ペリーのちょんまげ ペリーのちょんまげ

掲載2004年02月27日

「幕末純情伝」めざせオスカー!渡辺謙の豪快坂本竜馬が幕末の歴史を変える?牧瀬の沖田総司…。

(ばくまつじゅんじょうでん) 1991年

掲載2004年02月27日

 近頃、注目の「新選組」に、こんな異色作もあったのだ!発見できる作品。
 剣の腕は天才肌。体は小さいが、スラリとした剣さばきで評判の沖田総司(牧瀬里穂)は、実は女だった!とんでもない秘密を抱えたまま、近藤勇(伊武雅刀)、土方歳三(杉本哲太)のいる新選組に参加した沖田だが、ついに女だとバレる瞬間が…。そのきっかけを作ったのが、誰あろう坂本竜馬(渡辺謙)だった。
 大通りの真ん中で、いきなり抱きつくという大胆不敵な竜馬。渡辺謙の肺活量いっぱいの土佐弁で口説かれては、秘密も何もない。総司は別の生き方をするしかないのか。思わぬ方向へ突っ走りつつ、幕末の大事件の気配も漂う。結末もこの作品らしい。
 つかこうへい原作のコメディーをスピード感あふれるタッチで映像化。素顔が牧瀬じゃ、一目見て女とバレバレじゃん!と突っ込むのもいいが、「ラストサムライ」近年シリアス演技の続く渡辺謙の喜劇俳優ぶりに注目したい。また、近藤役の伊武と土方役の杉本、いつも怖い顔のふたりの困惑顔が面白い。共演はほかに、木村一八、財前直見、榎木孝明、柄本明、津川雅彦など。
 新選組、坂本竜馬など幕末の主人公たちを描いた作品は数多いが、これほど大胆な設定のコメディは希少。おおらかにお楽しみを。

掲載2004年01月30日

「ひとごろし」松田優作のへなちょこ侍VS剣豪・丹波哲郎。山本周五郎の名作が、異色顔合わせで実現。

(ひとごろし) 1976年

掲載2004年01月30日

 松田優作と時代劇。あまりなじみがないが、これは数少ない主演作である。
 腕はたつが、剣の指導は厳しいし、居丈高でみんなに嫌われる仁藤昴軒(丹波哲郎)。殿様に信頼される昴軒を、福井藩の武士たちは「よそ者」と憎んでいた。ついに何人かが昴軒を襲撃。しかし、あっさり斬られて、昴軒は藩を出奔する。怒った殿様は、上意討ちを命ずるが、誰もやりたがらない。そんな時、手をあげたのは、なんと藩一番の臆病者・双子六兵衛(松田優作)だった…。
 実は「兄上が臆病だから、嫁にもいけない」とグチる妹(五十嵐淳子。初々しい!)のために手をあげたはいいが、剣でかなうわけがない六兵衛。昴軒ににらまれ、思わず「人殺し!!」と叫ぶと、周囲のみんなが逃げだすのを見て、「この手でいこう」と決意。昴軒が立ち寄る宿屋、飯屋、茶店、すべてで「この侍は人殺しだ!」と叫ぶ。六兵衛のあまりのしつこさに辟易した昴軒。川原で決着をつけようとするが、結末は意外な方向に…。
 大きな体を折り曲げ、臆病者を熱演する優作は、アクションスターとは別の演技者としての味がある。また、たいしたことはしてないのに、剣豪に見えてしまう丹波哲郎の貫禄は、どこかユーモラスでさえある。シュールでシニカル。優作ファンにも山本周五郎ファンにも新鮮に感じるはず。面白い!

掲載2003年12月19日

「白虎隊」維新の嵐の中、悲劇的に散った会津の若き獅子たち。名曲「愛しき日々」が鳴り響く!

(びゃっこたい) 1986年

掲載2003年12月19日

 江戸時代末期の文久2年。会津藩主・松平容保(風間杜夫)は、京都守護職を拝命。名君と慕われた容保だが、攘夷派と幕府方との対立は決定的で、藩としては、京都に集合する不逞浪士を厳しく取り締まる必要に迫られた。容保の側近野村左兵衛(竹脇無我)は、土方歳三(近藤正臣)らの新選組を配下置き、沈静化を図るが、ついに戦争状態に。
 いよいよ薩・長・土佐を敵に回し、全面対決というとき、会津で結成されたのが、15歳から17歳の少年剣士たちの「白虎隊」だった。戦争を避けたいと願っていた国家老・西郷頼母(里見浩太朗)の思いも虚しく、白虎隊は大軍と戦う。やがて、愛する鶴ヶ城炎上を見て取り、飯盛山で全員自決する運命に・・・
 親兄弟と別れ、国のために命を捨てる若者たち。自決シーンで互いに見つめあい、うなづきながら刺し違える様は、哀れひとしお。
そこに堀内孝雄の名曲「愛しき日々」が流れるのだから、もう、たまらない。
 幕末ブームの昨今、「新選組より泣ける」と今も一部ファンから人気の大型作品。
 坂上忍、宮川一朗太、西川弘志ら白虎隊役はオーディションで選ばれ、会津で歴史を学び、合宿状態で剣を鍛えたという。その鍛錬には、主役の里見浩太朗も参加。「見ているうちに彼らが本物の白虎隊に見えた」というほどの新人たちの熱演に注目したい。

ペリー荻野プロフィール
ペリー荻野

1962年愛知県生まれ。大学在学中よりラジオのパーソナリティ兼原稿書きを始める。 「週刊ポスト」「月刊サーカス」「中日新聞」「時事通信」などでテレビコラム、「ナンクロ」「時代劇マガジン」では時代劇コラムを連載中。さらに史上初の時代劇主題歌CD「ちょんまげ天国」シリーズ全三作(ソニーミュージックダイレクト)をプロデュース。時代劇ブームの仕掛け人となる。

映像のほか、舞台の時代劇も毎月チェック。時代劇を愛する女子で結成した「チョンマゲ愛好女子部」の活動を展開しつつ、劇評・書評もてがける。中身は"ペリーテイスト"を効かせた、笑える内容。ほかに、著書「チョンマゲ天国」(ベネッセ)、「コモチのキモチ」(ベネッセ)、「みんなのテレビ時代劇」(共著・アスペクト)。「ペリーが来りてほら貝を吹く」(朝日ソノラマ)。ちょんまげ八百八町」(玄光社MOOK)「ナゴヤ帝国の逆襲」(洋泉社)「チョンマゲ江戸むらさ記」(辰己出版)当チャンネルのインタビュアーとしても活躍中。