでいい味。

掲載2004年05月07日

「秘剣揚羽蝶-源氏久郎颯爽記」華麗な美剣士と遠山の金さん。ひとりでもすごいのにふた役やっちゃう里見に拍手!!

(ひけんあげはちょう-げんじくろうさっそうき) 1983年

掲載2004年05月07日

ワケありの剣士・源氏九郎(里見浩太朗)は、歩いているだけで人が振り返るほどの華麗な存在。ある日、九郎はこれまたワケありの娘・千春(根本りつ子)と出会う。思い詰めた娘の事情を聞けば、無実の罪で切腹した元長崎奉行の父の恨みを晴らすため、父を陥れた相馬内膳正の命を狙っているという。
 一方、遠山金四郎(里見のふた役)も不穏な空気を敏感に察知。動きだす。
 長崎の一件には、相馬の上にさらに大きな黒幕がいる様子。娘ひとりではとても太刀打ちできないと悟った九郎は、破邪顕正の秘剣揚羽蝶を氏手に、黒幕の正体を突き止めようとする。金田龍之介のねっとり演技にも注目。柴田錬三郎が生み出した源九郎は、映画でも人気のイケメン美剣士。密かに探索するには、ピカピカ系白衣装で目立ちすぎるのが困りものだが、意外な押しの強さで真相に迫る。さらには「源氏の紋所は笹りんどう。さらばこうしてりんどうの花を愛でておる」とキザなセリフも忘れない。ただのナルシスト?と思えるが、りんどうは倫道とひっかけて時代劇にはしばしば登場する花。掛け詞までも駆使するとは、さすが九郎さま。
 もちろん、金さんは背中の桜吹雪でもって大暴れ。それにしても、華麗な九郎と、金さん、ひとりでもすごいのにこれをふた役って…時代劇スター里見の底力を見る長編。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。